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社会的テーマはダサいとか言ってられない 範宙遊泳インタビュー

社会的テーマはダサいとか言ってられない 範宙遊泳インタビュー

インタビュー・テキスト
前田愛実
2015/02/06
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松ちゃん大好きです。あと爆笑問題の太田さん。僕らの世代でねじ曲がっちゃった男の子は、ダウンタウンに憧れてしまうんですよ。松ちゃんは罪ですよね(笑)。

―範宙遊泳は、山本さんが桜美林大学入学後に初めて結成された劇団とのことですが、演劇をやり始めたきっかけはなんだったんですか?

山本:遡れば、小学校の学芸会ですね。3年生くらいから脚本を書いて主演していました。学芸会といえば山本君って感じになっていて、おばちゃんが世界を救うといった、コントみたいな内容を書いていました。そのときは演劇だなんて思ってなかったんですけど、なんかこう、目立ちたかった。

バンコクでの『幼女X』稽古の様子 撮影:Teeraphan Ngowjeenanan
バンコクでの『幼女X』稽古の様子 撮影:Teeraphan Ngowjeenanan

―笑わせる快感もあったんですね。

山本:ありましたね。小学生の頃はすごく太っていて、自分が勝てるポイントは年に1度の学芸会でみんなを笑わせることだったんですよ。そこでヒーローになろうと頑張ってました。

―なんか可愛くて泣ける話です。中学生以降も面白い人ポジションはキープしたんですか?

山本:キープしましたよ。でもこじらせてしまって、ただの面白い奴じゃ物足りなくて、変な奴として一目置かれつつ、モテたいという願望が芽生えてしまった。

―面白くて変な奴でモテる人のイメージって、ダウンタウンの松本さんみたいな感じですか。

山本:松ちゃん大好きです。『ガキの使い』とか。あと爆笑問題の太田さん。僕らの世代で普通にかっこ良くない男の子は、と言うか、ねじ曲がっちゃった男の子は、ダウンタウンに憧れてしまうんですよ。松ちゃんは罪ですよね(笑)。

みんな平田オリザさんから演劇を教えてもらったのに、僕は自分で試行錯誤するしかなかった。だからイジケが初期衝動でもあったんです。

―しかし「範宙遊泳」って、不思議な劇団名ですよね。

山本:日本語で聞いたときにちょっと変な言葉で、4文字の漢字にしたいと考えていました。あとは普通の劇団よりも、ディレクター集団みたいにしたかったので、カテゴリーやジャンルといった概念を飛び越えたい、そういうものの間を行き来して、泳いでいくようなイメージがありました。

『うまれてないからまだしねない』2014.4 撮影:amemiya yukitaka
『うまれてないからまだしねない』2014.4 撮影:amemiya yukitaka

『インザマッド(ただし太陽の下)』2014.8 撮影:amemiya yukitaka
『インザマッド(ただし太陽の下)』2014.8 撮影:amemiya yukitaka

―桜美林大学には、演出家の平田オリザさんが教授として在籍していましたが、その影響はありましたか?

山本:高校の先生から平田オリザさんのことを聞いて、桜美林大学に入学したのですが、ちょうど入れ替わりで退任されてしまって(苦笑)。「ああ、もうこれは誰に頼るでもなく、自分でやるしかない」と、仲間を探し始めました。その頃はアイデアがあるのに、すぐに実現できないっていうもどかしさを感じていて、とにかく作り始めたかったですね。

―当時の学内ってどういう感じの劇団が多かったんですか。範宙遊泳は結成当初、学生からも人気を集めていたとも聞いたのですが。

山本:やっぱり、みんな平田オリザさんに学んでいたので、現代口語演劇(平田オリザが提唱した演劇の呼称)が多かったです。範宙遊泳は台詞の言い回しがちょっと違っていたり、物語も一幕ものではなくて、シーンも時間軸もすごく飛ぶ。今思えば、シェイクスピアに唐十郎さんや野田秀樹さんをミックスさせた感じだった気がします。

『うまれてないからまだしねない』2014.4 撮影:amemiya yukitaka
『うまれてないからまだしねない』2014.4 撮影:amemiya yukitaka

―現代口語演劇に反発しながらも、独自の方法を編み出していた?

