映画やテレビでの障がい者のレプリゼンテーションの現状は?増加傾向も「描き方」に課題、米調査

『コーダ あいのうた』 © 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

調査対象の作品のうち、障がいのテーマを含む映像コンテンツは4.2%

今年の『アカデミー賞』で作品賞を含む3部門に輝いた『コーダ あいのうた』は、ろう者の親を持つ子ども(CODA)を主題にした作品だ。主人公の父親役を演じたトロイ・コッツァーはろう者の男性俳優として初めて、『アカデミー賞』助演男優賞を受賞。スピーチでは、賞を家族や彼のチームに加えてCODAのコミュニティーとろう者のコミュニティーに捧げた(※)。

ろう者の俳優が『アカデミー賞』を受賞したのは史上2度目。初の受賞者は『コーダ あいのうた』でコッツァーの妻役を演じたマーリー・マトリン(1986年の映画『愛は静けさの中に』で主演女優賞を受賞)だった。『コーダ あいのうた』の成功は歴史的な出来事だが、ハリウッドは障がいのある人々を十分にスクリーンに映してきたのだろうか。

※参考記事:「実際のろう者が使う手話をスクリーンで見てほしい」。米映画『コーダ』手話演技監督の決意

『コーダ あいのうた』海外版予告編

このたび、1918年から2022年までの映画やテレビ番組における障がい者のレプリゼンテーションを分析したレポートが発表された(*1、*2)。アメリカの調査会社ニールセンによる同レポートによると、この約1世紀のあいだ、障がいのテーマを含む映像コンテンツは6,895作品確認され、これはデータベースに確認された全163,230タイトルのうち4.22%だ。

アメリカの人口のうち、障がいのある人が占める割合は26%で、約4人に1人の計算となる。「何パーセントあれば十分」と規定できるものではないが、全体として作品数は近年とくに増えているものの「十分」とはいえない状況が示唆されている。また映像コンテンツの種別で見てみると、上述の6,895タイトルのうち58.97%を長編映画が占めており、映画に比べてテレビシリーズは少ない。

また「ニューヨーク・タイムズ」によると、2,000人以上のスマートフォンユーザーが回答した調査では、障がいとともに暮らす視聴者の約半数が、テレビで自分たちが十分に表象されていないと感じているということも報告されている(*2)。

作品数だけでなく、「描き方」も課題

映像作品における多様性や包括性は、作品数だけの問題ではない。障がいのあるキャラクターが登場していても、ステレオタイプを強化するような描写になっていることなどから問題視されてきた作品も存在するからだ。事実、障がいのある人々はテレビにおける自分たちのアイデンティティーグループの描写が「不正確」だと感じている傾向が他の視聴者より52%高いという。

さまざまな障がいのある視聴者が真に自分自身を投影できるような作品づくりのためには、何が必要なのか。つくり手が正しい知識を持つというのはもちろんのこと、可能な限りスタッフや役者に当事者を起用し、その声を反映させることも重要だ。2016年の調査(*3)によれば、同年シーズンのアメリカで放送されたトップ10のテレビ作品に登場した障がいのあるキャラクターのうち、95%が非当事者の俳優によって演じられたという。

『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』などに出演する俳優で、手指に先天性欠損症を持つアレックス・バロンは、昨年『ハリウッド・レポーター』に障がいのあるキャラクターの表象についてのコラムを寄せた。

そこでは自身の俳優としての経験から、「障がいのある俳優にとって、演じられる唯一の役柄は、自分たちの障がいについてのみ話すキャラクターのようだ。あるいは、まるでそれが存在の全てであるかのように、そのキャラクターの人生が障がいを中心に展開する」「私たちの人生が悲しいものだと思い込むのはやめてほしい」と綴り、障がいのあるキャラクターを「障がい者」という側面だけにフォーカスするのではなく、多面的に描くこと、ステレオタイプをなくすことの必要性を訴えている(*5)。

『DOPESICK アメリカを蝕むオピオイド危機』などに出演するアレックス・バロン

『セックス・エデュケーション』や『ホークアイ』の俳優たちが語る、それぞれのキャラクターの意義

こうした課題に対してポジティブな変化も見られる。『セックス・エデュケーション』の車椅子に乗ったキャラクター、アイザック役を演じたジョージ・ロビンソンは、自身も実生活で車椅子に乗って生活している。

シーズン2からの新キャラクターだったアイザックは同シーズンで主人公の恋路を邪魔する行動をとり、一部の視聴者から嫌われた。だがロビンソンは、その部分こそがこのキャラクターの好きなところだと語る。彼は、人気のティーンドラマである『セックス・エデュケーション』初の障がい者のキャラクターとして視聴者が期待する、「聖人のような」イメージを覆すことを楽しんだという(*6)。

『セックス・エデュケーション』でアイザックを演じたジョージ・ロビンソン

また、MCUのドラマシリーズ『ホークアイ』で自身と同じく耳の聴こえないネイティブアメリカンのキャラクター、「エコー」ことマヤ・ロペスを演じたアラクア・コックスは、自身がキャスティングされたことの意義をこう語っている。

「ろう者のコミュニティーは、ろう者のキャラクターを当事者が演じることを望んでいるため、この役を大いに支持してくれています。ほとんどの場合、これらの役を演じるのは聴者でしたが、ついに真のレプリゼンテーションが実現したのです」(*4)。コックスのマヤ・ロペスは、『エターナルズ』のマッカリ(ローレン・リドロフ)に続いて、MCU史上二人目のろう者のヒーローだ。

『ホークアイ』でマヤ・ロペスを演じたアラクア・コックス

ニールセンの昨年の調査では、回答者の48%が自分のアイデンティティグループが登場する作品を見る傾向が高くなるということも報告されている。また同年の発表によれば、この10年間で障がいの描写を含む映像コンテンツの数は、その前の10年間と比較して175%増加したという(*7)。こうした変化が加速し、持続していくため、より包括的なキャスティングやスタッフの起用、そして一面的でない物語が増えていくことが求められている。



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