カネコアヤノが語る、怒涛の2年の全て 本当のはじまりはここから

カネコアヤノとの出会いと『祝祭』リリース前夜のざわつき

カネコアヤノの弾き語りを初めて観た日のことは、鮮明に憶えている。昨年(2017年)の11月11日土曜日、東京郊外の多摩ニュータウンにある旧三本松小学校を会場に開催された、CINRA主催の『NEWTOWN』という文化祭でのライブ(参考記事:大人の文化祭『NEWTOWN』。カルチャーが元小学校に集結した日)。ぼくもトークショーの出演者として参加したこのイベントは、無料で観覧できる演目が充実していて、フリーライブの出演者のなかに彼女の名前を見つけた瞬間、「この機会を逃したくない」と思った。

良質な音楽に出会える場所として定評があるレコードショップ、ココナッツディスク吉祥寺店のブログで熱烈にレコメンドされているのを見て以来、気になって仕方がないのに、ライブのチケットは即完売が続いて観に行けない。ジャケットを一目見ただけで「これはマストだ」とわかる1st LP『群れたち』も、ちょっと目を離した隙に売り切れて手に入れられない。こうなったら意地でもミュージックビデオは見ないで、『NEWTOWN』当日にこの目でライブを見届けるまで、白紙の状態でいようと決めた。

そして、立錐の余地もないほどの観客が集まった小さな音楽室で目撃したカネコアヤノのライブは、期待を遥かに超えて素晴らしかった。マイクもない、完全生音のアコースティックギターと肉声のみの弾き語り。ワンピースに素足で現れた、上村一夫のイラストから抜け出してきたようなオーラをまとった少女は、ストレートロングの黒髪をなびかせ、射るようなまなざしを観客に向けて、一音一音のフレーズを確かめながらギターを奏で、狭い教室の隅々までよく響く声で、日々の生活のなかにある一瞬の輝き、希望や不安、恋する歓びなどを歌った。

聴く者の心にまっすぐ突き刺さるような声。その尖った声で歌われる1曲1曲が「劇的」だった。地声からファルセットに変わるときの切なさといったら!

明日には忘れる約束 たくさんしようよ
小鳥がさえずるときまで
ヘイ ベイベ たまにはいいでしょう
カネコアヤノ“さよーならあなた”より

近所の子供の声に
この分厚いセーターは似合わないなぁ
あせくさく どろくさく
いつでも 今でもなれたら
カネコアヤノ“春”より

カネコアヤノの歌を聴きながら、過ぎ去った日々や失くした恋を想った。彼女と同世代の若いリスナーみたいに、現在進行形で想いを共有できないのはちょっと残念だけど、彼女の歌の行方を見守ることはできる。こんなにヒリヒリと心のかさぶたを引き剥がされるような気持ちになる歌とめぐり会ったのは、本当に久しぶりのことだ。カネコアヤノは、ぼくみたいなスレッカラシにも夢のカケラをもう一度数えさせてくれる、とびっきりの才能だと確信した。

2017年9月16日リリースの1st LP『群れたち』収録曲

今年の2月21日、TSUTAYA O-nestで開催されたおとぎ話とのツーマンライブで、バンドセットのパフォーマンスを初めて目の当たりにして、またもや驚嘆させられた。「ソロ歌手とバックバンド」ではなく、完璧に一体化した「4人編成のロックバンド」がそこにいた。

カネコアヤノ(バンドセット)
Photo by Yasuyuki Kimura

なぜか、イギリスBBC制作の人気活劇ドラマ『マスケティアーズ/パリの四銃士』のイメージが、ぼくのなかで重なった。つまり「いたいけな女子を屈強な男たちが支える」という構図ではなく、いわば主人公のダルタニアンがカネコアヤノ、ダンディな兄貴分のアトスが林宏敏(Gt)、力自慢のポルトスが本村拓磨(Ba)、伊達男のアラミスがBob(Dr)という按配なのだ。3人の勇者に囲まれ、嬉々として跳ねながらエレクトリックギターを掻き鳴らすカネコの目元についた金ラメが煌く。「何かとてつもなく面白いことが起こってる」と言うしかない光景にクラッとする。ちょっとサイケでカントリーの香りもするアーシーなロックサウンドとの対比がとても新鮮に聞こえた。

