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『さくら色 オカンの嫁入り』脚本・赤澤ムックインタビュー

『さくら色 オカンの嫁入り』脚本・赤澤ムックインタビュー

インタビュー・テキスト
前田愛実
撮影:小林宏彰
2010/09/08
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黒色綺譚カナリア派を主宰し、劇作家、演出家、女優としても活躍する赤澤ムック。その彼女が、第三回日本ラブストーリー大賞を受賞し、映画化もされた話題の心温まるヒューマンドラマ『さくら色 オカンの嫁入り』の舞台版脚本を担当するという。劇団では底の知れないねっとりとした女の性(さが)をアングラ調に描く彼女が、この柔らかな世界観をどう調理したのか。その制作の裏側に迫ってみた。

(インタビュー・テキスト:前田愛実 撮影:小林宏彰)

舞台『さくら色 オカンの嫁入り』あらすじ
ある日、酔っぱらったオカンが若い男を拾ってきて言った―「この人と、結婚しよう思うてんねん」。テカテカの、いかにも安ものの真っ赤なシャツに今どきリーゼント頭の捨て男(研二)を連れてきたオカン。強烈なその男の登場は、オカンと娘・月子、そしてオカンの過去を知る隣人・サク婆、愛犬・ハチへと波紋を広げ、3人と1匹の穏やかな日常を静かに変えていくのだった。
舞台『さくら色 オカンの嫁入り』公式サイト

女の性(さが)を描くことには変わりないのかな、と思ったんですね

─今回の舞台化の脚本を担当されることになったそもそもの経緯を教えてください。

赤澤:本当に唐突なことだったんですよ。まず原作に興味があるか聞かれたんですが、あまりにも自分の作風とは違うので、最初は戸惑いました。ただオカンと月子という母娘が主人公なので、両方女じゃないですか。それにサク婆も女性だし、ふだん私が描いている女の性(さが)には変わりがないのかな、と思ったんですね。

年代の違う3人の女性が築いてきた暖かい繭みたいな空間に、娘に起こった悲劇や、佐藤アツヒロさん演ずる研二の登場で繭が崩れていく。けれどそこから蛾じゃなくて、幸せできれいな蝶が生まれたといったお話なんです、これは。それから、これまで「携帯小説」であんまり面白いものを読んだことがなかったのですが、舞台化しようと思ったときに、すごくいろんなことができると思えたのでお受けしました。

─その、いろんなこととは?

赤澤:それぞれのドラマを掘り下げられると思ったんです。原作は月子目線のオカン物語なんですけど、今回の舞台ではかなり研二の割合が強くて、オカンとのラブストーリーとしても一本筋の通ったものになったと思います。映画も同時期に公開されますから、原作、そして映画と戦えるなと、舞台ならではのことをやろうと、やる気が燃え上がりました。

─舞台ならではのことですか? それはもっと詳しく聞きたいです。

赤澤:ハチの存在ですね。単行本の表紙になっている黒い犬がいるんですけど、ハチがいないとこの舞台は始まらないんですよ。映画だったら本物の犬を出せばいいし、小説だったらハチって書けばいい、でも舞台ではやっぱり人が演じてこそだと思いました。着ぐるみとかぬいぐるみとか、声だけのエアー犬にするとか色々な案があったんですけど、お客さんがハチを通して見た物語にもなるな、と思い切って人を出してみました。

─動物に特有の感情表現などを脚本化するのは難しかったんじゃないでしょうか?

赤澤:ハチって前半はほとんど喋らないんですよ。本物の犬だと、しっぽを振ったりすることで何を考えているか分かりますよね? だけどしっぽがないぶん表現が難しくなる。

今回は、月子の心がほどけてくると、ハチの言葉が分かってくるという設定で描きました。最初、月子はハチを気持ちの逃げ道にしているんですけど、彼女が精神的に自立するにつれて、ハチの応援している声がちゃんと聞こえてくるようになるんです。

─なるほど。月子の変化にも注目ですね。ではその他の登場人物の設定は、原作と全く同じなんですか?

赤澤:月子の恋人は登場しません。その部分は全部カットしているんです。また彼女は原作では電車に乗れない外出恐怖症だったんですけど、舞台では完全に外出できないことになっています。だからハチの散歩にも行けない。より深刻、より悲劇だし、それが解消されるとよりハッピーになるんです。

あと、原作で研二はジェームス・ディーンの真似をしているんですけど、舞台版では菅原文太に変えています。『仁義なき戦い』のヤクザみたいに見栄を切るんですよ。で、初めて月子に会った時、すごく嫌われるっていう設定です。ジェイムス・ディーンだと、舞台にした時に物まねできないんですね。車でぶっとばすとか、お父さんに理由なく反抗してみせるとかしかないから(笑)。「じゃけんのう」って言ってるほうが分かりやすいし愛嬌があって、より嫌われ役になりやすいんです。

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イベント情報

『さくら色 オカンの嫁入り』

2010年9月16日(木)〜9月26日(日)
会場:紀伊国屋サザンシアター
料金:7,300円(全席指定)
問い合わせ:CATチケットBOX 03-5485-5999

大阪公演

2010年10月8日(金)19:00、10月9日(土)14:00
会場:サンケイホールブリーゼ
料金:S席 7,000円 A席 6,000円 ブリーゼシート 4,000円(全席指定)
問い合わせ:ブリーゼチケットセンター 06-6341-8888

プロフィール

赤澤ムック

2003年 「黒色綺譚カナリア派」を創立。作・演出家としての活動の一方で役者としても活動しており、毛皮族『エロを乞う人』(パルテノン多摩演劇フェスティバル 2003年参加作品)などにも客演している。映画『スパイ道2<スパイ求ム〜憧れのスパイ・不二子』、映画『曲がれ!スプーン』(監督:本広克行)、『大好き!五つ子』(TBS)などに出演するなど、映像の世界でも注目を浴びている。また雑誌のモデルやイベントへの参加など様々なジャンルで活躍中。最近ではパブリックシアタープロデュース『日本語を読む その2』ドラマ・リーディング形式による上演(演出)、スタンダール原作の舞台『赤と黒』(主演:木村了)の脚色・演出をし、高い評価を得た。今年は『猟奇歌』(著:夢野久作 編:赤澤ムック)が創英社より発行、初主演映画『結び目』(監督:小沼雄一)が公開された。年末には小説も発刊を予定している。

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