殴り合う果ての関係性 contact Gonzo インタビュー

一見すると殴り合いのような、もしくは格闘技やサッカーの妙技を思わせるワイルドな身体の接触を展開して活躍するcontact Gonzo。激しく、しかし時に優美なまでにスリリングなパフォーマンスで国内外で注目を浴びている彼らが、今回はあいちトリエンナーレに出演する。メンバーの塚原悠也さんに、グループ結成から『あいちトリエンナーレ2010』出場の意気込みまでをお聞きした。

(インタビュー・テキスト:前田愛実)

「contact Gonzo」というメソッド(手法)

─contact Gonzoを始めたきっかけを教えてください。

塚原:垣尾優というダンサーに誘われて「コンタクト・インプロビゼーション」(体重のやりとりを行ないながら2人〜集団で動く即興=インプロヴィゼーションの形式)のようなものを公園で試そうというメールをもらったのが直接的な始まりです。2006年くらいでしたが、その頃僕は「ダンスボックス」という客席数100人くらいの劇場を持つアートNPOの制作スタッフとして働いていました。グループを作ろうという意識はなく、勝手にやっていましたね。劇場で関わった中で最も興味の湧いた作家と遊び始めたという感じです。その後、近くにいた仲間たちが合流し始め、人前でパフォーマンスをするようになりました。

殴り合う果ての関係性 contact Gonzo インタビュー

─新しいメンバーがcontact Gonzoに入るきっかけとはなんでしょう?

塚原:三ヶ尻敬悟君は大学の同級生で、暇そうだったので誘ったんです。彼とは美学科で一緒で、いろんな考え方を共有しています。加藤至君は、ダンスボックスにいた頃に知り合いました。彼は状況を開いていけるような運の良さを持っていそうだったので、合流してもらいました。自然と周りに人が集まるタイプですね。金井悠君は、加藤君の知り合いで、だいぶ「おめでたい」感じだったので楽しそうだと思い誘いました(笑)。いつも遠征先でめっちゃアホなお金の使い方をするのでおもろいんです。基本的に、みんな知り合いや友人ですね。

メンバーを増やすという事には、contact Gonzoがメソッドとして共有しうるものかどうかを確認するという意味もあります。メソッドとしてどう変遷していくのか、という事も含めて。でも、馴染むまでにけっこう時間かかる事が分かりました。新しく合流するメンバーとはいつも、稽古をしながら作品を作り上げていっている感じですね。

─なるほど。メンバーの皆さんには、もともとダンスや武道の経験があったのですか?

塚原:垣尾優はモダンダンスを長い事やっていましたが、僕も後から来たメンバーもダンス経験はありません。加藤君はいくつかワークショップに参加していたみたいですが、僕はあえてワークショップはいっさい受けない事に決めていました。格闘技をやっていたのかと聞かれる事もありますがそれも特になく、メンバーがやっていたのはむしろサッカーやラグビー、バスケといったスポーツですね。

「ゴンゾ・ジャーナリズム」というムーブメントが由来のグループ名

─そもそも、グループ名の由来とは?

塚原:contact Gonzoをやっているうち、本格的に「コンタクト・インプロビゼーション」をやっている人たちに対して悪いな、と感じるパフォーマンスへと変形し始めたということに加えて、賞金が良いパフォーミングアーツ系の賞に出すために名前を付ける必要があったんです。

「gonzo」という単語は、1970年代に展開された「ゴンゾ・ジャーナリズム」というムーブメントから借りています。そもそもの発案者はハンター・トンプソン(ジャーナリスト・作家)とされているんですが、「めちゃくちゃな」というスラングから来ているらしいこの単語を援用した手法は、従来の「客観的」だとされていたジャーナリズムとは正反対の「主観的」な判断で取材が進んでいき、対象すらもあやふやになるという、ジャーナリズムの「領域」を内側から喜々として破壊するようなものに僕には見えました。

さらに「gonzo」の手法は写真やポルノにも応用されていき、リテラシーが高いとされる様々な表現手法が「gonzo」によって引きずり降ろされたんです。特に「ゴンゾ・ポルノグラフィー」と呼ばれるものでは、従来は作品に必須とされていた「物語」に性器のアップの映像が取って代わり、カメラは男優の手持ちへと変化した。すると、これまで何かを語る際に疎外されてきていたような出来事も、すべて含んで語る事が可能になったわけなんです。

こうした映像感覚も含めて、このムーブメントには大きな影響を受けています。文法的にいえば「gonzo contact」が正しいのですが、リズムが悪いのでひっくり返しました。間違った英語を真顔で使ってみるのも、昨今では大切な事だと思っています。

─また、パフォーマンスの際にオブジェとカメラを使われますが、それはどうしてでしょうか?

