いつまでも危うい2人 uhnellysインタビュー

これぞ、uhnellysの真骨頂。久々のフルアルバム『to too two』は、まさにそんな作品である。デビュー時に「リアルタイムのサンプリングによるライブ」という手法ばかり話題になってしまったこともあって、近年のuhnellysはそこから視線をそらすように多彩なアプローチを試み、その結果素晴らしい作品を残してきた。しかしその一方で、作品とライブの間には大きな溝が生まれてしまっていたわけだが、ライブと同様の形で一発録りを敢行した『to too two』は、そのタイトル通り「2人」という原点に立ち返り、ライブ感のある演奏を音源に閉じ込めることに成功。また、言葉の面もよりダイレクトになっていて、オープニングを飾る“central”では、「今の音楽は何か大事なものを失っていないか?」とストレートに訴えかけてくる。そう、アメリカを代表する男女デュオであるThe White Stripesは「バンドの美しさをそのままにしたい」とシーンから去ったが、日本のuhnellysは「美しい音楽を取り戻すため」、これからもうねり続けるのだ。

(インタビュー・テキスト:金子厚武 撮影:柏井万作)

100%自分で曲作って、歌詞書いて、伝えるってなると、やっぱりuhnellysしかないかなって。

―新作『to too two』は、2枚のミニアルバムを挟んでいるものの、フルアルバムとしては2年半ぶりの作品ですよね。その間には別バンドの「あなた、どうして」での活動や、ブルーマンのバンドでの活動もありましたが、そういった経験は本作にどのように生かされているといえますか?

kim:もう1個バンドをやったりとか、仕事でブルーマンをやったりしてても、自分の色が100%どころか20%ぐらいしか出せないわけじゃないですか?そこにあんまり魅力を感じなくて、100%自分で曲作って、歌詞書いて、伝えるってなると、やっぱりuhnellysしかないかなって。

―uhnellysと「あなた、どうして」はメンバーの人数も違えば、ピンボーカルであることも違いますが、中でも1番の差は何でしたか?

kim:「あなた、どうして」はファッションとしての音楽っていうか、パッと見てかっこいいと思われればそれでいいバンドなんですけど、uhnellysはもうちょっと突っ込んだところまで聴かせたい音楽っていうか、ライブで見て、言ってる言葉がちょっとでも残って、「何言ってたんだろう?」ってところまで入り込みたい音楽なんですよね。

―じゃあもうひとつ、ブルーマンのバンドに参加することになったきっかけは?

kim:soul coughingのボーカル(マイク・ドーティ)を僕が日本に呼んでツアーしてたんですけど、それを見に来た外人がブルーマンのチーフディレクターだったんですよ。それで「オーディションやるから」って。

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kim

―実際に参加してみて、どんなことが刺激的でした?

kim:ブルーマンのショーって、尺が決まってないんですよ。同じ曲を同じ順番でやるんですけど、尺がブルーマンの動きによって長くもなれば短くもなるんで、長くなった場合は事前に決まってたこと+αの即興なんですよ。ホントただ楽しんでやってるっていうか、「こんなんでいいのかな?」っていうぐらい、好き勝手にやってる感じなんですよ。逆にまともな演奏をしてると、「あそこはもっと好きにやんないとダメだ」みたいな。引いてちゃダメなんですよね。盛り上げたり、ちょっとノイズっぽいことをしたりして、飽きさせないようにしないとダメで。

―やっぱりブルーマンって「プロ集団」みたいな感じなんですか?

kim:実はそんなに思わなかったんですよね。例えば、PAさんとか、楽器の管理とかはちゃんとしてるんですけど、特にミュージシャンたちに刺激を受けたかっていうとそうでもなくて、普通にインディーズでバンドやってる人たちとなんら変わらないっていうか。

―へえ、そうなんですね。でも、そんな中でも得たものというと?

kim:チューニングですね(笑)。俺の使ってる楽器って弦が200本ぐらい張ってあって、琴みたいなやつを両手で弾くんですけど、とにかくチューニングだけで20分ぐらいかかって、ショー中も合間合間にチューニングをし続ける楽器なんですよ。そういうのに慣れてくると、ちょっとでもずれてるのが気持ち悪くなってきて。(uhnellysのときは)ライブでギター倒してもそのまま使ってたんですけど(笑)。

