カレーはなぜカルチャーと相性が良い?台湾・高雄『TTCX』に出店するネグラカレーに聞く

カレーとカルチャーは、つながっている。

それを体現する存在が、台湾・高雄で開催される『台湾テクノロジーカルチャーエキスポ(TAIWAN TECHNOLOGY x CULTURE EXPO )』(以下、『TTCX』)内の企画『Mixtape:CITY’S Party. Zip』に出店する、ネグラ(妄想インドカレー)、ピワン、カレチヤンチ、カレーの店 てらぴんといった、日本で人気の4つのカレー店だ。

『TTXC』は、AI新世代の到来とともに、台湾文化省、高雄市政府、デジタル開発省が協力して創設。テクノロジーとカルチャーの融合を掲げ、すでに高雄で開催実績がある人気イベント『高雄映画祭』や国内外のアーティストの演奏が楽しめる『Takao Rock! 2023 - 打狗祭』をも巻き込んだ大規模フェスだ。『高雄映画祭』には、宮藤官九郎がゲストとして出席したり、カンファレンスに田口清隆監督が登場するなど、日本の著名人も出演。今回が第一回目の開催となり、2023年10月7日から10月22日の16日間行なわれる。

そのなかで10月14日、15日に開催する『Mixtape:CITY’S Party. Zip』は、高雄市政府文化局が気軽に高雄の街を楽しんだり、カルチャーに触れたりする機会を提供するべく企画したもの。高雄の4か所にわたって音楽×パーティーをテーマにイベントを開催する。今回はCINRAもパートナーとして参画しており、日本のカレー店や雑貨屋、角館健悟や『歯のマンガ』で知られるカトちゃんの花嫁などのアーティストを招致するなどしている。

なぜカレーとカルチャーは不可分なのか。東京・高円寺でネグラを営む大澤思朗さん・麻衣子さんにインタビュー。また、本イベントに出演予定の音沙汰(永原真夏、工藤歩里からなる音楽ユニット)などからメッセージもいただいた。

カレーは、そのときどきで自由にできる「余白」がある。それはストリートカルチャーも同じ

─『TTCX』内で開催される『Mixtape:CITY`S Party. Zip』では、東京のカレーカルチャーを紹介する役割としてネグラをはじめ、日本で人気のカレー店が2日間にわたってフードを提供します。そもそもカレーとカルチャーは、どんな関係性にあると思いますか?

思朗さん:うーん……どうなんでしょうかね。そもそも、カルチャーって何なのかなって。

麻衣子さん:でもカルチャー、好きだよね?

思朗さん:……好きです(笑)。自分としては、表現のひとつとして、カレーがあるんじゃないかなと思っています。

ストリートカルチャーとカレーって、相性がいいと思うんです。どちらも型がカッチリと決まっているわけではなく、「即興」ではないけど、そのときどきで自由にできる余白がある。僕たちがやっているカレーも、お手本みたいなものがカチッとあるわけではなくて。

─もともと思朗さんはイタリアンの料理人でしたが、自分としてより自由に楽しくつくれるものをと、カレーに転身されたそうですね。コンセプトの「妄想インドカレー」とは?

思朗さん:僕たちはインドに行ったことがないので、本場のカレーを想像でつくるしかない。そこから生まれたコンセプトです。この言葉のおかげで、インド料理にはないような食材や製法も、躊躇せずに使えるようになったんですよね。

麻衣子さん:このコンセプトが話題になって、たくさん取材もしていただきました。ただ、だんだんとその期待値と、私たちがやっているものとのバランスが取りづらくなってきて……。

思朗さん:妄想インドカレーというワードがキャッチーなので、みんな自然とそちらを期待する。でも、ネグラは決して架空のインドカレーをずっと提供したいわけではなくて。あくまで楽しいアイデアのひとつにすぎないんです。

麻衣子さん:それで、ちょっと落ち着いて自分たちのスタイルをもう一度考えてみようとなって、妄想インドカレーにも、国や食材にもとらわれない、いまのかたちになりました。

思朗さん:最近は、「妄想インドカレーと越境庶民料理店」と言ったりしています。

カレーも音楽も、別々ではなくひとつに合わさったカルチャーの場をつくる

─そんなネグラといえば、さまざまなアーティストとコラボしてイベントを開催したり、店内で色んなグッズを販売したりと、カルチャーと結びついている印象が強いです。

麻衣子さん:思朗をはたから見ていて思うのは、カレー屋をするなかで、カレーだけでなくプラスαの部分がどんどん欲しくなっていったんだなということ。だから「チリチリ酒場」(※)みたいに、音楽やマーケットを組み合わせたイベントも始めて。

