『Hostess Club Weekender』は中止と休止を経てどう変わる?

2012年にスタートし、ベテランから新人まで「今これが観たかった!」という旬の海外アーティストを紹介し続けてきた『Hostess Club Weekender』。これまでは年に2~3回のペースで開催されていたため、2016年に一度も開催されなかったことに不安を覚えたファンもいたかもしれないが、充電期間を経て、約1年半ぶりとなる開催を発表。2月25日にPIXIES、26日にTHE KILLSという両日のヘッドライナーに加え、初の日本人バンドとしてMONOの出演も決定するなど、すでにそのラインナップが大きな話題を呼んでいる。

イベント開催に際して、CINRA.NETでは、約3年半ぶりとなるHostess代表アンドリュー・レイゾンビー(通称、プラグ)のインタビューを実施。「Beggars Group」との契約解消、「MAGNIPH」との提携による日本人アーティストのリリース、ストリーミングの普及など、この1年半に起こった変化について、幅広く語ってもらった。アーティストの自由なクリエイティブを何より大事にするHostessの信条と心意気を、ぜひ感じていただきたい。

『HCW』は特定の世代やアーティストのニーズに応えるものではない。

―2012年から定期的に開催されてきた『Hostess Club Weekender』(以下、『HCW』)ですが、2月の開催までは過去最長の約1年半という期間が空きました。この理由について教えてください。

プラグ:前回、MELVINSやBLOC PARTYと一緒にやったのがちょうど10回目だったのですが、そもそもこのイベントをやる理由はいろんな音楽に触れてもらう機会を作るためです。もちろん、それを実現するためには、いろいろなことを考えなければなりません。

『HCW』では、8組の海外アーティストを招聘しています(開催当初は10組だった)。となると、当然クルーも要りますし、ホテル、移動費、機材、食事、何もかもが必要です。なおかつ、チケットの値段を手頃なものにしなければならないということまで考えると、実際に利益を出すのは難しいんです。これまで、そのことはわかっていながら投資をしてきました。

アンドリュー・レイゾンビー
アンドリュー・レイゾンビー

―前回取材させていただいた際も(ビジネスより大切なこと Hostess代表インタビュー)、重要なのはお金ではなく、健全な音楽マーケットを作ることであり、お客さんにリスナーとしての自信を持ってもらうことだとおっしゃっていましたね。

プラグ:そうですね。もちろん、『HCW』はアーティストにとって間違いなくいいプロモーションになりますし、なおかつ、オーディエンス、音楽ファンにとってもいいイベントでありたい。商業的なことはもちろん考えなければなりませんが、だからといってそれがプログラムのすべてを動機づけるものではありません。

『HCW』、『HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER』(2015年から『SUMMER SONIC』内で行われているオールナイトイベント)は、「アーティストのるつぼ」をひとつのコンセプトにしているので、特定の世代やアーティストのニーズに応えるものではないんです。その分、どの音楽が本当に興味深いものなのかを見極めながらやってきました。

初日のヘッドライナー・PIXIESの最新アルバム『Head Carrier』より

2日目のヘッドライナー・THE KILLSの最新アルバム『Ash & Ice』より

―それを10回やってきて、一度仕切り直すタイミングを迎えたと。

プラグ:正確には、9回目で開催中止を余儀なくされてしまったわけですが、トータルで10回やってこれたので、ひとまず休みたいと考えました。そして、「この人たちは観れた、あの人も観れた」といったことや、「これは上手くいったけど、こっちは金銭的に難しかった」ということを振り返って、目的の核になるものを失わずに、損失を少なくして、よりよいイベントにしていくにはどうするべきかを改めて考えたんです。

―業界の変化や、何か外的な要因で開催することが大変になってきたという部分もあったのでしょうか?