その1か月後、ぼくにとっては初めて(CINRA.NETでは2度目)のインタビューを行う機会を得た。ソロの弾き語りとバンドセットの両方で、まったく異なる魅力を放つ2年間の活動の成果がぎっしり詰まった、約2年半ぶりのフルアルバム『祝祭』が4月25日にリリースされる。ステージを降りると朗らかなカネコアヤノの素顔を少しでも伝えられたら幸いだ。

2016年、「カネコアヤノ 第2章」の幕開けとともにはじまったリリースラッシュ

カネコアヤノと現マネージャー(カネコが所属する「We are」代表・粟生田悟)が二人三脚で展開してきたこの2年間の活動には、注目すべき点がある。ライブ会場、オンラインストア「カネコ商店」、およびコアな支持者がいるショップ(中古盤店や古書店を含む)を中心に、LP、カセット、CDなど様々なフォーマットの作品を矢継ぎ早にリリース、いずれも即完売を連発しているのだ。

2016年4月23日リリースの弾き語りアルバム『hug』
2016年4月23日リリースの弾き語りアルバム『hug』

2016年12月7日リリースの1st EP『さよーならあなた』(1stエディション/特別盤)
2016年12月7日リリースの1st EP『さよーならあなた』(1stエディション/特別盤)

2017年1月30日リリースの1stカセットシングル『朝になって夢からさめて』
2017年1月30日リリースの1stカセットシングル『朝になって夢からさめて』

2017年4月26日リリースの2nd EP『ひかれあい』
2017年4月26日リリースの2nd EP『ひかれあい』

2017年12月18日リリースの『さよーならあなた』ジャケット(2ndエディション/特別盤)
2017年12月18日リリースの『さよーならあなた』ジャケット(2ndエディション/特別盤)

2018年1月15日リリースの2ndカセットシングル『序章』
2018年1月15日リリースの2ndカセットシングル『序章』

2018年3月28日リリースの7inchシングル『Home Alone』ジャケット
2018年3月28日リリースの7inchシングル『Home Alone』ジャケット

これまでのJ-POPに顕著な大量の宣伝費を投入した絨毯爆撃的なプロモーションとは異なり、クリエイティブな変幻自在のリリースラッシュが多くの人々の関心を呼ぶことになった。これを「狙いすました戦略」という見方をする人がいるとしたら、それは違うと断言できる。アーティスト本人とスタッフが知恵を凝らしファンを増やしていこうという地道な努力以外の何ものでもない。

カネコ:2年前に『hug』を作ってからは、とにかく止まらないでやろうというのがテーマで、それを有言実行しているだけです。活動が止まらず話題が途切れないことが重要だった。「なんか騒がしいなぁ」と思ってもらえたらいいなと。

カネコアヤノ
カネコアヤノ

—カネコさんのことを知らなくても気になる。ここまで短期間に次々と作品をリリースしているアーティストは、めったにいないですから。

カネコ:うれしいです。でも本当に、カセットとかLPとかずっと出したかったから出そう! って感じですよ。

—カネコさんの世代(1993年生まれ)だと、カセットはあまり身近な存在ではないような気もしますが……。

カネコ:私、小学生のとき、ずっとカセットで音楽聴いていたんですよ。みんなはMDとかで音楽聴いてるのに、私はお姉ちゃんのお下がりのラジカセでラジオを聴きながら、好きな曲が流れるときは録音ボタンをポチって押して。やばいですよね(笑)。

—ぼくが高校生の頃(1980年前後)と同じです(笑)。

カネコ:もうちょっとやりようがあったんだろうけど、小学生だからわかんなくて、カセットテープ2、3本で回して、何回も上書きして録るという。CDラジカセだったから、CDもいっぱい聴きました。

