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社会的テーマはダサいとか言ってられない 範宙遊泳インタビュー

社会的テーマはダサいとか言ってられない 範宙遊泳インタビュー

インタビュー・テキスト
前田愛実
2015/02/06
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LINEやtwitterを使いこなしていると、街中で面白い現象に出会うたびにつぶやきの文面が瞬時に浮かぶなんていう経験はないだろうか。おまけに指が画面操作を求めて瞬時に動き出したりなんかして……。そんなスマホ時代ならではの身体感覚を巧みに取り入れる劇作・演出家がいる。劇団・範宙遊泳の山本卓卓だ。

この不思議な劇団名を、最近どこかで耳にすることが多くなった。そんな方もひょっとしたら多いのではないだろうか。震災以降の日本に生きる、率直な危機感や切実な思いを吐き出したような作品『幼女X』は、『国際舞台芸術ミーティングin横浜 2014』での上演を経て、マレーシアやタイなど、アジア各国からも注目を浴び、若手劇作家の登竜門『第59回岸田國士戯曲賞』にも山本がノミネートされるなど、にわかにここ数年、周囲が騒がしくなっている。

まもなく開催される『国際舞台芸術ミーティングin横浜 2015』で、タイのカンパニーとのコラボレーション版『幼女X』の上演を控えて、バンコクで制作中の山本にSkypeをつなぎ、そのクリエイティビティーやアイデアの原点、アジア・日本への思いなどについてうかがった。

日本で社会的なテーマの作品を上演すると、ちょっとダサいみたいな感じに見えてしまう今の状況は、やってられない気持ちになります。

―昨年、東京芸術劇場で上演した『うまれてないからまだしねない』が、『第59回岸田國士戯曲賞』にノミネートされましたね。おめでとうございます。

山本:ありがとうございます。年明けからずっとバンコクで『幼女X』の制作をしていたので、詳しくは聞いていないのですがそうみたいですね。

『幼女X』(『TPAM in Yokohama 2014』ver.)2014.2 撮影:Hideto Maezawa
『幼女X』(『TPAM in Yokohama 2014』ver.)2014.2 撮影:Hideto Maezawa

―2月開催の『国際舞台芸術ミーティングin横浜 2015』(以下『TPAM 2015』)で再演される『幼女X』は、タイのDemocrazy Theatreとの共同制作になるそうですね。範宙遊泳はここ1、2年でより注目を集めている劇団の1つですが、それは『幼女X』がきっかけだったように思います。昨年の『TPAM 2014』でもオリジナルバージョンが上演され、話題になっていましたね。

山本:『幼女X』は2013年に新宿眼科画廊で初めて上演した、僕にとっての石碑みたいな作品なんです。あの時期に感じていたことを、きちん残しておかないといけない。このまま40、50代になったら忘れて、よくわからなくなってしまう。そんな切実さを感じながら書いた作品でした。

―じつは、私も『TPAM 2014』での『幼女X』をきっかけに、範宙遊泳という劇団を意識し始めたところがありました。近い世代の人たちが震災以降や今の日本の状況に対して感じたことを表現している作品なのかな? と感じたとき、これはちょっと観ておきたいって思ったんです。

山本:発表当時『幼女X』に関して、自分から震災の影響を受けて作ったとは一言も言わなかったのですが、やはり観てくれた人の多くは、そういう部分を感じ取ってくれたみたいで、上演後もそのことについて訊ねられることが多くありましたね。『TPAM 2014』をきっかけにマレーシアにも招聘されて『幼女X』を上演し、また現地の俳優や演出家との共同クリエイションも行いました。

『幼女X』(『TPAM in Yokohama 2014』ver.)2014.2 撮影:Hideto Maezawa
『幼女X』(『TPAM in Yokohama 2014』ver.)2014.2 撮影:Hideto Maezawa

―『TPAM 2014』の直後に発表された『うまれてないからまだしねない』でも、自然災害による危機的な状況が描かれていたり、明らかに震災以降の世界を感じさせる作品でした。先ほど『幼女X』は「石碑」だったとのお話でしたが、具体的にはどんなモチベーションで書かれた作品だったんですか?

山本:やっぱり震災の後に、かなり長い間参ってしまっていたんです。表向きにはヘラヘラしてたんですけど、じつは結構やばくて。どうすればいいのかとお寺まで瞑想に行ったこともありました。もともと手塚治虫の『ブッダ』が好きで、悟りに興味があったので。結果的には何も変わらなかったんですが、「何も変わらない」って気づいたことにすごく意味があった。そしてむしろ深い闇に気づいて苦しくなりました。それでもう、とりあえずすべてを作品に吐き出すことで、形に残そうと。

―「石碑=作品」であれば、数十年経って忘れることがあっても、作品を見直すことで当時の自分を思い出すことができるかもしれませんね。だけど震災後の感覚って、共同制作を行なっているタイやマレーシアの人たちとも共有できるものなんですか?

