わたしたちのヘルシー

IMALUと考える、女性の健康。デリケートゾーンと「腟内フローラ」の関係とは

においやかゆみ(*1)、ムレなど、女性を悩ませるデリケートゾーンの不調。対処しても、繰り返してしまったり、年齢やライフスタイルの変化によって症状が変化したり、悩みの種がつきない……という人も少なくないのではないでしょうか。

タレントのIMALUさんは、Podcast番組『ハダカベヤ』で女性の身体や性のお悩みについて積極的に発信されています。IMALUさんによると、リスナーからはデリケートゾーンの悩みが多く寄せられるそうです。

デリケートゾーンの症状や女性の体調変化に影響しているのが、「腟内フローラ」という腟内の菌のコミュニティです。今回は、オープンにしづらい「腟まわり」の話や女性の健康、身体の変化について、IMALUさんと産婦人科医の原田美由紀先生が対談。健やかに過ごせるようになるためのヒントを探りました。

「こんなものかな?」と見逃さない。9割の女性が悩むデリケートゾーンのトラブルとは

—IMALUさんは『ハダカベヤ』でリスナーさんにアンケートを取っていらっしゃいますが、デリケートゾーンのお悩みはほかのトピックと比べて回答が多いそうですね。

IMALU:そうなんです。とくにかゆみとにおいのお悩みがダントツで多かったですし、そもそもデリケートゾーンに関して悩んでいる人が本当に多いんだな、と。デリケートゾーンの悩みって比較できないじゃないですか。

IMALU:だから、「自分はこれが普通だと思っているけど本当は変なのかな?」とか「ちょっと違和感があるけど別に大きな問題ではないしこのままでいいか」と思ってしまいがち。トピックとしてもまだまだ喋りづらいから、何が普通か変かもわからないという方が多いと思うんです。

原田:IMALUさんがおっしゃったとおり、婦人科外来でもいちばん多いお悩みはかゆみとにおいです。2021年に20〜50代の女性約1000人を対象にしたアンケート(*2)でも、デリケートゾーンに悩みがある、あるいは過去にあった方は全体の9割くらい。そのうちのトップの悩みがかゆみなんですよ。

—数字で見ても多くの人がお悩みを持っているのですね。

IMALU:私も生理中にナプキン(*3)を使っているときにかゆみを感じることがあったのですが、それが当たり前だと思っていて。でも、2年前からデリケートゾーンウォッシュや保湿剤を使うようになり、かゆみが少しおさまってきたんですよ。それで初めて「本当はかゆみや不快感を感じていたんだ」と気づきました。小さなストレスが意外とあったんだなって。

—ケアをしたくてもどうやったらいいかわからないとか、何を使ったらいいかわからないという人もたくさんいるのではないかと想像します。

原田:さきほどお話しした調査の結果でも、デリケートゾーンケアについて「過去にしたことがある」「気になるものの、したことはない」と半数以上の女性が回答していて、そのうちの4割以上が「何をしたらいいかわからない」と回答しているんです。モヤモヤしているけど、これと言った手を打たずにそのままにしている人は多いと思いますね。

IMALUさんがおっしゃったように、女性のちょっとした悩み、たとえば少し生理痛(*4)があるとか、おりもの(*5)がいつもと若干違うとかって、「こんなものかな」と思ってしまいがちなんですよね。

女性の健康を知るバロメーター。「おりもの」ってそもそも何?

IMALU:そうですよね。私はデリケートゾーンのケアをし始めてから、おりものの量が減った気がするんです。そもそもすごくベーシックな質問なんですけど、おりものって一体なんなんですか?

原田:おりものはいわゆる腟の粘膜の分泌物です。生理の血と同じように子宮のなかから出てきていると思っている方がいるのですが、おりものは子宮から出ているわけではないんですよ。

腟の粘膜がいい状態、腟のなかがいい環境になっていると、おりものも適正に分泌されます。それが崩れてしまうと、おりものが増えたり、かゆみをともなったりする場合があります。

—「腟の粘膜がいい状態」「腟のなかがいい環境」というのは、どういうことなのでしょうか?

原田:腟のなかってすごくいろいろな種類の菌がいっぱい住んでいて、ひとつの世界をつくっているような感じなんです。それが「腟内フローラ」または「腟の細菌叢」と呼ばれているものです。

デリケートゾーンのケアなどをすることで「腟内フローラ」が適切な状態になると、おりものの分泌量が正常に保たれるということはあると思います。IMALUさんが変化を実感なさっているということは、ケアによって「腟内フローラ」のバランスが整えられたのかもしれませんね。

「腟内フローラ」を整えるための適切なケア

—IMALUさんは「腟内フローラ」という言葉を聞いたことはありましたか?

IMALU:いえ、知らなかったです。どんなものかもっと聞いてもいいですか?