プラグ:そういうわけではないですね。これまでも、自分たちが正しいと思ったことには投資すべきだと考えてきましたから。ただ、やりすぎないようには注意してきましたけどね。

過去に開催された『Hostess Club Weekender』のポスター

過去に開催された『Hostess Club Weekender』のポスター

―では、『HCW』の再開はなぜこのタイミングだったのでしょう。

プラグ:いつ再開してもおかしくはなかったんです。ただ「今だ」と感じる必要があった。その感覚は、これからブレイクするであろう新しいアーティストからもたらされたところが大きいです。例えば、PUMAROSAやCOMMUNIONSが、素晴らしいアルバムを届けてくれた。彼らのような、本物のライブを見せてくれるアーティストの存在が、『HCW』を今こそ復活させるときだと感じさせたんです。

初日に出演するPUMAROSAの最新作『Pumarosa EP』より

2日目に出演するCOMMUNIONSの最新作『Blue』より

プラグ:それに『HCW』が恋しかったのも事実で。だから再開できて嬉しいですよ。両日共に午後の早い時間に1組目のアーティストを見るのが楽しみですね。2日目はいつも二日酔いぎみですが……。

私たちは私たちの観点からアーティストに「同志」としてアプローチする。

―実際に11回目の『HCW』を開催するにあたって、これまでとはどんな変化があるのでしょうか?

プラグ:まず、1日4組というのはちょうどいいと思います。スタジアムでやるようなバンドを呼ぶわけではないので、新木場STUDIO COASTサイズの会場でも収まりますし、ロジスティクス的にもいいですし。あとは新旧のアーティストのバランスを考えたことと、今回は日本のバンドを入れたこともお気づきかと思います。それが大きな違いですね。

ただし、日本のバンドを無理やり入れるようなスタイルでは起用したくありませんでした。MONOは今回のショーの中でも重要な目玉ですし、実際に彼らは素晴らしいバンドなので、観てもらうには絶好の方法だと思っています。

『Hostess Club Weekender』フライヤー
『Hostess Club Weekender』フライヤー(オフィシャルサイトを見る

―昨年は「MAGNIPH」とパートナーシップを締結し、MONO以外にも、THE NOVEMBERSとKlan Aileenという3組の日本人バンドの作品がHostessからリリースされています。この決断に関しては、どんな背景があったのでしょうか?

プラグ:日本人アーティストのリリースは、長い間やりたかったことのひとつでした。新しいアーティストでも、地位の確立されたアーティストでも、音楽的に筋が通っていて、自分たちが好きなアーティストを出したいと思っていたんです。

一般的に、国内アーティストに関する業界内の仕組みは、様々な意味合いで海外と全く違います。オルタナティブミュージックのバンドに関してですらそうなので、私たちと同じニーズを感じている人々と出会うまで、とにかく辛抱強く待つ必要があったんです。しかし、MAGNIPHの場合は非常に早い段階で通じ合うことができました。

―その「ニーズ」とはどんなニーズなのか、どんなアーティストであればリリースしたいと思ったのか、そういった線引きについて話していただけますか?

プラグ:非常に複雑な話なのですが、私たちは西洋的な観点から、アーティストに「同志」としてアプローチをします。例えば、天文学的なマネジメント費を取らないですし、アーティスト自身に完全な裁量権を託し、権利も私たちではなく彼らのものにする。私たちはアーティストの権利のもとで、彼らの作品を扱っているようなものです。

初日に出演するMONOの最新アルバム『Requiem For Hell』より

プラグ:日本はそうでもありませんが、西洋ではメジャーも含めてそういうやり方が主流になっています。長い目で見れば、アーティストにこれまでより多くの自由を与えれば、彼らは心地よく、オープンな気持ちで自己表現できるだろうという考えなのです。線引きについて、具体的に言えば……私たちが『COUNT DOWN TV』(TBS系列)に出るようなアーティストを扱うことは考えにくいということですね(笑)。

世界中のアーティストが成長できる環境づくりをするだけ。アーティストは機械ではありませんから。

―今回『HCW』に出演するMONOに関しては、すでに海外での実績もありますし、そういったバンドがHostessと組むというのは、いち音楽ファンとして非常にワクワクさせられる出来事でした。

プラグ:欧米の業界の仕組みとアーティストの関係についてですが、多くの日本のファンにとって、欧米のオルタナティブカルチャーをフォローするのはとても難しいことだと思います。特に若いファンにとっては、日本のバンドを追う方が楽ですよね。ただ、欧米のバンドと日本のバンドの音楽的な違いは、それほど大きくはありません。

ですから、私たちは日本出身とかイギリス出身とか、出身国を打ち出すことはあえてしません。今回の『HCW』でも、出演するアーティストはプログラムの中で対等な立場にあって、それぞれにとって然るべきタイムテーブルを組んでいます。素晴らしいイベントになると思いますよ。

2日目に出演するLITTLE BARRIEの最新作『Death Express』より

―昨年リリースした3組の日本人アーティストについては、今後の海外展開もお考えなのでしょうか?

