サイレント映画を彼らに見せて、いま自分が大人になった気持がする?それとも子どもになった気持がする?とかいちいち聞いてたんだよね(大谷)
菊地:この講義の出発点になった出来事を振り返ってみると、おれと同じくらいの45、6歳の大人たちに、俺たちはなぜ通過儀礼というものを失い、いつまでも子どものままなのだろうかっていう話をすると、みんなホイホイ乗ってきて(笑)。でも、その話をいまの慶応の大学生にしたら、キョトンとしてた。
大谷:ポカーンとしてたね。
菊地:そうそう。で、あ、この我々は大人なのか子どもなのかっていう話、いまの大学生にはリアリティがないんだ、と思った瞬間に、面白くなっちゃってね。もしおっさんたちみたいに、大学生たちが乗ってきてたら…。
大谷:あ、この話もういいや、ってなるよね。
菊地:既成事実だからね。皆さんが想像される通りのカッコイイ慶応の生徒たちが、ポカーンとしてて。
大谷:サイレント映画を彼らに見せて、いま自分が大人になった気持がする?それとも子どもになった気持がする?とかいちいち聞いてたんだよね。でも、大人?子供?みたいな感じで、ポワーンとしてた。彼らもじゅうぶんいい年なんですけどね。
菊地:前期テスト内容は、音楽をとにかくいっぱい聴いて、この音楽が何歳に聴こえますかっていうものでね。歌ってる人が実際に何歳だったのか推測せよという話ではなくて、聴いた感じ、この曲は何歳?っていう問題で。
大谷:曲名も作曲者も伏せてね。
菊地:ウィキペディアとかで調べられちゃうからさ。すると、ビートルズの初期のシングルが50歳っていう答えが出てきて(笑)。お父さんが聴いてるから、みたいな。
大谷:大江光とか、すごかったね。
菊地:大江光は、日本人がつくった二十世紀最高の謎の音楽だよ(笑)。
『アフロ・ディズニー』はおっさん向けの本ですから。売れますよ。(大谷)
大谷:『M/D』はオシャレな本でしたけど、『アフロ・ディズニー』はおっさん向けの本ですから。売れますよ。
菊地:ていうかまず、おっさんって幾つのことなんだよ(笑)。45歳だって、ガキだって言われればそれまでだし。
大谷:あとがきでは、いろんなことを広く浅く、なんでもしゃべれるっていうのはすごくおっさんクサいんだっていう、素晴らしい結論に到達したよね。
菊地:おっさんとオタクの少年に分かれる分水嶺って、一体どこにあるんだ、っていうことを答えなきゃいけない状況になったんだよね。どうしようかなと思って。文藝春秋の人としゃべってる間にさ、一個の話題には詳しいけど、何にも知らないまま大きくなったのはおっさんじゃなくてオタクで、なんでも広く浅く語れるのがおっさんだという考えがパッと閃いた。文藝春秋の応接間じゃないと考えつかないよ、あの素晴らしい考えは(笑)。
大谷:バーで巨人戦の話題をしながら、そのままマイケル・ジャクソンの話ができて。
菊地:売れ筋の本の話もわかるし、将棋もわかる。
大谷:で、最後は政治の話になって終わるみたいな。
菊地:それがおっさんだっていう結論ね。おかげで我々は、そうしたおっさんに向けてこの本を書こうっていう気持ちになっていった。おかげさまで、われわれの本としては異例の、出版以来一週間で増刷がかかったね!
大谷:いま12,000部とか出てるみたいね。
菊地:でも、誰が読むんだっていうね(笑)。今日のお客さんたち、格好のモニターになってると思うよ。たぶん、手に取るまではすごいワクワクして、読んだらシューンってする本だね(会場爆笑)。























