朝ドラ『ばけばけ』ヘブンのモデルとなった小泉八雲とは?16歳での失明など、激動の生涯を振り返る

第113作目のNHK連続テレビ小説となる『ばけばけ』が、9月29日からスタートする。

同作は、明治時代の松江の没落士族の娘・小泉セツがモデルの物語。外国人の夫である小泉八雲ことラフカディオ・ハーンとともに「怪談」を愛し、急速に西洋化が進む明治の日本で埋もれてきた名も無き人々の心の物語に光をあて、代弁者として語り紡いだ夫婦を描く。

小泉セツをモデルにした松野トキ役を髙石あかり、小泉八雲をモデルにしたヘブン役をトミー・バストウが演じる。

小泉八雲は16歳で左目を失明したほか、親戚の破産から単身でアメリカに移住するなど、激動の生涯を生きた怪談作家だ。

今回の記事では、小泉八雲の足跡について紹介する。

16歳で左目を失明。移住を繰り返した波乱万丈の人生

1850年にギリシャ西部のレフカダ島で生まれた小泉八雲。父はアイルランド出身の軍医で母はギリシャ出身で、パトリキオス・レフカディオス(英語ではパトリック・ラフカディオ・ハーン)と名付けられた。当時のアイルランドはまだ独立しておらず、八雲はイギリス国籍を保有していた。

2歳のときにギリシャからアイルランドに移住。イギリスとフランスでカトリックの教育を受けていたものの、16歳となる1866年、友人との遊戯中に左目を失明。ここから八雲の人生が大きく変化し始める。

翌年には遠縁にあたるヘンリー・モリヌーが投機に失敗。その影響でキリスト教を学んでいたアショー・カレッジを中退することとなり、19歳となった八雲は単身でアメリカへ移民として渡ることに。

移住後、貧しい暮らしをしていた八雲は、肉体労働をしながら図書館に通っていたというが、19歳のとき印刷屋を営むヘンリー・ワトキンと出逢い、印刷所で論文などの校正作業をするようになる。変わらず頻繁に図書館に通っていた八雲は物語を書くようになり、その後出版社で働くようになってからも寄稿を続け、最終的にはシンシナティ・エンクワイアラー社主筆のジョン・コカリルに文才を認められたことで記者となった。

正式にシンシナティ・エンクワイアラー社の社員となった1874年。24歳となった八雲は下宿の料理人であるアリシア・フォリーと結婚する。しかし、当時は異人種間の婚姻が違法とされており、結婚から1か月ほどでエンクワイアラー社を解雇。シンシナティ・コマーシャル社に移ることとなる。

フォリーとの結婚生活も27歳になる頃には破綻してしまい、シンシナティからルイジアナ州ニューオーリンズへ移住。その後カリブ海のマルティニーク島へ移動しつつさまざまな媒体で取材や執筆を続けた。

来日のきっかけとなったのが、35歳となる1884年末から1885年にかけて開催された『ニューオーリンズ万国産業綿花百年記念博覧会』だ。博覧会の執筆作業に忙殺されるなかで日本館の展示品に興味を引かれたことや、ニューヨークで出会った『古事記』などの影響で日本行きを決意し、40歳となる1890年4月に来日した。

同年8月には松江にある島根県尋常中学校に赴任し英語教師に。9月には出雲大社に参拝し、外国人として初めて昇殿を許されたという。

松江の士族の娘であった小泉セツと出会ったのは1891年。身辺の世話をするために雇われたセツと共に鳥取や博多、関西、山陰、隠岐などに旅行へ行き、1893年の4月にはセツが懐妊。46歳となる1896年に日本への帰化が完了し正式に結婚し、三男一女に恵まれた。

現代に伝わる怪談も。小泉八雲の代表作を紹介

小泉八雲は、日本での生活を通して数多くの作品を執筆した。日本語がほとんどわからない八雲とセツは助詞などを抜いた特殊な日本語「ヘルンさん言葉」でコミュニケーションをとっており、『怪談』などもセツが語った物語を八雲が綴る再話形式で作られたという。

八雲の作品を手に取ってみたくなった方のために、最後に代表的な作品を3作品紹介する。

「耳なし芳一」が広まるきっかけにもなった『怪談』

1904年に出版された『怪談』は日本に伝わる民話や怪談、エッセイなどが20編収められている作品。「耳なし芳一」や「雪女」など現在知名度が高い怪談も収録されている。

八雲の新鮮な日本の印象が描かれた紀行文『知られぬ日本の面影』

八雲の来日第1作目となる同作には、1年3か月の松江滞在中や山陰各地への小旅行、1895年に熊本、隠岐を訪ねた際の紀行文などを収録。初版で26刷まで達するベストセラーとなった作品で、文学作品としての側面と、旅行ガイドブックとしての側面があったという。

ハーンの思想も見ることができる『骨董』

『怪談』と同じく、日本の古い伝説や民間信仰を題材にした作品集。9編の再話と11編の随筆から構成され、『新著聞集』の話を大胆に脚色した「茶わんのなか」や、ハーンの死生観、哲学的思想が現れているという「草ひばり」「露のひとしずく」などが収録されている。

小泉セツと八雲がモデルとなり、怪談を愛する夫婦の何気ない日常が描かれるという『ばけばけ』。史実との違いや怪談との関わりなど、これからの展開が楽しみだ。



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