RHYMESTERがもの申す 「ダサい」方向に進む現状に異議アリ

「美しく生きる」ということ。

それが、結成26年目を迎え新たな挑戦へと踏み出したRHYMESTERが新作で向き合った大きなテーマだ。しかもそれは、単なるライフスタイルの提示ではない。「丁寧に暮らす」みたいなことじゃない。「正しさ」への信奉が不寛容や狭量さに転じる社会の趨勢に対してのアンチテーゼとして打ち出されている。わかりやすく言うならば、戦争に向かう風潮をどう止めるか。プロテストソングとしてのヒップホップが鳴らされている。

レーベル移籍、過去最長の制作期間を経て、通算10枚目のアルバム『Bitter, Sweet & Beautiful』を完成させた彼ら。トラックメイカーには近作を支えてきたBACHLOGICに加え、新世代のヒップホップシーンを支えるPUNPEE、長い付き合いだが実は初の共作となるKREVAが参加。コンセプチュアルな全14曲に「ほろ苦く、しかしだからこそ美しい」人生の様々なシーンが切り取られている。今回のインタビューでは、アルバム制作の背景やそこに込めた思いだけでなく、2015年の日本が向かう先を三人はどう捉えているのか、そして音楽は社会を変える力を持ち得るのかについても、話を交わした。

「いつから日本はこんなことになっちゃったんだ」と感じていて。「Beautiful」というのはこの状況へのプロテストたり得るメッセージだ、と。(宇多丸)

―アルバム『Bitter, Sweet & Beautiful』のテーマは「美しく生きる」。これはどういう経緯で生まれたものなのでしょう?

宇多丸:そのキーワードは最初からあったんだよね。まず集まって飲みながらどういうアルバムにしようかざっくばらんに話したんだけど、アダルトでメロウな感じの音でいきたいっていうのと、もう1つはヘイトスピーチの問題が取り沙汰されるようになった時期というのもあって、「いつから日本はこんなことになっちゃったんだ」と感じていて。そういう風潮に対するカウンター、大きく言えば不寛容というものに対する有効なカウンターとは何か、と。そういう現実を踏まえた上で、酸いも甘いも込みで、せめて美しく生きようとすることはできる、みたいなことは言えるんじゃないかって。

Mummy-D:美しく生きようというのも、別に崇高な美しさとかじゃなくて、「ダサいのはダメだよ」くらいの意味なんだよね。「きらびやかな生活、グラマラスなライフを送ろうぜ」という意味ではない。ヘイトスピーチもそうだけど、「それはダサいじゃん」って。「せめて美しくあろう」と。その「せめて」がつくんだけど、それだけは間違ってないはずだよね、というコンセプトは最初からあった。

JIN:自分自身、正しさとか正義の危うさについて考えることもあったので、「美しくあろう」という話が出た時には、「そうそう!」と思いましたね。実際はタイトル曲(“Beautiful”)がほぼ最後にできた曲なんですけど、そういう経緯も含めて太いコンセプトだったんだなと思います。

―「美しく生きる」というのがカウンター精神の発揮である、と最初から意図としてあったんですね。

宇多丸:吉田健一(英文学者。吉田茂元首相の息子)の「戦争に反対する唯一の方法は、各自の生活を美しくして、それに執着することである」という、ピチカート・ファイヴの小西康陽さんが作品(アルバム『戦争に反対する唯一の手段は。- ピチカート・ファイヴのうたとことば -』(2002年)、著書『ぼくは散歩と雑学が好きだった。 小西康陽のコラム1993-2008 』(朝日新聞社))で引用していた言葉についてもその時点で考えていて。「Beautiful」というのはこの状況へのプロテストたり得るメッセージだ、と。実際に曲を作ったのはその後だし、途中で迷ったこともあったけど、最終的にその時のテーマ通りのアルバムになったと思います。

―途中で迷ったこともあった、というと?

宇多丸:その話し合いのあとにレーベルの移籍が決まったんですよ。だから、「移籍第1弾がそういう変化球な作品でいいのかな、もっとわかりやすくRHYMESTERっぽい感じがいいのかな」という考えもあって。でも、やっぱり、これでいいと。

―結果的に、そのコンセプトが、アダルトでメロウというサウンド感とも親和性があった。

Mummy-D:そうだね。音の「Beautiful」とテーマの「Beautiful」が重なり合った。

大人になってくると、白黒を言えなくなってくる。その中で、音楽を通して誠意あるメッセージを届けようとすると、ラップくらいたくさんの言葉を使えてもまだ難しい。(Mummy-D)

―“Beautiful”はタイトル曲であり、アルバムの中でも一番重要な曲としての位置づけになっていると思うんですが、これはどうやってできていったんでしょう?

Mummy-D:この曲で歌っていることは、他の曲に散りばめられているんだよね。でも、あえてそれを1曲としてまとめてダメ押しをした方がいいんじゃないかと思った。サウンドも、この曲のパーツをアルバムの中で散りばめた方が、コンセプトアルバムであることがわかりやすくなるなと。だから、JINにもギリギリに頼んじゃったんだけどね。

JIN photo:cherry chill will
JIN photo:cherry chill will

―前回のインタビューでは、今はヒップホップシーンの外側にまでメッセージが届くように一つひとつの言葉を選んでいるという話をしていました。そういう考え方がアルバム全体の構成や見せ方にも繋がっているんじゃないでしょうか。

宇多丸:今回は特にそうですね。最初からテーマが決まっていて、ほとんどの曲がそれに対して絡んでいるというようなアルバムを作ったのは初めてだったし、アルバム制作の真ん中くらいで曲順が決まるのも俺たちとしては非常に珍しいことで。そこは成長したのかもしれない。

RHYMESTER photo:Shiko Watanabe
RHYMESTER photo:Shiko Watanabe

―ただ「美しく生きる」ということをテーマとして、しかもそれがプロテストであるということを表現していくのは非常に挑戦的なことでもあると思うんです。というのは、「正義」というものは一般的にわかりやすい構造を持ったものであるから、その明快さへのアンチテーゼをメッセージにしようとすると、どうしても持って回ったような言い方になってしまう。それをどう上手く言い切れるかということに、真っ向から挑んでいるアルバムだと思ったんですけれども。その辺りについて、言葉の選び方の難しさはありましたか?

Mummy-D:“Beautiful”は特に難しかったね。「美しくあろう」って、下手すると耽美主義みたいで危ない言葉じゃん。ヒップホップとして、綺麗事みたいに捉えられる恐れもある。それに、大人になってくるとメッセージの歯切れが逆に悪くなっていくというか、いろんな人の考え方を「それも一理あるよね」って理解できてしまうようになってきて、白黒を言えなくなってくるんだよね。その中で、音楽を通して誠意あるメッセージを届けようとすると、ラップくらいたくさんの言葉を使えてもまだ難しい。

宇多丸:「いろいろある」という相対主義を経た上で、何か答えを出そうとしているんですよ。

―“Beautiful”が最後のパーツになったということですが、アルバムを作っていく中で、最初に軸になった曲はどれでしたか?

宇多丸:最初に作ったのは“ペインキラー”なんですけど、その時点で<正しさだけじゃ生きてけない>というリリックもあって。最初に話し合ったことが具体的に形になったと、1発目で思いましたね。

―“ペインキラー”は、KREVAさんがトラックを作っています。RHYMESTERとKREVAさんとの付き合いは長いですが、今回が初のコラボレーションなんですよね。これはどういう過程でできたのでしょうか。

Mummy-D:俺と宇多さん(宇多丸)でKREVAのライブを観に行った時に、「KREVAのメロウネスみたいなものっていいよね」ということと、「『心臓』(2009年リリース、KREVAの4枚目のアルバム)みたいにアゲ曲がないくらいのバランスもいいよね」という話をして。で、KREVAにトラックメイカーとしてオファーしたらすごい喜んでくれて、こっちのコンセプトも伝えた上で、6曲くらい送ってもらった中の1つが“ペインキラー”になった。こういうトラックを作らせると彼はすごいですよ。形にならなかったトラックも、どれもすごいよかった。

Mummy-D photo:cherry chill will
Mummy-D photo:cherry chill will

アーティストって、端から見たら美しい軌跡を描きながら走っているように見えると思うんだけど、こっちからすると足跡が音符になっているだけで、真っ暗な中を正しい方向かどうかも分からないまま走ってるんだよね。(Mummy-D)

―アルバム冒頭の“フットステップス・イン・ザ・ダーク”は、PUNPEEさんがトラックを作ってますが、これはまさにアルバムのストーリーを語っているような曲だと思いました。

Mummy-D:PUNPEEだけには、アルバムのテーマが「Beautiful」であるとか、アルバムの音として目指してるところとか、一切伝えずにオファーした。

―それはなぜですか?