CDを買った帰り道、家に帰るまで待ちきれなくて、電車のなかで開けちゃうみたいな。思い返せば、そういうことは今に繋がっているんじゃないかと思います。

カネコアヤノ

—今は音楽を聴く環境がちょっと便利すぎるかもしれない。

カネコ:そうですよね。

—アナログ盤に針を落とす、みたいなちょっとした儀式性があることで生まれる、音楽と向き合う気持ちもきっとありますよね。

カネコ:そうそう。アートワークとか、やっぱり何回も見てもらいたいし、歌詞カードを壁に貼ってくれたっていいし、そういうワクワク感はいいですよね。

—『群れたち』のアートワークとか、本当に素晴らしいなと思う。

カネコアヤノ『群れたち』ジャケット
カネコアヤノ『群れたち』ジャケット(サイトで見る

カネコ:(ジャケット写真でカネコが横たわっている)この花畑にも呼ばれて行った感じで、撮影の移動中に偶然見つけた場所なんです。撮影当日もめっちゃ晴れてたし、ラッキーだった。でもそういう奇跡みたいなことが起きちゃう作品をずっと作りたいって思うし、この2年間はずっとそれができてるから、これからも大丈夫だと思ってる。

—楽曲のクオリティーが落ちなければ、きっとできますよ。

カネコ:そうですね。それは守りたいですね。

「音楽作品は音楽だけで成立するものではない。その意識を共有できるクリエイターたちとチームを組んでいるからこそ、今、こういう作品が作れているのを実感する」と、マネージャー粟生田は語ってくれたが、カネコとそれを支えるチームの根底には、音楽に対する強い愛情と、自分たちの創意工夫でハードタイムスを乗り越えたいという「志」がある。

まっすぐな歌と言葉が、呼吸するように生まれるようになるまで

ソングライターとしてのカネコアヤノの強みは、量産型であることだろう。もともと多作なタイプだそうだが、「前の事務所から解き放たれて、何をどうやってもいいんだと思えたことで気持ちが楽になった」と語ってくれた。

2016年4月23日リリースの弾き語りアルバム『hug』収録曲

カネコ:前の事務所にいたときは、たとえば恋愛の歌詞を書くにしても、言い回しとか語尾を細かくチェックされて。そういうことが今はなくなって、Aメロ、Bメロ、サビがはっきりあって、Aメロが来てまたサビが来る、みたいな決まりごともなくなって、本当にやりたいようにやればいいんだ! って思えたら、じゃんじゃん曲ができるようになりました。

—たとえば“序章”とか、そういう決まりごとに縛られないよさがものすごくある。自由に呼吸するように作ってるな、と。

カネコ:うれしい。だから最近は、私がそうしているように、バンドのメンバーも自然にそうしてくれてる気がする

カネコアヤノ

—カネコさんの歌を聴いてると、人はもっと自由でいいはずだし、互いにもっと素朴にコミュニケートしていいはずじゃないかと思える。『祝祭』は、そういう大事なことを改めて思い出させてくれるアルバムです。きっとバンドのメンバーも、カネコさんと一緒に演奏しながら、もっと自由になって生まれ変わるような気分になっているのかな、と想像します。

カネコ:そうなれてたらいいですね。

大学時代よりカネコを支え続けるベース・本村の存在

現在のメンバーのなかで最初にカネコと合流したのは、ベースの本村だった。カネコとは18歳の頃からの知り合いで、大学2年のあるとき、カネコいわく「歌も楽器も全部がヘロヘロ、音も意味なくスカスカだった」ライブを観て、「曲がとにかく素晴らしくて感銘を受けた、これが本当のバンドだと思った」と声をかけてきたそうだ。当時カネコのバンドセットにはベースが不在で、「それなら自分がベースをやりたい」と加入して以来の付き合いになる。

カネコアヤノ(バンドセット)
Photo by Yasuyuki Kimura

前の所属事務所を辞めて粟生田と出会い、バンドを再編しようとしたとき、気になっているギタリストはいないかと訊かれたカネコは、「林くんしか思い浮かばないです」と答えた。そのとき林はカネコと面識もなかったが、カネコの音楽を聴いてバンドへの参加を快諾。

