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山奥で暮らす高木正勝が届ける、人生を変える「感じ方」の授業

山奥で暮らす高木正勝が届ける、人生を変える「感じ方」の授業

インタビュー・テキスト
柴那典
撮影:永峰拓也
2014/10/28
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高木正勝は、今、里山の小さな村に暮らしている。

生まれ育った京都の亀岡市からさらに田舎の山奥へと引っ越したのが、2013年の夏のこと。見渡す限りの自然に囲まれた環境の中で、古民家を少しずつ改築したり、自ら畑を開墾して野菜を作ったりしながら、日々の暮らしを営んできた。地元の人たちともすっかり顔馴染みになったという。まるで、自身が音楽を手がけた映画『おおかみこどもの雨と雪』の主人公・花と同じような生活だ。そんな毎日を送りながら、トヨタやJR東海、JALなど多数のCM音楽、数々の映画やドラマのサウンドトラックを手がけてきた。

2年ぶりにリリースする2枚組のアルバム『かがやき』には、そんな彼の今の暮らしがそのまま刻み込まれている。DISC1は彼が暮らす山奥の村の様子を映すドキュメンタリーのような1枚。地元のおじいさんやおばあさんと一緒に歌ったり、鳥のさえずりの中でピアノを弾いていたり、蝉が鳴いていたりする。そして、DISC2には、スタジオジブリを追ったドキュメンタリー映画『夢と狂気の王国』とNHKのドラマ『恐竜せんせい』に書き下ろしたオリジナルサウンドトラックの楽曲が収録されている。

なぜ高木正勝は山奥の暮らしを選び、そこでの自然や人々の息づかいを記録しようと思ったのか? 「ものの見方が全く変わってきた」と語る彼に、今、見えるものを訊いた。

「気楽な感じ」ってなかなかCDにならないですよね。僕はそっちがいいなって思うんだけど。

―今は京都と兵庫の県境くらいにお住まいなんですよね。

高木:兵庫県ですね。村を出たら京都になります。

―Facebookで写真を拝見したんですが、すごいところですね。東京の暮らしとは違う時間が流れているような感じがしました。

高木:慣れちゃいましたけどね(笑)。ただ、引っ越した最初の日は「こんな山の中に住んでいいのだろうか?」って本当に怖かったです。今はむしろ、もっと奥地できわどい生活をしている人がたくさんいることを知ったんですけれど。

高木正勝が暮らす家の周辺風景
高木正勝が暮らす家の周辺風景

―引っ越してから、暮らしはどう変わりました?

高木:以前住んでいた亀岡は、田舎とは言っても新興住宅地で。その暮らしで嫌だった部分はほとんど消えていきましたね。たとえば、周りに同じような家があることや、隣の人と挨拶を交わさないこと、たくさん人がいるのに1人でポツンといるような感じがすること……。あと、車でスーパーに行って、店内のBGMを聴きながら同じような野菜を買い物をするたびに「毎日何をしてるんだろう?」と空しさを覚えることもありました。今は毎日のご飯を作るのに、村の人にいただいたり、農家の人たちがやっている市場に買いに行ったり、自分で野菜を育てたり。村には家が20軒くらいしかないのですが、ほとんど全員の名前や仕事を知ってるから、会うと必ず声をかけたりもします。

高木正勝
高木正勝

―なぜこんな話から訊いたかというと、今回のアルバムは、高木さんの暮らしのドキュメンタリーのような感じがしたんです。地元の方たちの歌や会話が入っていて、生活と音楽が強固に結びついているような感覚があった。なので、どうやって音楽を作ったかを訊くより、どんな暮らしをしているかを話していただくほうがより核心に迫れるんじゃないかと思ったんです。

高木:確かに、村に暮らし始めたことで、自分が昔から好きだった感じに近づいてきているなと思います。たとえば、村では集会のときや農作業の休憩時間に歌ったりする人がいるんです。そうすると他の誰かが「よっ! よっ!」って合いの手を入れ始めて盛り上がるのですが、歌詞がうろ覚えで「なんやったっけ?」と止まりそうになる。そうすると、周りの誰かが続きを少し歌い出して、「あっ、そうそう」と続きが歌えたりする。渾然一体、ぐちゃぐちゃなんです。主役がはじめから終わりまでずっと歌うことってめったにない。でもそういう気楽な感じってなかなかCDには残らないですよね。

―ポップミュージックからは削ぎ落とされてしまう部分ですよね。

高木:海外だとわりと売っているんですけどね。チベットの道端で録音された曲があって、はじめはお父さんが主役で歌ってるんですけれど、そのうちに「おい、お前も歌ってみるか?」と自分の子どもに話しかけるんです。そしたら子どもが張り切って歌い出してその曲の主役になっていくという。会話も空気も全部入っていて、映像を見ているような感じなんですね。そういう曲だと何回聴いても飽きないし、僕はそっちがいいなって思うんだけど。

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リリース情報

高木正勝<br>
『かがやき』(2CD)
高木正勝
『かがやき』(2CD)

2014年11月19日(水)発売
価格:3,600円(税込)
felicity / PECF-1102/3 cap-208

[DISC1]
1. うるて
2. おおはる
3. ととろきみづ
4. たにのはまべ
5. しらいき
6. おおはる - ぴあの
7. やまふろ
8. あまみず
9. I am Water
10. かみしゃま - 語り
11. せみよび
12. うたがき I
13. うたがき II
14. うたがき III
15. 育てなさい 火を熾しなさい 食べなさい 笑いなさい
16. うるて - はるのうち
17. かみしゃま
18. あげは - 合唱
19. ぬのふね
20. ゆきんこ
21. ももいろのほほ
22. くゎのはら
23. かみしゃま - 合唱
[DISC2]
1. よきにむかえ
2. うそひめ
3. 今より幼い私
4. りゅうびいしゃま
5. 彼の地にて
6. 彼の地にて - 同じ夢
7. はたはた
8. かえりしま
9. このち
10. 紡ぎ風 - 序曲
11. わたげわらべ
12. 風のワルツ
13. 雲はこび
14. ルンタ
15. 紡ぎ風 - だくぼくの道
16. あんのん
17. ユネワサ・アンギャ
18. 紡ぎ風 - 夢紡ぎ
19. 浮き雲
20. 渡る風の中
21. しやどり
22. 私は風を
23. 風花 - かぜのねあつめ
24. 風の生
25. 風花 - 春へ
26. たゆら
27. 父
28. 熱風
29. 友風歌
30. 紡ぎ風
31. 風花 - 暮れつ方
32. 風の家
33. 風花 - 終曲
※さとうみかをによるアートブック、“かみしゃま”ピアノ譜付き

プロフィール

高木正勝(たかぎ まさかつ)

1979年生まれ、京都出身。2013年より兵庫県在住。山深い谷間にて。長く親しんでいるピアノを用いた音楽、世界を旅しながら撮影した「動く絵画」のような映像、両方を手掛ける作家。美術館での展覧会や世界各地でのコンサートなど、分野に限定されない多様な活動を展開している。『おおかみこどもの雨と雪』やスタジオジブリを描いた『夢と狂気の王国』の映画音楽をはじめ、コラボレーションも多数。

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