ゆるふわリムーブインタビュー 23歳の悩みと不安のリアルな心情

2016年1月、ワンコインシングルとしてリリースした『透明な藍のようにe.p.』は発売9日間で完売。そのあとも、“泡になる前に”“モノローグ”“夢の記憶”の連続リリースがヒットし、「広島にゆるふわリムーブあり!」と知らしめた4ピースバンドが、いよいよミニアルバム『芽生』で本格的に全国に打って出る。

そんな彼らの音楽は、ソングライターでありギターボーカルの網谷直樹(自称:恋愛依存症!)が放つ、自ら脱出不可能なほどのネガティブな歌詞とヒリリとしたボーカルに、切なくも爽やかなサウンドが融合し、その二面性に不思議と共感してしまう。なぜ、彼らはそんなドツボな恋愛を歌ってしまうのか? 広島の音楽シーンの現状や、これからの彼らの意気込みとともに、ゆるふわリムーブを解剖してみた。

ゆるふわリムーブって、広島らしくないのかもしれないです。(高宮)

―最近、広島のゆるふわリムーブというバンドが、グイグイ来てるという評判を耳にします。それこそPerfume以降、広島はずいぶんおとなしい感じがしていたんです。

網谷(Vo,Gt):あぁ、そうかも知れないです。地元も「どうにか広島をもっとアツくしたい」って感じになっていて。日本全体のバンドシーンにガッと出てくる存在がいないなぁ、という話は僕らの周りでよく出ています。

左から網谷直樹、高宮蘭真
左から網谷直樹、高宮蘭真

―いまそう言うと、ズバリ、ゆるふわリムーブがそうなっていくぞ! というプレッシャーを自分たちに与えちゃってますけどね(笑)。

一同:(笑)

―どんな土地でも、シーンの歴史が培ってきたカラーがあると思うんですが、いまの広島の音楽シーンというのは、どういう雰囲気なんでしょうか? 大阪ならヘヴィメタルやハードロック系が昔から強いとか、京都は新しいトレンドを個性的に表現するバンドが多いとか、名古屋はスカコアなどのパンキッシュな音楽が強いとか。

網谷:結構バラバラですね。いまも広島で活動を続けているバンドは、本当にバラバラだと思います。

高宮(Dr):あまり「歌モノ」って言われるジャンルが少ないような気はしていて。どちらかっていうと、言葉は悪くなっちゃうけど、うるさい感じのものは多いかもしれない。ジャンル的には……メロコアとかロックンロールみたいなの、とか。

左から網谷直樹、高宮蘭真

―いま広島を拠点に活動しているリアルな感覚としてはそうなんですね。

高宮:だから、僕らの音楽とはちょっと違う。ゆるふわリムーブって、広島らしくないのかもしれないです。

―それが広島では頭ひとつ抜け出て、注目を集めた理由かも知れないですね。

高宮:長く続かないからバンドの個性が残らない、というのはありますね。高校生でバンドをはじめても、結局県外の大学に行っちゃう人が多いから、長くバンドが続かないんですよ。だから、広島のバンドシーンはなかなか盛りあがりづらいんだろうと思います。

網谷:僕がゆるふわリムーブを組んだのは、2013年10月の大学1年生の頃で、そもそものスタートが大学時代だったから、23歳のいまでも続けていられるのかなと思いますね。

名前のおかげで聴いてくれる人が増えてくれたので、変えるに変えれん状態で、ここまで来ちゃいました(笑)。(網谷)

―ゆるふわリムーブについて、まず聞きたいのはバンド名の由来ですよね。実際に曲を聴くと、まったくゆるふわしていない(笑)。

網谷:最初にバンド名がいるなと思ったときに、たまたまTwitterで「バンド名診断」のアプリを見つけて、メンバー一人ずつの名前を入れてやってみようとなったんです。そしたら、「やさしいベジータ」とか「やさしい乳首」みたいなのが出てきて、「それ、絶対使えんな!」って(笑)。それで僕の名前入れたら「ゆるふわリムーブ」が出てきて、ゆるふわをリムーブ(取り除く)って面白いって思って。

名前を付けたときのメンバーで残っているのも僕一人になったし、途中でバンド名を変えようかとも思ったんですけど、この変わった名前のおかげで聴いてくれる人がどんどん増えてくれたので、変えるに変えれん状態で、ここまで来ちゃいました(笑)。

左から網谷直樹、高宮蘭真

―高宮くんは、いつからメンバーに?