踊ってばかりの国に在籍していたときから、ギタリストとしての林の才能は際立っていた。ギターのみならずバンジョーやマンドリン、ラップスティールギターなど多彩な弦楽器を操り、真摯にアメリカーナを探究する姿勢など、その全てが今のカネコの音楽に欠くことのできない要素となっている。

2018年3月28日リリースの7インチシングル『Home Alone』および『祝祭』収録曲

しかし、林の加入後に『さよーならあなた』『ひかれあい』と2枚のEPを作り、ライブを重ねるなかで、「本当に好きにやってくれていいから」と何度も伝えたというカネコから見て、林が本当にバンドの一員として馴染んだと思えたのは、『ひかれあい』の制作に入ってから。そこに至るまでには林とタイトな信頼関係を築いた本村の役割が大きかった。

カネコ:本村くんは、私がバンドをやりたいという気持ちを本当に理解してずっとついて来てくれて、その意思を林くんや、その後に加わったドラムのBobにも引き継いでくれたすごく重要な存在ですね。私にはできないところを男の子として補ってくれたと感じます。

音楽家としてのカネコを大きく前進させた、ひとつの別れ

『祝祭』の制作を前に、もうひとつ大きな転機が訪れる。バンドの初期からのドラマーであり、レコーディングエンジニアを務め、アレンジにおけるキーマンでもあった濱野泰政がドラムの座を離れ、新たなドラマーとしてBobが加入したのだ(濱野は『祝祭』でもレコーディングエンジニアを務めている)。

カネコ:アレンジに関しては、私もヤスさん(濱野泰政)にすごく依存していたから、まずそこを抜け出さないといけないし、純粋にバンドをもう少し若々しくしたいという話になって、アルバムの制作に向けて新たなドラマーを探そうと決心したんです。

それで本村くんと林くんに相談したら、(HAPPYのドラムの)Bobがいいんじゃないかと。一度スタジオに入って音を合わせてみたら、本当に相性がよくて。特に『祝祭』のレコーディングを経て、すごい速さでバンドメンバーになっていったと感じる。それもあって最近のライブは一体感のあるものにできているのかな、と思いますね。

カネコアヤノ(バンドセット)
Photo by Yasuyuki Kimura

カネコ:ヤスさんがいないとアレンジ面など不安はすごくありましたし、私が一歩先に行くためには大きなハードルになっていたことも事実で。でもヤスさんがチームを抜けるわけではないし、ヤスさんにも力を貸してほしかったら、その都度相談すればいいなと。変わっていくことを受け入れないとダメだと思い切りました。脱皮ですね、これは大きかった。

—メンバーチェンジしてから、楽曲のアレンジをカネコさんとバンド全員で行うようになったんですか?

カネコ:前からみんなで作ってはいたんです。でも、私はスタジオに一応いるけど何も言えないことが多くて……。弾き語りのデモを渡したり、スタジオで「新しい曲作ってきた」って弾き語ると、メンバーが勝手に合わせてくれて、そこから広げていく感じだったんですけど、「こういうイメージがあって、こういうふうにしてほしい」程度のことさえ以前は言えなかった。林くんが入ってきた辺りから、それがやっと言えるようになりましたね。

—言えなかったというのは、遠慮していたということ?

カネコ:「間違えたらこわいな」みたいな。何が間違いなのかもよくわからないんですけど。

—自分の音楽的な語彙にあまり自信がなかった?

カネコ:今もそんなにないです。弾き語りのときは、逆にそんな感情もないですけど。バンドアレンジに関しては、メンバーの存在は大きいです。

カネコアヤノ

「バンドのときは、とにかく楽しくやる」(カネコ)

表現者としてのカネコの最大の魅力のひとつは、弾き語りとバンドセットでの歌の表情の違いだろう。この2つの違いについて、本人はどう感じているのだろうか。

カネコ:……自分のなかでは明確にあって、でも今まではうまく説明できなかったんですね。7インチをリリースしてくださった本秀康さんの作品展(「クリエイションギャラリー G8」にて、2018年2月27日~3月29日の期間で開催された『ロックとマンガ』)のトークショーのオープニングで歌わせていただいたんですけど、そのとき本さんが、漫画とイラストレーションの違いについて話していて。

