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石野卓球が語る『WIRE』とクラブシーンの今

インタビュー・テキスト:柴那典 撮影:西田香織(2012/08/10)

8月25日(土)、横浜アリーナにてテクノフェスティバル『WIRE12』が開催される。国内最大級の屋内レイヴとして、またダンスミュージックファンにとっての夏の終わりの風物詩として、今年で14回目を迎えた『WIRE』。デリック・メイなどシーンの代表格からフレッシュなメンツまでが揃い、また電気グルーヴの4年ぶり出演やY.SUNAHARA=砂原良徳の初出演も話題を集めている。

今や日本国内だけでなく、海外のDJやアーティストにも高い知名度を誇るという『WIRE』。オーガナイザーの石野卓球は、DJとして世界各国でプレイしてきた経験も持つ。そこで、今回のインタビューでは、「海外や日本のクラブシーンの今」というテーマをもとに、様々な切り口から話を訊いた。90年代から現在に至るまでクラブシーンの現場に居続ける彼は、その変遷と、そしてそこにある魅力の本質をどう捉えているのか。そういう話ができたのではないかと思う。

PROFILE

石野卓球
89年にピエール瀧らと電気グルーヴを結成。95年には初のソロアルバムをリリース、この頃から本格的にDJとしての活動もスタート。99年からは大型屋内レイヴ"WIRE"を主宰し、海外のDJ/アーティストを日本に紹介している。今年7/4には、99年から11年までに「WIRE COMPILATION」に提供してきた楽曲と、未発表曲、初CD化音源などを集めた「WIRE TRAX1999-2012」をリリースした。
Takkyu Ishino Official Web Site

ヨーロッパではクラブが風俗じゃなくてカルチャーとして捉えられてる。そこはやっぱり違いますよね。

―今回は『WIRE』に関してのお話と、海外や日本の「クラブシーンの今」というお話をお伺いしたいと思ってます。インタビューを拝見すると『WIRE』について「今年のおすすめは?」とか「見所は?」と訊かれて卓球さんが困っているというやり取りがよくあって。

石野:そう、14年間ずっとそれを続けてる(笑)。一番困るのは「じゃあ最後に各アーティストの説明を」っていう質問なんだけどね。

―そういう話にはしないつもりです。そして、いろいろな場所で「来年も『WIRE』があるかどうかわからない」と、毎年言っていますけれども。これも、本心なんですよね。

石野:もちろんですよ。今年にしたって、集客次第では来年できるかどうかわからない。別に危機感をあおっているわけではないんですけど。特に去年は今までの中で一番大変だったかな。景気も良くないから。

石野卓球
石野卓球

―卓球さんは世界中でDJをされていると思うんですが、日本に暮らしていると、海外のクラブシーンと日本の温度差がわからないところがあるんです。たとえばロンドン五輪でUnderworldが音楽監督をやっていたり、海外ではダンスミュージック全般の地位がここ最近どんどん高くなっているような印象があって。

石野:アテネ五輪もTiestoがやってたよね。まあ、特にヨーロッパではクラブが風俗じゃなくてカルチャーとして捉えられてるから、そこはやっぱり違いますよね。もちろん日本でもカルチャーとはされているけど、世の中にはやっぱり風俗的な捉え方をする人が圧倒的に多いわけで。

―そういったクラブがカルチャーとして根付いているような場所でDJをされてきて、肌で温度の違いを実感することはありますか?

石野:やっぱり、やってて楽しいですよね。あとは、最近は中国に行くことが多いんですよ。中国は中国でシーンがすごく新しいので、ヨーロッパみたいな成熟した感じではないんだけど、成長過程にある感じがすごく楽しい。エネルギッシュで景気もいいし、華やかな感じ。ちょっと感じは違うけど、バブルのときの日本みたいな勢いがあるっていうか。クラブに限らず国全体のムードが冬と夏ぐらい違うような。

―ヨーロッパ、アジアなど世界各地のクラブシーンの中で、日本ならでの特徴ってありますか?

石野:やっぱり音楽を熱心に聴く人が日本は多い気がするな。オタク的と言うと語弊があるかもしれないけど、音楽を消耗品としてではなく、研究熱心に楽しんでる。他の国でも音源を買い集めているような人もいるけど、やっぱ日本は圧倒的にそういう人が多い。ただ、そこに行きすぎちゃうと、感覚的に楽しむのを忘れがちになってしまったりするから。一時期はそれが強すぎてちょっとやだなあと思ってたときもあったけど、今となってみると、そういう国民性は、バランスさえとれていればすごくいい部分なのかなと思う。

―『WIRE』の公式ホームページでも、アーティストごとにきっちりとした紹介文があって、SoundCloudでそのアーティストの音源が聴けるようになっていますよね。そういうところも、日本の国民性に即したところなのかなって思いました。

石野:そうそう、日本人って、ああいう風にカタログにするの、得意じゃないですか(笑)。ドイツ人と日本人ってそうだよね。

―ドイツもそういうところあるんですね。国民性が近いという。

石野:ドイツ人もかっちりしてますよね。レコード屋さん見るとよくわかりますよ。商品管理がすごい。で、ドイツのレコード屋さんって店に置いてある商品はサンプルで、レジに持ってくと奥から在庫を引っ張って出してくるっていうやり方なんです。それって完璧な商品管理ができてないとできない形態じゃないですか。あの人たちもファイリングとか好きなんですよね。


2/4ページ:最初のころはアンセム的なものを自分で意図的に作ってたんですけど、途中からそれをやめて。

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