高宮:僕は2014年、大学の2年の9月ぐらいです。僕らはみんな広島の大学生だったんですが、みんな違う大学に通っていて。僕も別のバンドをやっていて、対バンしたのが最初の出会いですね。

―高宮くんは、ゆるふわリムーブの音楽を最初に聴いたときは、どう思ったんですか?

高宮:単純に、網谷の作る曲がすごくカッコいいなと思いました。キャッチーで覚えやすくて……そこがあんまり広島にない感じだなと。

曲って、歌メロを聴いてもらってなんぼだと思ってるんですよ。(高宮)

―「広島にない感じ」と聞くと、その音楽が網谷くんのどこから湧いてきたのかが気になります。23歳の若いソングライターは、なにをルーツミュージックにしてきたのかと。

網谷:根源にあるのは、中1で出会ったRADWIMPSですね。その前は、湘南乃風とか、やんちゃな中学生が聴きそうなのばっかりで。この話をすると、めっちゃみんなに驚かれます。

網谷直樹

―たしかに。湘南乃風感、まったくないですもんね。そこからRADWIMPSになぜ?

網谷:小中時代は野球部に入っていたんですけど、そこにインディーズバンド好きな人がいて、彼が「俺、ギターはじめるわ!」と言い出したんです。最初は、ピンとこなくてバカにしていて、どうせすぐ辞めるだろうと思っていたら、なぜか僕も一緒にギターをはじめることになっちゃって。

彼が「RADWIMPSやりたい」「なにそれ?」って聴いてみたら、最高で。そのあとは、indigo la Endとか。いつか対バンするのが夢でした。

高宮:僕はBUMP OF CHIKENですね。中学の文化祭で友達が「BUMPやりたい」「一緒にライブ出ようぜ」と言い出して、聴いたのが最初。“涙のふるさと”(2006年発表)の頃かな。

―20代前半のバンドマンにとって、BUMP OF CHIKEN、RADWIMPSって双璧な気がしますね。

網谷:でも、自分でバンドをはじめるようになったら、バンドのCDってあまり買わなくなりました。とくにRADWIMPSは、自分は意識してないんですけど、みんなに「似とる似とる」と言われた時期があったので、逆に聴かんようにしようと(苦笑)。

左から網谷直樹、高宮蘭真

―なるほど。ほかのメンバーのルーツってどうですか?

網谷:ギターの久保は、ギタリスト系のバンドですね。

高宮:SUGIZOとか。けっこうハードめなバンドをよく聴いているみたいですね。

網谷:ベースの本田は、わりと近代系で、売れてるバンドを聴いてる感じかな?

高宮:最近はTHE ORAL CIGARETTESをよく聴いてる気がする。

―好きなミュージシャンはどうですか? 高宮くんの好きなドラマーは?

高宮:サポートやスタジオをよくされている方なんですけど、河村“カースケ”智康さんです。椎名林檎さん、秦基博さんのバックもやってらっしゃるんですけど、その方の動画はよく見ています。僕が目指しているスタイルがまさに河村さんがやられている、バンドの音の底辺を支えるドラムなんです。

僕は、曲って歌メロを聴いてもらってなんぼだと思ってるんですよ。だから、自分もドラムが静かな曲しか聴かないし、歌メロを際立たせられるような、なるべくシンプルなドラムを心掛けていています。BUMPも、いったらそんな感じですよね。

このミュージックビデオでドラムを叩いているのが、河村“カースケ”智康

左から網谷直樹、高宮蘭真

一番幸せなときでも、勝手に最悪の想像をしちゃうんです。(網谷)

―さっきバンド名と網谷くんから出てくる音楽のギャップがあると言いましたけど、その「聴いてもらってなんぼ」の楽曲を手がけている網谷くんからは、とにかく孤独しか感じられないですよね。

網谷:僕はネガティブ思考すぎるんでアレなんですけど……ふふ(笑)。

―「ふふ」って笑いながら「自分はネガティブだ」と言う人も珍しいですけど(笑)。

網谷:思ったことを、そのまま歌にするタイプではあると思います。曲も恋愛系ばっかりなんですけど、曲を書くのは自分に好きな人がいるときなんですよね。そこでつい、「こうなったらイヤだな」「こうなったら自分はきっとこうなるんだろうな」っていうのをずっと書いている。恋愛に限らず、勝手に最悪の想像をしちゃうんです。一番幸せなときでも、逆を考えてしまう。

