高良健吾と城田優が語る、30代の役者の覚悟と過去の自分の愛し方

伊坂幸太郎の小説を連続ドラマ化した『バイバイ、ブラックバード』。映画『聖の青春』などで知られる森義隆が監督し、今年の2月から3月にかけてWOWOWで放送され好評を博した本作は、高良健吾演じる多額の借金を抱えながら女性に5股をかけるダメ男「星野」と、城田優演じる身長190cmの金髪怪女「繭美」がバディを組んで、5人の女性たちに別れを告げに行くという、一風変わった物語だ。

1987年生まれの高良と、1985年生まれの城田。ともに10代の頃から活躍する同年代の俳優でありながら、意外にも今回が初共演となった。劇中では異色の「バディっぷり」を披露している2人が、今回の現場で育んだ同世代役者だからこその絆とは。さらに、「30代を迎えた役者としての意識変化」についてなど、互いにリスペクトし合う2人に話を聞いた。

考え方とか優先順位とか、この仕事において自分がやりたいこととか、そういうものが僕らはすごく似ていて。(城田)

—意外にも今回が初共演とのことですが、現場に入る前は、お互いのことをどんなふうに見ていたのでしょう?

高良:優くんは、すごく明るい人なんだろうなあとか、そんなことぐらいですね。僕はあんまり、会う前から人に対してどうこうっていうイメージを持たないので。実際に会ってからのほうが大事ですね。

城田:健吾はやっぱり、「ザ・俳優」というイメージでしたね。僕はドラマも舞台もミュージカルも、いろいろやってきましたけど、健吾は映画俳優っていうイメージが強かったし、すごく真面目な印象がありました。きっと、真っ直ぐで寡黙な人なんだろうなって。僕が仲良くなるタイプの人ではないと思っていました(笑)。

高良:(笑)。

左から:高良健吾、城田優
左から:高良健吾、城田優

—それが、実際共演して変わったと。

高良:変わりましたね。まさか、こんなに仲良くなるとは思わなかったです。

城田:だって、健吾の俺に対する第一印象があれだもんね。森監督に聞いたけど、「俺、無理かもしれないっす」って健吾が監督に言ってたって。

高良:あれは森さんが、すごい盛ってるんだよ! 「俺、ちゃんと仲良くなれるかなあ」とは、言ったかもしれないけど。

城田:(笑)。僕は犬みたいな性格なので、基本的にすぐ人の懐に入ろうとするんですよね。なので、それに慣れてない人は、「おお、待て、待て」みたいになるんです。

高良:そう、いきなり入ってこられるのが、僕、ちょっと苦手なのかもしれない(笑)。

左から:高良健吾、城田優

—城田さんは、実際に高良さんに会ってみてどうでした?

城田:もともと持っていたイメージはそのままでした。これは、言葉では上手く言い表せないんですけど、健吾とはフィーリングが合ったんですよね。考え方とか思考の仕方とか優先順位とか、この仕事において自分がやりたいこととか、そういうものが僕らはすごく似ていて。

—同年代という理由以上に、2人には通じる部分があった。

城田:そうだと思います。僕は共演した方と、現場が終わってからご飯に行くことがほとんどないんですけど、今回は何度もあったんですよね。別に何を話したとかじゃないんですけど、初日から、「何か合うな」と思って。何だろうね、これ。

城田優

高良:優くんが言ったように、優先順位が似ているっていうのは、僕もすごく思いましたね。みんなが最優先することが、自分からしたら順位にも入らないぐらいのことだったりとかして……。

—たとえば?

城田:役者としての生き方とか、日本人の平均的な考え方と、ちょっと自分はズレていると思っていて。で、健吾もちょっとズレてるんです(笑)。それが別に良いとか悪いとかではなく。

—まさに、今回のドラマに登場する「星野」と「繭美」の関係性のようです。そもそも、このドラマの話がきたとき、それぞれどんなことを感じましたか?

高良:まず、台本が面白いと思いました。この物語には、表面的に見えているものの下に、何か見えない大きな土台がある感じがして。あと、台詞が難しいぞっていうのは思いました。

『連続ドラマW バイバイ、ブラックバード』
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—このドラマは、高良さん演じる「星野」と城田さん演じる「繭美」の掛け合いで物語が進行していくわけで。

高良:そう。だから、台詞の言い方もそうだし、僕たちがどういうふうにこの作品のなかにいるべきなのかを考えるのも難しい。これを2人で成立させていくのは、すごく難しいことだなと思いました。

—城田さんは、そもそも「女性役」としてのオファーだったんですよね?