山本:反発心ではないんです。ただイジケてた(苦笑)。みんなオリザさんから演劇を教えてもらったのに、僕は教えてもらうこともできず、自分で試行錯誤するしかなかった。だからイジケが初期衝動でもあるんです。

やっぱり僕ら貧乏じゃいけないと思うんです。「生きていくのに必死だけど好きなことやってます」で演劇をやるのは、いい加減卒業しないといけないんじゃないかって。

―大学卒業後はメンバーの就職もあって、劇団員がガラッと入れ替わったそうですね。そこから現在に至るまで、作品のクオリティーに自信はあるのにお客さんがあまり入らなかったジレンマもあったと聞きました。

山本:でも、赤字公演というのはじつはないんですよ。

制作担当:ものすごくケチなんですよ。貯蓄を作らないと怒るタイプ。

―経営者気質なんですね(笑)。大学卒業以降も演劇の道に進む場合は、バイトしながら頑張る、という方も多いと思うんですけど、山本さんの場合は?

山本:つい最近までバイトしていましたけど、辞めてしまいました。お金云々じゃなくて、学べることがなくなったら辞めよう、と最初から考えていたんです。あまり深入りしてしまうとキリキリしちゃって、本末転倒になることもありうる。自分の栄養になるかならないかが基準です。

―ご自身の中で譲れない一線があったんですね。

山本:やっぱり僕ら貧乏じゃいけないと思うんです。生きていくのに必死だけど好きなことやってます、みたいな感じで演劇をやるのは良くない。バイト代を切り詰めて演劇に費やす、生活費を切り詰めて演劇に費やすみたいなのは、いい加減卒業しないといけないんじゃないかって。それは演劇に限らず、芸術全体にも言える話だと思います。

『幼女X』(初演ver.)2013.2 撮影:amemiya yukitaka
『幼女X』(初演ver.)2013.2 撮影:amemiya yukitaka

―熱血じゃないけど冷めているわけでもなく、ちゃんと演劇を長く続けていけるように考えているんですね。

山本:劇団の寿命は長く設定しています。お客さんに飽きられないように、常に気にしてもらえるように考える。範宙遊泳の公演って、一時期わざとシリアス路線とコメディー路線を交互にやっていたんですよ。前作を観て面白かったという人が、次回作を観て全然違う印象を持ったり。それでお客さんの流れを作ろうとしていたんです。

―そういうことで言えば、まさに今、新しい客層がつき始めているのかもしれません。昨年の『TPAM 2014』でも、演劇界以外の方とお会いすることが多いなあ、という印象がありました。

山本:客層は広がりましたね。昔は女の子が多かったり、同じお客さん、友だち、俳優たちの手売りに助けてもらっていたんですが、最近は幅広くいろんな年代の方が観にきてくれている印象です。カオス*ラウンジや、音楽家の千葉広樹さんなど、いろんなアーティストともコラボしているので、横のつながりは増えました。一方、昨年は動員が倍になったそうですが、僕としてはそんなに実感はないんですよ。

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イベント情報

『国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2015(TPAM in Yokohama 2015)』

2015年2月7日(土)~2月15日(日)
会場:神奈川県 横浜 ヨコハマ創造都市センター(YCC)、KAAT神奈川芸術劇場、BankART Studio NYKほか

参加作品:
TPAMディレクション
[野村政之ディレクション]
SCOT『トロイアの女』
ハイバイ『ヒッキー・カンクーントルネード』
範宙遊泳×Democrazy Theatre『幼女X(日本-タイ共同制作版)』
[横堀ふみディレクション]
ピチェ・クランチェン『Black & White』
黒沢美香&神戸ダンサーズ『jazzzzzzzzzzzzz-dance』
[宮永琢生ディレクション]
BricolaQ『演劇クエスト・横浜トワイライト編』
[タン・フクエンディレクション]
エコ・スプリヤント『Cry Jailolo』
ムラティ・スルヨダルモ『I LOVE YOU』『BORROW + EXERGIE – butter dance』
アイサ・ホクソン『Death of the Pole Dancer』『Macho Dancer』『Work in Progress “Host”』