Mummy-D:こちらから決めうちした方がいい人と、自由にやってもらった方がいい人がいるから。PUNPEEは自由な発想でどんなものを出してくるのかを見たかった。そうしたら、何も言わなかったのに、トラックに「This is my beautiful life」って言葉が入ってたから、因縁めいたものを感じたね。

宇多丸:シンクロニシティーだね。

―この曲のリリックはどうやって詰めていったのでしょうか?

Mummy-D:そのトラックから、走って逃げているようなイメージが浮かんできて。RHYMESTERとして、常に苦悩しながら音楽を作っていて、もう参考になるアーティストもいなければ、先輩もいない。どこを走ってるのかもわからないけど、走り続けなきゃいけないんだよな、と。アーティストって、端から見たら美しい軌跡を描きながら走っているように見えると思うんだけど、こっちからすると足跡が音符になっているだけで、真っ暗な中を正しい方向かどうかも分からないまま走ってるんだよね。自分の前は暗闇なんだけど、足跡の方は七色の虹になっているようなイメージ。でもそれって音楽に限らず、モノを作る人ってみんなそうだよな、と思って歌詞にした。評価は後ろの人に任せるしかないわけだから、自分はもがきながら走り続けるしかないんだよなと。

宇多丸:というD(Mummy-D)の話を受けて、2ヴァース目を書いて1度歌も録ったんですけど、アルバムが完成してこの曲を1曲目に置いたら、なんかちょっと物足りなく感じて。その後、2ヴァース目を全部書き直したんですよ。せっかく全体の構成が決まってアルバムを作ってるんだから、冒頭の曲でそこからアルバムの中で起こることを先に暗示しておくといいんじゃないかと。それで、Dの言った「作り手の苦悩」から、2ヴァース目では人生全体みたいなものに広げて、「それぞれが主観的に走って生きているんだけど、それがいつか交差する」って内容で書き直しました。

―だから、ここで全部の伏線を張っているようなことになっている。

宇多丸:全体の構成がバッチリでき上がった上で作っていたので、今までにやったことのない試みができたんですよね。

―“フットステップス・イン・ザ・ダーク”や“Beautiful”、“人間交差点”もそうだと思うんですけど、もう1つのアルバムのモチーフとして「人生」というものがありますよね。それがアルバムの横軸と縦軸になっている。ヒップホップが人生の長さを歌えるようになったという、そういうこともこのアルバムの大きな特徴だと思います。

Mummy-D:それは単純にね、歌う人が歳を取ってきているというのもある。今後はそんなこともいろんな人が歌っていけたらいいなと思うけどね。自分たちとしてはトピックの幅は常に広げようと思ってる。ヒップホップだからこういうことを歌わなきゃいけないとかじゃなくて、もっと広がったらいいなとは思ってるね。

宇多丸:特に今回はそういう方向に行きやすいテーマだったのかな。生き方の話をしているわけだから。いろんな人がいて、それぞれが背負ってきているものが背景にあって、それぞれが主観的に走りながらも多様性も受け入れて、12曲目の“人間交差点”で出会って別れていくというイメージがあったかな。

―PUNPEEさんのトラックは、“Kids In The Park”や“モノンクル”のように、ちょっと肩の力が抜けたところがありますね。これは、結果的にそうなった感じですか?

Mummy-D:ヤツのキャラが飄々としているからかもしれないね。俺らだけで作ったガチガチのコンセプトアルバムにPUNPEEのひねくれた飄々とした歌が入ってくることによって、いい塩梅になったなと思ってる。

「マイクロフォン」でも、「ペン」でもいい。どっちも武器になる。(Mummy-D)

―アルバムのラストには“マイクロフォン”という曲がありますが、これはどういう位置付けをイメージしていたんでしょうか。

宇多丸:この曲は最初にするかどうかちょっと迷ってましたね。この曲で始まるか、あるいは最後しかないなと。王道の感じでいこうというイメージはありました。

―そこで、ラッパーの象徴でもあるマイクロフォンというものがテーマになった。

宇多丸:ただ、同時にマイクって人が意見を届けるために使う道具なんですよ。だから、ラッパーだけじゃなくて、ラジオとか、マイクを使う職業全体の話になる。もっと言えば、意見をいう人、責任を持って個として立ち位置をはっきりさせてものを言う人全体の話になる。ヒップホップに限らず、普遍的な話ができるはずだ、という話はしてました。