―(笑)。でもやっぱり最初に言っていたように、自分自身を表現する場所はuhnellysなんだっていうことを見つめ直したっていうのが一番の収穫なんでしょうね。

kim:まさにそうですね。際立って、それの大事さが見えたのは間違いないですね。

(作品とライブの)差が開いちゃったんですよ。それを今回はひとつにしようと思って、(ライブで)再現できないことはやんないっていう。

―では新作の『to too two』ですが、音も言葉も削ぎ落とされた分だけダイレクトに響く作品になりましたね。

kim:人のプロデュースで作った2枚のミニアルバムは、全然ライブと結びつかなかったんですよね。ライブを見て買ってくれたお客さんが気に入らなかったり、逆に作品を気に入ってライブを見に来た人がちょっと違うとか、(作品とライブの)差が開いちゃったんですよ。それを今回はひとつにしようと思って、(ライブで)再現できないことはやんないっていう。

―そのために今回は一発録りを採用したわけですよね。

kim:曲を作ってるときから、そうやって録るって決めて作ってて、24時間で歌も全部録っちゃいました。エンジニアと揉めたんですよ。「やりすぎだ、もうやってられない」って(笑)。

―それでもkimさんとしては1日で詰め込みたかったと。

kim:そうそう、昔からその日の感じがそのまんま音に出てる作品が好きだったんですよね。スタジオの中の音がわかるっていう雰囲気のCDとかあるじゃないですか?Led Zeppelinとか、ああいう「鳴ってる」感じがすごい好きだったんで、楽器は絶対日をまたぎたくなかったし、歌もできれば、歌って喉の調子が変わってるところまで録れちゃってるぐらいの方がいいと思って。

―1stアルバムの『Jazooka』も一発録りだったけど、あれがレーベル側からの要請だったのに対して、今回は自分たちから進んで発録りにしたっていう、その差はでかいですよね。

kim:でかいですねえ。1stはサンプリングしつつライブをするっていうのをやりだして1年半ぐらいでレコーディングに入ったんですよ。だから、まだ十分に演奏できてなかったっていうか、先に方法だけあって、まだ馴染んでなかったんですけど、それから5〜6年ずっと同じ手法でライブをやってきた流れで今回は録ったから、全然感覚が違いましたね。

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―その自信は音にも反映されてますよね。

kim:そうそう、全然違うと思います。

―あとメインの楽器がベースからバリトンギターに変わったっていうのは大きな変化ですが、この理由は?

kim:ベースだけだとルート音しか出ないから、コード感が出ないんですよ。明るい感じにできないっていうか、大体ドープな感じにしかなんなくて。それでバリトンギターを売ってもらって、あれで色々やってたら、ベースの弦を張るとベースの音が出るし、下の方はギターの音が出せるから、それでちょうど良くて。でも、それもやめようかなって思ってて。また違う楽器にしようかなって。

―そうなんですか?ちなみに、違う楽器っていうのは?

kim:キーボードも面白いかなと思ってて。

―へえ、ひとつの楽器に対するこだわりみたいなのはあんまりないんですか?

kim:ないですね。できれば演奏したくないんですよね。歌だけやってるのがすごい楽なんで。

―でもそれって、uhnellysは2人っていう編成だからできないわけじゃないですか?それでも2人であることにはこだわりがあるわけですよね?

kim:uhnellysは2人以外ないと思うし、ちょっとぐらい演奏がずれてても無理やりやっちゃうのが面白さだと思ってるんで、自分で演奏していくとは思うんですけど。ホントはウッドベースとドラムと歌だけでできれば1番理想なんですよね。38歳ぐらいになったら、そういうのもいいなって(笑)。

音楽のことよりも、「ちょっと奇抜なことをやりました」、みたいな取り上げられ方が多くて、でも実はそういうバンドの曲の方がすごい普通だったりするんですよ。

―あと今回は言葉もこれまで以上にダイレクトですよね。やっぱり“central”がその象徴だと思うんですけど。

kim:作品通して全部の曲にメッセージがあった方がいいとは思わないですけど、1個ちゃんと自分の意見を明確に示す曲があった方がいいなと思って。かつ、それは音楽的なことの方がよくて、お客さんだけじゃなくて、これを聴くプレイヤーの人にも考えてもらえたら1番いいと思うんですよ。

―「素敵な音楽が向こうに離れてしまったんだかなり」ですもんね。

kim:そう思いませんか?