塚原:インスタントカメラとペットボトルは必需品なんですが、なくてもOKのような気もしています。その他に使うものがあるとすれば、たまたまそこにあったから。

ただカメラに関しては、パフォーマーを撮影するのは一番近い人がふさわしいと思っているので、お互いを撮り合うようになりました。この映像のことは、誰が撮影するものよりも真実だと信じている事から、gonzoの哲学を引用して「the first man narrative(歴史上初の説明的な野郎)」と呼んでいます。これまで撮った映像が大量にあるので、全てをまとめて展示する所を探しているところです。

始まりと終わりが明確ではない「子どもの遊び」のようなパフォーマンス

─当初、ダンスの界隈というより美術界で活躍され始めましたが、その経緯を教えてください。

塚原:コンテンポラリー・ダンスと呼ばれるものがそんなに「めちゃくちゃな」ものを求めているように思えなかったんです。自分たちとしては喧嘩を売っているつもりが、誰も買ってくれなかったり…。そんな時、吉原治良賞記念アートプロジェクトという企画が作家を募集していて「好きにやれそうだな」と感じたんです。まだほんの数年前のことですが。おかげでフィンランド遠征が実現し、ヘルシンキで核シェルターや地下道を徘徊したり、北極圏の森では狭いテントで極貧キャンプをしたりしました。メンタル的にはハードでしたけど、すごく楽しい経験でしたね。

殴り合う果ての関係性 contact Gonzo インタビュー

─パフォーマンスの始まりと終わりはどうやって決めているんですか?

塚原:決めているというよりも、メンバーがそれと「分かる」感じです。子どもの遊びがいつ始まり、いつ終わるのかあやふやだという感覚に近いかもしれません。「これ以上、鬼ごっこはもう成立しないゾ」と分かってしまう、ルールが終わるあの瞬間です。理想的にはそういう形にしたいんですね。去年くらいまでは17、18分のパフォーマンスでしたが、現在は21、22分になっています。

─ちなみに、激しくもみあっているうち、喧嘩の「本気スイッチ」が入ってしまうことはないんですか?

塚原:僕は喧嘩の「本気スイッチ」というものをそもそも持っていないので、大丈夫です。他のメンバーも似たような感じではないでしょうか。殴り合っているのは事実ですが、バンドが演奏をするように、異なる楽器を使って何かを作っているのだと思います。

殴り合う果ての関係性 contact Gonzo インタビュー

─観ていると、ギリギリのところでダンサブルになっているところが胸のすく思いがするんですね。その絶妙のタイミングは、どうやって生まれるんでしょうか?

塚原:予期せぬ出来事を、僕らや観ている人たちがダンサブルだと「解釈」した時にそう見えるのかもしれません。予期せぬ出来事は、いつも絶妙のタイミングで起こりますが、人間の意図とは無関係に起こっている出来事をどう一連の物語として認識するか、という感性に頼っているんだと思います。

─なるほど。ところで、作品中に音楽を使わないことが多いのはなぜなんでしょう。

塚原:作品の終わりにそれらしい曲がかかり、暗転するという展開に飽き飽きしたからでしょうね。と、いうのは冗談でして、尊敬するミュージシャンとも対等に、もしくは共に戦うために、著作権物をスピーカーから流す事はしないようにしているんです。「その音はどこから聴こえてくるんだ」とかツッコんでしまいそうで…。何かしらのメタファーをこちらから提示する事はない、ということでもあるのかもしれません。それに、特に僕らのようなパフォーマンスは、音楽ひとつで特定の方向性やある種の物語に誘導されてしまうので、基本的には使わないようにしています。

