euphoriaインタビュー

2008年7月にサードアルバム『silence in everywhere』をリリースしたバンドeuphoria(ユーフォリア)。1982年生まれの3人組は、デビュー作から最新作に至るまで、その全ての制作行程を自分たちだけで手がけている珍しいバンドでもある。レコーディングもミキシングも、CDジャケットもwebサイトのデザインも、それぞれのプロフェッショナルに託すのが当たり前な時代に、彼らは何故全てを自分たちで手がけるのか。叙情的で美しい彼らの音楽には、何かを伝えようとする表現者の想いが込められていた。

伝えたいことをいかに心に届けることができるのか

―3人はかなり長い付き合いらしいですね。

森川:これ以上長いのはないくらい長いです(笑)。小中高と一環教育の学校で知り合ったので、本当に毎日顔を合わせていたんです。しかも寮生活だったので、24時間一緒に過ごしていたこともあったりして。

―それは相当なものですね(笑)。

森川:バンドを組んだのは高校3年生の最後でした。そのタイミングでライブをする機会があって、軽い気持ちでやってみたら面白くて。それから今に至るんですけど。

―euphoriaのデビュー作は2003年なので、大学2年生の時には楽曲もほぼ完成していたわけですよね。

森川:デビュー作に収録されている曲は、初ライブの時に演奏したものも多いんです。高校生の時にはもう出来ていた曲なんですよ。

―それはかなり早熟ですよね。一体どんな中・高校生だったんですか?

euphoriaインタビュー

森川:先程お話した「寮生活」が関係しているんですけど、1部屋に各学年の生徒が入ることになっていたので、中学1年の時に高校3年生と一緒に生活することになるんですよ。それで、高校3年生のコンポだったりラジカセから、今まで聴いたこともない音楽が流れてくるんです。特に中学1年生は電子機器の持ち込みが禁止されていたので(笑)、必然的に高校3年生と同じ音楽を聴くことになる。それがすごく大きかったですね。やっぱり5つ年上の人が聴いてる音楽はすごく新鮮ですし、そういう中で3人とも過ごしてきたので、音楽の好みも共通する部分が多いんです。

―洋楽が多かったんですか?

森川:そうですね。ティーンエイジ・ファンクラブとかヨ・ラ・テンゴとか。そういうのが中学1年生くらいで。

―ヨ・ラ・テンゴを聴いてる中学1年生ってすごいですね(笑)。

佐藤:聴かされてたんですよ、環境的に(笑)。

森川:そういうのが自然と耳に入ってきて、上級生がギター弾いているのを見て憧れて、自分もギターを始めたんですよね。

―なるほど、早熟だったのも合点がいきました。それではやはり、オリジナル楽曲を作り始めるのも早かったのでしょうか?

森川:中学3年くらいから 4トラックのテープレコーダーで宅録を始めて、自分だけで完結できてしまうベッドルームミュージックと、バンドで演奏するのが似合う曲と、大きく分けて2パターン作っていました。それで、バンド演奏が似合う曲はやっぱりバンドじゃないと表現できないし、とにかくバンドで演奏してみたかったのでeuphoriaを結成したんです。初めて3人でスタジオで合わせた時の「おぉっ」って感じは今でも忘れられないです。その感じが気持ちいいから、今も続けていると言っても過言ではないですね。

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―euphoriaは高校生の頃からずっと一緒に活動を続けているわけですが、音楽的なことで揉めたりすることはなかったんですか?

森川:そうですね、おかしなことに、音楽性に関する話し合いはほとんどないですね(笑)。スタジオでセッションして、自分たちが気に入った部分を突き詰めて曲にしていくので、事前に何かを話あったりもしていなくて。それよりも、バンドとしてどういうことを大切にしたいか、自分たちの活動スタンスについてミーティングすることばかりなんです。初めのころは楽しいとか気持ちいいとか嬉しいとか、そういうことだけだったんですけど、活動を続けていくうちに色んなことが見えてきて、「何を表現したいのか」というのを考えるようになりました。

もしかしたら、騒音の中にも静けさが存在しているかもしれない

―『silence in everywhere』を7月23日にリリースされたわけですが、タイトルを和訳すると「静けさはどこにでも」ということになりますよね。先程の「何を表現したいのか」ということを掘り下げてお伺いしたいのですが、今作はどうして「silence in everywhere」をタイトルにしたのでしょうか?

euphoriaインタビュー

佐藤:2007年の9月にワンマンライブをやったんですけど、そのライブのテーマを3人で話し合ったんです。それで生まれた曲が、”silence in everywhere”という曲だったんです。

森川:今ってすごく便利な世の中ですけど、その反面ものすごく情報量が多いですよね。必要の無いものまで渦巻いて存在しているんじゃないかと思います。そういう膨大な情報量に流されて、受身のままで日々を過ごすことも可能だし、それで苦しむことも全くないと思うんですけど、ずっと受け身のままでいるのは危険なんじゃないかと思っているんです。