城田:はい、190cmを超える長身の金髪女性という役柄で。なので、僕も女性として演じています。まあ、その解釈や感じ方は、もちろん見る人の自由なんですけど。監督からは、とにかく繊細に演じて欲しいって言われたんですよね。だから、女性らしくというよりは、繊細さを意識して演じました。

—かなりインパクトのある役でしたね。

城田:とにかくダイナミックな役なので、ふとした瞬間に見せる繊細さが大事というか。脚本だけ読むと、とんでもない役なんですけど、2人のやりとりを見ていくうちに、その奥に隠れているものが見えてくるんです。なぜ星野が5股をしているのか、なぜ繭美がこんなにピリピリしているのか、だんだんわかってくるっていう。

高良演じる星野 © 2018 WOWOW INC.
高良演じる星野 © 2018 WOWOW INC.

城田演じる繭美 © 2018 WOWOW INC.
城田演じる繭美 © 2018 WOWOW INC.

高良:実際やりながら思ったのは、ほとんど寓話なんですけど、2人の姿を見ているうちに、だんだん日常の話に見えてくるということ。それはやりたかったことのひとつなんです。決してリアルな話ではないのに、遠い出来事に感じないというか、どこか日常の話に思えてくるような。

城田:見終わったあとに「この2人になぜか共感出来てしまう」というところを、僕らは目指さなきゃいけないと思っていました。

僕は20代の中盤から、どんなふうに30代を迎えるかっていうのを、すごく考えていたんです。(高良)

—2人とも、台詞の量が非常に多いですよね。

城田:とにかく台詞の量が多かったので、監督にはかなり追い込まれました。健吾は2回目だったけど、僕は森監督の作品は初めてだったので、監督のやり方に慣れるのにも結構大変だったんですよね。

© 2018 WOWOW INC.
『連続ドラマW バイバイ、ブラックバード』 © 2018 WOWOW INC.

高良:自分にとっては20代最後の作品になったし、森さんとは10年ぶりの作品だったので、すごく思い入れのある作品になりました。

—森監督とは、映画『ひゃくはち』(2008年公開)以来、約10年ぶりということで、いろいろ思うところもあったんじゃないですか?

高良:それはありましたね。昔を知っている分、自分が変わったところを見せたかったし、それはきっと森さんも同じだったと思うんですよね。だから、撮影に入る前から、すごく楽しみで。

僕は20代の中盤を超えたあたりから、どんなふうに30代を迎えるかっていうのを、すごく考えながらやってきていたんです。だから今回、準備していて良かったなって。

—高良さんは現在30歳ですが、やはり30歳というのは、役者としていろいろと考える時期なのでしょうか?

高良:うん、僕はそう思っています。役が変わるし、求められることも変わってくる。これまで、勢いとか若さでやってきた自分に対して、不安とか怖さも感じるし。そうやって、あまり考えずに無意識にやってきたものは、確かなものじゃないし、それは「待っている」っていうことだと思っています。

高良健吾

高良健吾

—「待っている」?

高良:30歳になってからは、自分から「呼べる」ようになりたいし、無意識でやってきたことを意識してやれるようになりたいと思っているんです。

でも、それは、1、2年で出来るものじゃないと思っていたので、僕の場合は、映画『横道世之介』(沖田修一監督作品、2013年公開)が終わったあたりから、何となく考え始めていたんですよね。「このまま30を迎えたら、俺は無意識のままずっとやっていくな」って思って。実際30歳になって、いきなり何か変わるものじゃないけど、準備していて良かったっていうことだらけですね。

—役者を続けていく覚悟みたいなものを、徐々に固めていったというか。

高良:そう、覚悟です。お芝居をしていて、そこで何か良いハプニングが起こったとしても、ただ勢いでやっていたら、それは「待っている」ことになると思うんです。でも、今回のように、自分たちで意識的にやっていたことで何か良いハプニングが起きたら、それは自分たちが「呼んだ」ことになる。そういうものを、これからどんどん増やしたいですね。

昔は、役をどう素敵に見せるかよりも、自分がどう素敵に見えるかを考えていたんですよね。(城田)

—城田さんは高良さんより2つ年上ですが、やはり30歳になるときには、いろいろ考えましたか?

城田:僕の場合は、10代はもちろん、20代後半までの自分の仕事は、もう恥ずかしくて見れないですね。髪型とか見た目からして……要は、アイドル俳優だったんですよね。それに気づけて良かったというのはありました。

城田優
城田優

高良:それは、いつ思ったの?

