1番のファンは自分でないと モーモールルギャバンインタビュー

モーモールルギャバンというバンドは、とにかく音楽に対して真面目なバンドである。もちろん、上半身裸でオーディエンスにパンティコールを要求するゲイリー・ビッチェのパフォーマンスも、彼らの魅力のひとつであることは間違いない。しかし、彼らが何より素晴らしいのは、その音楽性の引き出しの広さであり、メロディメーカーとしての才能なのだ。ストレートに、赤裸々に、メンバーの総力戦で作り上げたという『僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ』は、そのことを見事に証明する傑作だと言っていいだろう。特に、本作ではユコ・カティも半分ほどを担当したという歌詞のクオリティが相当高いので、ぜひ歌詞カードを片手に聴いてもらいたいと思う。はたして、彼らはいかにしてこの境地へとたどり着いたのか? ゲイリーとユコの軽妙なやり取りも交えながら、じっくりと語ってもらった。

「俺はこれをやってればいい」を超えて、「俺はこれをやんなきゃいけないんだ」って、1年かけてそういうところにたどり着けた気がします。(ゲイリー)

―前作の『BeVeci Calopueno』は、音楽性にしても歌詞にしても、バンドの様々な方向性を突き詰めたような作品だったと思うのですが、本作はよりダイレクトで、シリアスな、軸のしっかりした作品に仕上がっていると思いました。

ゲイリー:今回はテーマが「ロック」だったんです。「ストレートにちゃんと届くいいものを」っていうのをすごく意識して作って…でもなんか、今回は作品っていうか、己の魂の叫びのような感じでした(笑)。

ユコ:「案外今まで直球のストレートなロックってやってないよね?」って話をしたんです。年齢的に30ぐらいになって、若気の至りじゃないけど、そういう若さみたいなものを出せる機会は今回が最後かもって。もちろん、年を取ったら取ったで、またいろんな側面が出てくると思うんですけど、今の等身大のストレートな音を真空パックしておこうと。

左から:ユコ・カティ、ゲイリー・ビッチェ
左から:ユコ・カティ、ゲイリー・ビッチェ

―ゲイリーさん、魂の叫びのような作品になったっていうのも「若さ」という部分から来ているんでしょうか?

ゲイリー:僕が思ったのは、2011年が衝撃的な年だったので、軽い気持ちで音楽やってるような状況じゃないから、真面目にやろうってことですね。

ユコ:『BeVeci Calopueno』も真面目にやったよ?

―(笑)。

ゲイリー:そうなんだけど…

ユコ:でも、わかる。今考えてることをストレートに発信したくなるようなことがたくさん起きたので、自然と状況がそういうテーマを生んだのかもしれないですね。

―どこかにターニングポイントがあったというよりは、昨年1年かけてジワジワと今の方向に向かって行ったという感じでしょうか?

ゲイリー:おっしゃる通り、1年かけてジワジワと、いろんな意識改革みたいなものがあった気がします。

―特に大きいのはどんな部分ですか?

ゲイリー:これまではストレートな音楽を自分がやっても意味がないって思ってたんです。大して歌も上手くないし、ドラムも上手くないから、そういうのはミスチルさんとかコブクロさんに任せておいて、俺は「パンティ! パンティ!」叫んだり、「ユキちゃん愛してる」とか言ったり、それでいいじゃんと思ってたんですけど…できると思ってやることよりも、できないと思って、でもそこに果敢に挑戦し続けることの方が説得力あるじゃないですか? 「俺はこれをやってればいい」を超えて、「俺はこれをやんなきゃいけないんだ」って、1年かけてそういうところにたどり着けた気がします。

ユコ:うん、「やんなきゃいけない」って感覚はあったよね。

ゲイリー:「これをやればいい」っていう発想だと、もうそこで終わりじゃないですか? でも、「これをやりたい」って思ったら、終わりがないから、一生が勉強だし、一生成長し続けないと面白くないしっていうのを考えたら、「プロってきっとそういうことなんだ」って、なんか理解したような気がしたんです。

2/4ページ:俺はやっぱりこういう感じで赤裸々に歌わないと伝わんないのかなって…夜にマラソンしながら気づいたんです(笑)。(ゲイリー)

俺はやっぱりこういう感じで赤裸々に歌わないと伝わんないのかなって…夜にマラソンしながら気づいたんです(笑)。(ゲイリー)

―でも、もちろん「ストレート=単調」にはなってなくて、多様性もちゃんと内包した上での、ストレートな作品になってますよね。

ゲイリー:どうしてもいたずらが好きですからね(笑)。

ユコ:もうちょっと、どストレートにしたかったんですけど、できあがってみると、結局自分たちカラーに仕上がるので、「やっぱりそうなっちゃうんだな」とは思いましたけどね(笑)。

―でも、それは外から見ると間違いなくバンドの個性であり、強みだと思います。

ゲイリー:個性って自分じゃよくわかんないんですよね。「俺、こいつ(自分)の声嫌い」って思いながら、ずっとレコーディングしてましたから(笑)。

ユコ:自分の声って嫌だよね。

―未だにそうなんですね。最初は自分が思ってた声とのギャップに違和感を感じるけど、慣れていくものではないですか?