そういう渦巻いて存在している「膨大な情報量」などを「騒音」だと捉えたら、たとえ騒音に囲まれていてもその中で耳を澄ますことを忘れちゃいけないと思いました。もしかしたら、騒音の中にも静けさが存在しているかもしれない。そういう想いを込めたタイトルなんです。

―「耳を澄ます」というのは、意識しないとできないことですもんね。騒音の中に「静けさ」があるなんて誰も思わないかもしれないけど、もしかしたらその思い込み自体が勿体ないことかもしれませんね。

森川:そうですね。終電間際に乗る満員電車の中にも静けさって存在しているかもしれない。『silence in everywhere』というのは、「その静けさはどこにありますか?」という投げかけ、問いかけでもありますね。

―前作『white pattern』にも、そうした人の積極性を促す意味があったんですか?

森川:『white pattern』には、「想像力を持ったらいいんじゃないでしょうか」という問いかけがありました。真っ白な背景に真っ白な模様が浮かんでいても、普通は誰も気付かないですよね。でもそういうものをもっと感じられる様になったら、普段過ごしている日常がもっと彩り豊かに、素敵なものになるんじゃないかと思うんです。

―今作『silence in everywhere』とも共通するテーマですね。

森川:今作では『white pattern』のテーマをより積極的にアプローチしたいと思って、「じゃあどうしたら想像力が持てるんだろう?」って考えたんです。そうしたらぼくは、自分の中に静けさを見つけられた時に想像力が出てくると感じて、「silence」という言葉がでてきた。だから今作は、前作の延長線上にある作品ですね。

―普通バンドって、「こういう音楽やろうぜ」という話をして音楽を作るのがほとんどだと思うんですが、euphoriaは明らかに違いますよね。音楽を作りたい、というのはもちろんでしょうが、それよりもまず表現したいことがある。木下さんが絵本作家、佐藤さんがデザイナーとして活動していたり、音楽以外にも様々な方法で表現活動を行っていますよね。

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木下:ぼくは幼稚園で働いていたんですけど、子供ってすごいんですよ。『white pattern』のコンセプトに通じる部分もあるんですけど、子供たちは絵本を見ながら色んな創造力を働かせて、その絵本の世界に入り込んで独自の世界を成立させてしまう。アートでもマンガでも文章でもない「絵本」には、そういう未知の可能性があると思うんですよね。

―絵本を作ることとバンド活動がリンクする部分もありますか?

木下:ありますね。紙の中のどこに絵を描くか考えることが多いんですけど、それは同時に「どこに余白を残すのか」ということにも繋がっているんです。euphoriaでも今、シンプルに演奏することを考えていたりするので。

佐藤:「余白を残す」というのはデザインにも共通することで、こちら側からストレートに言いすぎてしまうと、聞き手や見る側が入り込む余地を奪ってしまうと思います。だからぼくも、余白の作り方を考えることは多いですね。

―euphoriaは自分たちでレコーディングからミックスまでやっているのもユニークですよね。プロフェッショナルなエンジニアに手がけてもらえば音のクオリティーは上がると思いますが、どうしてそうはしないんでしょうか?

森川:確かにプロのエンジニアの力を借りたら、音的にはぼくよりもキレイに仕上げてくれると思います。だけど、自分でやった方がぼくたちの伝えたい部分をそのままの形で届けられるので、聞き手の人にも上手く伝わるんじゃないかと思っているんです。それに、録音やミックスまで全て3人でやっていると、様々な方向からも曲に対するアプローチが生まれてくるので、大きなメリットだと思っていますね。

―コンセプトを伝えるための方法論をとことん考えていますね、euphoriaは。

森川:最初はやっぱり「楽しい」「嬉しい」からバンドをやると思うんですけど、CD をリリースしたタイミングで、考えてることをもっと上手く伝えたいと思うようになりました。それからも作品を出すたびに、「もっと伝わらないかな」「もう少し踏み込んでもいいのかな」というのをずっと考えてきて。すごい単純なことかもしれないんですけど、伝えたいことをいかに心に届けることができるのか、その方法を3人で考えています。

リリース情報
euphoria
『silence in everywhere』

2008年7月23日発売
価格:2,100円(税込)
123R-12 123RECORDS

1. december
2. butterfly track
3. quiet rain
4. collapse
5. silence in everywhere
6.daydream(beyond the behind)

プロフィール
euphoria

凛とした内面の世界を研ぎ澄まされた感覚で描き出すeuphoria。その楽曲には、ひとつひとつ丁寧に紡がれる暖かみのある音と、刺すような鋭い冷気とが共存する。3ピースという最小限の編成でありながら、空間を何倍にも広げ、様々な音像、感情を思い起こさせるライブは各方面から高い評価を受けており、タイ最大のロックフェス「FAT FESTIVAL」への出演や、The Album Leaf (US)、Yndi Halda (UK)などの来日アーティストとの共演と、国内のみならず国外でも広く注目を集めています。森川裕之(ギター、ボーカル)、佐藤昭太(ベース)、木下陽輔(ドラム)。



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