山本:それが不思議とできるんです。当然なんですが、欧米とはやっぱり違う。同じアジア人として、仏教的な感覚などで共有できる部分もあるし、そう遠いわけじゃない。もちろん彼らは日本の震災を知りませんが、同じように自分たちの国で起きた災害がありますから。アジアと言っても、タイとマレーシアの2か国しか行ってないんですが、マレーシアでは今原発が作られようとしていて、反対運動も起きている。「日本から学ばなきゃいけないのに」という声も聞きました。

山本卓卓(範宙遊泳) 撮影:Teeraphan Ngowjeenanan
山本卓卓(範宙遊泳) 撮影:Teeraphan Ngowjeenanan

Democrazy Theatreと山本卓卓 撮影:Teeraphan Ngowjeenanan
Democrazy Theatreと山本卓卓 撮影:Teeraphan Ngowjeenanan

―逆にタイやマレーシアに行ってみて受けた刺激はありますか。

山本:僕がコラボレーションした2人の作家はそれぞれ、社会問題や社会状況を切実にアートで表現していました。これが僕にはすごく嬉しかった。一方、日本で社会的なテーマの作品を上演すると、ちょっとダサいみたいな感じに見えてしまう今の状況はやってられない気持ちになります。

―タイやマレーシアの人々は、自分たちの社会に対する関心が強いということでしょうか。

山本:マレーシアにもタイにも大きな社会問題があって、その構図が日本よりわかりやすいのかもしれません。でも最近、日本も問題がわかりやすい社会になってきた。今それがちょっと怖いんですけどね。

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イベント情報

『国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2015(TPAM in Yokohama 2015)』

2015年2月7日(土)~2月15日(日)
会場:神奈川県 横浜 ヨコハマ創造都市センター(YCC)、KAAT神奈川芸術劇場、BankART Studio NYKほか

参加作品:
TPAMディレクション
[野村政之ディレクション]
SCOT『トロイアの女』
ハイバイ『ヒッキー・カンクーントルネード』
範宙遊泳×Democrazy Theatre『幼女X(日本-タイ共同制作版)』
[横堀ふみディレクション]
ピチェ・クランチェン『Black & White』
黒沢美香&神戸ダンサーズ『jazzzzzzzzzzzzz-dance』
[宮永琢生ディレクション]
BricolaQ『演劇クエスト・横浜トワイライト編』
[タン・フクエンディレクション]
エコ・スプリヤント『Cry Jailolo』
ムラティ・スルヨダルモ『I LOVE YOU』『BORROW + EXERGIE – butter dance』
アイサ・ホクソン『Death of the Pole Dancer』『Macho Dancer』『Work in Progress “Host”』

TPAMコプロダクション
ジェローム・ベル×ピチェ・クランチェン『ピチェ・クランチェンと私』
相模友士郎『天使論』
シャオ・クゥ×ツゥ・ハン『Miniascape』
アジアン・アーティスト・インタビュー(ネットワーキングプログラム)

TPAMショーケース
artCORE『por la noche』
重力/Note『人形の家』
オペラシアターこんにゃく座『オペラ「白墨の輪」』
斎藤栗子、南弓子、かえるP、斎藤コン、大東京舞踏団、新宅一平『アニマル ラウンジ』
絹川友梨、インプロ・ワークス『完全即興3「にてひにて」』
革命アイドル暴走ちゃん『004 ゲリラ・ジャパン at 横濱』
カダムジャパン『東京ガラナ Showing+Workshop』
関かおりPUNCTUMUN『マアモント』
仕立て屋のサーカス -circo de sastre-『シャビの恋』『旅立ちのラウル』
大道寺梨乃『ソーシャルストリップ』
レナータ・ピオトロスカ『ポーランド若手振付家協働企画「Untitled」「Death. Exercises and variations」』
マームとジプシー『カタチノチガウ』
Sebastian Matthias & Team『study / groove space (Tokyo)』
So & Co.『ウニラム』
空転軌道『D.E.』
鈴木ユキオ×山川冬樹『Lay/ered』
岡登志子・垣尾優『手術室より』(ダンスアーカイヴプロジェクト2015)
大野慶人『タンゴ』(ダンスアーカイヴプロジェクト2015)
川口隆夫『大野一雄について』(ダンスアーカイヴプロジェクト2015)
プロジェクト大山『をどるばか』(ダンスアーカイヴプロジェクト2015)
goat、空間現代『Minimal Maximal Music』
空(utsubo)『リューシストラテ』
ももいろぞうさん『おもちゃ箱の中身は、』
鈴木優理子、キム・ボラ、中村蓉『横浜ダンスコレクションEX 受賞者公演』
開幕ペナントレース『1969 : A Space Odyssey ? Oddity !』
冨士山アネット、The Absence of the City Project『冨士山アネット“Attack On Dance”FujiyamaAnnette×Dance Theatre 4P国際共同制作“Black Tomatoes”』
S20 梅田宏明『Somatic Field Project + kinesis #1 – screen field』
アジアで上演するプロジェクト『5 調査と共有』
shelf『shelf volume 19 [deprived]』
岡崎藝術座『+51 アビアシオン, サンボルハ』
鮭スペアレ『ロミオとヂュリエット』
ミス・ユニバース『SSSLLLOOOWWW Network』
DEVIATE.CO『ダンスパフォーマンス「不/可視の領域」』
インテグレイテッド・ダンス・カンパニー響-Kyo『「知るということ」公開リハーサル』
声明の会・千年の聲『スパイラル「聲明」コンサートシリーズvol.23 千年の聲 明恵上人「四座講式」800年紀 — 語りものの源流』
井上大輔、イ・サンフン『日本-韓国ダンス交流プロジェクト DANCE CONNECTION 풀다/解」』
苫野美亜、新進プロジェクト『「新」コミュニケーション芸術プロジェクト ―哲学×ダンス―』

プロフィール

範宙遊泳(はんちゅうゆうえい)

2007年より東京を中心に活動する演劇集団。すべての脚本と演出を山本卓卓(やまもとすぐる)が手がける。現実と物語の境界をみつめ、その行き来によりそれらの所在位置を問い直す。生と死、家族、感覚と言葉、集団社会、など物語のクリエイションは山本がその都度興味を持った対象からスタートし、より遠くを目指し普遍的な「問い」へアクセスしてゆく。近年は映像や影と俳優を組み合わせた演出が「2.5次元の演劇」と評判を呼んでいる。『幼女X』で『Bangkok Theatre Festival 2014』Best Original Script(最優秀脚本賞)とBest Play(最優秀作品賞)を受賞。

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