ユコ:最初の最初は逆にフレッシュで、あまり抵抗がなかったんですけど、段々それに慣れていくと、すごく嫌になる時期があるんですよ。

ゲイリー・ビッチェ

ゲイリー:僕最初すっごい嫌で、でも『クロなら結構です』とか『BeVeci Calopueno』のときはそんなに嫌じゃなくて、また今回嫌いになりました。『野口、久津川で爆死』の頃は、何回録ってもそこまでよくならないから、全曲大体一発で録ったんですけど、あとの2枚は何回も録り直しができたんで、今にして思うと飾った歌声なのかなって。今回は経験を積んで、何回録っても本気で歌えるような状態になったから、結構自分のカラーが赤裸々にガーッと出てて…嫌なんですよね。

ユコ:嫌なんだ(笑)。


ゲイリー:でも『野口、久津川で爆死』とかを今聴くと、「こいつの声嫌いだけど、このアルバムが評価されてる理由がちょっとわかったかもしれない」とか思って。俺はやっぱりこういう感じで赤裸々に歌わないと伝わんないのかなって…夜にマラソンしながら気づいたんです(笑)。

26とか27の頃ってムダに悩むというか、答えを探したがるけど、最近はいい意味で丸くなってきてるので、「今のうちにやっとかなきゃいけないことがあるんじゃないか」とはすごく思いました。(ユコ)

―そうやって赤裸々に自分をさらけ出した結果、「パンティ」とか「ユキちゃん」ではない、「若さ」っていうテーマが出てきたわけですよね。モーモーはデビューの早いバンドではないので、その分若い頃には苦悩もあったと思うんですけど、そういうところも全部ひっくるめて、歌詞には出てるのかなって。

左から:ユコ・カティ、ゲイリー・ビッチェ

ゲイリー:出てきましたね…。僕26歳ぐらいのとき、20代後半になったようなバンドマンはもうデビューできないと思ってて、年齢詐称してましたから。

ユコ:ずっと23って言ってたよね(笑)。

ゲイリー:しょうもないね(笑)。


―(笑)。ユコさんはちょうど明日が30歳のお誕生日だそうですが、何か思うところってありますか?

ユコ:今の段階で数年前とは全然感覚が違って、明らかに丸くなってきてるんです(笑)。26とか27の頃ってムダに悩むというか、答えを探したがるんですよね。悩んで悩んで、1人でイライラしてるみたいな。そういう頃と比べると、いい意味ですけど、丸くなってきてると思うので、「今のうちにやっとかなきゃいけないことがあるんじゃないか」とはすごく思いました。

―ゲイリーさんも丸くなってきてます?

ゲイリー:どうだろう? 僕部屋で1人で酒飲んでるときが1番うるさいような人間なんですよ。パソコンの画面でちょっと面白い文章見つけたら、1人で「ハッハッハッ〜!」って笑ってるんで(笑)。めんどくさい人間だなと思いながら…がんばって歌詞書いてるんです。

―そんなゲイリーさんをユコさんがプロデューサー的な立ち位置で見てるような印象もあります。

ユコ:(ゲイリーは)あんまり客観的な視点がないんで(笑)、そこはちょっと補わないと、どこまでも突っ走ってしまうので、なるべく私は第3者の目線で見てますね。

―そのときマルガリータさんはどういう立ち位置になるんですか?