笑いながら胸ぐらをつかみあっている感じになればいい

─では、今回のあいちトリエンナーレ2010に出品される作品は、どのようなものを予定されているのでしょうか。

塚原:18日は梅田哲也さん(スピーカーや廃材をもとに立体を制作し、音の動きと出力、空間に焦点を当てたサウンドインスタレーションやインプロヴィゼーションを行っている作家)とご一緒して、19日は僕らだけの通称「ノーマルゴンゾ」でパフォーマンスを行ない、20日は、にせんねんもんだいのドラマー、姫野さやかさんとご一緒するというラインナップが決まっていて、何が出来るか考えているところです。僕らが今一番ひりひりと面白さを感じていることをやってのけている人たちですね。パフォーマンスとしては、「笑いながらお互いに胸ぐらをつかみあっていたら、2人とも浮いた」といったような内容になるといいな、と思っています。

殴り合う果ての関係性 contact Gonzo インタビュー

─これまでも森の中や、公園、ギャラリーや劇場など様々な場所でパフォーマンスされてきましたが、今回は会場が愛知芸術文化センターの大劇場の搬入口という、非常にcontact Gonzoらしい意表を突くロケーションで、何が起こるのかとても楽しみです。この場所を選んだのはどうしてですか?

塚原:「やる場所で迷ったら、相手の急所でやろう」という、いつかの別の企画で相談していた時の垣尾優の言葉を思い出して選びました。

─今回のあいちトリエンナーレ2010では、パフォーミングアーツのラインナップも充実し、世界各国のアーティストが集まっていて非常に豪華ですね。これまで海外でも活躍されてきた皆さんですが、世界のアーティストに混じって国際的な展覧会に出品される意気込みを教えてください。

塚原:そうですね、僕たちは教養もない部外者なので、失う物はありません。平常心で臨みたいですね。

─では最後に、今後の予定と、contact Gonzoとしてどのように展開することを計画しているのかを教えてください。

塚原:長期的な計画はありません。目の前の状況を解釈する事だけを積み重ねるというか、そうやって毎日考え続けて少しづつ何かを理解し、あるいは理解した気になって、その結果長期的なビジョンを持つことでは行けない地点にたどり着きたいと思っています。

今後は10月にソウルのナム・ジュン・パイク アートセンターでパフォーマンス予定で、10月末から京都芸術センターで展示、11月から12月にかけて京都精華大学で梅田哲也さんとワークショップを開催し、来年3月に国立国際美術館で展示といったラインナップです。ぜひ、楽しみにしていただければと思います。

イベント情報
『あいちトリエンナーレ2010 / Aichi Triennale 2010』

contact Gonzo パフォーマンス日程

『non titled』

2010年9月18日(土)16:00 特別共演:梅田哲也(あいちトリエンナーレ2010参加アーティスト)
2010年9月19日(日)17:00
2010年9月20日(月)15:45 特別共演:姫野さやか(にせんねんもんだい)
会場:愛知芸術文化センター
(搬入口B) 料金:無料(要整理券)
定員:100名
※整理券は、愛知芸術文化センタープレイガイドにて、公演当日の10時から公演開始の15分前まで配付(定員に達し次第終了)。定員に余裕のある場合は、配付終了後も会場入口にて直接受付

プロフィール
contact Gonzo

2006年にダンサーの垣尾優と塚原悠也が開発・命名したメソッドの名称。人と人との間に起こる「接触」というシンプルな物理現象に起因する様々な瞬間的な事象を通し、自らにとっての「世界の仕組み」を紐解こうとする方法論。一見するとただの殴り合いのようで、時に洗練されたダンスのような優雅な動きも垣間見える特異なパフォーマンスの模様は、「YouTube」などのメディアを使って即時的に発表される。現在、大阪を主な拠点として活動。

フィードバック 0

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Stage
  • 殴り合う果ての関係性 contact Gonzo インタビュー

Special Feature

Habitable World──これからの「文化的な生活」

気候変動や環境破壊の進行によって、人間の暮らしや生態系が脅威に晒されているなか、これからの「文化的な生活」のあり方とはどういうものなのだろうか?
すでに行動している人々に学びながら、これからの暮らしを考える。

記事一覧へ

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて