“ルパン三世のテーマ”を生んだ大野雄二、現代の曲作りに物申す

アニメ『ルパン三世』をはじめ、映画『人間の証明』や『犬神家の一族』、NHK『小さな旅』のテーマソングなど、数えきれないほどの名曲を生み出してきた大野雄二が、2006年から始動させたバンド「Yuji Ohno & Lupintic Five」。最新作『UP↑with Yuji Ohno & Lupintic Five』は、そのタイトルが示す通り、御年73歳にして過去最高にアッパーな作品に仕上がった。擬似ライブ盤的に制作したという本作は、「合わせる」ではなく「合っちゃう」というシビれる演奏はもちろん、EGO-WRAPPIN’の中納良恵と、MISIAなどのツアーコーラスとして知られるTIGERをフィーチャーしたボーカル曲も鳥肌もので、大定番“ルパン三世のテーマ”での爆発は興奮必至! 本作についての話に加え、これまで100バージョン以上が生み出されている“ルパン三世のテーマ”についてや、20年間ピアノから離れたことでわかったというジャズの聴き方、「サビから作るなんてバカ野郎ですよ」という作曲論まで、大野雄二が100分にわたって応えてくれた最新インタビューをお届けしよう!

作曲家になる前はジャズピアニストだったので、もう作曲家を引退して、小さいところでピアノを弾こうと思っていたんです。

―まず大野さんの活動を整理するところから始めさせていただきたいんですけど、大きく分けて作曲家とプレイヤーの顔があって、プレイヤーとしては3人編成の「大野雄二トリオ」と6人編成の「Yuji Ohno & Lupintic Five」があるわけですよね?

大野:まぁ、わかりやすく言えば、主に小さい会場で演奏するときはトリオ、会館とか大きいところで演奏するのがLupintic Fiveですね。

大野雄二
大野雄二

―会場の規模に合わせて活動を?

大野:そうではないけど、トリオはちょっとマニアックになっちゃうんですよ。日本のジャズバンドのなかでは、かなりサービス精神旺盛だと思うんですけど、ピアノ、ウッドベース、ドラムだけの編成では、大きなところでやってもマニアックなリスナー以外には寂しく見えちゃうから。たくさんお客さんが入るところでは、トランペットやエレキギターがいるLupintic Fiveのほうがエンターテイメントとしてわかりやすいんです。もちろん、トリオでも大きいところでやることはありますけど。

―会場と、そこに集まる客層に合わせて、シンプルな形と華やかな形の使い分けをされているんですね。

大野:もっと言うとね、演奏する曲も全然違いますよ。Lupintic Fiveは『ルパン三世』の曲をたくさんやりますけど、トリオのライブではやらないときもあるから。それに、Lupintic Fiveだとピアノの比率が低いですけど、ピアノトリオの場合は全編にピアノが出てくる。トリオはアドリブだらけなので、ジャズのマニアックな人はそっちのほうが好きって言いますね。

―今回リリースのあるLupintic Fiveは2006年からの活動ですよね。もともと大野さんが作曲家を引退しようと思って、好きなジャズをやり始めたら盛り上がってきちゃったことが、結成のきっかけだという話を聞いたのですが。

大野:僕は作曲家になる前はジャズピアニストだったので、もう作曲家を引退して、小さいところでピアノを弾こうと思っていたんです。それで00年くらいからトリオバンドを始めたんですけど、なんとなく盛り上がってきちゃって、やめるにやめられなくなったんですよ。

―まわりに引っ張られて、Lupintic Fiveまで発展を?

大野:そうですね。トリオではさっき言ったように限界があるので、多くの人に届けられる編成を考えたらLupintic Fiveになったということです。最初は知り合いのミュージシャンも同世代のやつらしかいなかったから、じじいバンドだったんですけどね(笑)。やっていくうちに若いミュージシャンと出会うようになって、いまのメンバーになりました。

Yuji Ohno & Lupintic Five
Yuji Ohno & Lupintic Five

「合わせる」というのと、「合っちゃう」というのは違うんです。合わせるというのは約束事なわけだから、合うのは当たり前。

―今回リリースされる『UP↑with Yuji Ohno & Lupintic Five』は、随所に拍手や歓声が入っていたり、司会的なトラックが入っていたり、1本のライブというか、テレビショーのような構成のアルバムですけど、なぜこういう作品を作ろうと?