漫画の場合は、絵は適当でよい、とにかくストーリーを伝えていって楽しいものにすると。イラストレーションは自分と向き合う作業で、絵もできるだけ丁寧に描くことを大事にしている、と言っていて、「あっ! 私もこれだ」と思ったんです。

カネコ:バンドのときは、とにかく楽しくやる。歌も別にマイクから外れたところで自分がウワーッとなっても周りの3人がいるし、その空気感みたいなものがすごく重要だけど、弾き語りでは歌詞を一つひとつ読み上げるような気持ちで丁寧に歌ってる。客席のみんなのことをしっかり見て、目を合わせたりすることを大切にしていて。

それに、アコギのほうが体にフィットしてるし、ギターもバンドのときよりちゃんと弾くようにしてます。だから本さんの考え方がすごいしっくりきて、「すごく楽しくやるか、すごく自分と向き合って丁寧にやるかのどっちかだな」って、はっきりしました。

自作曲だけがあってデビューが決まった場合、優秀なプロデューサーが付いて、全ての音作りを担うケースも多い。しかしカネコの場合、その選択をとらず、時間がかかってもこうして一歩一歩自分たちで模索する道を選んだことが功を奏しているのではないか。

カネコ:アレンジの段階から誰かに全部作られても、どうせムカつくんですよ、私は(笑)。音のことはよくわからないけど、イメージはあるんです。それは音じゃなくても伝えられる。

カネコアヤノ

「男に負けたくないけど、私は女ですから」(カネコ)

バンドのなかでエレキギターを持ってフロントに立つ姿も様になっているが、今のカネコにとって、新たなアコースティックギターとの邂逅も大きな出来事だったようだ。今年初め、“祝日”のレコーディングの前日に運命的な出会いを果たし、この曲だけがそのギターで録音されている。

—アルバムのクロージングナンバーだし、全13曲のドラマのラストにこの曲が来たという感動もあるけど、純粋に“祝日”はグッとくる。<できないことも頑張って/やってみようと思ってる>っていうフレーズを聴くたびに、胸がいっぱいになります。

カネコ:いやぁ、できないことが多すぎるから、頑張ろうって。本当に頑張ろうっていう気持ちで私は歌ってて、毎回やっぱりぎゅっとなりますね。

—こういう気持ちを忘れたくないのに忘れちゃうんだよなぁ、って悲しくなります。

カネコ:そうですよね。そういう忘れたくないこととか、小さいときから見ているのに徐々に見えなくなってきていることを記録する唯一の方法が曲を作ることなんです。

『祝祭』収録曲

カネコの歌詞は日記のように綴られており、ひとりごとの連続のように見える。しかし、それにメロディーやリズムがついて歌われることで、聴く者はカネコに秘密を打ち明けられたような気持ちになる。一言一句が他人事でなくリアルに響くのだから、歌とは不思議で、面白い。その魔法は、『祝祭』にも収録された“グレープフルーツ”などに顕著だ。

カネコ:“グレープフルーツ”は“祝日”と同じくらい大切な曲です。この2曲は完全に私のコンプレックスの極みから生まれた曲で、“グレープフルーツ”は前の事務所を辞めるときに作った曲です。

—<いまのわたし/甘い砂糖と苦いグレープフルーツみたい>という、この素敵なサビの1行だけでも十分チャーミングなのに、歌詞のはじまりは<ねむいなぁ>。

カネコ:(手を叩いて笑う)

—<昼過ぎの各駅停車がちょうどいい/よだれを垂らすころには/花畑に魚が泳いでいる>と続くのが最高ですね。こういうとぼけたユーモアもカネコさんのよさだなと思います。

カネコ:うれしい。パワーワードを入れたいですね、1曲のなかに一言はハッとするような言葉を。

—そういうフレーズって、突然降りてきたりするんですか?