原田:「腸内フローラ」や「皮膚の細菌叢」という言葉はきっと聞いたことがありますよね。それと同じように考えていただければと思います。腸や皮膚、腟って細菌がたくさん住んでいるんです。

乳酸菌をはじめ、住んでいることによってむしろ腟がきれいに保たれるなどいい作用を持っている菌もいるし、増えてくると支障をきたす病原菌のような菌もいます。いろんな菌がたくさん集まってバランスをとって集団をつくっている、それが「腟内フローラ」です。

IMALU:なるほど。バランスをとっているということは、菌をすべて殺したらいいというわけではないのですか?

原田:そうなんです。抗生物質で悪い菌を殺そうとすると、じつはいい菌も死んでしまう。その結果、なんだかずっと腟の状態がよくないという悪循環に陥ってしまうこともあります。その状態を知るには、おりものがひとつのバロメーターになってくると思います。

—では、腟内をいい状態に保つにはデリケートゾーンのケアがまずは大事なのでしょうか?

原田:自分の腟の形状や状態をちゃんと知って、ほかの身体の部位と同様に腟まわりを清潔に保つことは、おりものやにおい、かゆみなどのトラブルを避けるために重要です。デリケートゾーンのケアと言っても、少なくとも現在の医学研究では腟内の見えないところまで洗浄することはおすすめしません。

腟のなかには子宮の出口もあるので、そこを洗ってしまうと逆にばい菌が入って炎症を起こすこともありますし、抗生物質が入っているようなもので洗うといい菌も殺してしまうことになります。

女性ホルモンとストレス、腟内環境の関係

—デリケートゾーンのケアは外陰部にとどめたほうがいいのですね。「腟内フローラ」にアプローチするには何が必要なのでしょうか?

原田:「腟内フローラ」という考え方自体、できてから数年という新しいものなので、特に効果的だと言えるものはまだないんです。細菌叢のなかでいちばん最初に医学的な研究が進み、研究や実験の技術が広まってきたのが腸内フローラなのですが、それですらここ10〜15年くらいの話。

原田:後発の「腟内フローラ」の内容実態はまだまだこれからの分野です。ただ、「腟内フローラ」を改善する菌を摂取することが大切だということはわかってきました(*6)。たとえば、整腸のために乳酸菌を飲むように、腟内にある程度定着する乳酸菌をサプリメントで摂取し、身体のなかから整えるのがひとつの方法と言われています。

IMALU:「腟内フローラ」の状態って、ストレスは影響しますか? 私は奄美大島と東京で二拠点生活を始めたのですが、住み始めてから明らかにストレスが減ったなと思っていて。

原田:ストレスや生活習慣の影響はありえます。ストレスによってホルモンバランスが崩れることがありますよね。おりもの、つまり腟内からの分泌物の話をしましたが、粘膜の細胞って女性ホルモンによっていい状態に保たれる部分もあるんです。

たとえば、閉経して女性ホルモンの分泌が下がってくると、腟の粘膜の細胞が、言うなれば冬の手荒れのような状態になり炎症を起こしやすくなる。それでかゆみが出たり、おりものが変化したりすることがあります。なので、ストレスからホルモンバランスが崩れて腟内に影響することはあるんじゃないかなと。

IMALU:閉経しても悩むんですか……? 年齢によっても、子どもを産む・産まないによっても悩みは変わってくるんでしょうけど、ずっと続くんですね。

原田:そうですね。年齢によって幅広く悩みのポイントが違うんです。妊娠が可能な年齢の方は生理のお悩みがある方もいますし、もうちょっと年齢の上がった方もまた別のお悩みがあります。ただ、妊娠準備期〜妊娠期、閉経期の健康のためにも、「腟内フローラ」を整えておくことが大切だと考えられています。

—それはなぜでしょうか?

原田:子宮のなかにもすごく少ないのですが腟内フローラと似たような菌が住んでいるんです。妊娠準備期にその状況が悪いと着床しづらい可能性があるということがわかってきています。また、そもそも早産の予防法が確立しているわけではないのですが、「腟内フローラ」の乱れも早産に関連するのではないかと言われはじめています。 

閉経期はやはり女性ホルモンの分泌低下によって腟の粘膜の状態が揺らぎやすいので、それによって「腟内フローラ」のバランスも崩れて、おりものの悩みが増えてくることがあると思います。

IMALU:なるほど。私は今年34歳になるんですけど、まわりは結婚してない人が多くて、逆に結婚はしなくてもいいけど子どもはほしいって子がいたり、去年妊娠した子がいたり、子どもどうしようって考え始めている子もいて。

妊娠・出産については、そろそろリアルに考えたほうがいいよねって年齢になってきましたし、少しずつライフステージの変化を感じはじめています。今じゃなくて、3年後、5年後に急にほしくなるかもしれないし、女性にはやっぱりどうしてもリミットがあるから、すごく悩みどころですよね。

原田:ライフプランって本当に個人によりますよね。でもここ5年くらいで、以前に比べると、女性の妊娠のしやすさにはリミットがあると意識される方が多くなってきたなと思います。生理があるあいだだったら妊娠できるだろうと思う方が比較的多かったのですが、妊娠について考えたり、ライフプランを考えたりする年齢が若くなってきた印象がありますよ。

IMALU:ただ、いざ子どもをつくろうと思ったときに子どもができる身体かもわからないですよね。もしかしたらパートナーが不妊(*7)かもしれないですし、試してみないとわからない。

それはそれで、じゃあ子どもが産めないならこうしようと選択できたり、いずれほしいとなったりしたときのためにいま健康でいることが大事ですよね。

ライフステージによって考えたい、「プレコンセプションケア」

—妊娠や出産について考えはじめた人が知っておくべきことはありますか?

