nenemインタビュー

ナンチャッテ感をいかに開き直って、作品として形にするか

―nenemの結成からお伺いしたいと思います。結成は2002年ですよね?

山本:そうですね。大学で東京に出て来てバンドをやろうと思ったんですけど、メンバーがそろわず、1人で宅録を始めたんですよ。それから1~2年でバンド編成になるんですけど、当時一緒にやってた人はもう誰もいないです(笑)。

―活動を休止していた時期もあったんですよね。

山本:その時はギター2本とドラムとベースの4人だったんですけど、ギターが一人抜けてしまって。それで、今のドラムのデンカ(大倉大輔)君とベースの右田(右田眞)君と僕の3人で2回くらいライブをやって、そこで1年間くらい休止してたんですよ。

―ただ、活動休止中も他のバンドをやっていたんですよね。

山本:僕はピリカっていうレゲエバンドを、右ちゃんはSALADABAR、デンカ君はJOURNAL SPY EFFORTとかをやり始めてて。それで、nenemを再始動したのが2005年の11月くらい。鍵盤と映像のメンバーが加入して、5人編成になりました。

―そこから今のnenemが始まるんですね。nenemを分かりやすくカテゴライズすると「インスト・ポストロック」になるのかもしれないですが、日本にも多かったUSインディー的なポストロックとは一線を画していますよね。もっと「ブラック・ミュージック」の影響を感じるし、でもジャズみたいに大人びているわけではなく、「ロック」という若者の勢いは隠しようもなく存在している。その点で、活動休止と、鍵盤の加入というのは重要な出来事だったのではと思いますが、そうした他バンドとの差異は意識していらっしゃいますか?

山本:そうですね。今仰られたとおりですね。ギターがすごく歪んだりすると、鍵盤の良さが消えてしまうんですよ。そういったギターと鍵盤の関係性が、nenemのサウンドをいわゆる「ポストロック」とは違うものにしていると思います。でも、そうは言っても結局みんなロックが好きなんです。僕もメタルからギター始めたりしてるし(笑)。だから、nenemも最終的にはロックに寄っていくんですよね。

―「ロックが好き」というのは音の端々から匂ってきますよね(笑)。

山本:演奏陣で言えば、鍵盤以外の3人は特にそうなんだと思います。鍵盤の子は綺麗なジャズとかクラシックをやっていたので、彼もバリバリのブラック・ミュージックというわけではないんですけどね。

右田:nenemでジャズをやったらド下手だと思うんですよ。ある意味で、ナンチャッテ感がnenemにはあるんだと思います。

山本:そうそう、そのナンチャッテ感をいかに開き直って、作品として形にするかみたいなところから始まってる気がします。それはレゲエにしてもジャズにしてもロックにしても、ゲスト・ボーカルを入れてヒップホップやハウスをやるにしても、ナンチャッテ感をいかに開き直って受け入れつつ、世界観のある作品にするのか、がやりたいことです。

―そういうnenemの姿勢って、もの凄く柔軟で面白いですよね。「インストバンド」というのもある意味で、とても自由で柔軟なスタイルだと思いますし。

山本:インストバンドをやっていて面白いのは、BGMにもなりえるけど、聴き込めば面白い魅力も持っているし、ボーカルがいない分、風景とか思い出とか匂いとかにリンクできたらいいですよね。

―歌がないからこそ、聞き手はその音楽に自分の自由な発想や経験を持ち込めますよね。

山本:そうですよね。それに、個人としてもバンドとしても、歌モノだからこう、インストだからこうっていう音楽の聴き方も作り方もしてないので、必要になればボーカルも入れるかもしれないし、その辺はフラットにやっていきたいなって思います。

―今作ではゲスト・ボーカルに歌やラップを入れてもらっていましたもんね。

山本:インストバンドを逆手に取れば、いろいろなボーカリストに自由にお願いできるということですよね。今セカイイチというバンドのサポートをやらせてもらっているんですけど、ボーカルの慧君がすごくいい歌を歌うから、今回お願いしたいと思ったし、uhnellysも大好きなバンドで、Kim君にはロックテイストのヒップホップがすごく合うなと思ったので、今回ラップしてもらいました。

―お二人ともかなりはまっていましたよね。歌詞やメロディーは山本さんが作っているんですか?

山本:今回はゲストにお任せしています。メロもスタジオでジャムったやつを録っておいて、後で編集してこれ使おうよみたい感じです。慧君が歌ってくれてる曲は元々8ビートで、nenemが初めて作った曲なんですよ。それを今回ハウスっぽくアレンジを変えて慧君に歌ってもらったんですよね。

―山本さんは、そういう編集作業が上手そうだし、お好きなんでしょうね。

山本:そうですね。今作の楽曲も、基本的にはスタジオでジャムった音を録って、その素材を家で組み替えて、それをまたスタジオで合わせてみる。そういうところから始まっているんです。

―ジャムから生まれてはいるけど、インプロ(即興)的な方向にいかないのも、nenemがこだわっている部分でしょうか?

山本:そうなんですよ。確かにインストバンドではあるけど、あくまでもポップ・ミュージックをやりたいと思っているんです。踊れたり、耳につくメロディーがあったりという部分を大切にしたいんですね。だから、ジャム音源を組み替えてみんなで試してみる時も、僕がこうしたいってことをみんなが理解して協力してくれるから、再現するのもスムーズにいきますしね。

―じゃあ、レコーディングも楽しくスムーズに?

