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『私は猫ストーカー』 鈴木卓爾監督×星野真里インタビュー
「あなたは犬派?それとも猫派?」誰もが一度は、こう聞かれた経験があるだろう。どちらもかわいらしい動物たちだが、大の猫好きという方も、あまり好きではない方も、独特のユル〜い空気にヤられること間違いなしの、あたたかい映画が誕生した。矢口史靖との共同監督作品『ワンピース』『パルコ・フィクション』など、奇想天外な作風で人気の高い鈴木卓爾監督の最新作は、浅生ハルミンのエッセイ『私は猫ストーカー』を原作にした、ナチュラルテイストの映画である。主演には、『さよならみどりちゃん』でナント三大陸映画祭主演女優賞を受賞し、映画界からの注目も熱い実力派女優・星野真里。話すうちに、ホンワカした気持ちにさせられる魅力的なお二人から、素敵な猫たちがたくさん登場する「猫映画」の傑作についてのお話をうかがった。
※一部ネタバレが含まれますのでご注意ください
※インタビュー最後に、CINRA.NET読者へお二人からのメッセージ動画あり!
(インタビュー・テキスト:小林宏彰 撮影:安野泰子)
鈴木卓爾
1967年、静岡県生まれ。84年、高校美術部の8mmカメラを使い『街灯奇想の夜』を制作。88年の東京造形大学在学中に8mm長編『にじ』がぴあフィルムフェスティバルに入選。審査員特別賞を受賞。その後、東京造形大学の後輩である矢口史靖監督『裸足のピクニック』(92年/共同脚本+監督補)、『ひみつの花園』(97/共同脚本)、『アドレナリンドライブ』(99/出演)に参加。また矢口史靖と『ワンピース』(94〜現在)『パルコ・フィクション』(02)を共同監督している。
星野真里
1981年7月27日、埼玉県生まれ。1995年NHK朝の連続ドラマ「春よ、来い」でデビュー。TBS「3年B組金八先生」の金八先生の長女・坂本乙女役をはじめ、「プラトニック・セックス」、「新・星の金貨」、「大奥」など数々のドラマで活躍する一方、05年の古厩智之監督『さよならみどりちゃん』では、ナント国際映画祭主演女優賞を受賞。またCM、舞台、写真集、バラエティにと幅広い分野でマルチな才能も発揮している。
星野さんって、映画の登場人物として「そこにいた」っていう印象が残る女優さんなんです
─まずは、『私は猫ストーカー』を監督するに至った経緯をお伺いしたいと思います。

鈴木:去年の8月か9月頃、スローラーナーのプロデューサーの越川さんから、浅生ハルミンさんのエッセイ『私は猫ストーカー』を映画化したいというお話をうかがって。「監督やらない?」って聞かれたので、すぐに「やります」と返事をしまして。それからわりと早く、主役の古本屋でアルバイトをするハルちゃん役に星野さんが決まって、12月の撮影にこぎつけました。星野さんは主演映画って、『さよならみどりちゃん』に続いて二本目?
星野:はい。『さよならみどりちゃん』のときにお世話になったのが越川さんだったので、またお話をいただけてうれしかったですね。映画をやりたいっていう気持ちも強くあったので、なんの迷いもなくお引き受けしました。
鈴木:映画の中での星野さんって、演技経験が豊富なのにもかかわらず、「なんにもしょってきてない」感じがあるじゃないですか。『さよならみどりちゃん』でも、小さな町の、バーが近くにある彼氏の家にフラリと現れたりする女性を演じていらっしゃいますが、女優さんとしての演技っていうよりは、映画の登場人物として「そこにいた」っていう記憶がしっかり残っている。それって、映画を監督する側からするととてもありがたいことなんですね。
─作品の中に、ごく自然に息づいている感じがするんですよね。
鈴木:そうなんですよ。今回の撮影の合い間でも、ふと目を離すと自分でコロッケを買って食べていたりして(笑)、自然に谷中の町に溶け込んでましたよね。お芝居にしても、地べたを這いずったりするのも厭わず頑張ってくれたので、こちらは見ているだけでよかった。でも一緒の現場は6日間だけだったので、星野さんという油田があるとしたら、まだまだ奥底に無尽蔵の才能が隠されていそうで、その端緒だけ垣間見させてもらったという気がしています。
スポーツをするように撮影を進められたのが、とても新鮮な感覚でした。
─鈴木監督の演出は、どういったものだったんでしょうか?

星野:演技指導とか、大きな声を出すとか一切なく、好きなようにやらせてもらったんですよ。演じてる側からすれば、どうシーンがつながるのかもわからないし、本当に大丈夫かなと(笑)。オッケー!っていう監督の声だけが頼りでしたが、なにが見えてるんだろうっていう、フシギな感覚でした。
鈴木:たしかにそうですよね(笑)。撮影初日で、これまでの作品で行っていたような、自分の頭の中にあるイメージに近い映像を撮るという方法論が崩れたんです。今回大事だったのは、猫という自由意志で動く存在に対して、いかにさりげなく接近するかというアプローチでした。いいシーンが撮れるかどうかという基準は、猫しだい。猫という他者を追いかけている猫ストーカーという他者を、さらに他者が追いかけて撮る。映画のテーマとストーリーが、こんなにぴったり一致している企画も珍しいですね。
猫さんには「ここはちょっとこうしてくださいね?」とか、言葉伝わらないし、飽きたらいなくなっちゃうし。それこそ野放しだった。猫に対してそうなのなら、人間さんにも出来るだけ、自由にやってもらわないと、バランス悪いかなと思ったし、星野さんをはじめ俳優さんはみんな、個々に独自のリズムを持ちよってくれていたんですよ。古書店のシーンとか、人間五人と猫一匹が一斉に動くと、本当に面白い。下手に交通整理つけちゃうより、ほぼそのまま眺めていた方が全然良い感じでした。そうすると映画の演出するとかって、意識的な事よりも、無意識下での作業のほうが大事だぞとか、全然意味が変わって来てしまったなあと、そんな塩梅でしたね。
─撮影はどのように進められたんでしょうか。
鈴木:カメラのたむらまさきさんをはじめ、スタッフの方々も風のようになすべきことをしてくれ、そうすると監督ってなにもすることがないので、煙草吸ってました(笑)。スタッフやキャストの全パートを、それぞれの人にすっかり任せて、まるでスポーツをするかのように撮影を進められたのが、とても新鮮な感覚でした。
2/3ページ:猫ちゃんは、わたしはここにいたいから今いるの、そっちはそっちで好きにしてればいいんじゃない?っていう(笑)(星野)




