Mummy-D:だから、「ペン」でもいい。どっちも武器になるからね。

―ジャーナリストがペンを使うのと同じ意味で、ラッパーはマイクロフォンを使うわけですね。

宇多丸:そう。意見の言い合いはいくらでもしましょうよ、と。個として責任を持ってものを言う人がいっぱいいる世の中は、このアルバムの全体のテーマでもある多様性の話と通じ合うんじゃないかという話もしたかな。


アメリカ人の意識は、加速度的に進歩していますよね。人種差別もそうだし、性差別もそう。「そんなことしてるのかっこ悪いよ」という感じになってきている。(宇多丸)

―ここまで話してきたように、アルバムには「狭量な正しさ」というものがはびこる今の時代、それに立ち向かわないといけないという意識が貫かれていると思います。なので、改めて伺おうと思うんですが、今の社会の状況をどう感じてらっしゃいますか。

Mummy-D:まず、何かあるとすぐ「不謹慎だ」と言う人たちが増えたと思うよね。

宇多丸:風営法の問題にしてもそう。我々がクラブは健全な遊び場だとアピールしてる理由は、そこには普段の昼間の生活とは違う正しさもあるわけですよ。夜にお酒を飲んでバカをやったり、エンターテイメントに逃げ込む必要だってあるだろうし。あと、アルバムを作り始めたくらいの時に、映画『風立ちぬ』(2013年公開、宮崎駿監督作品)で、喫煙シーンが問題視されたのもあって。

宇多丸 photo:cherry chill will
宇多丸 photo:cherry chill will

―結核の奥さんの横で主人公がタバコを吸っているのに文句を言う人がいましたね。

宇多丸:そんな文句、「バカじゃねえの」って。明らかに「正しくない」ことなんだけど、それでも仕事を続けたい、それでも一緒にいたいということを表してるわけじゃないですか。そもそも、戦闘機を作るって自体ことは「正しくない」んだけど、それでも美しい飛行機を作りたい、っていう人の話だし。あの映画で描かれている「正しくはないかもしれないけどせめて美しくあろうとする人」というのが、このアルバムのテーマにも繋がるところだと思いますね。

Mummy-D:だから、もうちょっと幅とか誤差とか遊びを互いにありにしないと、ダメなんじゃないかと思うよね。ちょっとだけ優しくなるとか、ちょっとだけ雑になるというか。

宇多丸:今思ったけど、その「遊びをありにする」という感じはPUNPEEを呼んでることでテーマ的にも合致してるんだよね。「正しさだけじゃない」って言ってるのに、俺たちがガチガチに固めて整合性のあることだけを言ってるアルバムを作っちゃうと、メッセージにも反するし。あいつの気の抜けた感じがテーマに合ってる。

―PUNPEEさんのトラックや一部のリリックのおかげで、「多様性」をより強調できるものになっていると。

宇多丸:「みんないろいろでいいじゃない」という相対主義があって、その先に「でも美しくありたい」ということを提示しようとしている感じですね。少なくとも他者を排除したり、白黒つけようとする考え方ではないだろうと。

―今の日本とアメリカを見ると、すごく差を感じますよね。特にアメリカではここ数年、生き方の多様性を認める動きが大きくなってきている。

宇多丸:アメリカでは、同性婚の禁止は違憲だという判決も出たしね。すごいですよね。今の日本では逆に「違憲」という言葉が軽くなっちゃってますからね。「憲法って何のためにあるの?」という感じになってきている。

―アメリカ人の意識や価値観は、ここ数年で大きく変わっていると思います。

宇多丸:いろんな問題はあるかもしれないけれど、加速度的に進歩していますよね。人種差別もそうだし、性差別もそう。「そんなことしてるのかっこ悪いよ」という感じになってきている。

―Macklemore & Ryan Lewis(アメリカ出身のヒップホップデュオ。2014年の『グラミー賞』で4部門受賞)もその流れの中の1組ですよね。“Same Love”で、同性愛差別についてラップしている。

宇多丸:アメリカのヒップホップが俺たちよりも早く過激にゲイ差別を克服してしまうとはね。俺らはもともとラップで差別的なメッセージを歌うことに対して、「そういうの止めなよ」って思ってたけど、それをひっくり返すという意味では先を越されちゃった。

今はまだ黙ってる人がやばいと思って声を上げ始めたら変わるんじゃないかと思いますけどね。まともな人は黙っているだけな気がする。(宇多丸)