思朗にとってのカルチャーは、カレーはカレー、音楽は音楽と別々になっているのではなく、ひとつに合わさったものなのかなと感じます。

※カルチャーバザールと音楽酒場を組み合わせたイベントで、これまで各地で開催。ネグラによる妄想庶民料理の提供のほか、DJプレイ、音楽ライブ、アートライブ、雑貨販売などを行なう。

思朗さん:たしかに。7年くらい前、「これ好きだな!」と感じた経験があって。

大阪に「FOLK」という古本店があって、そこではリトルプレスから大手出版社のものまで、さまざまなカルチャー系の書籍を扱っています。漫画の原画展なども開催していて。で、FOLKは地下の店で、その上の1階を「谷口カレー」というカレー屋が間借りすることになったんですが、それをFOLKの店主さんがアルバイトで手伝うことになったんです。

冷静に考えると、おかしいですよね。場所を借りる側の店で、貸す側がバイトするって。時間によっては、カレー目当ての行列ができたりもする。その、流動的で自由に関係性が変わっていく、だけど好きなものによって人間的につながっているみたいな空間が街中に成立していることが、すごくいいなと思って。いまでも忘れられない景色です。

─好きなカルチャーをとおして、かたちにとらわれることなくつながっていく、みたいなイメージでしょうか。

思朗さん:何かと何かがくっつく「余白」がある、みたいな。

カレー屋の店主さんって我が強い人もいて、全員が仲良いわけでもないんですが、意外と横のつながりはあります。それこそ今回高雄へ一緒に行く「ピワン」も「カレチヤンチ」もGOFISHのテライショウタさんによる「カレーの店 てらぴん」も、あるいは先ほどの谷口カレーも。それぞれカレーの方向性は全然違うので、普通に考えたらつながりにくいと思うんです。でも、人と人のコミュニケーションによって、つながれているのかなと。

─お客さんとのつながりにも共通する話だったり?

思朗さん:そうですね。この規模感のお店が成立するには、もはや人間関係でしかないとも思っています。カレーのお店は他にもたくさんあるだけに、価値観の合う人たちとつながらないと、生き残れないというか。やっぱり本当に好きなものって基本的にずっと変わらないので、いろいろな好みがドンピシャにつながる人たちと、一緒に経済をまわせていけたらなと思います。

─そうしてさまざまな人やものごととつながることで、ネグラもかたちを変えて進化していく。

麻衣子さん:それでいえば、うちの料理はもはやカレーじゃないと言われたりもします(笑)。

思朗さん:がっつりスパイスが入っているわけじゃないし、いまではカレーのベースとなる玉ねぎすら、ほとんど使っていません。現在は主に麻衣子が調理をしているんですが、彼女がより即興性を重視する傾向があって、「これだけは」みたいな方程式もけっこう捨てられてしまう。

麻衣子さん:捨てました(笑)。そうして変わっていくなかで離れていく人もいますが、「これがネグラなんだね」と受け入れてくれる人もいて、いまのお店があります。

思朗さん:この前、気づいてしまったんですよね。ナンバーワンではなく、オンリーワンになりたいんだって(笑)。

ネグラを始めるとき、いろいろなお店を食べ歩いたんです。当時は「この店は、あの店より味が弱いな」とか「この店は、あの店寄りだな」と、頭の中でマトリックスみたいなものを描きながら食べていましたが、だんだんそれがさびしくなってきて。それもあって、相対的に見比べるのではなく、一皿一皿きちんと向きあって「ここがおもしろいから、これはこれでいいじゃん!」と考えるようになりました。

高雄の現地の食材をつかって、これまでにないカレーをつくりたい

─あらためて『Mixtape:CITY`S Party. Zip』出店の意気込みを聞かせてください。

思朗さん:じつは、今回高雄に行くカレー店4店でつくったLINEグループがあるのですが、いまだかつてない緊張感が漂っています。

みなさんとは、これまでいろいろなイベントでコラボしてきましたが、今回は初めて訪れる異国の地というのもあって、「現場でなんとかする」が通じないんじゃないかと。

麻衣子さん:現地で調達できる食材が日本と違いますし、もし「あの食材がない!」となっても、なんとかならない可能性があるので。

思朗さん:いままでのコピーではない、「新しいことをやろうとしているんだ」といった緊張感とワクワク感があります。

台湾といえば今年の2月にも、チリチリ酒場として台北へカレーをつくりに行ったんですが、現地で出会った食材で料理する楽しさがすごくありました。ぜひ今回の高雄でも、地元の食材を活かしたカレーをつくれたらなと。

─楽しみです。最後に、高雄という土地に対して思うことを教えてください。

思朗さん:高雄は今回が初めてですが、台北と台南に続く第三の都市として独自の成長を遂げている印象があって、とても興味があります。都市のまわりに豊富な自然があり、街のいたるところに登山口もあったりして、自然と共存している地域だとも聞いています。それこそ、カルチャーの余白がある都市として、日本のカルチャーとの交流の可能性をすごく感じますね。

また前回、高雄から近い屏東(ピンドン)を訪れた際に客家(ハッカ)族の発酵調味料がとても印象的だったので、それも活用できたらおもしろいなと。

麻衣子さん:『台湾テクノロジーカルチャーエキスポ(TAIWAN TECHNOLOGY x CULTURE EXPO)』はかなり大規模なお祭りだと聞いています。『Mixtape:CITY`S Party. Zip』では、日本のカレーカルチャーを体感していただき、ぜひ多くの台湾の人に「日本を訪れた際は、必ず1食はカレーを食べよう」と思ってもらえるようにがんばります!

『Mixtape:CITY`S Party. Zip』出演アーティストと出店店舗からメッセージ

─今回のイベントへの意気込みを教えて!

角館:高雄は台湾のなかでも、より海が近く穏やかなムードが好きです。 思えば台湾でのライブは全部で7回ほどで、旅行を含めるとたくさん来訪してることに気がつきました。今回はひとりでの来訪ですが、サウンドスケープを感じるライブにできたらと思ってます。

記憶に残る素敵な旅になるでしょう!台湾は南端にある高雄。海沿いの街でのライブ楽しみにしてます!

音沙汰

─台湾(高雄)のイメージは?

音沙汰:ツアーで一度、おうかがいしたことがあります。のどかさと、伝統と、芸術やカルチャーが共存しているイメージです。

─今回のイベントへの意気込みを教えて!

音沙汰:自分たちの演奏もそうですが、共演者のみなさまをはじめ、イベント全体の空気がとっても楽しみです。

─イベント来場者へ一言!

音沙汰:身体を揺らしたり、座ったり、目を瞑ったり、ボーっとしたり……。心地の良いかたちで、自由に聴いていただけたら嬉しいです。楽しみましょう!

─今回のイベントへの意気込みを教えて!

LIVERARY Extra:高雄に行ったことがないので現地のイメージはあまりないのですが、今回のイベントを通じて、これまで知らなかった、出会えなかった、新しい台湾カルチャーに触れられる気がしていて、とても楽しみにしています。

─イベント来場者へ一言!

LIVERARY Extra:台湾の方々に、自分たちのことや、名古屋及び日本のカルチャーを知ってもらえる良い機会だと思ってます。平山昌尚(HIMAA)グッズを中心にさまざまなクリエイターとのコラボグッズを持っていきますので、よろしくお願いしますっ。

─台湾(高雄)のイメージは?

歯のマンガ:10年ほど前に一回だけ高雄に来たことがあって、どこか忘れましたがキウイのカキ氷を出すお店があっていままで食べたどのカキ氷より美味しかった記憶があります。今回、高雄へ久しぶりに行くので記憶を頼りにお店に行こうと思っています! あと余談ですが私の叔父は高雄で生まれたから「高雄」という名前です。

─今回のイベントへの意気込みを教えて!

歯のマンガ:大阪・福島にあるスパイスカレー屋さん「大陸」で初めてスパイスカレー食べたんですが、こんなに美味しい物が世の中にあるのかと驚きました。それからスパイスカレーにハマって大阪のスパイスカレーのお店はかなり回りました。今回カレーのイベントに合わせてカレーのグッズもつくりました!

大阪、東京、北海道、福岡など数々の名店に行きましたがそのなかでもネグラカレーさんのカレーはとても美味しかったので今回一緒に出店できて嬉しいです!

イベント情報
『Mixtape:CITY’S PARTY .Zip』

日程:2023年10月14日(土)〜10月15日(日)
START 15:00 CLOSE 21:00

開催地:高雄・中央公園(セントラルパーク)
801 台湾 Kaohsiung City, Qianjin District

入場料:なし
店舗情報
ネグラ(妄想インドカレー)

住所:東京都杉並区高円寺南3丁目48-3
営業日時:公式SNSよりご確認ください。


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