TPAMコプロダクション
ジェローム・ベル×ピチェ・クランチェン『ピチェ・クランチェンと私』
相模友士郎『天使論』
シャオ・クゥ×ツゥ・ハン『Miniascape』
アジアン・アーティスト・インタビュー(ネットワーキングプログラム)

TPAMショーケース
artCORE『por la noche』
重力/Note『人形の家』
オペラシアターこんにゃく座『オペラ「白墨の輪」』
斎藤栗子、南弓子、かえるP、斎藤コン、大東京舞踏団、新宅一平『アニマル ラウンジ』
絹川友梨、インプロ・ワークス『完全即興3「にてひにて」』
革命アイドル暴走ちゃん『004 ゲリラ・ジャパン at 横濱』
カダムジャパン『東京ガラナ Showing+Workshop』
関かおりPUNCTUMUN『マアモント』
仕立て屋のサーカス -circo de sastre-『シャビの恋』『旅立ちのラウル』
大道寺梨乃『ソーシャルストリップ』
レナータ・ピオトロスカ『ポーランド若手振付家協働企画「Untitled」「Death. Exercises and variations」』
マームとジプシー『カタチノチガウ』
Sebastian Matthias & Team『study / groove space (Tokyo)』
So & Co.『ウニラム』
空転軌道『D.E.』
鈴木ユキオ×山川冬樹『Lay/ered』
岡登志子・垣尾優『手術室より』(ダンスアーカイヴプロジェクト2015)
大野慶人『タンゴ』(ダンスアーカイヴプロジェクト2015)
川口隆夫『大野一雄について』(ダンスアーカイヴプロジェクト2015)
プロジェクト大山『をどるばか』(ダンスアーカイヴプロジェクト2015)
goat、空間現代『Minimal Maximal Music』
空(utsubo)『リューシストラテ』
ももいろぞうさん『おもちゃ箱の中身は、』
鈴木優理子、キム・ボラ、中村蓉『横浜ダンスコレクションEX 受賞者公演』
開幕ペナントレース『1969 : A Space Odyssey ? Oddity !』
冨士山アネット、The Absence of the City Project『冨士山アネット“Attack On Dance”FujiyamaAnnette×Dance Theatre 4P国際共同制作“Black Tomatoes”』
S20 梅田宏明『Somatic Field Project + kinesis #1 – screen field』
アジアで上演するプロジェクト『5 調査と共有』
shelf『shelf volume 19 [deprived]』
岡崎藝術座『+51 アビアシオン, サンボルハ』
鮭スペアレ『ロミオとヂュリエット』
ミス・ユニバース『SSSLLLOOOWWW Network』
DEVIATE.CO『ダンスパフォーマンス「不/可視の領域」』
インテグレイテッド・ダンス・カンパニー響-Kyo『「知るということ」公開リハーサル』
声明の会・千年の聲『スパイラル「聲明」コンサートシリーズvol.23 千年の聲 明恵上人「四座講式」800年紀 — 語りものの源流』
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苫野美亜、新進プロジェクト『「新」コミュニケーション芸術プロジェクト ―哲学×ダンス―』

プロフィール

範宙遊泳(はんちゅうゆうえい)

2007年より東京を中心に活動する演劇集団。すべての脚本と演出を山本卓卓(やまもとすぐる)が手がける。現実と物語の境界をみつめ、その行き来によりそれらの所在位置を問い直す。生と死、家族、感覚と言葉、集団社会、など物語のクリエイションは山本がその都度興味を持った対象からスタートし、より遠くを目指し普遍的な「問い」へアクセスしてゆく。近年は映像や影と俳優を組み合わせた演出が「2.5次元の演劇」と評判を呼んでいる。『幼女X』で『Bangkok Theatre Festival 2014』Best Original Script(最優秀脚本賞)とBest Play(最優秀作品賞)を受賞。

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