―最近、ジャーナリストの佐久間裕美子さんが書いた『ヒップな生活革命』という本を読んだんです。そこには、アメリカ人の意識が生活面から変わっているということが書かれていて。大企業主義の大量生産、大量消費の社会でずっと生きてきたけど、サードウェーブコーヒーや地元生産の物、個人経営のレコードショプや書店を選ぶほうが「ヒップだ、クールだ」だという意識の変化が、社会を変えることにつながっていると。「こっちのほうがかっこいいよ」という提示という意味では、このアルバムでやっていることは、それに近いんじゃないかと思うんですけれども。

Mummy-D:そうだね。「お前、そんなの正しくないよ」って言われても聞かないけど「ダサいよ」って言われたら考え直すもんね。

宇多丸:人を変えるのは、実は「何がかっこいいか」という基準の転換なのかもね。さっきから話している「美しく生きること」というのも、たとえば「戦争は美しくないし、人を殺すのは美しくない。僕らにはこの美しい生活があるから、それを邪魔しないでくれる?」という主張で、それは立派にプロテストたり得る、ということだよね。

―そう考えると、今の日本の状況が変わっていく可能性は、僕としては充分にあると思うんです。何故なら、ほんの10年前のアメリカはフレンチフライを「フリーダムフライ」と言い換えてるような国だったから。

宇多丸:あれ、何でしたっけ? フランスがイラク戦争に派兵するのに反対したから不買運動が起こったんでしたっけ。

―そうそう。アメリカのムードは5年ちょっとで変わったわけで。

宇多丸:日本も、いい方向に変わる可能性もあるけど、5年後にさらに悪化することだってあるわけですよ。自民党の大西議員の「マスコミを懲らしめる」発言とかさ。政権与党の人がマスコミを弾圧したいと公言するなんて、不寛容社会の極みだもんね。まぁあれは散々叩かれたから、まだ世の中正気は失ってないんだなとも思いますけど。

―2015年の夏、戦後70年の夏というのは、歴史を後から振り返るならば、1つの異常な時期として記録されるでしょうね。

宇多丸:ただ、今はまだ黙ってる人がやばいと思って声を上げ始めたら変わるんじゃないかと思いますけどね。まともな人は黙っているだけな気がする。いよいよ後戻りできないところに行きそうだとなったら、またどんどん空気も変わるんじゃないですか。

RHYMESTER photo:cherry chill will
photo:cherry chill will

音楽が無力だとは思ってないね。力は絶対にあるぞと確信しながらやってる。(Mummy-D)

―そこでやっぱり音楽の果たすことのできることもあると思います。前のインタビューでも「フォーマットは変わっても音楽の力自体は変わらない」と仰っていましたが、それも踏まえて、改めて音楽の力というものについてお伺いできればと思うんですけれども。

JIN:RHYMESTERの音楽はメッセージ性があるし、特に今回はアルバム全体にテーマがあったわけだけど、何を言っているかをしっかり聴く楽しみ方だけじゃなく、たとえば曲調の心地よさに身を委ねることもあっていいと思うし、ライブに来て発散してもらうのもいいと思います。音楽は根っこから社会の何かを変えられるものではないけど、聴いてくれた人の人生に彩りを与えられればと思いますね。

Mummy-D:音楽が無力だとは思ってないね。力は絶対にあるぞと確信しながらやってる。何より、これだけテクノロジーが進化していろんな楽しみ方がある中で、音を聴くだけというエンターテイメントがいまだに人に対する影響力があるという点ではすごいと思う。絵や映像がついてなくても、音だけで人への訴求力があるんだと。

宇多丸:音に対しては無防備にならざるを得ないんだよね。映像は目を背けたりできるけど、音は入ってきちゃうから。だからこそ、感情を操作できちゃうものでもある。音楽は問答無用で情緒に訴えかけてくるところがあるから、危ない時もあるよね。

―危ない時?

宇多丸:音楽って諸刃でもあるんですよ。戦いを鼓舞する機能もあるし。でも、やっぱり音楽は「何がクールか」をセットするものではある。だから、目立つところで活動している人には責任があると思いますね。たとえば秋元康さんがAKB48の“僕たちは戦わない”という曲を書いたのも、桑田佳祐さんが歌っていることも、ちゃんと責任を果たそうとしているように思えるんです。特に今は、それぞれが何を言うのかが、すごく大事になっているタイミングだと思いますからね。

リリース情報
RHYMESTER
『Bitter, Sweet & Beautiful』初回限定盤A(CD+Blu-ray)