―そう思うことは僕もよくあります。kimさんは特に最近強く感じるようになってきたんですか?

kim:バンドの取り上げられ方が、「それホントに音楽のことなのかな?」っていうことが多くて。音楽のことよりも、「ちょっと奇抜なことをやりました」、みたいな取り上げられ方が多くて、でも実はそういうバンドの曲の方がすごい普通だったりするんですよ。個性を音楽で出そうとするんじゃなくて、個性的なことをやって、曲は普通みたいな。また、それを持ち上げてる人たちがいて、別にどメジャーでもなんでもなくて、普通にインディーズとかを扱う媒体とかまでそういう感じじゃないですか?って、30歳を超えると思うんですよ(笑)。

―kimさんってバンドの初期は別の仕事をしながら活動していて、少し前に仕事を辞められてるんですよね?それっていつ頃ですか?

kim:2009年中だったとは思うんですけど…1年半とか2年前ぐらいですね。

―それにはかなりの覚悟も必要だったと思いますが?

kim:飲食業だったんですけど、それをずっとやっててもしょうがなくて、どっかでガラッと変えななくちゃとは思ってましたね。28ぐらいまでバイトやって、「もうすぐ30だけどこのままでいいのか?」って葛藤して、バンドが解散したりするじゃないですか?僕の場合は映像に音楽をつけたりとか、そういう仕事の話も少しは来るようになって、それで集中しなきゃって思ったんですよね。

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―そうやってよりリアルに音楽と向き合うようになったからこそ、今作のような言葉が出てきたっていうのもあるかもしれないですね。

kim:うん、それはそうかもしれないですね。

―“subliminal orchestra”にはどんな意味が込められてるんですか?

kim:色んな文化が混ざったものがすごい好きなんです。音楽もミクスチャーが好きで、何かのジャンルと何かのジャンルが混ざって…。

―ジャンルとしての「ミクスチャー」ではなくて、本来の意味どおりの「ミクスチャー」ってことですよね。

kim:そういうのが好きなんですよ。文化って昔から混ざり合ってできていくじゃないですか?それが1個になっちゃうと廃れていって、また新しい何かとつながる。新しいものを生み出すのは、混ざり合うってことなんじゃないかって。

―それこそuhnellysは海外でのライブも多いので、海外の文化と混ざり合うことも多いですよね。最近の海外のライブで感じた日本との違いはどんなことですか?

kim:ライブハウスの出音の問題で、海外はボーカルをすごい大事にして出音を決めてるんですよ。声がちっちゃくなっちゃうようだったら、周りの音をそんなに上げないんですけど、日本のライブを見てると、声が埋もれるぐらいギターがでかかったりとか、異常にドラムをでかくしたりとかそういうのが多くて、その違いは最近よく感じますね。

―それって言葉が重要なuhnellysの音楽にとってはいいことですよね。

kim:そう、だから日本に帰ってきて、音を下げてもらうようにしたんですよね。今まで全然考えてなかったなと思って。

―ライブにおいては、言葉もサウンドの一部っていう感じなんでしょうか?それとも、やっぱり意味を届けたい?

kim:ライブだけ聴いて、俺が何を言ってるのか全部わかるってことはほとんどないんで、キーワードだけでも気になってもらえればいいとは思ってて。今回のアルバムは小節に入る言葉の数を減らして、聴こえてくるのがパッと入るようにしたんです。

―やっぱり日本語に対するこだわりっていうのは大きいですか?

kim:うん、大きいですよ。やっぱり微妙な表現っていうのは母国語じゃないとできないことで、僕の周りの外人も、日本人が英語で歌ってる歌詞がよくわかんないし、意味もわかんなければ文法もおかしいとか、そういうことが多いみたいで、それをやっても仕方ないですよね。

日本も結局占領されてるようなものじゃないですか? 黒人VS白人とか言うよりも先に、自分がそういう立場だっていうのが強くて。

―これはちょっと前にThe Suzan(昨年アメリカでデビューを果たした日本人ガールズバンド)と話したことなんですけど、今ってやっぱりネットとかもあって海外との距離は近くなってて、海外にライブをしに行くってことは、そのバンドに情熱があって、ブッキングとかを自分たちでやれば、誰にでもできるんだと。

kim:そうですね。

―ただそこから先、海外のレーベルと契約して、リリースするってなると、やっぱり海外の人に受ける音楽性を意識したり、英語で歌うことは重要になると。そういう意見についてはどう思いますか?