プラグ:私たちはアーティストの自然体で心地よい状態を引き出すようマネジメントして、作品の中で自己表現させるというアプローチを取っています。ですから、彼らが曲を書いたり、レコーディングをしたり、作品を発表したりするときは、日本のマーケットのためにやるわけでも、日本のマーケットのニーズに応えるわけでもありません。イギリスやアメリカのマーケットに対しても同じです。ただ、音楽としてリリースするだけ。

もちろん、私たちは世界中の人々と協力し合って、できるだけ多くの人々に届けるようにはしています。ですが、音楽を「箱」として売ることはあまり重要視していません。エンターテイメントにはそういう側面もあるとは思いますが、音楽は違う。それは私たちのすべきことではないと思っているんです。

アンドリュー・レイゾンビー

―なるほど。

プラグ:私たちが一緒に仕事をしたいと考えるアーティストは、独特のものを持っていて、自分たちのやっていることに信条があり、ユニークで興味深い、とてもスペシャルな音楽を作ろうという明確なビジョンを持っている人たちです。私たちの役割は彼らの後ろ盾として、彼らがビジョンを達成するまでの過程を支えること。彼らの周りの人々も今までそうしてきたはずです。

我々がすべきことは、世界中のアーティストが成長できる環境作りをするだけ。「3月にアルバムを出そう、次の3月にはもう1枚アルバムを出そう、3年後にはグレイテストヒッツを出そう」ではなくてね。アーティストがその都度その都度、やりたいことにトライできる余地を残しておきたいのです。アーティストは機械ではありませんから。

日本のキッズにどう音楽を売るかを、イギリスにあるレコード会社にコントロールされることは避けたかった。

―今の話とも少し関連するかと思うのですが、昨年は「Beggars Group」(RADIOHEADなどを擁する「XL」、THE STROKESらを輩出した「Rough Trade」などを傘下に収めるレーベル)との業務提携の契約解消がありました。プレスリリースには「(Beggars Groupの)イギリス本国から戦略立案、予算管理をするディストリビューション契約でのビジネスモデルの構築」に対し、「お互いの業務スタンスが大きく相違すると認識」するに至ったとありましたが、これについてもう少し話していただけますでしょうか?

プラグ:欧米のアーティストのマーケティングや売り込みを日本で行うには、細かい段取りやお金がものすごく必要で。端的に言うと、私たちが日本のキッズにどう音楽を売るかを、イギリスにあるレコード会社にコントロールされることは避けたかったんです。

アンドリュー・レイゾンビー

―プレスリリースには日本の洋楽市場について「ライセンス契約に基づくローカライズされた戦略と計画遂行がこれまで以上に必要とされる」と書かれていて、Hostessとしてこの部分は譲れなかったと。

プラグ:そうですね。日本と海外ではマーケットが全く違いますから、Beggarsのやり方に関して、我々と同じように考える人は非常に少ないと思いますが、6000マイルも離れたところから、自分たちの愛する音楽をどのように届けるかをコントロールさせるわけにはいきません。私たちは予算の充てどころや投資、宣伝の仕方を心得ていますし、これからそれをもっとよくしていきたいと思っていますからね。

THE LEMON TWIGSはBeggars Group傘下の「4AD」所属のアーティストだが、2日目に出演することが発表されている

(ストリーミングの普及は)私たちが扱っているような音楽をより浸透させるマイルストーンになると思う。

―ビジネスモデルの変化は当然インフラの変化とも関わってくる話で、昨年は日本でもApple Musicに続いてSpotifyが本格的にスタートしたわけですが、ストリーミングの普及と日本における洋楽市場の関係性についてはどのようにお考えですか?

