橘るみ(バレリーナ) インタビュー

一つの動きにもストーリーを

―橘さんはどんなきっかけでバレエを始めたんですか?

:子供のころ、家の近くのバレエ教室がガラス張りで、そこからちっちゃな子達がレッスンをしてみるのを見て憧れたんです。それで、バレエってなんだかわからないまま始めたんですけど、それ以来本当にはまっちゃいました。牧阿佐美バレエ団(以下、牧バレエ団)に通わせていただいていました。

―思春期といえば友達と遊びたい時期だと思いますが、苦ではなかったんですか?

:もちろん友達と遊びもしましたけど(笑)、バレエが好きでほとんど毎日レッスンをしていました。高校を卒業する時にはなんとなく、自分はバレエでやっていくんだと思っていましたね。そう思うきっかけになったのが、高校の時に観た牧バレエ団の公演です。大畠律子さんがバレエ『リーズの結婚』の主役をやっていて、端っこでもいいから私もこの舞台に立ちたいと思いました。

―クラシックバレエを踊っていて、どのようなところに魅力を感じますか?

:同じ作品を踊っても、踊る度に奥が深いなと感じるんですよね。そういう、ゴールがないのがクラシックバレエの魅力だと思います。例えば先程(インタビュー前の稽古で)踊っていた『くるみ割り人形』(石井清子版)は、牧バレエ団の振付と全然違うんです。バージョンが違うから身体で覚えるのに時間がかかりますし、まだ手探りの状態なんですけど、日々新鮮で充実しています。バージョンが違うと踊る気持ちも違うように感じます。

―2008年1月に新国立劇場で上演する『白鳥の湖』では、オディールを躍るらしいですね。橘さんにはオデットというイメージがあるのですが。

:これまでオディールも何回かやらせていだだいています。石田種生先生に教わるのは今回が初めてですが、わたしの個性を尊重して振りやアドバイスをくださいますし、「一つの動きにもストーリーを」ということを教えてくれます。自分でも理解をして、納得して動けるようになってきました。何度も同じ役をやっていたし、そんなにパ(バレエの動き)が変わっているわけではないのですが、とても新鮮に取り組んでいます。

―オディールというと難易度が高い踊りというイメージがありますが、これまでと違う点などはありますか?

:確かにオディールはテクニックが必要な役ですし、実際にやらなければいけないテクニックも多いのですが、石田先生とのリハーサルを通して、テクニックに傾き過ぎずにストーリー性を重視することを目標にしています。王子を誘惑するシーンなど、自分でも少し余裕が出来てきた分、段々と目標に近づいてきているのではと思います。

橘るみ(バレリーナ) インタビュー

―石田種生先生がお書きになった『随想−バレエに食われる日本人』(2007年11月 文園社)はとても興味深い本でしたが、先生はストーリーを大切にする人なのですね。

:そうですね。先生とはお話をすることも多いですが、演出や振り一つ一つに意味があることを教えていただきました。長年踊っていても、ここにこういう意味があるとか、ただ振付けるだけではなくて、きちんと意義があっての演出と振付というのをどの場面でも実感させていただいています。

―橘さんは牧バレエ団のご出身ですが、基本的には古典を中心に踊っていらしたのでしょうか?

:私が育った牧バレエ団では、コンテンポラリーをやったとしても、ネオ・クラシックみたいなことはやってきていません。子どもの頃からバレエ学校時代まで本当に古典を中心に踊ってきました。創作といわれるものでもシンフォニック・バレエ的なものやコンテンポラリーにたずさわる機会があまりなかったというのがあると思います。

―東京シティバレエ団に来てからいかがですか?

:シティ・バレエ団は良い意味で和気あいあいとした場なので、すごく居心地良くやらせていただいています。自由だし、とてもアットホームな雰囲気があります。ここはいわゆる「先生の意見が絶対」みたいな感じじゃなくて、自分の意見も言えるし、横社会的な部分も感じます。

バレエの中には面白い作品とかコミカルなものもあるんですよね

―先日、ベジャールが亡くなりましたが、現代ではどんな作家の作品が好きですか?

:特にこの作家が特に好きということはありませんが、バランシンなら『ジュエルス 第二幕ルビィ』、『チャイコフスキー・パ・ド・デゥ』が好きです。プティでは『アルルの女』が好きです。この人が好きだからその作品も全て好きだというわけではないですね。

―橘さんは演技やマイムといった表現が好きなようですが、日常の中のどんなところからインスピレーションを得ますか?

:映画などから着想を得ることもありますが、日常生活の中でも発見があります。自然に癒されるタイプなので、たまたま夕日が落ちるのを見たときとか、旅行に行ったときとか、自然の美しさに触れたときはいつもすごく感激しますね。

―モダンダンスやポストモダンダンスでも自然を大切にしている作家たちは多いですね。コンテンポラリーではどんなことをやっていますか?

橘るみ(バレリーナ) インタビュー

橘:私は古典が好きなので8割方クラシックなのですが、最初にコンテンポラリーダンスを踊ったのは上田遥さんの『ロメオとジュリエット』だったと思います。上田さんの作品では最初、いただいた振りを理解できなくて疑問を持つことがあったんです。でも、リハーサルを重ねていくうちに、今までにないものを理解することが出来たし、どんどん感情が高まっていったんです。本当に、今までになかったものを発見させてくれる人です。それからいろんな役をやらせてもらい楽しんでいます。古典をベースにしながら、コンテンポラリーもやっていければ嬉しいですね。

―これからやってみたいこと、挑戦してみたいとか、どんな作品を踊っていきたいですか?

:『コッペリア』や『ジゼル』、『シンデレラ』など私が牧バレエ団で経験したことがない作品がたくさんあるので、そういう作品にたずさわれたらと思っています。

―橘さんはご自身でもバレエスクールを持ち、教えていらっしゃるんですよね。8月には「橘るみバレエスクール」の発表会もありますね。

:そうなんです。5周年記念の発表会ということもあり、作品を『眠れる森の美女』にしました。小作品だけではなくグランドバレエを活かしたくて、何年かに一度は全幕をやりたいと思っていたんですよね。生徒さんに2幕の主演をしてもらったり、二日間あるので役を変えたりして、勉強してもらえるように考えています。

―音楽もオーケストラで演奏するようですね。

:日大の学生たちを中心に「橘るみフィルハーモニックオーケストラ」を作って頂いたんです。舞台用の衣裳は私が自分でつくったりしているのですが、衣裳や小道具などみんなで作り上げる発表会にしたいです。

―CINRAは音楽やアート、映画などのカルチャーを扱うことが多いですが、ポップカルチャーではどんなものが好きですか?

:私ももちろん歌謡曲とか聴きますよ(笑)。映画音楽がとても好きですね。ライブハウスにも10代の頃に行っていたんですけど、当時はバレエスタジオで練習漬けだったので怒られました(笑)。

―そうしたポップカルチャーに比べると、バレエに馴染みがない人は多いと思いますが、普段からバレエを観ない人にも観ていただきたいですね。

:そうですね。バレエって敷居が高いイメージがあって、お洒落しないといけないとか、チケットが高いとか、ミュージカルみたいに気楽に観られないというのがあるじゃないですか。確かに気楽に観られないバレエもありますが、バレエの中には面白い作品とかコミカルなものもあるんですよね。シティ・バレエ団が持っている作品だと、『コッペリア』はお客さんが何度も笑ったりするし、子どもにもわかりやすい作品です。踊りだけ観て飽きちゃうことないし、展開も速いですし。そういった分かりやすいバレエもあるので、そういうバレエを観たら、意外にバレエって面白いなと思ってもらえると思います。

イベント情報
東京シティ・バレエ団創立40周年記念公演シリーズ1
2008都民芸術フェスティバル助成公演

『白鳥の湖 −大いなる愛の賛歌−』
2008年1月19日(土)、20日(日)
会場:新国立劇場中劇場
料金:S席8,000円、A席7,000円、B席6,000円
※全席完売。キャンセル待ちを受付中

プロフィール
橘るみ

神奈川県鎌倉市出身。5歳より金田春枝バレエ研究所にてバレエを始め、1992年に橘バレエ学校入学。1996年に牧阿佐美バレエ団に入団し、2003年に牧阿佐美バレエ団公演『ロメオとジュリエット』で主演デビューを果たす。2007年、牧阿佐美バレエ団を退団し、東京シティ・バレエ団に移籍。 第52回東京新聞主催全国舞踊コンクール第一位、文部大臣賞・東京都知事賞受賞、第52回日本バレエ協会賞受賞、第31回橘秋子賞スワン新人賞受賞、東京芸術大学演技講師・日本音楽高等学校ゲスト講師



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