kim:アメリカでやってくことを考えたらそうかもしれないですけど、例えば、インドとかフランスに行ったら、英語も日本語もそんなに変わんないんですよ。もちろん英語の方が少しは伝わるだろうけど、フランスの音楽も当然ほとんどがフランス語だし、いろんな国の人が住んでるから、言葉がわかんないから聴かないっていう意識がないらしいんです。どんな言葉でも、(音が)よければいいみたいなんですよね。だから、英語がわかんない国だったらそんなに変わんないですよね。実際インドの人の前でやったときも、普通に盛り上がったし。

―なるほど。あと海外っていう話で言うと、“black panther”のモチーフはやっぱりブラックパンサー党(60年代から70年代にアメリカで黒人解放闘争を展開した急進的な政治組織)ですか?

kim:これは10年ぐらい前の歌詞を基にして作ったんです。若気の至りではあったけど、その頃って「白人に対抗していく」みたいなのが好きで、そういう気持ちが年を食っても自分には残ってるんで、それを組み立ててみたっていう感じですね。

―黒人をモチーフにした歌詞がよく出てきますけど、ブラックミュージックへの憧れとかも関係してたりするんですか?

kim:それよりは、その…日本も結局占領されてるようなものじゃないですか?黒人VS白人とか言うよりも先に、自分がそういう立場だっていうのが強くて。

―黒人によるカウンターカルチャーとしてのヒップホップと、自分が日本人として日本人らしい音楽を作ることの同調っていうのももちろんあるわけですよね。

kim:うん、絶対それはあると思いますね。だって、(アメリカの)チャートも黒人のラップの曲がほとんどだったりするじゃないですか? そういうのはすげえなって。

演奏にしても、歌詞にしても、危うい感じっていうのは絶対に残すべきだなって。

―では最後に改めて、今作を作って「2人」であることを見つめ直したことによって、改めて確認したuhnellysの核を教えてください。

kim:やっぱり「危うさ」ですよね。演奏にしても、歌詞にしても、危うい感じっていうのは絶対に残すべきだなっていうか、逆にそれ以外あんまりないんですよ(笑)。ライブはホントにサンプリングだから、その時々でちょっとテンポが違うんですよね。BPMが3か4違うだけで曲の感じが変わるし、歌の感じも変わるし、そういう意味でもすごく危ういし。

―でもやっぱりそこが魅力ですよね。それこそがまさに「ライブ」だし。

kim:だからイントロはホントにドキドキなんですよ。

―今でも?そんな風には見えないですけど。

kim:いやいやホントに、「今日テンポどうなっちゃうんだろう?」って(笑)。完成しちゃったら逆に面白くないんですよ。いつも完璧なループが組めたら、録音してきたやつを流すのと一緒じゃないですか?

―「危うさ」がなくなっちゃいますもんね。

kim:そう、だからあんまり練習しないようにしてるんです(笑)。

to too two

イベント情報
uhnellys 『to too two』 Japan Tour 2011

2011年3月6日(日)
会場:東京都 吉祥寺 WARP

2011年3月19日(土)
会場:福岡県 福岡 UTERO

2011年3月20日(日)
会場:熊本県 熊本 NAVARO

2011年4月16日(土)
会場:大阪府 大阪 Art Yard

2011年4月17日(日)
会場:京都府 京都 CLUB METRO

2011年4月23日(土)
会場:山形 山形 Sandinista

2011年4月24日(日)
会場:東京都 新代田 FEVER

『ARABAKI ROCK FEST'11』
2011年4月29日(金)
会場:宮城県 みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく

2011年5月21日(土)
会場:神奈川県 横浜 BAR MOVE

2011年5月28日(土)
会場:愛知県 栄 Lounge Vio

and more

リリース情報
uhnellys
『to too two』

2011年3月2日発売
価格:2,100円(税込)
Penguinmarket Records / PEMY-016

1. central
2. subliminal orchestra
3. ATSUIMANAKO
4. you kill time
5. BO-FU-U
6. birthday
7. black panther
8. cassy
9. back door man
10. curve

プロフィール
uhnellys

国内はもちろん海外からも高く評価されている孤高の男女ユニットuhnellys(uhnellys)。kimのバリトンギターによるリアルタイムサンプリングと、それにジャストのタイミングで合わせたmidi*のグルーヴを基盤に、ロック、ヒップホップ、ジャズの垣根を飛び越えた独自のサウンドを構築し、原点に帰る2人だけでの生演奏を実現。昨年のオーストラリアの大型フェスへの出演やカナダツアーなど海外活動を経てリリースされる今作は限りなくライブに近い空気感が詰まった最高傑作!これは最高にウネってる。



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