つらかったら脱出してもいい。『我々は宇宙人』坂東龍汰×岡山天音が語る、学校という小さな社会

公開後、口コミを中心にじわじわと話題を広げ、観客動員数が16万人(10月12日時点)を超えた長編アニメーション映画『我々は宇宙人』。平成の田舎町で出会った二人の少年の30年を描くこの物語は、学校という「小さな社会」の息苦しさと、そこでしか生まれない時間のかけがえのなさが折り重なった作品だ。

声の主演を務めた坂東龍汰と岡山天音は、誰もが身に覚えのあるこの物語から、何を受け取ったのだろうか。「自分で選ばずに居着いた場所にいることは大変だった」と振り返る岡山に対し、坂東は、「その状況にまた戻ってみたいなと思う瞬間がある」と話す。

対照的な二人に、作品から受け取ったものや、いま学校に居場所がないと感じている人に伝えたいこと、若い才能とものづくりをすることについて聞いた。

得体の知れない熱量を持った映画『我々は宇宙人』との出会い

─まず、台本を読んだときに、この物語をどう感じたかを教えてください。

坂東龍汰(以下、坂東):本当に面白かった。幼少期の自分がそこにいて、その背中を追いかけさせられているような感覚になる、とてもノスタルジックな作品だなと思いました。それと、監督が紡ぎ上げた、きっとたくさんあったアイデアのなかから選ばれたエピソードたちのディテールの細かさに脱帽しましたね。

─岡山さんはどんなところに特に惹かれましたか?

岡山天音(以下、岡山):台本の印象ももちろんあったんですが、数十秒くらいの短い映像も拝見して。とにかく、得体の知れないものと出くわしたような、衝突してしまったような、とても強い印象がありました。

─見たことがないような映像、という感覚ですか?

岡山:生命力が溢れかえっている世界みたいなものが形成されていました。言語化はできないんですけど、言語化できないからこその出会いだったというか。直感的に「これは間違いない作品だ」と思いましたし、この世界を作った監督は神様みたいな存在だとも思いました。

暁太郎に自分を重ねた坂東龍汰。「対極」の翼を託された意味

─坂東さんは、先ほど「幼少期の自分がそこにいる」とお話しされました。岡山さんが演じた暁太郎のほうにむしろシンパシーを感じたと、別のインタビューでもお話しされていました。翼と暁太郎なら、重ねたのは暁太郎のほうだったんですね。

坂東:そうですね。初めて読んだときに感情移入したのは、暁太郎のほうが大きかったです。当時の自分の感受性や感覚、まわりの人と関わるのが難しいと感じる瞬間なんかが、すごく似ている部分があって。いまでもそういう部分は全然残っています。

でも、監督は僕の声を聞いて翼役としてオファーをしてくれたと聞きました。きっと、僕の声にのっている、また違う部分の背景のようなものを見抜いてくださったんだろうなと思いました。いただく役によって自分と対極のものが来ることもあるので、翼という役をいただけたことは、すごく嬉しいことだなと思いましたね。

─岡山さんが演じた暁太郎は、ちょっと変わった、特別な子として見られてしまう子だと思います。青年期を演じるうえで、ご自身と重なる部分や、何か感じたことはありましたか?

岡山:自分のパーソナルな部分と、具体的なエピソードで重なる箇所はなかったと思います。でも、普遍的なところは、誰しも近しいものを持っていると思います。人それぞれ個性がありますが、枝葉ではない、根の部分では共有できるものがある。だから理解はできるはずだと思って、そういうふうに役に接近していった感じです。

「自分で選んでいない場所」の息苦しさ。学校という小さな社会について

─この作品は、子どもの頃の嫌な思い出も楽しい思い出も、どちらも蘇ってくる作品だと思います。学校はとても小さな社会で、まわりから浮いてしまうのが嫌で取った行動が、二人のあいだに亀裂が生まれてしまう様子も描いています。学校の中で起きる、子どもたちの繊細さや残酷さも描いているこの作品について、思ったことがあれば聞かせてください。

坂東:自分の体験でいうと、そういう経験は社会に出てからのほうが多かったです。高校を卒業するまで、すごく少人数の、めちゃくちゃ規模の小さい学校に通っていたので(※)、学校でそういう経験をすることはあまりなかったかな。社会に出てからのほうが、孤立したり、いままでのようにいかないことに直面したりして、悩み事は増えましたね。

(※)坂東は小学校から高校まで北海道にあるシュタイナー教育の学校に通っていた。シュタイナー教育は指定の教科書を用いず、「エポックノート」という白紙のノートに授業の内容を生徒自身が書き込み、それが教科書となる。

─そのときは、どういうふうに対処されていたんですか?

坂東:対処……。なんだろうな。人と関わっていくのが好きだったので、人に対する興味をなくすことはなかったですかね。そこは絶やさずに持っていました。でも、合う合わないはあるし、当たり前ですけど、徐々に相手がどう感じているかを考えるようになっていきました。それまでは本当にオープンに、いろんな人のパーソナルスペースにズケズケ入っていくようなところがあったんですよ。そういう感じは、いまはもうなくなりました。

岡山:いま、自分はめちゃくちゃされてます(笑)。

坂東:この人は大丈夫だ、好きだとなるとそうしてしまうんですけど……。人と関わるうえで、自分の時間をどう使うか、誰と一緒に過ごすかという取捨選択が自然と行われるようになったのかな。

天音くんはどう? どんな学校生活だった?

岡山:平均的な感じでしたけど、小学校って、特に自分で選択しないまま、気づいたらその場所にいるという状況の子供が多いわけじゃないですか。それゆえの「埋まらなさ」というか、自分の中の空虚さみたいなものは、すごくあった記憶があります。

それは中学になっても変わらずで、それゆえの息苦しさというか。普通に友達と笑っている瞬間もたくさんあるんですけど、どこか空虚だった、という印象があります。やっぱり、自分で選ばずに居着いてしまった場所にいることは、自分にとって結構大変だったなと思い返しています。

坂東:いまは? その空虚さみたいなものは。

岡山:どうなんだろうね。基本的にはないよ。義務教育とは違って、この仕事は「ここにいなきゃいけない」という瞬間が続くわけじゃないからね。自分で選んでこの仕事を始めて、いろんなことの中から、常にずっと選び続けているから。

─その空虚さがなくなったのは、やはり、お仕事で世界が大きく変わったからというのが大きいのでしょうか。

岡山:単純に時間が進んで、学校を卒業したということもあるとは思います。いま思い返しても、あれはイレギュラーな状況だったなと思うんです。誰もが平均的に通る道ですけど、学校に通って、その場に「いさせられる」というのは、結構イレギュラーな状況だよなって……大人になってからは、全部自分で選択していかないといけないので。

坂東:そうだよね。でも、いま思うと、あの時間はある意味かけがえのない時間だったんだろうなとも思います。

岡山:自分は思わないな(笑)。

坂東:本当に?(笑) 義務で行かないといけない場所に、好きな子がいたら最高じゃん。どんな現場もいつか終わるし、いまは、そこに行けば強制的に誰かと一緒に時間を過ごす、という時間は限られているから。たしかにつらかったことも、悩みが多くなったことも、人間関係で抜け出せない苦しさもあったけど、その状況にまた戻ってみたいなと思う瞬間は、結構あるかもしれない。……納得してないね。

岡山:自分の外の世界のことにすごく囚われていたし、カーストみたいなものも気になってたし。

「つらかったら脱出してもいい」「学校がすべてではない」居場所がないと感じている人へ

─この映画を観る人や、このインタビューを読む人の中には、いま学校に通っていて、居場所がないなと感じている人もいるかもしれません。そういう人に、いま伝えたいことがあるとしたら、何かありますか?

岡山:いろんな状況が絡み合っていて、人それぞれで何とも言えないですけど、極論というか、本質的に言うと、やっぱり自分がつらかったら脱出するべきだと思うんですよね。僕はそうでした。行ったり行かなかったりでしたけど。ルールとかしがらみとか、いろいろあると思いますけど、学校に限らず、つらいことを無理して自分に強い続けることはしなくてもいいと思います。

─この作品の暁太郎と翼は、二人とも自分がいる場所に居づらさを感じていますが、まわりに適合している翼と、浮いてしまってどうしていいかわからないまま大人になった暁太郎、という対比がありますよね。つらいことへの対処も、人それぞれだと、いまの話を聞いて思いました。

坂東:そうですね。翼も暁太郎も、どちらの側面も自分にある、と思いましたね。うまく渡り合えてしまう自分もいれば、気づいたら孤立している自分もいる。話が全然通じていないし、一言発するだけで、みんながどんどん遠くなっていくような状況もある。ただ、そういう状況が続くと、やっぱりきついですよね。

いまは僕が学校に通っていた頃と社会も変わっていると思いますが、学校に通う時期って、まだまだわからないことが多い時期だと思います。これからどんどん知っていける、新しい世界が待っていると思いながら、僕は頑張っていましたね。

土地は広かったけど、すごく狭い世界で育ったので、東京という街に来てから自分はいろんなことと出会えました。東京じゃなくても、海外でもいいと思うし……別のところに目を向けて、新しいことを勉強してみたり、リフレッシュできることをしていくといいんじゃないかな、と思います。学校がすべてではないからね、本当に。

─とても共感します。

才能と出会い続けるために。同世代、下の世代と映画をつくるということ

─最後に、この作品は監督がまだ20代のうちに作った作品で、制作したNOTHING NEWもスタートアップのような会社です。若いメンバーで作られた作品に参加することについて、コメントをいただけますか?

坂東:監督は同世代です。次の世代を担っていく、僕と同世代の俳優や監督、クリエイターや、殺陣、照明、技師の方など、この業界を支える才能のある人たちと出会えることは、本当に宝物になっていくだろうし、今後ももっともっと出会っていかなきゃいけないと思います。

岡山:自分も、下の世代の方や、新しい価値観や考えと触れながら仕事をするのは、もともと好きです。実写の現場でも、先輩たちは先輩たちしか知らないものを知っていると思うんですけど、年下の人や若手の人たちに驚かされることが、自分にとってはすごく面白いことでもあります。新しい才能の方々に興味を持ってもらえて、呼んでもらえるような存在で居続けたいなと思います。

・坂東龍汰
ヘアメイク:後藤 泰
スタイリスト:李 靖華

・岡山天音
ヘアメイク:亀田 雅
スタイリスト:岡村春輝 (FJYM inc.)

作品情報
映画『我々は宇宙人』
2026年9月25日(金)より全国公開中

企画・監督・脚本: 門脇康平
キャスト: 坂東龍汰 岡山天音
山﨑天(櫻坂46) 松井ケムリ
槙木悠人 中込佑玖 鈴木咲 末永陽
音楽: Yaffle
主題歌: adieu 「ささくれ」 作詞・作曲:Yaffle (Sony Music Labels)
企画・製作・制作: NOTHING NEW
協力 : MIYU PRODUCTIONS

©NOTHING NEW, MIYU PRODUCTIONS


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