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鏡よ鏡、滑稽なのはだあれ? 吉澤嘉代子インタビュー

鏡よ鏡、滑稽なのはだあれ? 吉澤嘉代子インタビュー

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:田中一人
2013/05/31
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「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだあれ?」。王妃が問いかけると、魔法の鏡はこう答えた。「それは白雪姫です」。嫉妬に狂った王妃は魔女に扮して白雪姫に毒リンゴを食べさせるも、最終的に白雪姫は王子様と結ばれ、王妃はひどい結末を迎える……。「魔女」や「鏡」がキーワードになった吉澤嘉代子の取材を終えて、僕は誰もが知っている『白雪姫』のストーリーを思い出した。周りとコミュニケーションをとるのが苦手で、「魔女になりたい」と修行に励んだ少女は、運命的な音楽との出会いをきっかけに、自らも音楽を作ることを志す。

コンテストでのグランプリ受賞から、デビューに至るまでの3年間が凝縮されたミニアルバム『魔女図鑑』には、どこかレトロな雰囲気と、可愛らしさ、さらには女子ならではの妄想力をたっぷり含んだ、実にユニークな6曲が収録されている。そして、吉澤は「聴いてくれる人が入れる隙間を残したい、曲に自分を投影してほしい」と繰り返し語ってくれた。そこで、だ。もしも王妃が魔法の鏡ではなく、吉澤の曲に自分を投影して、自らの滑稽さを受け入れることができていれば……。そうすれば『白雪姫』の結末は、もう少し違ったものになっていたかもしれない。我ながらずいぶん飛躍した妄想だとは思うのだが、こんな風にイマジネーションを喚起してくれるのも、彼女の音楽の大きな魅力なのだ。

5歳ぐらいのときに「もう5年も生きちゃったんだ」って思って。

―吉澤さんの楽曲はまず歌詞が独特だなって思いました。小さい頃から本を読むのがお好きだったそうですね?

吉澤:よく読んでいました。違う世界を味わえるというか、特に現実と妄想の狭間を行き来するような作品が好きでした。

―まさに、吉澤さんの歌詞もそういったものになっていますよね。どんな作家さんの本がお好きだったんですか?

吉澤:いしいしんじさんの本が好きで、“ぶらんこ乗り”っていう曲は、いしいさんの本からタイトルをつけました。あとは舞城王太郎さんとか、姫野カオルコさんとか。すごく客観視していながらも、「そこまで飛んじゃう?」っていう感じにグッと掴まれます。

―実際に、ご自身でも何か書いたりしていたんですか?

吉澤:小学生の頃から歌詞みたいなものは書いていました。文章にするのが好きだったというか、それによって自分を保ってるようなところがあって。あんまり上手くおしゃべりができる子どもじゃなくて、思ってることを言おうとすると、すぐに泣いちゃうような感じだったので……。「もっと上手く伝えたいのに」っていう気持ちがあったんだと思いますね。

吉澤嘉代子
吉澤嘉代子

―じゃあ、誰かに見せるために書いていたわけじゃなくて、書くことで気持ちを整理してたような感じ?

吉澤:そうですね。革のトランクがあったんですけど、そこに言葉をしたためたノートや紙切れを入れて、鍵をかけてました(笑)。小学校3年生から中学校1年生ぐらいまで、そういうことをしてたと思うんですけど、この間中を見てみたら、割りばしとかも入ってて(笑)。

子どもの頃に「言葉」を入れていた革のトランク
子どもの頃に「言葉」を入れていた革のトランク

―小さい頃って、自分の宝箱みたいの持ってましたよね。普通女の子はお人形さんとかを入れてると思うけど、それが吉澤さんの場合は「言葉」だったのかな。

吉澤:そうですね。宝箱ですね……宝カバン(笑)。

―(笑)。歌うことも好きだったんですか?

吉澤:はい、小さい頃から歌を作ったりもしてました。でも、小学校2年生ぐらいのときに、山崎まさよしさんの歌を自分で録音して聴いてみたら、すごく下手くそだったんです(笑)。

―初めて自分の声を客観的に聴いたときって落ち込むよね(笑)。

吉澤:自分のことを大人だって3歳ぐらいから思ってたから、「どうしてこんな子どもみたいな声なんだろう?」と思って(笑)。だからすごくショックで、「歌を歌う人にはなれないな」って、そのときは思いましたね。

―学校の音楽の授業は好きだったんですか?

吉澤:学校にはほとんど行ってなかったんです。幼稚園の頃から休みがちだったんですけど、小学校5年生ぐらいからまったく行かなくなって、中学校を卒業するまで行かなかったんです。その期間が自分と向き合う時間になったというか……なっていてほしいなって思うんですけど。当時は「自分はいつまで生きていられるんだろう?」って思っていて、年をとるのがものすごく怖かったです。

―何が原因だったんでしょうね?

吉澤:何ですかね……? 5歳ぐらいのときに「もう5年も生きちゃったんだ」って思ったし、10歳になるときも「もう二桁も生きてしまった」って。だから「いかに今の状態で留まることができるんだろう?」って考えてました。

―思春期特有の疎外感みたいなものって誰しも多かれ少なかれ感じると思うんですけど、吉澤さんの場合はそれともちょっと違う感覚かもしれないですね。

吉澤:自分が女性になっていく恐怖がすごくあったんですよね。ものすごく潔癖だったというか、自意識が過剰で。学校に行かないことに対しても、親に申し訳なかったし、すごくいろいろな気持ちがあったんですけど、でもどうしても行けなかったんですよね。

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イベント情報

『インディーズ1st mini Album「魔女図鑑」リリースパーティー〜吉澤嘉代子、ただいま魔女修行中。〜』

2013年6月5日(水)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 Shibuya duo MUSIC EXCHANGE
出演:
吉澤嘉代子
黒沼英之
関取花
野上智子
料金:前売2,500円(ドリンク別)

リリース情報

吉澤嘉代子<br>
『魔女図鑑』(CD)
吉澤嘉代子
『魔女図鑑』(CD)

2013年6月5日発売
価格:1,500円(税込)
YMPCD-6

1. 未成年の主張
2. 化粧落とし
3. 恥ずかしい
4. らりるれりん
5. 泣き虫ジュゴン
6. ぶらんこ乗り

プロフィール

吉澤嘉代子

1990年埼玉県川口市生まれ。鋳物工場街育ち。父の影響で井上陽水を聴いて育ち、16歳から作詞作曲を始める。2010年11月、ヤマハ主催のコンテスト“The 4th Music Revolution”JAPAN FINALに出場し、グランプリとオーディエンス賞をダブル受賞。2013年6月5日、インディーズ 1st mini Album「魔女図鑑」発売。

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