左から網谷直樹、高宮蘭真

―絶対、幸せになれないパターンじゃないですか。

網谷:野球でピッチャーやっていたときも、「これ、打たれそう」と思ったら絶対打たれるんですよ。中学校最後の大会も、次の試合のために僕は温存されていたんですけど、最終回で二番手だったピッチャーにヒットとフォアボールが続いていて、「よし、挽回するぞ!」と思って出ていったら、結局サヨナラ負けのパターンになって……。大会終わったあとも、一人で校舎の裏で泣いていました。

高宮:つらいなぁ。

網谷:だから、いまのバンドも「もしダメだったらどうなるんじゃろう?」みたいなことも、考えたりはします。

高宮:いかんですね、ちょっと(笑)。

網谷:うーん……失敗が怖いのかも知れない。失敗する前に、勝手に考えちゃうんで、人にはよく考えすぎって言われますね。

左から網谷直樹、高宮蘭真

―そんなドツボな話を、わりとにこやかに語っているのが網谷くんのすごさかなと思います。しかもその負のオーラを、そのまま歌にしてしまう。バンドメンバーはどういう心境なんですかね?

高宮:僕は網谷と違って、ポジティブ思考なんですけど、恋愛が上手くいかない曲にしても、やっぱりどこか共感できるところは多くて。例えば彼女がいたとして、いまは上手くいっていても、僕らがこうやって県外で活動している間、彼女がひとりになったら浮気するんじゃないかとか……そういうことは誰もが思うんじゃないかと思うんです。

あとは、僕の場合は曲全体への共感よりも、あるワンフレーズの言葉に共感することが結構あって。だから彼の曲にグッとくるんだと思います。

ひとりのときが結構つらい。だから、ひとりで曲を作るときにあふれ出ちゃうのかもしれない。(網谷)

―今回『芽生』を聴かせてもらって、収録曲の歌詞に感じたのが、<待って>たり<隠れたり>していることがじつに多い。わりと隅っこのほうに行きたがっていて、大切な人に去られるのをすごく怖がっているから、結局自分の孤独を噛みしめちゃっている。それも網谷くんのなかにずっとある要素なんですね。

網谷:それはあると思います。でも、普段は楽しそうにするんですよ。人といるときは大丈夫なんですけど、一人のときが結構つらい。だから、一人で曲を作るときにあふれ出ちゃうのかもしれない。

高宮:たしかに言いよったよね。前に彼女に振られたって話をしたときも、「みんなとおるときは元気なんだけどね~。一人のときはヤバい」って。

網谷:「自分がこうなりたくない」という方向に進んでいくので、それを自分自身が歌うのは、とても苦しい。そして、実際最悪な事態が訪れると、想像してたくせに「え? ヤバい」とうろたえちゃうんでしょうね。

―だからこそ聞きたいんですが、言わなくていいこと、人に伝えなくてもいいことまでも、なぜ歌にして、人前で表現するんでしょうか? 自己表現の方法がブログでも小説でも映像でもなく、なぜ音楽なのか、なぜ歌なのか?

網谷:頭のなかはいつもポップだけど、じつはこんなことも考えてるんだよ、ということを吐き出すのが、ある意味気持ちがいいというのもあります。だけど、なぜ歌なのか? というと……普段ネガティブな自分が出せないからだと思うんです。

僕、言葉だけで伝えるのはすごい苦手だし、特に大事なことは態度に出すのも照れちゃうんですよ。感謝の言葉を言うにしても、ちゃんと真意をこめて言えない。だから、自分のなかの本当の気持ちは詞にのせて歌うしかないんです。

左から網谷直樹、高宮蘭真

―歌なら本当の気持ちが言える?