大野:最近は、会館でよくライブをやっているんですけど、これが盛り上がるんですよ。ジャズバンドとしては珍しく、最後はお客さんがスタンディングになる。だから、そういう擬似ライブ盤を作ろうと思ったんです。それと、アメリカにも『SOUL TRAIN』(1970年~2006年まで放送されていたダンス音楽のテレビ番組)とか、スタジオで撮ってるけど拍手が入っている番組があったじゃない。あれを面白いなと思っていたわけ。だから今作は、演奏もスタジオで神経質に録るようなかたちではなく、ライブっぽくやってるんですよ。

―みんなで一発録りをしているんですか?

大野:そうですよ。どこかでテーマを間違っちゃったとか、そういう大きな失敗があると録り直すけど、ライブでしょっちゅうアドリブを演奏している人たちですから、大間違いなんてことはまずなくて、ほとんど直さない。

―レコーディングは大野さんが作った譜面をもとに演奏するんですか?

大野:一応譜面でやるんだけど、あんまり制約を感じさせない形にしています。複雑なアレンジにしても、ろくなことがないんですよ。メンバー全員の音が合わさればかっこいいと思ったら大間違いで、「合わせる」というのと、「合っちゃう」というのは違うんです。合わせるというのは約束事なわけだから、合うのは当たり前。合っちゃうっていうのは、お互い聴き合って、神経に気を遣って、テレパシーをみんなが感じ取って演奏するわけ。うちのバンドは、合っちゃうところがかっこいいんです。

“ルパン三世のテーマ”は、劇伴のバージョンを入れたら、100以上はありますよ。

―“ルパン三世のテーマ”は、アルバムをリリースするごとに違うアレンジで収録されていて、今回も“THEME FROM LUPIN THE THIRD '89 (Lupintic Five Version)”として入ってますけど、いままでに何パターン作られたんですか?

大野:『LUPIN! LUPIN!! LUPIN!!!』っていう“ルパン三世のテーマ”しか入ってないCDがあって、それだけでも22曲。2012年に出した『BOSS ANIME』という3枚組にも10曲。劇伴のバージョンを入れたら、100以上はありますよ。

―そんなに! アレンジのアイデアはどんどん出てくるものなんですか?

大野:さすがに大変ですよ。最初に作ったのが一番いい状態だと思ってアレンジしてるわけだから、本当に納得いくのは10種類くらいで、あとは無理やり考えて、リズムを変えるとか、拍子を変えるとか、いろいろやってますけど、やっぱり普通が一番いいです。

―なるほど。でも、今回の“THEME FROM LUPIN THE THIRD '89 (Lupintic Five Version)”は、すごく盛り上がるアレンジですよね。

大野:これは89年にテレビでの2時間スペシャルが始まったとき(『ルパン三世 バイバイ・リバティー・危機一発!』)のアレンジがベースになっていて、その小規模版なんです。この89年バージョンは、ルパンファンからの評判がいいんですよ。ストリングスも、シンセも、ブラスもいっぱい入っているんですけど、それをLupintic Fiveの編成に変えて、コーラスを足しました。なぜかというと、Lupintic Fiveでコンサートをやるときは、コーラスは一緒に行かないから、歌が入るバージョンはできないんです。だから、たまにはコーラスが入ったものも聴いてもらおうと思って。

―個人的には、男らしいブラスとギターのサウンドにグッときました。それと、今回はアルバム終盤に収録されていますけど、CDだと1曲目のイメージが強かったので、終盤に聴くと「こんなに爆発するんだ!」という驚きがありました。

大野:曲順はこだわってますから。普段のコンサートでもこの曲を演奏するのは本編の最後で、だいたいそこでお客さんも総立ちになりますよ。それと今回は『UP↑』というタイトルですから、アップ感のあるトランペットやギターが活躍するように意識はしてますね。ノリノリのアゲアゲがテーマです。

―大野さんは今年73歳になられたのに、と言うと失礼ですけど、今回は過去最高にテンションが高いくらいの作品じゃないですか。その源は何ですか?

大野:自分より若いミュージシャンとやってるからですよ。だいぶやつらも年を取ってきましたけど(笑)。自分の半分くらいの年齢の人たちと一緒にやっていたら、やっぱりエネルギーをもらいますよ。

大野雄二

練習ばっかりしていればいいってわけじゃない。ずっと弾いてるのは、ずっと弾いてないのと一緒。

―大野さんはライブが終わった後でも、家に帰ってピアノの練習をしているという話を聞いたんですけど。

大野:練習は安心のもとですから。不安を抱えてライブをやるとろくなことがない。というかね、(作曲家に専念していた間は)20年もやってないんですよ。ただでさえピアノが下手なのに。でも、練習ばっかりしていればいいってわけじゃない。ずっと弾いてるのは、ずっと弾いてないのと一緒。ピアノを再開してからジャズを聴き直したら、価値観が変わっちゃったんですけど。

―どう変わったんですか?

大野:自分がプレイヤーだった頃は、ガンガン弾くタイプで、一世を風靡したような人に憧れていたわけですよ。サイドメニューみたいなプレイヤーは、ちょっと軽視していた。でも、そういう人の演奏を死ぬほどじっくり聴いてみたら、「うわー、知らなかった!」みたいな発見があったんです。ピアノから一旦離れる前は、それを理解できる自分がいなかったということだね。

―ちなみにそのピアニストとは?

大野:たとえばレッド・ガーランドという人ですね。マイルス・デイヴィスのバンドの初代のピアニスト。その人はね、ものすごくシンプルにバッキングをやる人なんですけど、白いご飯と同じで、もう飽きないんですよ。よく「スウィングしてる」とか言うでしょ。それは、他の楽器の音をかき分けるようにグワーッと弾くことを指すようなイメージがあるんだけど、この人はそれを超越して上に乗っかってるんですよ。

―上に乗っかってる?

大野:荒波をかき分けていくんじゃなくて、相手がつけてくれた推進力の上に漂っているような感じ。たとえば、ジャズ好きな人はよく「ウィントン・ケリー(マイルス・ディヴィスのクインテットのメンバーでもあったジャズピアニスト)が一番スウィングしてるよね」って言うんですけど、聴き方が変わってからは「子どものノリ方だな」と思う。レッド・ガーランドは(ドラムやベースが)作ってくれたリズムにスーッと乗っかってる。ジャズをやめている間に、そういうことに気づかせてくれたんですよね。

―それぞれによさはあるけど、価値観が変わったと。

大野:みんな素晴らしいんですよ。あとは好み。僕は新しいタイプのジャズピアニストもいっぱい聴いたけど、最終的にはひとりも好きになれなかった。ビバップ(1940年代初期)の時期に、ジャズは踊る音楽から聴く音楽になって、芸術の域に達したんだけど、あまりにも機械的になっちゃった。それで1950年代半ばに、ちょっとエモーショナルな部分を入れて改造したハードバップが出てくるんです。僕は自分がピアニストだったとき、もっと先までいってやってたんだけど、いろいろ聴いた結果、ハードバップに戻ったの。このLupintic Fiveのアレンジも全部そう。もちろん2010年代の音楽も聴いているし、他の音楽の刺激も受けているから、スタイルとしては違う影響も入っているけど、一番の根本はハードバップのジャズなんですよ。

言葉というのは、インストにはない武器ですよ。インストはどうがんばったって「言葉を感じてくれ」って言っても無理があるけど、歌は、言葉を、ストーリーを、具体的に作れるということなので。

―いま新しい音楽からも刺激を受けつつという話がありましたけど、昨年発表された『PRINCESS OF THE BREEZE』ではPredawnさんを起用したり、今回の作品でも中納良恵さん(EGO-WRAPPIN')やTIGERさんがゲストボーカルを務めていますよね。若い人たちは、常にチェックしているんですか?

大野:まぁ、一時ほどではないですけどね。でも、テレビとかを見ているときに、「あっ」と引っかかる人はいます。団体的なものはあんまり好きじゃないですけどね。

―中納さんは前作に引き続きですけど、TIGERさんの参加はどういう経緯で?

大野:TIGERはスタジオに来るコーラスのひとりで、前から知っていたんです。それで「誰かいないかな?」って探していたときに、TIGERっていい声してるし、まだそこまで世の中に知られていないから面白いかなと。

―クールな“MANHATTAN JOKE”も、バラードの“DESTINY LOVE”も、ばっちりハマってましたよね。大野さんから見たTIGERさんの魅力は?

大野:一言で言ったら、声が太いということですね。MISIAとか、桑田佳祐とか、あらゆる人のバックコーラスをやってるから、やっぱり訓練されてるんですよ。ちゃんと歌える人だと分かっていたので、心配することなく頼めましたね。

大野雄二

―中納さんは、いかがですか?

大野:すごいですね、あの人は。まず天性の声がいいよね。音域も広いし。あと、芝居心があるというか、歌に入り込める。そういう人はなかなかいないんですよ。普通の人がそれをやったら気持ち悪くなっちゃうんだけど、よっちゃん(中納)は気持ち悪くならない。

―役者みたいな感じがしますよね。

大野:歌うときは、完全に役者です。こんなことを言うと失礼かもしれないですけどね、スタジオに入ってきて、歌う瞬間までは地味でおとなしいの。でも、マイクの前に立って、イントロが始まると顔が変わる。そのスイッチの入り方はすごいですよ。

―インストものももちろんですけど、歌ものも本当に素晴らしかったです。

大野:僕はインストのバンドをやってますけど、やっぱり歌が好きで、歌ものだけの作品もやりたいくらいですからね。言葉というのは、インストにはない武器ですよ。インストはどうがんばったって「言葉を感じてくれ」って言っても無理があるけど、歌は、言葉を、ストーリーを、具体的に作れるということなので。

誤解を招く言い方かもしれないけど、ジャズミュージシャンの間違ってるところを探すのが大好き(笑)。もうかわいくてかわいくてたまらないわけ。

―作曲家としては、曲のどういう部分を聴いてもらえると嬉しいですか?

大野:細かくこだわっているところはいっぱいあっても、全てをわかってもらうのは無理だと思う。プロの世界にいる僕でも、すごい作曲家やアレンジャーが作る曲には、ずっと聴いてたのに気づかなかったけど、20年後くらいに「そうだったのか!」みたいな発見があるから。

―大野さんがリスナーになるときは、そういうところを探しながら聴くんですか?

大野:もう、それが楽しみ。誤解を招く言い方かもしれないけど、ジャズミュージシャンの間違ってるところを探すのが大好き(笑)。もうかわいくてかわいくてたまらないわけ。それは粗を探すんじゃなくて、そのくらい好きで聴くんですよ。日本のディレクターは、間違いを気にして録り直すことが多いんですけど、昔のジャズの一発録りの作品は平気で間違っていたりしますから。アメリカの人はトータルでいい演奏なら、あんまり気にしないんですよ。そういうのを探すとね、ものすごく安心するんですよ。「こんな神様と言われる人だって、ここで間違ってるよ」って。それは勉強にもなるんです。

―そういうリスナー目線は、ご自身がCDをリリースするときにも反映されているんですか?

大野:僕は音楽家をやめたら、ひとりの音楽大好きなリスナーですから。向こうのすごい人のアルバムでも、気に入らないところは必ずあるんですよ。曲順がよくないとか、ジャケットにもっと気を遣えよとか。そういう失礼なことを僕は平気で思ってるわけです。だから自分がCDを出すときには、そういうことがないように気をつけて、自分が買いたくなるCDを作ろうと思ってますね。

最近の人は「サビができた」とか言いますけど、僕らの年代の人に言わせれば、サビから作るなんてバカ野郎ですよ。つながらないじゃん。

―いま大野さんは広く言うと「音楽家」として活動されているわけですけど、曲を作るのと、アレンジするのと、演奏するのと、それぞれの楽しみはどう考えてますか?