原田:もし妊娠できるかどうかを知りたかったら、病院やクリニックでブライダルチェックができるので試してみるといいかもしれません。

その結果がよかったから必ずしも妊娠できる、悪かったから必ずしも妊娠できないという話ではないのですが、一応検査することができます。IMALUさんがおっしゃったように妊娠したくなったときのために身体をいい状態にしておくのは、「プレコンセプションケア」(*8)という考え方においてとても重要なんですよ。

IMALU:プレコンセプションケアって、はじめて聞きました。

原田:プレ=前、コンセプション=妊娠、という意味なのですが、妊娠より前の段階で身体を整えておくということです。ひいては、妊娠する / しないに関わらず、自分の身体に意識を向けることが健康のためのケアのひとつだと言われています。

—「腟内フローラ」を整えることもプレコンセプションケアのひとつとしてとらえていいのでしょうか?

原田:そうですね。プレコンセプションという観点もそうですし、冒頭にもお話ししたように、「腟内フローラ」を整えることで「たぶん普通だろう」とか「我慢できる程度だからいいよね」と思っていたデリケートゾーンのちょっとしたトラブルもきちんと解決していけると思います。そこが解決すると、メンタルにもいい影響が出ると思うんですよね。

まずは自分の身体に意識を向けることが健康への第一歩

—「腟内フローラ」をはじめ、女性の身体や健康についての知識を正しく知ってシェアしていくためにはどんな働きかけが必要だと思いますか?

IMALU:身体について話しづらいと思っている方が思っている以上に多いので、言える人からどんどん大声で言っていけば「あ、言っていいんだ」って思ってくれる人もいると思うし、知識をシェアしていけると思います。私自身、女性の身体について話しつづけていたら、すごく楽になったというか。当たり前にある身体のことや生理現象を恥ずかしいと思う必要はないと個人的には思っています。

原田:こういうふうに女性の健康問題について話せる場がもっと広がっていくと、多くの人が快適に生きられるようになるのかなと思います。身体の異常 / 正常以前の問題として、最後の生理がいつか覚えていないとか、ちゃんと生理がきているかもあやふやになっている方もいるので、自分の身体のことを自分で知って、情報を取りにいこうというマインドになる人が増えるといいですね。

デリケートゾーンのお悩みや生理痛などを我慢していることで、大きな病気の発見が遅れてしまう可能性もありますし、今後妊娠をしたいと思ったときにしづらくなってしまう場合もあります。まずは自分の身体に意識を向けることが健康を考える第一歩だと思います。

パートナー企業情報
帝人株式会社

帝人では、これまで培ってきた「健康」への取り組み成果を、「女性の腟内フローラを整える乳酸菌UREX(ユーレックス)」などの安心安全で機能性を備えたプロバイオティクス素材を通じて、新たな女性の健康へのアプローチと貢献に取り組んで参ります。
ウェブサイト情報
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Women's Health Action×CINRAがお届けする、女性の心とからだの健康を考えるウェルネス&カルチャープラットフォームです。月経・妊活など女性特有のお悩みやヘルスケアに役立つ記事、専門家からのメッセージ、イベント情報などをお知らせします
プロフィール
IMALU (いまる)

タレント。1989年東京生まれ。語学を学ぶためカナダの高校へ留学。帰国後、ファッション誌でモデルデビューし、現在はタレントとして活動中。2021年より身体や性の悩み、対人関係や恋愛、社会課題について語るPodcast番組「ハダカベヤ」をstand.fmで配信中。現在、東京と奄美大島で二拠点生活をしている。

原田美由紀 (はらだ みゆき)

産婦人科医、日本産科婦人科学会専門医・指導医、日本生殖医学会生殖医療専門医・指導医、日本産科婦人科内視鏡学会腹腔鏡技術認定医、日本女性医学学会女性ヘルスケア専門医、日本がん・生殖医療学会認定ナビゲーター。東京大学医学部附属病院の体外受精診療実施責任者ならびに生殖医療・良性疾患チームの病棟医長として不妊診療、内視鏡手術に携わる。「卵巣機能に着目したプレコンセプションケア」をライフワークとしており、特に多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の病態、抗がん剤による卵巣毒性、加齢による卵巣老化に焦点を当て研究活動を行なっている。



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