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LGBTQ登場人物の割合が過去最多、米ドラマ動向伝える最新調査が公開。いまこそTVが担う重要な役割

メイン画像:『Lの世界 ジェネレーションQ』シーズン2 ©2021 Showtime Networks Inc. All Rights Reserved.

地上波作品のレギュラー登場人物のうち、LGBTQのキャラクターは過去最多の11.9%

ハリウッドにおいてダイバーシティーとインクルージョンが推進されるなか、実態はどれくらい変化しているのか。最新の調査結果によれば、アメリカのテレビでは、LGBTQのレプリゼンテーションは増加をつづけている。

アメリカのテレビにおける性的マイノリティーの表象をモニタリングする団体「GLAAD(中傷と闘うゲイ&レズビアンの同盟)」の年間レポート「Where We Are on TV」の最新版が発表された(全文はこちら)。

2022年2月17日に公開された「Where We Are on TV 2021-2022」では、アメリカの地上波、ケーブル局、ストリーミングプラットフォームの作品を調査。2021年6月1日〜2022年5月31日の期間に放送された、もしくは放送予定の作品が対象になっている

今回で第17版となる同レポートによると、地上波5大ネットワーク(ABC、CBS、The CW、FOX、NBC)製作による、2021〜2022年シーズンの脚本のあるプライムタイム放送作品には775のシリーズレギュラーキャラクターが確認され、そのうち11.9%にあたる92がLGBTQのキャラクターであった。昨年の9.1%から増加し、地上波の作品においては調査期間史上最多の割合となった。

GLAADは、メディアにおけるLGBTQのイメージや物語を表彰する『GLAADメディア・アワード』を1990年から主催。昨年は『トランスジェンダーとハリウッド: 過去、現在、そして』『シッツ・クリーク』などが受賞

初めてレズビアンが地上波作品のLGBTQキャラクターの多数派を占める

特筆すべきは、レズビアンの物語の躍進だ。地上波の作品に登場したLGBTQのキャラクターのうち、レズビアンのキャラクターは40%を占めた。ゲイ男性のキャラクターは35%、バイセクシュアルのキャラクターは19%。地上波作品に登場するLGBTQのキャラクターのうち、レズビアンのキャラクターが多数派となるのは、GLAADの調査史上初だという。これまではゲイ男性のキャラクターが多くを占めていた。

1990年代に活躍した架空の4人組女性ヒップホップグループのその後を描く『Queens』は、レズビアンのキャラクターが登場する新作地上波ドラマの1つ

また主人公としてLGBTQのキャラクターが登場する作品には、『ボクらを見る目』『グローリー/明日への行進』などのエイヴァ・デュヴァーネイが手がけるDCドラマ『Naomi』や、レズビアンのバットウーマンを描く『バットウーマン』などがある。

エイヴァ・デュヴァーネイの『Naomi』は2022年1月からThe CWで放送されている

ケーブル放送の作品においても、LGBTQのキャラクターのうち一番多いのはレズビアンのキャラクターとなった。これは『Lの世界 ジェネレーションQ』の新作が放送されたことが大きく影響している。同作は、レズビアンやバイセクシュアルの女性たちの物語を描き、社会現象にもなった人気シリーズ『Lの世界』の続編である。

さらに今回の調査全体で確認された637のLGTBQのキャラクターのうち、バイセクシュアルのキャラクターは前回より微増の29%、アセクシュアルのキャラクターはわずか2人だった。

『Lの世界 ジェネレーションQ』は日本ではHuluで独占配信中

トランスジェンダーのキャラクターも増加。そのほとんど全てをトランスジェンダーの役者が演じる

トランスジェンダーのレプリゼンテーションについては、全体に占める割合としては減少したものの、キャラクターの数は増加。地上波、ケーブル、ストリーミングの作品全体で見ると、レギュラーおよびリカーリング(レギュラーではないが準レギュラー的にシリーズを通して登場する)のトランスジェンダーのキャラクター数は42確認された。

前回よりキャラクター数は13増加しており、作品数で見るとトランスジェンダーの登場人物が描かれる作品は前回の26作から10作増えて36作となった。また42のキャラクターのうち、41のキャラクターがトランスジェンダーの俳優によって演じられたという。

A24とHBOが贈る人気ドラマ『ユーフォリア/EUPHORIA』では、ハンター・シェイファーがトランスジェンダーの高校生ジュールズを演じている

ファイナルシーズンを迎えた『SUPERGIRL/スーパーガール』にはテレビ史上初となるトランスジェンダーのスーパーヒーロー、ニア・ナル(ニコール・アンバー・メインズ)が登場している

さらにGLAADはLGBTQのレプリゼンテーションを増やすだけでなく、LGBTQのキャラクターのなかの多様性にも目を向けるよう訴えている。

今回の調査では、地上波作品では有色人種のLGBTQのキャラクターが白人のLGBTQのキャラクターの比率を上回り(全体の58%)、4年連続で50%超えとなった。また調査したすべての作品のうちHIVとともに生きるキャラクターは2人で、前回の3人から減少。同団体はHIVともに生きる人々へのスティグマや偏見を終わらせるため、HIVに関するレプリゼンテーションに力を入れるよう番組制作者たちに呼びかけている。

LGBTQの物語の力、それを伝えるテレビの重要な役割

「テレビにおけるLGBTQのレプリゼンテーションの広がりは、世界中の視聴者がつながりを見出すことのできるLGBTQの物語を伝える力を、ハリウッドが真に認識し始めたことのサインです」

今回のレポート公開に際し、GLAADの代表サラ・ケイト・エリスはこのように述べた。近年「LGBTブーム」とも言われる日本ではどうだろうか。

「Where We Are on TV」のような包括的な調査はないが、2020年には、戦後から同年初頭までの日本の映画とテレビドラマにおける、多様なジェンダーやセクシュアリティの表象に着目した展覧会『Inside/Out ─映像文化とLGBTQ+』(早稲田大学演劇博物館)が開催され、話題を呼んだ。同性愛やトランスジェンダーの登場人物を描いたドラマや映画は近年増えているようにも見える。だが、「観客がつながりを見出すことのできる物語」の多様性については、まだ発展の余地がありそうだ。

「LGBTブーム」だとしても同性婚は法制化されていないどころか、同性婚を男女の婚姻と同等の関係とする「社会的な承認がない」として、法制化しないことを正当化する主張が国から飛び出すのが日本の現実であることも忘れてはいけないだろう。

物語は人の心に訴え、動かす力を持っている。そこでどんな人たちがどう描かれているかは、観客のものの見方に影響を与える。近年はテレビを見ない人が増えていると言われるが、未だ大衆に大きな影響力を持っているはずだ。だからこそ、そこではより多様で掘り下げられた物語が広く伝えられる必要があるのだ。

GLAADのエリスは今回のレポートに際し、テレビの役目について次のように述べている。

「反LGBTQ的な法制度や暴力が増加しているいま、テレビのような文化機関こそ、多様で包括的な物語を通して人々の考えや心情に変化を起こす、重要な役割を担っているのです」



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