大野:作曲やアレンジは紡いでいける。ライブは同時進行ですから、失敗しようがどうしようが、始まったら途中で止まれない。だから、ある種、無責任で楽しいんですよ。作曲やアレンジをするときは、途中で見直したり何回も考えたりして、「イントロを書いちゃったけど違うな」とか「ここの8小節は独立して聴いたら悪くないけど、サビに誘導するための8小節じゃないな」と思うと、破るということをいくらでもやれる。

―実際に書いた楽譜を破るんですか?

大野:破る。ビリビリと。

―もったいない! また別の機会で使えるように、ストックしたりもしないんですか?

大野:それは絶対にしちゃダメ。とっておいても、どうせ使えないですよ。そんなことをやってる人はろくなアレンジャーじゃない。単に仕事をこなすアレンジャーです。やっぱり生き物は、その場で調理しないと。

―なるほど。ちなみに曲作りは、頭から書いてるんですか?

大野:もちろん。最近の人は「サビができた」とか言いますけど、僕らの年代の人から言わせれば、サビから作るなんてバカ野郎ですよ。つながらないじゃん。A、A’、サビという構成の曲なら、AとA’ができてから「サビはどうしようか?」っていうものですよ。

―サビを先に作り上げるんだったら、サビから始まる曲を作りなさいと?

大野:それもね、本当は違うと思うよ。だってサビはサビですから。サビから始めても頭に戻るわけでしょ。なぜサビから始めるかっていうと、インパクトがほしいから。でも、インパクトがほしいと言っても、そこを外せばイントロなりAなりから始まるわけでしょ。そうしたら、僕の感覚としては不自然なわけ。

―まぁ、全部つながってるわけですもんね。

大野:作詞家でもね、言葉をいっぱい書いておいて、当てはめていく作り方をする人がいるけど、ああいうのは本当は好きじゃない。歌詞には、歌ったときに不自然じゃない言葉を使いたい。あのね、「ずうっと」って歌ってるCMの曲があるけど、あれは大っ嫌い。

―ははは(苦笑)。

大野:「ずうっと」ってなんだよって。「ずっと」って歌えよと。

―まぁ、本来の発音で。

大野:よく、それを歌わせてOKにしたなと思って。だから、僕は永六輔さんとかの詞が好きなの。“上を向いて歩こう”とか、言葉がはっきりしてるじゃん。あと、童謡の“紅葉(もみじ)”ってあるじゃない。ああいう昔の歌ですら、僕は気に入らないところがあるんですよ。「秋の夕日に、照る山紅葉」って、そこが嫌いなの。「秋の夕日に照る」までを一節にしろよと言いたい。

―「秋の夕日に照る、山紅葉」なわけですもんね。

大野:そこで区切って作ろうとすると、たぶんメロディーが難しいんですよ。でも、それは言葉を本当にわかってるのかって話です。気持ちはわかるけど、ちゃんと考えてメロディーを作れよって。もっと言えば、「あい↑」とかってなる言葉は作りたくない。「あい↓」って作りたい。

―「愛」ってことですね。正しい発音の仕方のまま、歌詞にはめるべきだと。

大野:昔の人のほうが、そういうことはちゃんと考えて作ってる。演歌の人はすごいです。というのは、演歌は詞先だから。演歌の人は言葉の意味がよくわからなかったら歌えないんです。そこに命かけて歌ってるから。ポップスの人は記号で歌ってるから。

―「記号」ですか?