山本:すごく楽しいんですけど、これは個人的な話なんですけど、今作は自分がリーダーをやっているバンドのレコーディングだったので、やらなきゃいけないことも多かったし、すごい勉強になりました(笑)。

とりあえず、日が暮れたら聴いて欲しいなって思います

―nenemは音に映像をつけるというコンセプトを持って活動していますが、これはnenemを始めた当初から考えていたことなんですか?

山本:そうですね。downyというバンドが昔からすごい好きで、彼らも映像をつけているんです。あれにちょっと有機的なストーリーがあったらすごい良いなぁって思っていたんですよね。ただ、映像はすごい難しいところで、まだ音楽ほど見えてないとは思うんですけど。そこを今後、ちゃんとやんなきゃと思っていますね。

―2曲目の“M.I.H”はとてもキャッチーな曲ですが、例えばこの曲にはどんな映像がついているんですか?

山本:今はミラーボールというか鏡が出てくるんですけど、この曲を映像の亀村君が聴いた時に、江戸川乱歩の「鏡地獄」が思い浮かんだらしいんです。鍵盤のフレーズが2小節を8分音符で3、4、3、3、3と変則的に分けているんですけど、光が鏡で乱反射する、キラキラしたイメージに合ったらいいなと。それで僕も「鏡地獄」を読んでみたんですけど、「夜中感」が自分たちと共通していてとても気に入ったんです。

―なるほど。今作『cool dawn place』には「東京のミッドナイトアンダーグラウンドミュージック」というキャッチコピーが付いていますが、nenemは「夜」というイメージを大切にしているんですね。

山本:昼に聴く音楽は世の中にいっぱいあると思うので、夜向きな音楽にしたかったというのもあるし、もともと僕らの音楽自体が夜向きなんだと思っていて。

右田:例えば「明るい」っていうコンセプトがあれば明るい曲もやりますけど、コンセプト抜きだとやってて恥ずかしくなっちゃっうんですよね(笑)。冷たい感じの方がメンバーとしてもしっくりくるんだと思います。

山本:そうだね(笑)。だからこのアルバムを聴いていただけるリスナーには、車に乗ってるときでも移動中でも家でも、とりあえず、日が暮れたら聴いて欲しいなって思います。でももちろんいつ聴くかっていうのは聴き手の自由で、好きな時に聴いて欲しいです。

―その「ミッドナイト」というコンセプトは、アートワークに至るまで一貫していますね。

山本:今回アートワークをやってもらったMARUWAKAさんはプーマとコラボレーションとかしている人で、ライブペインティングとかがyoutubeで見れるんですけど、すごいかっこよくて。ヒップホップテイストもある、現代版のピカソみたいな感じ。久谷焼にペイントしたりしているのもすごく面白くて、今作のアートワークをお願いしました。

―nenemは音楽以外のアートに対する意識が高いですよね。

山本:それがこれからうまくサイクルすればいいなとは思います。映像とペインティングとジャケットと音楽と、という風に。

―今回はMahoganyという、nenem自身の音楽レーベルを作ってのリリースでしたよね。音楽以外のアートも巻き込んでいくnenemの活動はとても興味深いですが、nenem以外のアーティストのリリースなども考えているんですか?

山本:とりあえず、他のアーティストを出していく余裕が僕にはないですけど(笑)、そういう考え方ができるくらい大きな流れになるといいですね。まず目標としては、自給自足じゃないですけど、nenemで回していけるようにしなきゃいけないのが先決です。

―今はそうやって自主でもやっていける時代ですもんね。それでは最後に、今後の予定を教えて下さい。

山本:2月10日に新宿NineSpicesでmouse on the keysとの2マンライブがあって、2月24日に下北沢ERAでkowloonやsgt.と、そして3月15日に月見ル君想フでレコ発イベントをやります! レコ発では今回ゲスト・ボーカルで参加してくれたKim君と慧君にもご登場頂く予定なので、是非観に来て欲しいです。

イベント情報

2008年2月10日(日)18:00~
会場:東京都 新宿 NineSpices
出演:mouse on the keys、nenem

2008年2月24日(日)18:00~
会場:東京都 下北沢ERA
出演:kowloon、sgt.、SoulTuneFactory、rega

2008年3月15日(土)18:00~
会場:東京都 青山月見ル君想フ
「nenem cool dawn place」 Release Party!!!

2008年4月5日(土)18:00~
会場:東京都 下北沢ERA
pocketlife「peoplepeople tour」Final

リリース情報
nenem
『cool dawn place』

2008年1月16日発売
1,890円(税込)
Mahogany

プロフィール
nenem

映画、映像に生で音楽をつけることをコンセプトに2002年夏に山本創を中心に結成。RockをベースにJazz,Funk,Reggae, HipHop,プログレ、ClubMusic等ジャンルに関係なく、Alternativeなバンドサウンドである。drums,bass,映像, key,guitar編成の5人組インストバンド。 現在各メンバーはセカイイチ、What's Love?、K.P.M.、stefanieなどでも活動中。



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