城田:30歳になる直前ぐらいだったかな。あるとき「自分は俳優ではないな」って思ったんですよね。そもそも、同時期に掛け持ちで2つの役をやっている時点で、俳優じゃないなって思って。これはあくまでも僕の場合ですけど、やっぱり無理なんですよ。ひとつの役を作る上で、髪型とか表情とか人相とか、そういうものを身体的に作っていくわけですよね。それと同時に、違うストーリーを生きる人間になるっていうのは、自分には絶対無理だと気づいて。

物理的にも無理だし、やっぱりクオリティーを考えても、やるべきじゃないなって。そのことに気づけたから、掛け持ちはしてないし、今後もするつもりはないんです。まあ、よっぽどやりたい仕事がきた場合は、考えますけど(笑)。

—何でも良いからやる感じではないと。

城田:そうですね。あるとき、死刑囚といじめられっ子の役を両方いっぺんにやっていて。髪型も、髪の色も全然違うわけです。だから、夜中に美容室に行って染めて、朝から1日撮影をして、また夜中に美容室に行って戻して……なんてことをやっていたんだけど、髪の色だけじゃやっぱり無理なんですよね。まあ、それをやってる最中は、「俺、めっちゃ頑張ってる」って思ってたんですけど(笑)。

高良:わかる(笑)。

左から:城田優、高良健吾

左から:城田優、高良健吾

城田:自分では何かをやってる気になっていたんですけど、それじゃあクオリティーを高く保つことは出来ないっていうことに、30歳手前で気づいたんです。自分がアイドル俳優だった頃は、その役をどうしたら素敵に見せられるかっていうことよりも、自分がどうしたら素敵に見えるかっていうことを、多分考えていたんだと思うんですよね。

—それは俳優ではない?

城田:それはやっぱり、アイドルがすることであって、役者がすることじゃないですよね。役者がすることは、その作品のなかで、その役をどれだけ生きるかだと思うので。だから、「俳優です」って胸を張って言えないぐらい、過去の作品は恥ずかしくて見れないですね。

高良:でも、そうやって10代、20代の頃にやってきたことっていうのは、全部許せると思うんだよね。

城田:まあね。未熟ではあったわけで。

高良:うん。それは何が起こっても許されるべきだと思うし、そういうものだと思うんです。それは役者に限らず、みんな通ってきた道だと思うし、10代、20代は、変な話、何をしても良いと思うんです。ただ、30代になったら、そうはいかない。

先輩たちが、30歳になったら、わかりやすく変わるって言ってたけど、誕生日に12時を回った瞬間に、「ああ、俺の10代や20代は、どうだったんだろう」って考え始めましたから。

城田:考えるよね(笑)。俺も実際そうだったわ。

高良:でも、そういうのって楽しいじゃないですか。考えることが楽しい。もう繰り返したくないことがいっぱいあるし、そういうことをしないのが30代だと思っていて。だから、30歳になったいまのほうが、僕は楽しいですね。

城田:20歳って、まだ小僧じゃないですか。20歳になった当時は、自分は大人だぜって思っていたけど、実際全然そんなことはなくて。だから、20歳から過ごしてきた10年間の経験値とか、そのあいだに「大人って何だろう」っていうのを学んで、30歳でようやく大人になるんじゃないかな。

左から:高良健吾、城田優

高良:そうだね。そこからは、ちゃんとしようって。

城田:こうやって森さんみたいな監督、健吾みたいな役者と同じチームにいると、その相乗効果で、自分も頑張らなきゃって思うんですよね。それはどの世界でも同じだけど、「この人、カッコ良いな」「負けてられないな」って思える人が周りにいると、自分も頑張れるじゃないですか。自分の成長って、誰と一緒にやるかでも、すごく変わってくると思うんです。

今後、どういうふうに自分の命を使っていこうかと考えますよね。(高良)

—シビアな話ですが、30歳になる頃には、周りの役者仲間もだいぶ淘汰されてきているでしょうし。

城田:実際、同じ事務所の同世代のやつらも、もう半分以上いないですから。ふるいにかけられて、僕は運良くこの世界に残っているけど、何で残れたかって考えたとき、胸を張って「芝居が上手いからです」とは、絶対言えないんですよね。芝居が上手いから残っているんじゃないってことだけは言えるかもしれない(笑)。

—いやいや(笑)。

城田:さっき健吾が言ってたけど、昔の自分は許すしかないですよね。だからこそ、いま感じていることを大事にやらなきゃいけないっていうのは、30代になってから、強く思っています。

城田優

—30歳っていうのは、自分がどうなりたいのかが、薄ら見えてくる時期なんでしょうね。

高良:どういう人になりたいかとか、どういうふうに自分の命を使っていくかってことは考えますよね。やっぱり、なくなっていくものも多くなってくるじゃないですか。それはこれからもっと増えてくるのかもしれないけど、このままだったら、きっと後悔すると思うんです。

でも、そうやって30歳という境目で、自分のことを考えられたら、それはすごく良い時間な気がするんですよね。

—今後、どんな役者になっていきたいですか?