2015年7月29日(水)発売
価格:4,104円(税込)
VIZL-846

[CD]
1. Beautiful – Intro
2. フットステップス・イン・ザ・ダーク
3. Still Changing
4. Kids In The Park feat. PUNPEE
5. ペインキラー
6. SOMINSAI feat. PUNPEE
7. モノンクル
8. ガラパゴス
9. The X-Day
10. Beautiful
11. 人間交差点
12. サイレント・ナイト
13. マイクロフォン
[Blu-ray]
・『人間交差点 2015』ダイジェスト映像
・“SOMINSAI feat. PUNPEE”(人間交差点2015)ライブ映像
・“Still Changing”PV
・“人間交差点”PV
※副音声『宇多丸・Mummy-D・DJ JINによる元祖・生(ビール)コメンタリー』収録

RHYMESTER
『Bitter, Sweet & Beautiful』初回限定盤B(CD+DVD)

2015年7月29日(水)発売
価格:3,780円(税込)
VIZL-847

[CD]
1. Beautiful – Intro
2. フットステップス・イン・ザ・ダーク
3. Still Changing
4. Kids In The Park feat. PUNPEE
5. ペインキラー
6. SOMINSAI feat. PUNPEE
7. モノンクル
8. ガラパゴス
9. The X-Day
10. Beautiful
11. 人間交差点
12. サイレント・ナイト
13. マイクロフォン
[DVD]
・『人間交差点 2015』ダイジェスト映像
・“SOMINSAI feat. PUNPEE”(人間交差点2015)ライブ映像
・“Still Changing”PV
・“人間交差点”PV
※副音声『宇多丸・Mummy-D・DJ JINによる元祖・生(ビール)コメンタリー』収録

RHYMESTER
『Bitter, Sweet & Beautiful』通常盤(CD)

2015年7月29日(水)発売
価格:3,240円(税込)
VICL-64371

1. Beautiful – Intro
2. フットステップス・イン・ザ・ダーク
3. Still Changing
4. Kids In The Park feat. PUNPEE
5. ペインキラー
6. SOMINSAI feat. PUNPEE
7. モノンクル
8. ガラパゴス
9. The X-Day
10. Beautiful
11. 人間交差点
12. サイレント・ナイト
13. マイクロフォン

イベント情報
『RHYMESTER KING OF STAGE VOL. 12 Bitter, Sweet & Beautiful Release Tour 2015』

2015年9月24日(木)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:神奈川県 川崎 CLUB CITTA'
※公開リハーサル

2015年9月27日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:大阪府 Zepp Namba

2015年10月4日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:高知県 X-pt.

2015年10月9日(金)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京都 Zepp DiverCity

2015年10月12日(月・祝)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:愛知県 名古屋 Zepp Nagoya

2015年10月18日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:青森県 SUNSHINE

2015年10月20日(火)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:宮城県 仙台 Space Zero

2015年10月25日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:福岡県 DRUM LOGOS

2015年11月1日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:静岡県 SOUND SHOWER ark

2015年11月3日(火・祝)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:茨城県 水戸 VOICE

2015年11月8日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:沖縄県 那覇 桜坂セントラル

2015年11月10日(火)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:鹿児島県 SR HALL

2015年11月15日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:岡山県 YEBISU YA PRO

2015年11月22日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:富山県 MAIRO

2015年11月29日(日)OPEN 17:00 / START 18:00
会場:北海道 札幌 PENNYLANE24

プロフィール
RHYMESTER (ライムスター)

宇多丸(Rap)、Mummy-D(Mr. Drunk、マボロシ:Rap / Total Direction / Produce)、DJ JIN(breakthrough:DJ / Produce)からなるヒップホップグループ。別名「キング・オブ・ステージ」。1989年グループ結成。1993年アルバム『俺に言わせりゃ』でインディーズデビュー。ライブ活動を中心に支持を集め、1999年リリースの3rdアルバム『リスペクト』のヒットで日本のヒップホップシーンを代表する存在に。 2001年活動の場をメジャーに移し、2007年には日本武道館でのワンマン公演を成功させた。その後グループとしての活動を休止したが、2009年シングル『ONCE AGAIN』で再始動。また、宇多丸のラジオパーソナリティとしてのブレイクなど、ソロでの活動とボーダレスな活躍も特筆に価する。2015年、ビクターエンタテインメントへの移籍と主催レーベル「starplayers Records」の設立を発表。5月10日は初となる野外音楽フェス『人間交差点』の開催、大盛況のうちに終えた。7月29日は移籍後初となるアルバム『Bitter, Sweet & Beautiful』をリリース。



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