カネコ:降りてくることもあります。<あーまーい砂糖と>とか<朝はエメラルド>とかは降ってきた。<朝はエメラルド>は歌詞が気に入ってますね。

カネコアヤノ

<朝はエメラルド>という歌い出しからはじまる“エメラルド”。そのすぐあとに<凄い速さで駆けてゆく>と来て、<考えてみても仕方がないことばかりだね>と続く。そうやって1行進むたびに思考がポンポンと飛ぶのが、刹那を燃焼し尽くしながら生きる「カネコらしさ」の表れにも見える。<クローゼットの中で一番気に入ってるワンピース着ていくね>というフレーズも印象的で、1曲のなかにひりひりしたロックな感覚とスウィートな感覚が入り混じっており、まさにグレープフルーツみたいに苦さと甘さが混在している。そこが今のカネコの魅力だと思う。

カネコ:かっこよくありたいけど、やっぱり単純にかわいい服とか着たいし、髪も伸ばしたいし、そういうところはあるかもしれない。男に負けたくないけど、私は女ですから、「ワンピース」みたいなワードが歌詞に出ているのかなぁ。

—先日の『exPoP!!!!! Vol.107』ではパジャマのまま出ました、みたいな衣装だった(笑)。タフな野郎どもに囲まれて、体は小さいけど、ガーンってエレキギター弾いてる。

カネコ:いや、そこはマジで負けないって思ってますから。かわいいとか言われるのはうれしいけど、音楽は……表現とか制作に関することは、男とか女とか関係ないですからね。

カネコアヤノ

201年4月26日リリースの2nd EP『ひかれあい』収録曲

『祝祭』は、怒涛の2年の集大成にして、本当の意味でのはじまり

『祝祭』からは、「カネコアヤノはここからはじまる」という歓びに溢れたマジカルな昂揚を感じる。紙資料によれば、今作は「カネコアヤノの第2章を総括する作品」だという。

カネコ:自分で試行錯誤しながら作ったアルバムは、これが初めてだから。私にとっては、これが本当の1stアルバムという気持ちです。できあがったときのうれしさとか達成感は、これまでのアルバムの比じゃない。

—あるテーマが最初に合って、それに近づけていったわけではない?

カネコ:それはまったくなかったですね。私のなかから出てくるもので作ったらこうなりました、というアルバム。でもそれがすごくよかったと思う。

—ここ1年くらいの変化の記録。ドキュメンタリーみたいなアルバムになったのかな。

カネコ:ドキュメンタリーだし、エッセイで、私小説だと思ってる。生活の一部を切り取った歌になればいいし、日々の暮らしのなかでしか、今は作れませんね。

カネコアヤノ

<恋しい日々を抱きしめて/花瓶に花を刺さなくちゃ>(“恋しい日々”)と自らに言い聞かせるように歌うカネコの生活に対するまなざしや、ありふれた日常の所作さえも大切に思う気持ちから書かれた『祝祭』の言葉は、ぼくらの心のうちにありながら見失っている真実を言い当てているような気がする。

“祝日”という曲名にも象徴されるように、カネコの歌詞には日常のなかに垣間見える特別な瞬間を抱きしめたいという、日々を慈しむ感覚がある。それは、2年前までのカネコとは別人のようなパワーを炸裂させ、ブレイクスルーのきっかけとなった楽曲“とがる”以降の成長を窺わせる大きな変貌だろう。

カネコ:“とがる”までのイメージが一旦終わったな、っていう感じはあります。“とがる”で私のことを知ってくれた方が多いと思うんですけど、そういう方たちはこのアルバムを聴いてどう思うのかな……。誰が共感してくれてもうれしいけど、そのなかでも特に、同性とか同世代の人たちの心に何かが残ったらうれしいな、ってすごく思いますね。

カネコアヤノ『祝祭』ジャケット
カネコアヤノ『祝祭』ジャケット(Amazonで見る

—第3章の門出に立ち会えてよかった。これからの展開が楽しみです。

カネコ:がんばりますっ! ポップにいきたいです。

—『群れたち』には“ポップなおんな”という曲もありましたけど、だんだん「ポップなおんな」になってきていますね。

カネコ:いやぁどうでしょう。まぁ徐々に(笑)。自分のなかではまぁ、あと……少しかな。

カネコアヤノ

リリース情報
カネコアヤノ
『祝祭』(CD)