ユコ:さらに第3者かもね。

T-マルガリータ
T-マルガリータ

―傍観者ってことですかね(笑)。

ユコ:傍観者! いい言葉があった(笑)。

マルガリータ:「俺はどうしようかな…」って、とりあえず見てる感じです。

ゲイリー:でも、この前ユコさんと俺がスタジオで大ゲンカをして、20分ぐらいずっと不毛な口論が行われてる中、なんかのタイミングでマルが「練習しようよ!」って……

ユコ:でも、それも無視して2人でバーッとやりあってたら、遂に楽器を置いて怒って出て行っちゃって。で、「丸山(マルガリータ)さん、出て行っちゃった」って15秒ぐらい黙ったけど…また口論が始まって。

マルガリータ:もう収まったかなと思ったら…まだ絶好調なんだもん(笑)。

―(笑)。まあでも、丸くはなっても大ゲンカはすると。

ユコ:モノを作る同士が一緒に何かを作ると、ケンカはしますよね(笑)。

3/4ページ:人と自然の関係みたいなことは常に考えてて、腹立たしかったり、ふがいなかったりする気持ちがずっとあったんですけど、それを今回ひとつの曲にできたっていうのは、すごく嬉しく思ってます。(ユコ)

なんやかんやで、このバンドの1番のファンは自分じゃないと嫌なんですよ。(ゲイリー)

―今回はユコさんも全体の半分くらい作詞を担当してるそうですね。

ゲイリー:今までは結構限界まで悩みぬいたあげく、ユコさんに見せるパターンが多かったんですけど、今回は60%ぐらい完成した段階でドンドン投げて行って。そっちの方が単純に早いと思ったんで。

ユコ:そういう方法論は結構前回と変わってて、歌詞に限らず、アレンジとかも、『BeVeci Calopueno』のときは、ほとんど作り上げちゃってから渡したりもしてたんですけど、今回はノープランのままとりあえず投げてみたりとか。それもすごく勇気のいることなんだけど、今回はそれができたよね。なんて言うか、総力戦でした(笑)。

―自分の殻を破って、「これをやんなきゃ」っていうことをやるために、総力戦でかかる必要があった?

ゲイリー:今までは「これは自分がやんなきゃいけない」って、良くも悪くも思い過ぎてて、でも今回は「ここ悩んでんだけど、どうしよう?」っていうのを、みんなで共有できた部分がありました。そういう意味で、自分の殻をちょっと破れた気はしたんですよね。歌詞にしても「歌詞は自分が書かないとダメだ! 俺の世界は表現できねえ!」って思ってたんですけど、今回試しにユコさんに投げてみたら、「あー、いい歌詞書くねぇ」っていう(笑)。

―自分が書かなくても、ちゃんとモーモーの表現になると。

ゲイリー:俺の世界じゃなくてもいいから、とにかくいいものを作りたいっていう気持ちの方が大きくて。なんやかんやで、このバンドの1番のファンは自分じゃないと嫌なんですよ。だからこそ、殻を破らないとどうしても納得いかなかったんです。今回気楽に人に投げられるようになったけど、でもその分本当に自分がやらなきゃいけないことにはシビアに取り組むようになったし、それがドラムだったり、歌だったり、そういうところはストイックに向き合った気がしないでもないですけど…どうですか?

ユコ:頑張ったんじゃないですか(笑)。

ゲイリー:もう音楽と向き合い過ぎて、何が良いか悪いかよくわかんなくなっちゃうんですよ。でも、毎朝マイケル・ジャクソンの“ビリー・ジーン”を聴いて、8ビートの感じを叩き込んだり、THE BEATLESの曲を聴いたりして、「よし、これが正解だな、この方向に近づければいいんだな」って確認しながらやってましたね(笑)。

左から:T-マルガリータ、ユコ・カティ、ゲイリー・ビッチェ

人と自然の関係みたいなことは常に考えてて、腹立たしかったり、ふがいなかったりする気持ちがずっとあったんですけど、それを今回ひとつの曲にできたっていうのは、すごく嬉しく思ってます。(ユコ)

―アルバムのラストを飾っている“気まぐれのように揺れる世界から”は、言葉とメロディとアレンジが一体になった、素晴らしい曲だと思います。

ユコ:私もお気に入りです(笑)。

ゲイリー:作曲は1番時間がかかって、Fメロぐらいまでできちゃって、「この曲どう収拾つけよう?」って、2週間ぐらいずっとダークな時期がありましたね(笑)。作詞もずっと僕がしようと思ってて、20回ぐらい書き直したんですけど、最終的に「ちがーう!」ってなって(笑)。それで試しにユコさんに、「ちょっとこれ…」って投げたんです。そのとき僕ワイン飲んで酔っ払っちゃってたんですけど、後で出来たのを読み返してみたら、「すげえ歌詞だな…参った」って、メール送りました。

ユコ:「だろ?」って返した気がする。

ゲイリー:もうねー、この曲の詞は僕が書きたかったんです! でも…ユコ・カティに負けました!

―(笑)。実際に、ユコさんはどうやってこれを書いたのですか?

ユコ・カティ

ユコ:私こういう曲がストライクで、曲をもらった段階でものすごく好みで。そのとき歌詞はなかったんですけど、メロは流れていたので、こういう感じにしようっていうのも、全然迷わなかったんです。何を歌うかっていう世界観も自分の中にはあって、でも思い入れの強い曲っぽかったんで、(ゲイリーが)自分で歌詞書くだろうと思ったんですけど、ギブアップ宣言が出たんで(笑)。

ゲイリー:「お前何でこんな歌詞書けるの?」って聞いたんですよ。そうしたら、「常にこんなことばっか考えてるから」って言われて、俺はここまで根暗にはなれんと思って(笑)。

ユコ:震災のことに限らず、人と自然の関係みたいなことは常に考えてて、そういう番組とかあるとすごい見てるんです。そういうのを見て、腹立たしかったり、ふがいなかったりする気持ちがずっとあって、それを今回ひとつの曲にできたっていうのは、すごく嬉しく思ってます。

4/4ページ:『野口、久津川で爆死』から今回までの4枚を聴いてもらったら、「このバンドはこういうことができて、こういうことがやりたいんだ」って一通り伝わる気がするんです。(ゲイリー)

『野口、久津川で爆死』から今回までの4枚を聴いてもらったら、「このバンドはこういうことができて、こういうことがやりたいんだ」って一通り伝わる気がするんです。(ゲイリー)

―途中にも出ましたが、パンティコールをしたりするモーモーっていうのも、間違いなく魅力の一部だと思うんですよね。そういうモーモーが、これまで以上にシリアスな部分に特化することに関して、葛藤みたいなものはありませんでしたか?

ゲイリー:あったはあったんですけど、続ければ続けるほど「パンティ」しか求められなくなったら厳しいなっていう思いはずっとあって。だから、『BeVeci Calopueno』にもシリアスな曲をたくさん入れたし、今回はそれがさらに進んだ形だと思うんです。じゃあ、もう一生パンティの曲を作らないかといったら、次の次あたりで突然パンティのオンパレードみたいなのが完成することも無きにしも非ずで(笑)。

―(笑)。

ゲイリー:ただ、今はとにかくやりたいことを片っ端からやっていく時期だと思うんですけど、でも人間そこまでできることがたくさんあるわけでもないんで、『野口、久津川で爆死』から今回までの4枚を聴いてもらったら、「このバンドはこういうことができて、こういうことがやりたいんだ」って一通り伝わる気がするんです。なので、このいろんな方向をこれからどんどん突き詰めて、面白いものを作っていけたらなって。

ユコ:今までやってきたことって、今回も含めて、元々持ってた側面を、ピンポイントで出していったような感じになってると思うんです。狙ったわけじゃなくて、結果的にそうなってて。今回のアルバムで一通りさらったかなっていう実感は私もあって、だから次に新しい作品を出すときは、結構チャレンジっていう感じになるのかなって気はしてます。

ゲイリー:ユコさんはこれからチャレンジなんだ?

ユコ:なると思う。もうチャレンジしたいこと決まってるけど…まだ言わない(笑)。それは勉強しないとできないことになってくるので。

ゲイリー:何だろ?怖いなあ(笑)。

ユコ:でも、勉強は楽しいから。それが今まで持ってたものと混ざり合ったときに、面白い化学反応が絶対起きると思うんで、それは楽しみにしてます。そのためにも、元々持ってるものをきっちり形にして出しておくっていうことは、すごく大事な作業だと思っていて、そういう意味でも、今回ひとつのストレートな感情表現や音の表現ができたっていうことは、すごくよかったなって思うんです。

リリース情報
モーモールルギャバン
『僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ』

2012年3月21日発売
価格:2,500円(税込)
VICL-63858

1. スシェンコ・トロブリスキー
2. サノバ・ビッチェ
3. MY SHELLY
4. 僕は暗闇で迸る命、若さを叫ぶ
5. いつか君に殺されても
6. 午前二時
7. J・O・E
8. それは悲しい唄のように
9. 彼と彼女の日常
10. 気まぐれのように揺れる世界から
[初回限定特典]
・限定ジャケ・カード
・卓上モーモールルギャバン
・メンバー直筆第三弾 直筆サイン入りかもしれない豪華応募抽選券

プロフィール
モーモールルギャバン

ゲイリー・ビッチェ(Dr&Vo)、ユコ・カティ(Key&Vo)、T-マルガリータ(B)。2005年京都にて結成、09年に発表した初フルアルバム『野口、久津川で爆死』が話題になり、10年にメジャー進出を果たす。圧倒的なライブパフォーマンスが話題で、フェスでは常に入場規制、「第4回CDショップ大賞2012」では“ライブパフォーマンス賞”を受賞するなど、ノリにノッテルロックバンドである。



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