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なぜ東博なのか? 細田守『時をかける少女』を今上映する理由

なぜ東博なのか? 細田守『時をかける少女』を今上映する理由

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:高見知香
2014/09/11
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2006年に公開されたアニメ映画『時をかける少女』は、映画監督・細田守にとって大切な映画だ。13本のフィルムにより、初週わずか6館の小規模公開で始まった同作は、口コミなどの効果で上映館は延べ100館以上に拡大。40週間という、映画としては異例のロングラン上映を達成した。その後に続く『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』の成功からすれば、当然の結果と今なら言えるかもしれないが、細田監督にとって『時をかける少女』は紛れもない転換点の映画だったのだ。

そんな同作に登場するキーアイテムに、何百年も前の歴史的な戦と飢饉の時代に描かれたとされる絵『白梅ニ椿菊図』がある。主人公の少女と運命の少年を引き合わせるきっかけとなるその絵は、上野にある東京国立博物館に収蔵された作品という設定で、劇中にも同館をモデルにした風景が登場している。

さて、その東京国立博物館で、10月10日と11日の2夜にわたり『時をかける少女』の野外上映が開催される。初日には、同作のプロデュースを担当した渡邊隆史、齋藤優一郎らが出演するトークショーも行われる。同イベントを記念して、今回渡邊にインタビューする機会を得た。プロデューサーの役割、『時をかける少女』制作時のエピソード、同作において博物館が舞台になった本当の理由など、今だからこそ聞きたい話が盛りだくさんのインタビューをお届けする。

[メイン画像]『時をかける少女』メイン画像 ©「時をかける少女」製作委員会2006

※本記事は『時をかける少女』のネタバレを含む内容となっております。あらかじめご了承下さい。

僕にとって今回の野外上映は、『時をかける少女』の劇中に登場する絵画『白梅ニ椿菊図』を描いた、平田敏夫さんの追悼でもあるんです。

―10月に『時をかける少女』(以下『時かけ』)の野外上映が東京国立博物館で開催されます。どのような経緯で今回の上映は実現したのでしょうか。

渡邊:『時かけ』を観てくれた皆さんは「なるほどね!」と頷いてもらえると思いますが、主人公の真琴のおばさんが修復師として勤務するのが東京国立博物館という設定なんです。そういう結びつきもあって、今回の上映を博物館の方からご提案いただいて、私たちにとってもようやく里帰りをするような気持ちです。ですが、取材にお答えする前にお話したいことがあります。じつは8月25日にアニメーション監督の平田敏夫さんが亡くなられたんです。

『時をかける少女』作中画像(博物館執務室) ©「時をかける少女」製作委員会2006
『時をかける少女』作中画像(博物館執務室) ©「時をかける少女」製作委員会2006

―虫プロダクションやマッドハウスで多くのアニメーションを作られた方ですね。

渡邊:そうです。『時かけ』でも平田さんは非常に重要な仕事をされていて、劇中に登場する『白梅ニ椿菊図』という何百年も前の歴史的な戦と飢饉の時代に描かれたとされる設定の絵を描いていただいたんです。『時かけ』は、主人公の真琴が未来からやって来た千昭という少年と恋におちる物語です。その千昭が危険を冒してまで未来から現代に来る理由が、そのたった1枚の絵だったわけで、これを誰に描いてもらうかは作品の大きな核でした。まず、もちろん技術的に上手い人。それからアニメーションの特質を理解して、演出意図を把握してくれる人に描いてもらいたい。そこで名前が上がったのが平田さんでした。金沢美術工芸大学出身の細田監督にとっては、武蔵野美術大学の西洋画科出身の平田さんとは美術の話で相通じる部分があったんだと思います。

―実際、劇中に登場する『白梅ニ椿菊図』はとてもリアルに描かれています。洋画出身の平田さんですから、日本の絵を描くのはご苦労されたのではないでしょうか?

渡邊:細かいことは細田監督本人でないとわからないですが、あの絵は一見水彩画のように見えるけれど、たしか日本画の顔料を使って描いているはず。平田さんと細田監督が、本当にはつらつと絵の話をしていた光景は今でもよく覚えていますね……。

渡邊隆史プロデューサー(角川書店)
渡邊隆史プロデューサー(角川書店)

―そうすると、渡邊さんにとって今回の上映は平田さんへの追悼という一面もあるわけですね。

渡邊:はい。インタビューの場をお借りしてしまって恐縮ですが、心よりお悔やみ申し上げます。

徳間時代の上司がスタジオジブリの鈴木敏夫さんで、『風の谷のナウシカ』で宮崎駿さんとタッグを組むようになったのを直に見て「いつかは俺も!」と憧れていました。

―渡邊さんが初めてアニメーションのプロデュースを手掛けられたのも『時かけ』だと伺いました。さまざまな意味で思い出深い作品だと思うのですが、同作に関わるきっかけはなんだったんでしょうか?

渡邊:私はプロデューサーになる以前から、ずっとアニメ周辺の仕事をしていたんです。学生の頃は徳間書店のアニメ雑誌『アニメージュ』のライターをしていて、卒業した後は徳間ジャパンというレコード会社で『となりのトトロ』や『風の谷のナウシカ』の関連CDのディレクターをやって。その後、再び『アニメージュ』に戻って編集長として働いて、現在の角川書店に移ったのは40代の頃で、今度は『ニュータイプ』というアニメ雑誌の編集長をやっていました。

―ずっとアニメ漬けの生活。

渡邊:そうですね(笑)。でも、若い頃からライターや編集者としてアニメーション制作の現場を外から見ていて、やっぱり現場に直接関わりたいという気持ちがずっとあったんです。徳間時代の上司がスタジオジブリの鈴木敏夫さん(『アニメージュ』の編集長からスタジオジブリへ移籍、プロデューサーとなった)で、『風の谷のナウシカ』で宮崎駿さんとタッグを組むようになったのを直に見て「いつかは俺も!」と憧れていました。そんなときに若い頃から交流のあったマッドハウス(りんたろう、川尻善昭や今敏監督作品で知られる制作会社)社長の丸山正雄さん(当時)から、「細田監督で『時かけ』を劇場アニメ化する企画があるんだけど、乗らない?」っていう話をいただいて。以前から「いつかは映像をやりたいです」と私が言っていたのを丸山さんが覚えていてくださったようなんですが、細田監督で『時かけ』をやると聞いたら、それはもうやるしかないぞ、と。

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イベント情報

『博物館で野外シネマ』

2014年10月10日(金)、10月11日(土)
会場:東京都 東京国立博物館 本館前
時間:19:00~
上映作品:劇場版アニメーション『時をかける少女』
料金:無料(当日の入館料が必要)
※雨天時は平成館大講堂で開催(先着380名)

『時をかける少女』制作秘話スペシャルトークショー
2014年10月10日(金)18:30~19:00
会場:東京都 東京国立博物館 本館前
出演:
渡邊隆史(角川書店プロデューサー)
齋藤優一郎(スタジオ地図プロデューサー)
松嶋雅人(東京国立博物館特別展室長)
料金:無料(当日の入館料が必要)
※雨天時は平成館大講堂で開催(先着380名)

プロフィール

渡邊隆史(わたなべ たかし)

栃木県宇都宮市出身。徳間ジャパンでアニメ音楽ディレクターを経て、徳間書店『アニメージュ』5代目編集長、『Gazo』編集長、角川書店『ニュータイプ』編集長、『特撮ニュータイプ』編集長を経て、映像プロデューサ-。細田守監督作品『時をかける少女』『サマーウォーズ』『おおかみこどもの雨と雪』を手掛けた。

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