大野:後で歌詞カードを読めばわかるでしょっていう人もいるけど、それはあくまで「読む詞」。歌詞っていうなら、歌ったときにちゃんとわかる作り方をしないと。まぁ、こんなこと言ってもしょうがないけどね(笑)。

やっぱりライブのお客さんの反応が、一番原動力になりますから。

―最後に、大野さんは今後の活動予定をお聞きしたいんですけど。

大野:それを聞かれるのが一番困る。何も考えてないから(笑)。

―個人的には、全部オリジナルの新曲で作ったアルバムを聴きたいなと思うんですけど。

大野:僕はプロデューサーみたいな立場でもあって、会社のことを考えてものを作っていると、そういうわけにもいかないんですよ。このご時世ですから、そこそこ売れるものは作らないと。

―なるほど。無責任な発言ですみません(苦笑)。

大野:でもね、サントラ盤っていうのは、全部オリジナルなんですよ。スタンダードナンバーは入らないし、ほとんど新しく書いてるから。最近はサントラ盤と言いながら、ちゃんと長いサイズで作っているので、ニューアルバムみたいなものなんですよ。

―アイデア自体はいろいろ出ているんですか?

大野:アイデアはその都度出します。「今度こういうことをやりたい」とかではなくて、仕事の話が来た段階で考えるんです。僕なんかは昔からの商業作家と言われる人だから、注文が来ないとやる気にならない。芸術家じゃないので、注文ありきなの。

―じゃあ、リスナーがこういうのを聴きたいと思ったら、レコード会社に「こういうのが聴きたいんです」と要望を出すのが一番ですか?

大野:あとはライブに来て、そういうことを僕にさんざん言うってことですよ(笑)。やっぱりライブのお客さんの反応が、一番原動力になりますから。

リリース情報
Yuji Ohno & Lupintic Five
『UP↑with Yuji Ohno & Lupintic Five』(CD)

2014年12月10日(水)発売
価格:3,240円(税込)
VPCG-84986

1. ATMIDO feat. 土井敏之
2. UP with ATM #1
3. COMIN' HOME BABY
4. MANHATTAN JOKE feat. TIGER
5. UP with ATM #2
6. BEI MIR BIST DU SCHON
7. FAIRY NIGHT
8. UP with ATM #3
9. ZENIGATA MARCH
10. LOVE SQUALL
11. UP with ATM #4
12. SEXY ADVENTURE feat. 中納良恵(from EGO-WRAPPIN')
13. UP with ATM #5
14. DESTINY LOVE feat.TIGER
15. UP with ATM #6
16. THEME FROM LUPIN THE THIRD '89(Lupintic Five Version)
17. SAMBA TEMPERADO

イベント情報
『Lupintic Jazz Live TOUR 2014~UP↑ with Yuji Ohno & Lupintic Five~』

2014年12月25日(木)
会場:神奈川県 横浜 Motion Blue YOKOHAMA

2014年12月29日(月)
会場:大阪府 Billboard Live OSAKA

2014年12月30日(火)
会場:愛知県 名古屋 Blue Note NAGOYA

プロフィール
Yuji Ohno & Lupintic Five (おおのゆうじ あんど るぱんてぃっくふぁいゔ)

バンドマスターである大野雄二は、作曲家として膨大な数のCM音楽制作の他、『犬神家の一族』『人間の証明』などの映画やテレビの音楽を手掛ける。代表作『ルパン三世』の音楽は、1970年代から、近年毎年放映されている『ルパン三世テレビスペシャル』に至るまで担当。Yuji Ohno & Lupintic Fiveは、ジャズの楽しさと奥深さを、わかりやすく世の中に広める大役を果たす人気シリーズ『LUPIN THE THIRD「JAZZ」』の10作目『LUPIN THE THIRD 「JAZZ」 the 10th~New Flight~』(2006年)にて結成されたセクステット編成。その後、バンドとしての活動が本格化し、2008年には『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2008 in EZO』に出演。JAZZバンドとは思えぬ大迫力のパフォーマンスでオーディエンスを圧倒。インストジャズバンドとは思えぬ活動スケールで日本全国のクラブハウスから会館、さらにはライブハウスまで怒涛のツアースケジュールで精力的に活動中!



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