高良:常に変化してきてますけど、ずっとあるのは、ちゃんと「その場に居られる」人ですね。自分がやることで、ちゃんとその役を生きること、生かせられること。その作品に居られるってことが、いちばんの理想ですね。

高良健吾

—城田さんは?

城田:強いて言うなら、すべての自分の時間を、その役にかけるっていうのは、ひとつ目指したいですね。それが出来なかったのが、僕の20代なので。ただ、僕の場合は、ホント先のことはわからないですね。正直いま、そんなに長く、この仕事をしている自分のビジョンがないので。

—……というと?

城田:もしかしたら、近いうちに電撃的にやめているかもしれないし。役者という仕事を重く見ているからこそ、わからないんですよね。

高良:僕も、不安にはなりますよね。このままずっと、役者をやっていけるのかって。自分は20代前半まで、ずっとこの仕事をやめるって思ってたんですよ。

城田:そうなんだ。じゃあ、逆だね。

高良:ずっと、やめるやめるって思っていて……こんなつらい仕事、続けるのは無理だって。でもいまは、この仕事があって、ホントにありがたいって思っているんですよね。

城田:そうそう。ありがたいからこそ、いろいろ考えてしまうというか。だからやっぱり、健吾は役者なんだと思います。で、僕はわかりやすく言うと、エンターテイナーなんですよね。

僕は、芝居じゃなく歌でも人を楽しませることが出来るし、自分もそれが好きなんですよね。だけど、健吾は、芝居だけがビジョンとしてしっかりあって。だから多分、ミュージカルで歌ったりはしないと思うんですよね。いちばん最初の話じゃないけど、やっぱり「ザ・俳優」だっていう(笑)。

高良:(笑)。そう言ってもらえるのは、ありがたい話ですよね。

高良健吾

—こうして話していて、2人のフィーリングが合った理由が、何となくわかってきました。

高良:うん。

城田:だから別に、僕たちがお互い役者をやってるからっていうことじゃないんですよね。人間としての部分がやっぱり根底にあるからこそで。……それこそ、たとえ僕が役者をやめたとしても健吾とはつるんでいくと思うし、逆に健吾が役者をやめても、僕はつるんでいくと思います。

リリース情報
『連続ドラマW バイバイ、ブラックバード』(2DVD)

2018年7月4日(水)発売
価格:12,312円(税込)
© 2018 WOWOW INC.
PCBP-53726

出演:高良健吾、城田優
【登場順】
石橋杏奈 / 板谷由夏 / 前田敦子 / 臼田あさ美 / 関めぐみ
松村雄基 / 丸山智己 / 岡村いずみ / 斎藤洋介 / あがた森魚 / 戸塚祥太(A.B.C-Z/友情出演)

プロフィール
高良健吾 (こうら けんご)

1987年11月12日生まれ。熊本県出身。O型。2006年『ハリヨの夏』で映画初出演。出演映画に『蛇にピアス』、『南極料理人』、『ソラニン』、『ノルウェイの森』、『横道世之介』など。ドラマでは2011年にNHK連続テレビ小説『おひさま』でヒロインの夫役を好演し話題を呼び、2016年には『べっぴんさん』にも出演。2015年のNHK大河ドラマ『花燃ゆ』では高杉晋作を演じた。2016年の月9ドラマ『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)では有村架純と共に主演を務めた。

城田優 (しろた ゆう)

1985年12月26日生まれ。東京都出身。O型。2003年、ミュージカル『美少女戦士セーラームーン』の地場衛/タキシード仮面役で俳優デビュー。2005年からは、ミュージカル『テニスの王子様』で手塚国光を演じ、注目を集める。以降、ミュージカルを中心に、ドラマ、映画などに出演。2016年のミュージカル『アップル・ツリー』では、演出家デビューを果たした。主な出演作品は、ミュージカル『エリザベート』、『ロミオ&ジュリエット』、『ファントム』、ドラマでは『表参道高校合唱部!』(TBS系)、『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(テレビ東京系)。映画では『荒川アンダーザブリッジ THE MOVIE』、『黒執事』など。



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