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殴り合う果ての関係性 contact Gonzo インタビュー

殴り合う果ての関係性 contact Gonzo インタビュー

インタビュー・テキスト
前田愛実
2010/09/10

「ゴンゾ・ジャーナリズム」というムーブメントが由来のグループ名

─そもそも、グループ名の由来とは?

塚原:contact Gonzoをやっているうち、本格的に「コンタクト・インプロビゼーション」をやっている人たちに対して悪いな、と感じるパフォーマンスへと変形し始めたということに加えて、賞金が良いパフォーミングアーツ系の賞に出すために名前を付ける必要があったんです。

「gonzo」という単語は、1970年代に展開された「ゴンゾ・ジャーナリズム」というムーブメントから借りています。そもそもの発案者はハンター・トンプソン(ジャーナリスト・作家)とされているんですが、「めちゃくちゃな」というスラングから来ているらしいこの単語を援用した手法は、従来の「客観的」だとされていたジャーナリズムとは正反対の「主観的」な判断で取材が進んでいき、対象すらもあやふやになるという、ジャーナリズムの「領域」を内側から喜々として破壊するようなものに僕には見えました。

さらに「gonzo」の手法は写真やポルノにも応用されていき、リテラシーが高いとされる様々な表現手法が「gonzo」によって引きずり降ろされたんです。特に「ゴンゾ・ポルノグラフィー」と呼ばれるものでは、従来は作品に必須とされていた「物語」に性器のアップの映像が取って代わり、カメラは男優の手持ちへと変化した。すると、これまで何かを語る際に疎外されてきていたような出来事も、すべて含んで語る事が可能になったわけなんです。

こうした映像感覚も含めて、このムーブメントには大きな影響を受けています。文法的にいえば「gonzo contact」が正しいのですが、リズムが悪いのでひっくり返しました。間違った英語を真顔で使ってみるのも、昨今では大切な事だと思っています。

─また、パフォーマンスの際にオブジェとカメラを使われますが、それはどうしてでしょうか?

塚原:インスタントカメラとペットボトルは必需品なんですが、なくてもOKのような気もしています。その他に使うものがあるとすれば、たまたまそこにあったから。

ただカメラに関しては、パフォーマーを撮影するのは一番近い人がふさわしいと思っているので、お互いを撮り合うようになりました。この映像のことは、誰が撮影するものよりも真実だと信じている事から、gonzoの哲学を引用して「the first man narrative(歴史上初の説明的な野郎)」と呼んでいます。これまで撮った映像が大量にあるので、全てをまとめて展示する所を探しているところです。

始まりと終わりが明確ではない「子どもの遊び」のようなパフォーマンス

─当初、ダンスの界隈というより美術界で活躍され始めましたが、その経緯を教えてください。

塚原:コンテンポラリー・ダンスと呼ばれるものがそんなに「めちゃくちゃな」ものを求めているように思えなかったんです。自分たちとしては喧嘩を売っているつもりが、誰も買ってくれなかったり…。そんな時、吉原治良賞記念アートプロジェクトという企画が作家を募集していて「好きにやれそうだな」と感じたんです。まだほんの数年前のことですが。おかげでフィンランド遠征が実現し、ヘルシンキで核シェルターや地下道を徘徊したり、北極圏の森では狭いテントで極貧キャンプをしたりしました。メンタル的にはハードでしたけど、すごく楽しい経験でしたね。

殴り合う果ての関係性 contact Gonzo インタビュー

─パフォーマンスの始まりと終わりはどうやって決めているんですか?

塚原:決めているというよりも、メンバーがそれと「分かる」感じです。子どもの遊びがいつ始まり、いつ終わるのかあやふやだという感覚に近いかもしれません。「これ以上、鬼ごっこはもう成立しないゾ」と分かってしまう、ルールが終わるあの瞬間です。理想的にはそういう形にしたいんですね。去年くらいまでは17、18分のパフォーマンスでしたが、現在は21、22分になっています。

─ちなみに、激しくもみあっているうち、喧嘩の「本気スイッチ」が入ってしまうことはないんですか?

塚原:僕は喧嘩の「本気スイッチ」というものをそもそも持っていないので、大丈夫です。他のメンバーも似たような感じではないでしょうか。殴り合っているのは事実ですが、バンドが演奏をするように、異なる楽器を使って何かを作っているのだと思います。

殴り合う果ての関係性 contact Gonzo インタビュー

─観ていると、ギリギリのところでダンサブルになっているところが胸のすく思いがするんですね。その絶妙のタイミングは、どうやって生まれるんでしょうか?

塚原:予期せぬ出来事を、僕らや観ている人たちがダンサブルだと「解釈」した時にそう見えるのかもしれません。予期せぬ出来事は、いつも絶妙のタイミングで起こりますが、人間の意図とは無関係に起こっている出来事をどう一連の物語として認識するか、という感性に頼っているんだと思います。

─なるほど。ところで、作品中に音楽を使わないことが多いのはなぜなんでしょう。

塚原:作品の終わりにそれらしい曲がかかり、暗転するという展開に飽き飽きしたからでしょうね。と、いうのは冗談でして、尊敬するミュージシャンとも対等に、もしくは共に戦うために、著作権物をスピーカーから流す事はしないようにしているんです。「その音はどこから聴こえてくるんだ」とかツッコんでしまいそうで…。何かしらのメタファーをこちらから提示する事はない、ということでもあるのかもしれません。それに、特に僕らのようなパフォーマンスは、音楽ひとつで特定の方向性やある種の物語に誘導されてしまうので、基本的には使わないようにしています。

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イベント情報

『あいちトリエンナーレ2010 / Aichi Triennale 2010』

contact Gonzo パフォーマンス日程

『non titled』

2010年9月18日(土)16:00 特別共演:梅田哲也(あいちトリエンナーレ2010参加アーティスト)
2010年9月19日(日)17:00
2010年9月20日(月)15:45 特別共演:姫野さやか(にせんねんもんだい)
会場:愛知芸術文化センター
(搬入口B) 料金:無料(要整理券)
定員:100名
※整理券は、愛知芸術文化センタープレイガイドにて、公演当日の10時から公演開始の15分前まで配付(定員に達し次第終了)。定員に余裕のある場合は、配付終了後も会場入口にて直接受付

プロフィール

contact Gonzo

2006年にダンサーの垣尾優と塚原悠也が開発・命名したメソッドの名称。人と人との間に起こる「接触」というシンプルな物理現象に起因する様々な瞬間的な事象を通し、自らにとっての「世界の仕組み」を紐解こうとする方法論。一見するとただの殴り合いのようで、時に洗練されたダンスのような優雅な動きも垣間見える特異なパフォーマンスの模様は、「YouTube」などのメディアを使って即時的に発表される。現在、大阪を主な拠点として活動。

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