Tempalay、覚醒す。壊れゆく世界に生きる切なさとおかしみを音に

Tempalayのニューアルバム、その名も『ゴーストアルバム』がものすごいことになっている。

そもそもTempalayは、小原綾斗、John Natsuki、AAAMYYYというそれぞれが独立したクリエイティビティを持つ音楽家の集団だ。その3人の個の才気がこれまで以上に際立ち、いびつな様相でせめぎ合いながら、しかし絶妙なバランスで三位一体となった音楽像は、レコーディングのサポートベーシストにBREIMENの高木祥太を迎えることで痛快なまでにブラッシュアップされている。

ファンクをはじめとするブラックミュージックやヒップホップの昇華の仕方も含めて海外の音楽シーンとの同時代性にも富みながら、今の日本に生きるバンドだからこそ鳴らせる比類なきサウンドが聴こえる。彼ら特有の時空がねじれたようなサイケデリックな音像の中で、日本古来の祭りの情景が付帯したようなオリエンタルかつプリミティブな気配が躍動するリズムの快楽。紋切り型の表現とは遠く離れた領域で自由を謳歌するかのごときストレンジでキャッチーな上モノのフレーズや歌メロ。それらの集積によって不可思議なポップネスをドバドバと放出する楽曲の求心力と推進力。この絶妙なバランスは、本当に底知れない。

さらに小原が描く歌詞は、森羅万象に対する畏怖の念のような視座を持ちつつ、これまでのSF的な舞台設定のさらに向こう側をいく、「肉体的に死なないために脳内をあの世に飛ばしながら音楽で遊ぶ」というイメージを浮かばせる。何かを表現することで現代というこのリアルディストピアを生き抜こうではないか──筆者は本作からそんなメッセージさえキャッチした。

このインタビューを実施したタイミングではアルバムは未完成であり(取材は2月上旬。ミックス、マスタリング前の楽曲も含む12曲をもとに取材を敢行)、メンバー3人は作品について語ることを難儀していたところもあったが、それでも『ゴーストアルバム』が生まれた背景やそれぞれのマインドチェンジなどを率直な言葉で語ってくれた。

左から:John Natsuki、小原綾斗、AAAMYYY
Tempalay(テンパレイ)
『FUJI ROCK FESTIVAL』、アメリカの大型フェス『SXSW』を含む全米ツアー、アジア圏内でも各国ツアーを行うなど、自由奔放にシーンを行き来する新世代バンド。2020年12月9日、ワーナーミュージック内レーベル「unBORDE」よりメジャー第一弾シングル『EDEN』を配信リリース。2021年3月には、前作から約1年9か月ぶりとなる4thアルバム『ゴーストアルバム』をリリースする。

壊れゆく現実世界の空気を反映させつつも、「メッセージ性はない」と断言。Tempalayは音楽でなにを描いているのか?

―本当に今のTempalayだからこそ創造できる刺激的で底知れないアルバムだと思っていて。森羅万象に対する目線が真ん中にありつつ、これまであったSF的な舞台設定のさらに向こう側に意識を飛ばしながら、音楽的にも劇的に新しいフェーズに踏み入れようという気概を感じる。もっと言えば、リアルディストピアのような様相が現実のものになっている今、肉体的に死なないためにイマジネーションをあの世に飛ばしながら誰にも似ていない音楽をクリエイトして楽しむみたいな感触もあるなと。曲順としてもラストの“大東京万博”から1曲目に向かって辿っていくような聴き方もできるし、それは輪廻転生のような構成でもあるなとか、深読みしだすと止まらないんですけど(笑)。

Natsuki(Dr):いや、それがうれしいです(笑)。

小原(Gt,Vo):こっちはそういう感想を聞いてるのが楽しいですけどね。でも、普段から会ってるからこそインタビューの入り方が難しいですよね(笑)。

―前に(小原)綾斗と飲んだときに「インタビューが原稿になったときの整理されてる感じがイヤだ」という話になって、そういうことも踏まえながらできる限り素直なインタビュー記事にしたいと思っていて。まずは現時点での率直な手応えを聞かせてもらえますか。

小原:まだミックスも全曲は終わってないので、ここから今より絶対によくなると思うんですけど、手応えがあるものはできた気がしますね。う~ん……でも、難しいですね。

―あきらかにフェーズが変わったと思うけどね。

小原:ほんまですか? 今回、“大東京万博”以外は最初のアレンジから(BREIMENのフロントマンの高木)祥太に制作に入ってもらったので、それが音的にも影響出てるのかなと思います。