2018年4月25日(水)発売
価格:2,600円(税込)
WRCA-18

1. Home Alone
2. 恋しい日々
3. エメラルド
4. ごあいさつ
5. ジェットコースター
6. 序章
7. ロマンス宣言
8. ゆくえ
9. サマーバケーション
10. カーステレオから
11. グレープフルーツ
12. アーケード
13. 祝日

イベント情報
『カネコアヤノ TOUR 2018“祝祭”』

2018年5月4日(金・祝)
会場:神奈川県 横浜 日ノ出町試聴室 その3(SOLD OUT)
出演:
カネコアヤノ
柴田聡子

2018年5月6日(日)
会場:群馬県 高崎 WOAL(SOLD OUT)
出演:カネコアヤノ

2018年5月11日(金)
会場:広島県 4.14
出演:
カネコアヤノ(バンドセット)
シャムキャッツ
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2018年5月13日(日)
会場:京都府 Livehouse nano(SOLD OUT)
出演:カネコアヤノ(バンドセット)

2018年5月27日(日)
会場:石川県 ハルモニー金沢
出演:
カネコアヤノ
折坂悠太
noid
料金:前売2,800円 当日3,300円 学生1,800円(共にドリンク別)

2018年6月2日(土)
会場:岡山県 禁酒会館(SOLD OUT)
出演:カネコアヤノ

2018年6月3日(日)
会場:福岡県 LIV LABO
出演:カネコアヤノ

2018年6月8日(金)
会場:北海道 札幌 Sound Lab mole
出演:
カネコアヤノ(バンドセット)
シャムキャッツ
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2018年6月9日(土)
会場:北海道 札幌 キノカフェ
出演:
カネコアヤノ
その他の短編ズ
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2018年6月15日(金)
会場:宮城県 SENDAI KOFFEE CO.
料金:前売3,000円(ドリンク別)

2018年6月16日(土)
会場:秋田県 大仙 matou(SOLD OUT)
出演:
カネコアヤノ
王舟
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2018年6月23日(土)
会場:東京都 渋谷 WWW(SOLD OUT)
出演:カネコアヤノ(バンドセット)

2018年6月29日(金)
会場:大阪府 心斎橋 Pangea(SOLD OUT)
出演:カネコアヤノ(バンドセット)

2018年6月30日(土)
会場:愛知県 名古屋 TOKUZO(SOLD OUT)
出演:カネコアヤノ(バンドセット)

インストアライブ情報
『「祝祭」リリース記念 インストアライブ』

『東京編~バンドセット~』(ミニライブ&サイン会)
2018年4月30日(月・祝)
場所:タワーレコード新宿店 7Fイベントスペース
※観覧自由

『東京編~弾き語り~』(ミニライブ&サイン会)
2018年5月1日(火)
場所:ココナッツディスク吉祥寺店
※ご来場者多数の場合、入場を制限させて頂く場合もございます

『大阪編~弾き語り~』(ミニライブ&サイン会)
 2018年5月14日(月)
場所:タワーレコード梅田NU茶屋町店イベントスペース
※観覧自由

『名古屋編~弾き語り~』(ミニライブ&サイン会))
2018年5月20日(日)
場所:名古屋PARCO 西館1Fエントランス・スペース
※観覧自由

プロフィール
カネコアヤノ
カネコアヤノ

シンガーソングライター。これまでミニアルバム1枚、フルルバム2枚をリリース。弾き語りとバンド形態でライブ活動も展開中。2016年4月には初の弾き語りアルバム『hug』、さらに11月にEP『さよーならあなた』を発表。2017年4月に2ndEP『ひかれあい』、2017年9月には初のアナログレコード『群れたち』をリリース。2018年4月25日、3枚目となるフルアルバム『祝祭』を全国一斉発売する。



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