プラグ:実は2大勢力以外とは以前から、ストリーミングについて積極的に関わっています。ヨーロッパには、日本のニッチな音楽好きの層と繋がろうとしている小規模なレーベルがたくさんありますからね。ただ、日本の音楽マーケットは明らかにユニークなもので、ポップスとドメスティックの割合が非常に大きく、キャッシュがあるのはそこなのです。究極的にはそこを手に入れたいと考える海外レーベルが多いのですが、そこに手を広げるのはなかなか難しいですね。

Apple Musicは上手くいっていますし、順調に成長しています。私たちにとってもいいことです。Spotifyはもう少し苦戦するかもしれませんが、今のところいい感じですし、私たちも喜んでいます。

―ストリーミングの普及に対して、どんな可能性を感じていますか?

プラグ:私たちが望んでいるのは、各サービスが出てきたときに、オルタナティブミュージックも網羅してくれることです。そういうサービスの出現は、私たちが扱っているような音楽をより浸透させるマイルストーンになると思います。業界からも徐々に受け容れられているということですね。

現時点では、日本国外の音楽やオルタナティブミュージックにはあまり重点が置かれていないかも知れませんが、今後5年くらいの間に、ストリーミングがライブショーの開催に活かせるような状態になっているといいですね。まあ、こういうものは長い目で見ないといけないと思いますが、現状については好意的に捉えています。

初日に出演するGIRL BANDの最新作『Holding Hands With Jamie』より

―では最後に、いろいろな変化が起こっている業界の中で、Hostess Clubとして自分たちでライブを開催することの重要性をどのように考えているか、改めて話していただけますか?

プラグ:私たちは「Creativeman」「SMASH」「Live Nation」などたくさんのイベントプロモーターやアーティストと仕事をしていますが、自分たちが1組のアーティストにポイントを置いてショーを主催できるということは、そのアーティストの作ったアルバムを私たちがどうアピールするかに繋がります。例えば、THE KILLSは今アメリカで非常に忙しいので、本来なら日本には来られなかったと思うのですが、今回来日を実現させることができました。

私たちが、CreativemanやSMASHと協力しながらも、『HCW』や『HOSTESS CLUB ALL-NIGHTER』、またHostess Clubとして主催する単独公演を通してイベントプロモーターとして競合となることで、質のいい音楽への注目が上がってきていると実感しています。プロモーターが、一時の商業的な成功だけを目的としない音楽により注目していくこと。それは日本のマーケットにとってとてもいいことだと思うんです。

アンドリュー・レイゾンビー

それに、自分たちでやるということは、私たちとアーティストの思惑をマッチングする機会を与えてくれますし、今までになかったアングルを与えてくれるものでもある。自分たちで公演を主催することには、時間をかけるだけの価値が十分あると思いますね。私たちはこれからもHostess Clubのスタイルでライブを構成し、オーディエンスにアプローチし続けていきます。私たちがみなさんにご紹介するアーティスト、一つひとつに理由や目的がありますから。それはこれからも変わりません。

イベント情報
『Hostess Club Weekender』

2017年2月25日(土)、2月26日(日)
会場:東京都 新木場 STUDIO COAST
2月25日出演:
PIXIES
MONO
GIRL BAND
PUMAROSA
2月26日出演:
THE KILLS
LITTLE BARRIE
THE LEMON TWIGS
COMMUNIONS
料金:2日通し券13,900円 1日券8,500円(共にドリンク別)

プロフィール
アンドリュー・レイゾンビー

ホステス・エンタテインメント代表。海外の良質な音楽を日本に定着させるため、2000年に独立系音楽会社としてホステス・エンタテインメントを設立。日本市場での独自のアイデンティティー確立を目指す厳選された海外アーティストやレーベルの、パッケージ及びデジタル商品全般の国内マネジメント、プロモーション、営業、マーケティングサービスの展開を行う。海外の多くの独立系レーベルと提携し、ARCTIC MONKEYS、RADIOHEAD、FRANZ FERDINANDといったアーティストの作品をリリースしている。



フィードバック 0

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • 『Hostess Club Weekender』は中止と休止を経てどう変わる?

Special Feature

Habitable World──これからの「文化的な生活」

気候変動や環境破壊の進行によって、人間の暮らしや生態系が脅威に晒されているなか、これからの「文化的な生活」のあり方とはどういうものなのだろうか?
すでに行動している人々に学びながら、これからの暮らしを考える。

記事一覧へ

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて