『クリエイターのヒミツ基地』

『クリエイターのヒミツ基地』 Volume17 黒田潔(イラストレーター)

『クリエイターのヒミツ基地』 Volume17 黒田潔(イラストレーター)

線にこだわるがゆえの、アナログとデジタル

黒田さんが線画のスタイルに行き着いたのも、無駄を省くデザイナーの着眼点があったからこそ。線の美しさにこだわった黒田さんの作品は、どのように出来上がるのでしょうか。続いて、先ほど紹介した「ヒミツ道具」をどのように使用し、制作を進めているのかを見ていきましょう。

下書き

「下書き」

まずは鉛筆での下書き。ポイントは、完全な模写ではなく、黒田さんなりの着眼点を加えたイラストにすること。例えば花のイラストを描く際には、花弁や茎、葉などの構造を完全に理解しておく必要があるため、常にオフィスに飾っておくことはもちろん、実際に対象となる植物を観にいくことも多いと言います。「ヒミツ道具」の部分でも触れたように、鉛筆の種類や芯の太さを細かく調整しながら、「線」のもととなる下書きを仕上げていきます。実際に芯の削り方が異なる鉛筆で線を書き比べてもらうと、表出するイメージの違いは一目瞭然。作品の根幹をなす、線の原型を作る大切な工程だと言えるでしょう。

筆入れ

筆入れ

お次は、トレーシングペーパーへの筆入れ。この工程では、ただ単に鉛筆の下書きをなぞっていくのではなく、余分な部分を排除し、フォーカスしたい部分を書き足していきます。取捨選択の基準は「対象をより魅力的に見せるには、どうしたらいいか」を追求すること。自然の保護色だったり、身を守る形状だったり、植物や動物が自然界を生き抜くために手に入れた機能的な部分の先にある、人間の心を魅了するような「デザイン性」を強調していきます。

ちなみに、トレーシングペーパーは「トチマン」製造のもの。世界堂で毎回同じ物を購入してくるそうです。大きな作品を制作する際には、丈夫でよれない厚めのトレーシングペーパーを使用していて、筆入れされたトレーシングペーパーは「原画」として大切にファイリングされていました。

パス抜き

パス抜き

最後に、トレーシングペーパーをスキャンしてパソコンに取り込み、パス化していく作業です。以前はマウスを使用していた黒田さんですが、描いた線をどれだけ綺麗にパス化できるかでイラストのクオリティが変わってくることもあり、より細かい作業に適したペンタブレットを使用するようになったとのこと。

黒田:ベジェ曲線でイラストの線をパス化していく際に、マウスではなくより手に馴染む「ペン」で作業することで、機械的になりがちな動作に「手書き」の感覚を与えることができます。最新機種を使ってみたら、より滑らかに描けるようになっていて驚きました。

こだわりの線を作り上げるために、アナログ、デジタル双方のツールを使いこなす黒田さん。1つ1つの工程を経て線を完成させていくことで、線の精度が高まるだけではなく、まるで感情のレイヤーまで積み重なっていくようでした。普段は完成した作品しかみることはありませんが、創作の裏側を探ってみるとクリエイターの血と涙の結晶が見えてくるようで、作品を鑑賞する心持も変わってきそうですね。

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