現代に蘇った「優美な屍骸」 バトンを手渡していくように、世界中のアーティストと1つのアートを紡ぐ

天明屋尚とTYMOTE、繫がりを意識した2つのスターティングピクチャー


レッドブルが世界85か国で繰り広げるオンラインアートプロジェクト『RED BULL COLLECTIVE ART』。そのお披露目イベントが、プロジェクトのスタート日である3月11日に代官山「EVENT SPACE & BAR M」で開催された。合言葉は「アートで世界が手をつなぐ」。ウェブサイトをプラットフォームとし、プロアマ問わず、世界中のアーティストが数珠つなぎのように長い長いアート作品を描いていくという試みだ。ルールはただ1つ、自分の前の参加者が描いた作品に、色や線を繋げるようにして新たな作品を描くこと。こうして、リボンのように延々と繋がった、1つのアート作品が生み出される。プロジェクトの起点となるのは、17人のゲストアーティストが提供するスターティングピクチャー。日本からは現代美術家の天明屋尚、クリエイティブ集団・TYMOTEが参加する。イベントでは、彼らのスペシャルコラボレーションも実現するとあり、大勢のオーディエンスが詰めかけていた。

Red Bull Collective Art レセプションパーティー

最初のプログラムは、『RED BULL COLLECTIVE ART』の全貌を明かすゲストトーク。天明屋とTYMOTEが登場すると、スクリーンに彼らが提供したスターティングピクチャーが映しだされた。天明屋が制作したのは、1997年〜2006年に自身で描いた13点の作品をコラージュした新作。中央には、『[禅画]円相』(2002年)の一部である地球が置かれた。「今回は85の国々のアーティストが参加するプロジェクト。自分の作品からサンプリングし再構築して作品を作ろうと考えた時、まずこの地球を中央に据えようと思いました」。また、絵の左右には印象的な炎が描かれている。「これは『Japanese Spirit』(1997〜2004年)という連作から切り取ってアレンジしたもの。僕の絵を起点にどんどんと新しい作品が繋がっていくので、次の人へのバトンの意味を込めて、有機的な炎を左右に描きました」。

天明屋尚 スターティングピクチャー
天明屋尚 スターティングピクチャー

一方、TYMOTEが描いたのは色と形が絡みあう混沌とした世界。8人のメンバーの内、主にグラフィックを担当する、飯高健人、村井智、石井伶の3人が順に描くという手法で制作された。ベースを作ったのは飯高健人。「レッドブルを飲んでから制作にとりかかり、その覚醒した意識を2つの目玉で表現しました」。続いて村井。彼のパートで作品は一気にカラフルになる。そして石井がレッドブルのパッケージを引用し、サングラスに角を突き刺す牛やブルーとシルバーの色面を加えた。「最後に3人で全体を俯瞰し、左右への広がりが生まれやすいよう調整をしてフィニッシュ。ここにどんな絵が繋がっていくのか、まったく想像がつかないのでドキドキしますね」。

TYMOTE スターティングピクチャー
TYMOTE スターティングピクチャー

複数のアーティストが1つの絵を描くという共同制作手法のアイデアは、1925年頃にシュルレアリスムのアーティストたちが生み出した「優美な屍骸」という手法からインスパイアされたという。それが、『RED BULL COLLECTIVE ART』では、現代のデジタル技術を駆使した壮大なインタラクティブプロジェクトとして蘇っているのだ。

DJ・天明屋×VJ・TYMOTE 初コラボでフロアが熱気に!


続いてこの日のメインイベント、DJ・天明屋とVJ・TYMOTEによるコラボレーションがスタート! DJ初体験にも関わらず、80年代のオールドスクールヒップホップを次々と繰り出す天明屋。負けじとTYMOTEも、天明屋の作品をカット&コラージュした映像を操る。「天明屋さんの作品をいい意味でどう壊そうか。そんなことを考えてプレイしました」とTYMOTEの映像チーム。ヒップホップのビートに合わせてノイズが走り、歪み、引き裂かれる天明屋の作品が印象的だった。

Red Bull Collective Art レセプションパーティー

その音楽と映像を舞台に、フロアに踊り出たのがブレイクダンスグループ、Def Clanの6人。22〜23歳という若さながら、ハイクオリティな技を次々と披露。フロアは一気に熱気を増した。パフォーマンスが終わったあとのDef Clanメンバーは「これこれ! という曲が次々かかってアガった!」と興奮気味に答えてくれた。

Red Bull Collective Art レセプションパーティー

そしてラストは天明屋によるライブペインティング。イベント中に美大生や飛び込みの参加者によって描き進められていた作品を、天明屋がフィニッシュさせるというもの。ウェブで展開される『RED BULL COLLECTIVE ART』を現実世界に持ってきたような企画だ。おもむろに墨水と筆を手にした天明屋は、躊躇なく中央に筆を置き、勢い良く描き始めた。抽象的だった線はやがて鼻、目、ひげ……となり、姿を表したのは巨大な龍。ギロリと会場を睨みつける目玉が描かれ、ライブペインティングは終了した。

天明屋尚
天明屋尚

盛況のうちに幕を閉じた『RED BULL COLLECTIVE ART』のスペシャルイベント。しかしこれは、終わりではなく始まりだ。3月11日を皮切りに、現在も次々とアートのバトンが手渡し続けられている。プロアマ問わず誰でも参加できるこのプロジェクト。受付は3月23日まで。仕上がった作品が世界中のギャラリーで発表されるのも楽しみだ。

イベント情報
『Red Bull Collective Art』

2013年3月11日(月)〜3月23日(土)
参加アーティスト:
Seveso
SuperBlast
Russell Preston Brown
Allati El Henson
Neslihan Erten
Meghan Thome
Non-Format
Iluc Cosmin-Ionut
Alexe Marius
天明屋尚
TYMOTE
Brian Yap
Michael Startzman
Vasava
Ryan Boyle
SHORRY J
Hyesun Ku
Uncl' Paul
Coolrain
JNJ Crew
Kisang Doh
XEVA
YoonGi Kim
Zhongxuan Liu
Chevon Hicks
Christof Capens
Sea Creative
Bashayer Al-Mahdi
Esgar Acelerado
Jakub Kanior a.k.a. Flexn
Ricardo Drumond
Sangyoung Suh
Wonsun Kim
料金:無料
※参加にはオンライン登録が必要



フィードバック 0

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Art,Design
  • 現代に蘇った「優美な屍骸」 バトンを手渡していくように、世界中のアーティストと1つのアートを紡ぐ

Special Feature

Crossing??

CINRAメディア20周年を節目に考える、カルチャーシーンの「これまで」と「これから」。過去と未来の「交差点」、そしてカルチャーとソーシャルの「交差点」に立ち、これまでの20年を振り返りながら、未来をよりよくしていくために何ができるのか?

詳しくみる

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて