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2.5次元ミュージカルが世界で勝負できる理由とは?松田誠が語る

2.5次元ミュージカルが世界で勝負できる理由とは?松田誠が語る

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望
2015/07/17
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演劇ってなんだろう? と考えると、最終的に文化祭、学芸会なんですよ。それを大人になった今も続けているようなものです。

―「人を喜ばせたい」という精神は2.5次元ミュージカルにも感じますし、『ちっちゃな英雄』にも強く現れていると思います。「人を信じ続けること」というテーマのもと、歌と踊りと演技が三位一体に融合している。

松田:兄弟愛、自分が認められないことの悔しさ、壁にぶつかったときの困難さ……いくつもの要素が入っていますよね。原作の『ねずみ物語』にそういうテーマがいっぱい散りばめられていて、それをかたちにするときに何を大切にするべきかは、かなり議論したところです。演劇の最大の武器ってやっぱり生のライブでやることなんです。そして僕らが辿り着いたのは、劇中のねずみ君たちと、それを演じている若い俳優たちの頑張っている姿をリンクさせることでした。ご覧いただいたとおり、みんなすごく熱を持って、頑張っているじゃないですか。

―ほんとに頑張ってましたね! ゲネプロなので客席には関係者の大人たちばかりじゃないですか。でも全力で走って、ブンブン手を振って盛り上げて。

松田:そこはライブだからこそ面白いところで、これを映像で切り取ってもどうしても100%は伝わらないんですよ。距離があると、視聴者は冷静に見ちゃうから。生々しいエネルギーはライブでしか体感できない。だからポイントを「生で体験できること」に置いたんです。お話はわかりやすいし、難しいギミックやトリックがあるわけではない。それよりも重要なのは、彼らの熱量や汗を流して踊る姿、お互いにニコっと笑ってハイタッチする、そういうものを伝えようと。

『ちっちゃな英雄(ヒーロー)』 ©2015 SANRIO CO., LTD.

『ちっちゃな英雄(ヒーロー)』 ©2015 SANRIO CO., LTD.
『ちっちゃな英雄(ヒーロー)』 ©2015 SANRIO CO., LTD.

―それこそ2.5次元ミュージカルの魅力だと思います。今日ハッとした瞬間があって、報道向けのフォトセッションで、俳優の皆さんと松田さんが並んでいましたよね。そのときの俳優さんとのやり取りが非常に自然で、垣根がないんだなと感じました。

松田:そうですね。2.5次元ミュージカルの現場は誰もが新しいことにチャレンジしているという意味で一緒なんです。

―男同士の信頼関係が、この座組みですごく強くできているんだなと思いました。

松田:『テニミュ』(ミュージカル『テニスの王子様』)なんて、完全に学校ですよ。スタッフもキャストも公演を重ねるごとに「成長」がある。お客さんもそこを楽しんでくれています。演劇ってなんだろう? と考えると、最終的に文化祭、学芸会のような一瞬のお祭りだなと。それを大人になった今も続けているようなものです。徹夜で企画を考えたり、山車や看板を作ったり、ケンカして衝突したり。でも最後にお客さんや父兄が来て「がんばったじゃん!」って言われるとすごく嬉しい。あの感情が忘れられずに、ずーっとやっているんです。

お芝居の世界にのめり込んで見る面白みと、俳優やカンパニーの成長を俯瞰的に見る面白み。2.5次元ミュージカルにはその2つがあるんです。

―だからこそ、見た後にエモーショナルな体験の残り火が心に残るんでしょうね。演劇にリピーターが多いというのも、その体験を何度も味わいたいという心理が働いている。

松田:例えば『レ・ミゼラブル』が好きな人は、毎年何回も見るんですよ。これって、他のエンタメにはなかなかない現象だと思います。リピートされるとしたら、ピューロランドのようなテーマパーク。当たり前ですけど、映画や小説って何回見返しても物語は変わらないじゃないですか。でもピューロランドに来たときの体感は毎回違うし、そこで起こることは前に来たときとは違っている。同じことは絶対に2回は起きない。そこには体験の希少性があるんですよね。そのエモーショナルな熱量を体感したくてお客さんたちは何度も足を運ぶのだと思います。例えば、俳優がちょっと滑って転んだ瞬間に「大丈夫!?」ってドキっとしたりする。そんな些細なことでも面白い。