Tempalay“シンゴ”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

小原:アレンジというか──今回、特殊なレコーディング方法だったんですよ。今までは僕が作ったデモをスタジオに持っていって、みんなでアレンジを練っていく感じだったんですけど、今回はコロナの影響もあって、リモートでデータのやりとりをして、データ上で一度デモを完成させていったんですね。

それを持ってレコーディング前にスタジオにみんなで入ってベースとドラムの骨組みを作って。そこで祥太のアイデアも加わっているので今までとは違う要素が入ってると思います。ただ、自分の曲の作り方に関してはいつもと変わらないですけどね。ひとつのテーマを抽象的になぞっていくように曲を作っていくという。ただ、その曲の内容から感じることが、身近なものに置き換えられるところがあるのかなとは思います。でも、メッセージ性はないですけどね。

―「メッセージ性はない」という態度をとってるかもしれないけど、このアルバムからリスナーがキャッチできるメッセージ性はめっちゃあるでしょ。

小原:めっちゃありますかね? 基本的に僕の中であったらいいなと思うのは、郷愁なんですよね。人って自分の心象に(創作物が)触れたときに、なんとも言えない胸がギュッとなる感覚があると思うんですよ。その郷愁感に触れられたらいいなとはいつも思っていて。

―音楽を聴いてある場面の匂いを思い出すことがあったり。

小原:そうそう。それって間違いなく「いい感覚」であると思ってるので。今回のアルバムは聴いてる人の琴線に触れやすいんじゃないかなとは思います。

これまでと比べても、頭一つ抜けた音楽表現を手にするに至った背景。Tempalayの新フェーズ突入を支えたキーマンの存在

―Natsukiくんはどうですか? 現時点でのアルバムの感触は。

Natsuki:ビート感がすごく強くなりましたね。祥太くんとはたぶん好きな音のニュアンスが近いんですよね。きれいすぎない、俺が出したいドラムのニュアンスに寄り添ってくれているし、ベース単体でも気持ちいい音が鳴ってるなって。

―祥太くんがフロントマンを務めているBREIMENも、ファンクを始めとするブラックミュージックや現行のヒップホップを紋切り型ではない昇華の仕方をしていると思うんだけど、リズムセクションは特にそのあたりでも通じる部分があると思うんですよね。

Natsuki:BREIMEN、めっちゃ好きですね。きれいすぎないエグみがちゃんとあって、この3人と祥太くんはバランス感覚がすごく似てるなと思いますね。祥太くんとは初めて一緒にやったけど、これ以上だときれいすぎるとか、これ以上だと不格好すぎるというポイントの感覚が近いんだなって思いました。

小原:あと、楽曲をめっちゃ面で捉えてくれるんですよね。それもデカい。

―Tempalayと同じく、BREIMENも最終的にはポップに着地させようという意識が強くあると思うし。

Natsuki:ポップだけどBGMにはならないですよね。

―流れていかない。

Natsuki:そう、「BGMにはさせねぇよ」って感じがBREIMENの曲や祥太くんのプレイにはあるので。しかも今回のTempalayのレコーディングで「普段は出せない部分を出せた」と祥太くん自身も言ってたので。彼の濃い部分を出してもらったと思います。

―祥太くんとここまでガッツリ一緒にやろうとなった経緯は?

AAAMYYY(Cho,Syn):みんなBREIMENが好きだから。

―(笑)。

Natsuki:ちょうど1年前くらい、コロナが広がる前に一緒に飲んでいて。そのときBREIMENのアルバム(『TITY』)がリリースばかりでめっちゃいいと思って。

―あのアルバムにはAAAMYYYも参加してますよね(“IDEN feat. AAAMYYY”)。あと、AAAMYYYと祥太くんはTENDREのサポートで長らく一緒でもあるし。

AAAMYYY:そう。祥太はずっとTempalayのベースを弾いても合うだろうなと思っていて。

小原:BREIMENを聴いて、コード感の当て方が好きだったんですよね。コードの捉え方が似てるとも思った。でも、僕は祥太とちゃんと喋ったことがなかったんですよ。あとでお互い敬遠していたのがわかったんですけど(笑)。

―なんで?(笑)

小原:お互い第一印象がいけ好かないというか(笑)。それで、最初はライブのサポートに誘ったんですけど、コロナでことごとく中止になって。じゃあ試しに1曲レコーディングに参加してもらおうとなって“EDEN”をやってもらったらめちゃくちゃハマって。で、それまで音源でもライブでもサポートしてくれていたケンシロウ(亀山拳四朗)には「ごめん、今回は祥太でいくわ」って言って。

Tempalay“EDEN”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

「いろんなことに取り繕ったりするのはもうくだらないし、したくないと思った」(AAAMYYY)

―会話が前後しますけど、AAAMYYYはどうですか? このアルバムの感触は。

AAAMYYY:まだ通しで聴けてないんですよね(笑)。

Natsuki:通しではまだ誰も聴けてない(笑)。

AAAMYYY:曲間とかも決まってないし、そこに入れ込むSEもミックスしながら今作ってるところで。マスタリングを終えて通しで聴く楽しみを取っておきたい気持ちがあって。ただ、1曲1曲の個性が際立ってると思いますね。自分のシンセワークとかアレンジとか歌も含めて手応えがあるというと早すぎるかもしれないけど、(今までの作品とは)一線を画したかなって。

今までの作品ではどこかで俯瞰していた自分がいて。Tempalayらしさを考えるとか、そういういらん気遣いをすることが正解だと思ってたところがあった。でも、このアルバムを作りながらそういうものが取っ払われていって。もっとできるとは思うけど、より没入できたんですよね。

AAAMYYY『BODY』(2019年)収録曲

―俯瞰を取っ払うことができた要因は自覚できてますか?

AAAMYYY:コロナがあってずっと家にいたから、自分の中の当たり前が全部壊れたなって。今まで当たり前だと思い込んでいたことに「いや、待てよ? もっとこうしたほうがいいな」とか「もっとラクにやってもいい」ということがわかったというか。今まで忙しさに甘えて考えないようにしていたことがあったんですよ。

―それはTempalayにおける自分に対しても?

AAAMYYY:なににしても。人との関わり合い方から、自分の態度とかも含めてガラッと裏返しになるくらいの状態になって。そういう状態で作業することがTempalayにとっては向いてるというか。自分の精神状態が洗練されたときのほうが、いいものがバン! って出るバンドだと思うので。いろんなことに取り繕ったりするのはもうくだらないし、したくないと思ったんですよね。

―やっぱり個の独立したクリエイティビティを注ぐ集合体としてTempalayというバンドがあるということだと思うんですよね。そういう意味でもNatsukiくんもソロを始動して、AAAMYYYとNatsukiくんの個がより際立った状態でこのアルバムの制作と向き合ったことがかなりデカいんじゃないかと思います。

Natsuki:コロナがあってそれぞれが家の中でいろんなことをしたり、考えてたと思うんですよ。自分もソロの曲のミックス、マスタリングまでやってみたりとか。ドラムの練習ももちろんしたし、曲全体が前よりも見えるようになって。

John Natsuki『脱皮』(2020年)収録曲

Natsuki:今までは俺もAAAMYYYと近くて、どこかで綾斗に寄せようというか、「これのほうがTempalayっぽいな」という感覚があったんですよ。でも、よく考えたら「俺が考えたドラムが一番カッコいいに決まってるわ」って思ったし、自分自身にそういう自信が生まれたというか。

綾斗的にビミョーだったら変えるべきだけど、「俺のドラムはこうだ」ってアイデアをバンバン出せるようになったのは今回のアルバムからなのかなと思います。実際にミックスが終わった曲には「あ、やっぱりカッコいいわ」って思ったりして(笑)。それは成長した部分なのかなと。

「真剣であればあるほど滑稽だし、そこを突き詰めていくと切なくなってくる」(小原)

―綾斗も2人の変化を感じてますか?

小原:感じてる気がしますね。前からそう思ってたし、より一層そうなれたんでしょうね。自分も含めてまだみんな余力はありそうですけどね。それがなくなったら潔く辞めます。正直、何をやってもいいバンドなんで。これからも如何様にも道はあるんですけど。

―自分たちだけではなく「みんなもっと自由にやればいいじゃん」とも思ってるでしょ?

小原:いや、こういうやり方ができるのは俺らやからっていうのは思ってますね。自分たちで幅を狭めてる人たちはよく見ますけど、一方でなんでもありというのは怖いですよね。よくある言葉ですけど、「カッコつけたらカッコ悪いことができなくなる」ってそういうことやと思うんですよ。それはいろんな場面において言えることなのかなって。べつにおちゃらけが似合うバンドになりたいわけではないんですけどね。

―それはよくわかる。ユーモアがあっても、コミカルではないというかね。

小原:そう、そのコミカルさに僕は嫌悪感があるので。

―Tempalayのユーモアは怖くもあるしね。

小原:いや、チャーミングじゃないですか?

―ストレンジなチャーミングさはあるけど、その奥にあるのは怖さだと思うけどね。だからこそ、今作のように死生観とか宗教観が滲む表現性にタッチしながらそれを独創的かつポップに昇華できるんだと思う。サウンドプロダクションでも、歌の内容にしても、表層的にストレンジなことをやっている人たちではそれを形象化できないと思う。絶対に自分では言わないと思うけど、それ相応の覚悟を持ってると思うし。

小原:人の生き死にとか、人のために泣くことってどうしても滑稽な部分があるじゃないですか。そういうところだと思うんですよね。葬式では泣かなきゃいけない、ということをクソ真面目に表面的に捉える概念が日本人の宗教観みたいなことなのかなとも思うんですけど。

―そのクソ真面目さにおかしみを覚えるし。

小原:そうそう。だから真剣であればあるほど滑稽だし、そこを突き詰めていくと切なくなってくるというか。そういうところに音楽で触る遊びが好きなんでしょうね、僕らは。

Tempalay“大東京万博”を聴く(Apple Musicで聴く / Spotifyで聴く

AAAMYYYとNatsukiの中でリミッターのようになって「Tempalayっぽさ」への意識は、小原の中にも別の形で存在していた

―このアルバムはコンセプトアルバムとしても聴くことができると思うんですけど、そういう意識はあるんですか?

小原:いやぁ……そこは絶妙なところですね(笑)。「コンセプトアルバム」って言ったもん勝ちみたいなところがあるじゃないですか。まぁ、『ゴーストアルバム』ですね。

―『ゴーストアルバム』として、各曲の舞台設定が離れがたく結びついてるじゃないですか。

小原:アルバムを作るときに最初から「こういうものを作ろう」って最後までテーマを継続して作れるわけではないので。途中から「やっぱりこのテーマではないな」ってなったときにだんだんと見えてくるものもあって。否定したところから始まるというか、途中から肉付けされていくんですよ。そこから最終的なテーマが見えてくる。今回もそういう感じで、途中まで違うテーマだったんですけど。

―あ、そうなんだ。

小原:今回は先にメンバーにテーマを伝えてから制作を始めようと思って伝えたんですよね。

―それはいつごろ?

小原:去年の3月くらいですね。伝えたんですけど、そこから変わっていきました。“EDEN”のデモを作ったときくらいですね。最初は「今回は『創作の根源と過程』をテーマに作ろうと思う」ってメンバーにLINEで伝えて、デモを送って。それを持ってアートワークもヨシロウさん(YOSHIROTTEN)と一緒に考え始めて。でも、ものすごく不自然に思えてきたんですよ。

―何に対して?

小原:Tempalayっていう存在? ん~、なんて言うんですかね?(笑) 自分の感覚として、作っていくものの幅が狭まっていくように感じて。それに囚われた結果、創作の根源とか過程みたいなテーマにいっちゃったんですよね。

―Tempalayという枠組みをいつの間にか自分の中で作ってしまっていた?

小原:そうかもしれないですね。

―自由に音楽を表現しているようで、いつの間にかパブリックイメージに寄っていっちゃったみたいな。

小原:そうかもしれないです。いろんな人が「Tempalayってこういうバンドですよね」って言ってくれるわけじゃないですか。なんか、それを鵜呑みにしちゃってたような気がして。みなさんいいことを言ってくれるなとは思うんですけど、そっちの世界観に自分も陶酔してしまったがゆえのテーマになっちゃったみたいな。

―そっちに寄った「根源と過程」というテーマなら本末転倒じゃんっていう。

小原:まさしくそんな感じ。

―人のイメージに依存したものだから。

小原:「自分ってそもそもそういうスタイルじゃないよな?」って思って。冷静になって地に足をつけたときに、もうどうしたってこの1年のことがテーマに反映されていくじゃないですか。そういうところから徐々に変わっていった感じですね。

「創作の根源と過程」という小原が提示したテーマに対するAAAMYYYとNatsukiの反応に、Tempalayのバンドとしての面白さが垣間見える

―AAAMYYYとNatsukiくんは最初のテーマを受けてどう思ったんですか?

AAAMYYY:「もはや概念なのかな? 今の自分には何を言ってるかわからないな」と思って。

Natsuki:「何を感じればいい?」みたいなね(笑)。

AAAMYYY:概念の言葉遊びをしてるのかなって。それがわからなかったから、シラフじゃいられなくなっちゃって。

Natsuki:酒をあおった?

AAAMYYY:そう(笑)。最初のデモはむちゃくちゃ酒を飲んで聴きましたね。“EDEN”とか“忍者ハッタリくん”とか“GHOST WORLD”とか“ああ迷路”とか。そのあとに“Odyssey”も来たよね?

小原:そのあとは“Odyssey”と“シンゴ”かな。

Natsuki:それが6月くらいかな。

―そのあとというのはテーマを軌道修正したあと?

小原:そうですね。“Odyssey”くらいから曲の捉え方が変わってきましたね。まぁ、でも最初のデモを振り返っても結局「この1年のことを歌ってんな」と思って。“GHOST WORLD”のサビにしても“忍者ハッタリくん”にしても。なので、大きく修正したというよりは、自分の感覚に素直に従ったみたいな変化ですね。

「俺は音楽をめっちゃ物質的に考えてますね」(Natsuki)

―Natsukiくんはテーマの変化をどう受け止めましたか?

Natsuki:俺はそういうことに対してマジで「無」なんですよ。俺的には自分の音に関係ないことだと思っていて。「根源と過程」の音なんてないし。綾斗のインタビュー読んで「なるほど」ってなれる人とか素直にすごいなって思う。「そのテーマと音が結びつく!?」って思うんですよ。

小原:でもさ、テーマに沿って機材を選んだりして、録る音が変わるロマンもあったりするじゃん。

Natsuki:うん。

小原:たとえば「根源」だとしたら「リズムとかドラムってそもそもどこから生まれたんだろう?」とかさ、そういう捉え方ができると思って俺は言ったんやけどね。

Natsuki:そういう意味か。自分のルーツ的なことなのかなと思ってた。

―でも、実際にプリミティブなリズム、ビートというのは今作の音楽的な要素のトピックでもありますよね。

Natsuki:それもあくまで自分が綾斗の作ったデモのサウンドに対して、どうアプローチしていったかという結果であって。俺の中ではテーマに影響されたわけではないんですよね。そこが俺と綾斗の圧倒的な違いなんですよ。

俺は抽象的に楽曲を捉えられないし、もっと「このビートに対してこういうベースを乗せたい」とか「これはあの楽器を使ってこう鳴らしたい」というイメージをサウンドから具体的に感じて判断する。音楽から見える情景は俺にもあるけど、情景を音にしようという感覚が普段からなくて。人間が作った道具で、人間が作り出すものが音楽なので、そこで抽象的なテーマを再現しようとは思わない。

Natsuki:ただ、綾斗と一緒に何年か音楽をやってきた中で綾斗がイメージする音にどうすれば近づけるかはなんとなくわかるんですよ。

でも、俺は音楽をめっちゃ物質的に考えてますね。曲を聴いてるときも「この機材はなんだろう?」って考えるので。そこで自分にとって重要なのはフレーズよりも音色なんですよ。

『ゴーストアルバム』は、AAAMYYYが本来の自分を取り戻していく過程も捉えている

Natsuki:曲の好き、嫌いも音色で捉えて一瞬で判断するんです。ストリーミングで音楽を探してるときは5秒も聴かないくらいで判断してる(笑)。だから、綾斗が作ったデモに対してフレーズよりもどういう音色をこの曲に当てようかってまず考えるんです。

AAAMYYY:その感覚ってめっちゃすごいと思うんですよ。5秒だけ聴いて瞬時に好きか嫌いか判断するって。

小原:でも、俺もそうかも。映画を見ていても最初の5分でその映画の質ってわかるから。「あ、こっちか……」ってよくなる。Natsukiは音楽面でそういう感覚がめっちゃある。でも、AAAMYYYにもあるよ、絶対。

AAAMYYY:あったんだけど、生きていくうちにその感覚が鈍ったんだよ。だから、綾斗から最初にテーマをもらったときもシラフじゃいられなくなって。自分の感覚を一度無にしないとダメだなって。でも、外に出られないし、旅行にも行けないからテレビで、たとえば『ポツンと一軒家』(テレビ朝日系)とか、極限の自然の中にいる住んでる人の姿とか、深海の映像を見たり、お風呂に浸かりながら酒飲んだりして。

―そうやってリセットしながら以前の自分にはあった感覚を取り戻そうとした。

AAAMYYY:そう。そうやって自分を取り戻していったというか。

―ちょっと多忙すぎたんじゃない? コロナで時間ができたからこそ取り戻せたのかもしれない。

AAAMYYY:そう思いますね。どこかで毒されていいたんだなって。

―人の気持ちに応えたいという真摯な態度ゆえでもあると思うけど。

AAAMYYY:だから綾斗からテーマをもらったときも「何を表現したいんだろう? わからない……」って考え込んでしまって。さっき綾斗が「バカ真面目な日本人の感覚」って言ってましたけど、たぶん私もそれだったんですよね。でも、あのパンパンにスケジュールが詰まってるタームも自分には必要だったと思う。

圧倒的な自然の厳しさと美しさ、その周囲で生まれては死んでいく命……Tempalayにとってユーモアが大事な理由

―綾斗としては、テーマが変化していって、2020年の様相も必然的に感化されつつ、最終的にたどり着いたテーマを言葉で言い表すことはできますか?

小原:コロナのことを世の中はすごく騒いでいましたけど……俺は自分が実際に見たことのある自然の驚異とか美しさに意識が向いて。俺たちがコロナにどれだけ騒ごうが、自然には関係ないんですよ。

―中国の山水画家、郭煕の画論『臥遊録』からの引用でもある“春山淡冶にして笑うが如く”と“冬山惨淡として睡るが如し”という楽曲タイトルが象徴的だけど、そういう森羅万象に対するまなざしですよね。

小原:そうですね。そういう大きな存在としての自然と人間の間に挟まってる世界観を音楽にしたかったというのはありますね。上手く言葉にできないですけど、自然の世界に行くと、こちらの世界がものすごく滑稽に見えるんですよ。ただ、そういう圧倒的な自然の世界に人間は絶対住めないわけで。人間が「きれいやなぁ」って言ってる自然は表面的な場所であって、本当の自然はもっと奥にあるじゃないですか。

―空撮で切り取ったら美しいと思うけど、実際にその中に入ったら命の危険が隣り合わせにあるかもしれない。

小原:一歩入ったら出てこれないところもあるし。でも、そういう厳しさがあるからこそ美しくもあるという。そういうまったく人間が住んでない場所としての世界と、どうしたって自分たちがいる現実の間にある皮肉を表現したかったというか。

―そのうえで肉体的には生きてるんだけど、死後の世界を想像しながら音楽で遊ぶみたいなトリップ感が生まれたのかなと話を聞きながら思ったんだけど。

小原:それがあの世って言うのかわからないんですけど、結局、生きてる人間は、死ぬ感覚も、死んだあとのことも、誰も知らないじゃないですか。だから想像のしがいがあって。

あと俺は人の生き死にに対する周りの反応とかにもすごく興味があって。人の生き死にに対する価値観って多種多様で、それってある意味ものすごく無責任だなと思うし、面白いんですよね。そうすると、人が生きたり死んだりすること自体が多面的ですごく面白いと思う。だから死生観って面白いんですよね。

小原:さっき話したことにも繋がりますけど、生き死にというちょっと触れにくいことをまったく逆の側面から見て面白く扱ったときに見えるものが美しくもあるという。それは僕の好きなヨシタケシンスケさんという絵本作家の言葉でもあるんですけど。角度を変えて伝えることで如何様にも感じられるというのは、なんでもそうだと思うんですよ。今の世の中に対してもそうだし。だからやっぱりユーモアが重要なんだと思いますね。

―今話してくれたような感覚は幼いころから持ってますか?