網谷:歌なら言えます。詞だけだと、恥ずかしいから無理ですね。

高宮:僕も、同じことは感じます。実際言うのが恥ずかしいことでも、音楽なら伝えられたり、素直に聴けたりする。こうして話をしているトーンでしゃべったら鋭く突き刺さることも、歌にのせて言えばスッと聞き入れやすい。

だから、網谷が普段しゃべってくれないことも、歌詞として歌われると、グッと染み入るんです。だから、こいつの歌が好きだし、この歌を俺たちの演奏で支えて、ほかの人にも聴いてもらいたいって思えるんでしょうね。こいつは、前しか見えないタイプでもあるから。

網谷:前を見ながらさがっている感じで。

曲はネガティブだけど、バンド活動は希望にあふれているんですよ。(高宮)

―『芽生』を聴くと、いまの言葉に納得できます。曲はネガティブでも、それを包括する『芽生』というタイトルがすごく前向きなのも、ゆるふわリムーブらしい。

網谷:僕らの活動に対しても、どんどん広島から全国へ出ていこうぜという気持ちがありますね。メンバーも替わって、このアルバムを引っさげていろんなところをこれから回っていく。

収録曲も、僕らがいままで出してきたシングルを網羅しつつ、新しい曲を3曲入れて、ゆるふわの新しいスタートとしての『芽生』を感じてもらえたらと思っています。

ゆるふわリムーブ『芽生』ジャケット
ゆるふわリムーブ『芽生』ジャケット(Amazonで見る

高宮:僕らの曲はネガティブだけど、バンド活動に対して僕たちは希望にあふれているんですよ。「やってやろうぜ!」という意識は、じつはすごく高くて。

大学3年から4年にあがるときって、「音楽を続けるか? 就職するか?」みたいな葛藤ってありますよね。僕も結構考えた時期があったんですけど、その頃、網谷からLINEが来たんです、長文の。

高宮蘭真

―どんな内容だったんですか?

高宮:マイナスなことがひとつも書かれてなくて、これからも一緒にバンドやっていこう、高みを目指そう、というようなことでした。それにすごく背中を押されたんです。

まだそのときは、ただ自主活動をしている広島のインディーズバンドでしたけど、「イケるわ」って思ったんですよね。根拠があったわけじゃないですけど。彼の曲はすごくいい、でも彼だけだったら全国の人に曲を届けることはできない……でも僕らが一緒ならできるだろう。その気持ちは、いまも続いています。

―いまロックバンドがたくさんいて、ライバルも多いなかで、この先ゆるふわリムーブはどんな音楽を作っていきたいですか?

網谷:たしかにジャンル的に、似たバンドもあると思います。だからこそ、確立したいんです。「ゆるふわリムーブといえば」と言われるものを。

―現状だとそれはなんだと思います?

網谷:うーん……「ネガティブポップ」。歌詞は想いの丈を詰めてますけど、曲調は真っ暗にならないようにしているので(笑)。

高宮:そんな彼のありのままが伝わればいいと、僕らは思っています。別にネガティブでもいい。彼のポジティブな発想もネガティブな発想も、いろんなことが伝わればそれでいい。それが、ゆるふわリムーブらしさだと思うし、そんな彼の歌が広まるように、さらにここから頑張りたいですね。

左から網谷直樹、高宮蘭真

リリース情報
ゆるふわリムーブ
『芽生』(CD)

2017年6月21日(水)発売
価格:1,728円(税込)
EGGS-021

1. 夜を越えて
2. フラッシュバック
3. 夢の記憶
4. かくれんぼ
5. 泡になる前に
6. モノローグ
7. スカーレット

イベント情報
CINRA×Eggs presents
『exPoP!!!!! volume98』

2017年6月29日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
MONO NO AWARE
MUSIC FROM THE MARS
WUJA BIN BIN
クウチュウ戦
ゆるふわリムーブ
料金:無料(2ドリンク別)

プロフィール
ゆるふわリムーブ
ゆるふわリムーブ

Gt./vo.網谷、Gt.久保、Ba.本田、Dr.高宮による、広島を拠点に勢力的に活動中のフォーピースバンド。2015年8月度のMUSH A&R、MONTHLY ARTISTに選出され、同年12月にはスペースシャワー主催オーディションDay Dream Believerにて全国3569組より最終選考4組に残る。2016年1月20日にはタワーレコードFIRE STARTERレーベルよりワンコインシングル『透明な藍のようにe.p.』をリリースするも、発売より9日で完売。以降一年間の間にタワーレコードEggsレーベルより3枚のシングルをリリースしている。その楽曲の良さと、胸に刺さり、ときに包み込むようなVo.網谷の声を武器に、広島から全国へ挑戦し続ける。



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