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MOVIE

北野武が語る「暴力の時代」

インタビュー・テキスト:柴那典 撮影:西田香織(2012/10/03)

北野武監督の最新作『アウトレイジ ビヨンド』が、10月6日(土)に全国公開される。とても衝撃的な、そして非常に重みのある一作だ。ベネチア国際映画祭でも、受賞こそ逃したものの、現地のイタリア人からは「最高傑作」という声もあったという。以下のインタビューで北野武監督自身が語る通り、バイオレンスエンターテイメント映画の文法自体を更新し、新しい時代の表現方法を開拓するような一作。そして明らかに、震災以降の日本の社会のムード、そして世界各地で様々な社会の綻びが明らかになっている今の時代の空気と呼応しあうような作品になっている。

「巨大暴力団同士の熾烈な抗争を舞台に、悪人同士の壮絶な権力争いを描いたバイオレンスエンターテイメント映画」という本作。映画を観終わった後に強く印象に残るのは、ひたすら繰り返される暴力と死のあり様だ。前作ではオリジナリティーのある「痛み」の描写が評判を集めたが、それとも違う、ピュアな暴力だけが切り取られたような2時間弱になっている。

東日本大震災の直前に構想が発表され、その後震災の影響で制作開始が1年延期となった本作。ベネチア国際映画祭の記者会見で、北野武監督は「震災後の1年間は、逆に自分は憤りを感じている部分があった。世間では、『絆』『愛』『支え』とか、表面的なものばっかりでイライラした。こういうときこそヤクザ映画を撮ってやろうとやる気が起きた」と語っていた。その言葉の真意はどこにあるのか? そして監督は今の時代をどう見ているのか? こちらの質問に対して、とても深く、鋭い考えを語ってくれた。

PROFILE

北野武
初監督作は、主演も務めた『その男、凶暴につき』(89)。以降『3-4×10月』(90)、『あの夏、いちばん静かな海。』(91)、『ソナチネ』(93)、『みんな〜やってるか!』(95)、『キッズ・リターン』(96)と続けて作品を世に送り出し、『HANA-BI』(97)は第54回ベネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞した他、国内外で多くの映画賞を受賞、評価を不動のものにした。その後、『菊次郎の夏』(99)、日英合作の『BROTHER』(01)、『Dolls(ドールズ)』(02)に続き、『座頭市』(03)では自身初の時代劇に挑戦し、第60回ベネチア国際映画祭で銀獅子賞(監督賞)を受賞。その後、芸術家としての自己を投影した三部作『TAKESHIS'』(05)、『監督・ばんざい』(07)、『アキレスと亀』(08)を監督。前作『アウトレイジ』(10)は、キャストを一新して臨んだ「全員悪人」のバイオレンス・エンターテイメントとして大ヒットを記録。本作『アウトレイジ ビヨンド』は、その続編となるが、続編製作は監督自身初めての試みでもある。
オフィス北野

背中でものを言うなんて時代じゃねえんだ

―『アウトレイジ ビヨンド』、約2時間の本編中で一体何人の方が亡くなっているのかを数えたんです。そしたら40人以上、平均して約3分に1人死ぬ計算でした。

北野:(笑)。へえ、そうか。

―非常にスピード感があり、そしてあっけなく沢山の人が亡くなる映画でもあるという印象でした。余韻とか間のようなものがバッサリと切り落とされているように思ったんですけれども。

北野:前作の『アウトレイジ』は暴力シーンのことばっかりが話題になって、ちょっと考えさせられたんだよね。「あの殺し方がすごかった」とかが多くて、ストーリーの話をあんまりされなかった。だから、今回はストーリー重視で、ジェットコースターに乗ってるように、観てる人が「うわ! うわ!」って言ってるうちに終わるようなものに仕上げた。裏切りもあるし、編集でも意図的に間を詰めて言葉数を増やしたり、いろんな意味でエンターテイメントに徹してると思うよ。


©2012「アウトレイジ ビヨンド」製作委員会
©2012「アウトレイジ ビヨンド」製作委員会

―台詞も多いし、ストーリーの密度も濃いものになっている。

北野:そう。言葉数が増えると、今度は引きの画がなくなってくるんだよね。役者が普通にただ立ってるだけっていうシーンもなくなって。引きの画は唯一車が走ってるところぐらいで、あとは全部切り返しの画になる。1年間の撮影延期中、台本をいじってるうちに、じゃんじゃん台詞や登場人物も増えて。撮影時は役者さんたちにはかなり早く喋ってもらうようにしたね。


北野武
北野武

―今回の作品は、編集に強い意図があったように感じました。作家の樋口毅宏さんが今作について「アダルトビデオに喩えるならセックスシーンだけを編集して次々と見せているような感じ」と仰っていて。

北野:うんうん。

―その感想には僕もなるほどと思わされたんですが、そういった編集の意図には、どういうものがあったんでしょうか?

北野:基本的に、役者さんは自分の間があるんで、なかなか台詞をかぶせてくれない。関西弁と関東弁の罵り合いのシーンで、最後にうわーっと盛り上げようと思ってたんだけど、やっぱり間ができてしまう。だから、現場では台詞のスピードを上げてもらいつつ、編集で間を詰めた。想像していた罵り合いにするには、相当苦労したね。だから実際の間じゃないんだよ、あれ。1人が台詞を喋ってるうちに、もう1人の台詞を重ねてるんだよね。すごく手間がかかった。



―ほんとに細かく間を詰めてるんですね。

北野:うん、詰めてる。ただ、そうすると、動きが合わないときがあるのね。そういうときは撮影後に録音し直してる。つまり、実際には現場で発声されていない声も入ってる。だから、ほんとに編集が大変だった。面白かったけどね。


©2012「アウトレイジ ビヨンド」製作委員会
©2012「アウトレイジ ビヨンド」製作委員会

―監督は先ほど「エンターテイメントに徹している」と仰いましたよね。今言われたような編集で間を詰めるということと、エンターテイメント性というものは、監督の中では繋がっているものなんでしょうか?

北野:うん。結局今の時代ってさ、テレビを観てても、お笑いの奴が喋ってる言葉がわざわざ吹き出しテロップで出てくるじゃない? 耳の不自由な方は別だけどさ、「え? そこまで丁寧なの?」っていう感じがあるんだよね。そういう時代だから、後姿や背中でものを言うなんて時代じゃないのかな、って思うよね。

―なるほど。

北野:登場人物が相手をじっと睨んでて、映画を観てる人に「あ、こいつ絶対復讐を考えてんだな」なんて思わせるような間を作ることができなくなってきてる。「てめえ、殺すぞ」って言った方がいい。特に『アウトレイジ ビヨンド』では登場人物も多いし、ストーリーも入れ込んでるから、喋らせないと映画が長くなって収まり切らないし。これまでのような間を作ってると、前編・後編にしないとちょっと収まらないかなっていう。


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