小原:それを死生観という捉え方はしてなかったけど、変なものの見方はしてましたね。人って記憶で形成されてるじゃないですか。それを放出することってなかなかないと思うんですよ。でも僕らみたいに音楽を作ったり芸術をしてる人は、それを作品で放出している。そうすることを通じて自分の記憶を身に纏っていくんですよ。それで本来の自分に気づくというか。死生観かはわからないけど、今回のアルバムは今まで触れてなかったそういうところに触れたんやと思いますね。

―このアルバムからは芸術に身を賭してるとか関係なく、「こんな時代だからこそ誰もが表現者たれ」というメッセージを感じるんですよね。その核にあるのが綾斗の郷愁に対するこだわりなのかなって。

小原:郷愁も人それぞれが持ってるじゃないですか。それを感じてアウトプットするのは、自分の表現でしかできないと思うので。みんなじつはどこかで何かしら表現してるのかもしれないとも思うし。

―シンプルに、なんで『ゴーストアルバム』というタイトルにしたんですか?

小原:単純に生きてんのか、死んでんのかようわからん1年だったというのもあるし、さっき指摘してもらったように幽霊の気分というか、死んだ気分で楽しんだほうがいいんじゃないかということですね。

―まだまだ訊きたいことがあったんだけど、残念ながら時間がきちゃった。

小原:酒がほしかったですね(笑)。

リリース情報
Tempalay
『ゴーストアルバム』初回限定盤(CD+DVD)

2021年3月24日(水)発売
価格:4,400円(税込)
WPZL-31811/2

[CD]
1. ゲゲゲ
2. GHOST WORLD
3. シンゴ
4. ああ迷路
5. 忍者ハッタリくん
6. 春山淡冶にして笑うが如く
7. Odyssey
8. 何億年たっても
9. EDEN
10. へどりゅーむ
11. 冬山惨淡として睡るが如し
12. 大東京万博

[DVD]
『TOUR 2020』新木場STUDIO COAST公演のライブ映像、ドキュメンタリー、インタビューなど収録
<収録曲>
・脱衣麻雀
・SONIC WAVE
・のめりこめ、震えろ。
・Festival
・革命前夜
・テレパシー
・深海より
・カンガルーも考えている
・大東京万博
・New York City
※DVDは初回限定盤に付属

Tempalay
『ゴーストアルバム』通常盤(CD)

2021年3月24日(水)発売
価格:3,080円(税込)
WPCL-13277

1. ゲゲゲ
2. GHOST WORLD
3. シンゴ
4. ああ迷路
5. 忍者ハッタリくん
6. 春山淡冶にして笑うが如く
7. Odyssey
8. 何億年たっても
9. EDEN
10. へどりゅーむ
11. 冬山惨淡として睡るが如し
12. 大東京万博

イベント情報
『ゴーストツアー』

2021年4月1日(木)
会場:愛知県 名古屋 DIAMOND HALL

2021年4月3日(土)
会場:岡山県 岡山 YEBISU YA PRO

2021年4月4日(日)
会場:大阪府 大阪 なんばハッチ

2021年4月14日(水)
会場:北海道 札幌 cube garden

2021年4月16日(金)
会場:宮城県 仙台 Rensa

2021年4月22日(木)
会場:福岡県 福岡 BEAT STATION

2021年4月23日(金)
会場:広島県 広島 VANQUISH

2021年4月24日(土)
会場:香川県 高松 DIME

2021年5月8日(土)
会場:新潟県 新潟 GOLDEN PIGS RED

2021年5月9日(日)
会場:石川県 金沢 AZ

2021年5月12日(水)
会場:東京都 ZEPP HANEDA

2021年5月13日(木)
会場:東京都 ZEPP HANEDA

プロフィール
Tempalay (テンパレイ)

『FUJI ROCK FESTIVAL』、アメリカの大型フェス『SXSW』を含む全米ツアー、アジア圏内でも各国ツアーを行うなど、自由奔放にシーンを行き来する新世代バンド。2015年9月にリリースした限定デビューEP『Instant Hawaii』は瞬く間に完売。2016年1月に1stアルバム『from JAPAN』、2017年2月に新作EP『5曲』を発売。2017年夏にGAPとのコラボ曲“革命前夜”を収録した2ndアルバム『from JAPAN 2』をリリース。2018年夏、AAAMYYY(Cho,Syn)が正式メンバーに加わり、新体制後にリリースしたミニアルバム『なんて素晴らしき世界』が各方面から高い評価を得る。2019年6月、怒涛の時代をTempalayという新しい音楽の形で表現した3rdアルバム『21世紀より愛をこめて』をリリース。2020年12月9日、ワーナーミュージック内レーベル「unBORDE」よりメジャー第一弾シングル『EDEN』を配信リリース。2021年3月には、前作から約1年9か月ぶりとなる4thアルバム『ゴーストアルバム』をリリースする。



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