―それも希少性ですね。

松田:そうですね。もちろん安全は大切ですから、アクシデントは起きないほうがいい。でも、その瞬間に生まれる出演者とお客さんとの双方向な感じは、映画やテレビのようなワンウェイのメディアでは起こらない。そこが演劇の勝負どころだと思います。

松田誠

―2.5次元ミュージカルの魅力をファンに聞くと、作品としての面白さだけでなく、舞台上のライブ感に魅かれるという声をよく耳にします。

松田:それが2.5次元ミュージカルの大きな特徴だと思います。筋立てしながらお話すると、日本の演劇っていわゆるスターシステムが主流なんですよ。人気役者を見るのが目的で、有名な人が主演しているから見に行くという動機が圧倒的に強い。でも欧米の場合は作品やテーマを見に行く層が非常に大きい。劇団四季さんがやっていることがまさにそれなんですが、例えばお客さんは『ライオンキング』を見たくて集まります。

―劇団四季は、海外の演目を日本版に翻案して上演する形態を主にとっていますね。

松田:2.5次元ミュージカルの場合は、特定のスターは必ずしも必要ではないんです。演目によっては人気のある俳優が出演することもありますが、あくまでもスターは俳優が演じる「キャラクター」だという考え方。ミュージカル『テニスの王子様』もミュージカル『美少女戦士セーラームーン』も、有名な俳優はほぼ出ていない。つまり無名の若い子たちがやるということは、技術的に未熟な子が多いんですよ。未熟であるがゆえに熱で見せるしかない。技術よりもエネルギー。そうすると、自ずとお客さんの気持ちにシンパシーが湧いてくるんですよ。「この子はどう成長していくんだろう?」といった、親の気持ち、母性が生まれる。

―たしかに「見守っている」という感がありますよね。

松田:全ての2.5次元ミュージカルがそうであるわけではないですけど、成長を楽しむというのが特徴の1つではあると思います。だから『NARUTO-ナルト-』や『テニスの王子様』のような成長物語の漫画が原作になっている。リピーターが多いのも、若い俳優が変化する姿を見続けたいからだと思います。『ちっちゃな英雄』もそれに近いと思ってます。お客さんが彼らのことを見守って、3か月後にもう一度やってきて変化を楽しむみたいな。もしも代替わりして新しいメンバーになったら、「あ、こんな子が加入したんだ」っていう風に。お芝居の世界にのめり込んで見る面白みと、俳優やカンパニーの成長を俯瞰的に見る面白み。その2つがあるんです。

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イベント情報

『ちっちゃな英雄(ヒーロー)』

2015年6月27日(土)から上演中
会場:東京都 サンリオピューロランド フェアリーランドシアター
脚色・演出:きだつよし
原作:辻信太郎
音楽:大石憲一郎
作詞:うえのけいこ
振付:EBATO
製作協力:ネルケプランニング
※サンリオピューロランドのパスポートで鑑賞可

プロフィール

松田誠(まつだ まこと)

株式会社ネルケプランニング代表取締役。演劇プロデューサー。代表作は、ミュージカル『テニスの王子様』、劇団EXILE、『ロミオ&ジュリエット』、『ロックオペラ モーツァルト』、ミュージカル「黒執事」、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」他。演劇以外にも多方面で新しいエンターテイメントを仕掛けている、日本のステージコンテンツビジネスのトップランナーの一人である。日本2.5次元ミュージカル協会代表理事。

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