小西康陽が放つ「私の中の筒美京平が暴発した」アイドルソングと、ピチカート以上にピチカート的なカップリングの競演

小西康陽をプロデューサーに迎えた、Negiccoの最新シングル『アイドルばかり聴かないで』(略称『アイばか』)が名盤だと評判になっている。Negiccoは今年で結成10年目となる新潟在住の3人組アイドルグループ。これまでは元々彼女たちのファンだったconnieが大半の作曲を手掛けていたが、前作シングル『愛のタワー・オブ・ラヴ』ではノーナ・リーヴスの西寺郷太が曲を書き下ろし、ファン層を大きく広げた感がある。表題曲を小西が、カップリング“新しい恋のうた”をconnieがそれぞれ作曲 / プロデュースしたこの『アイばか』、普遍的なポップスとしてフラットに享受することもできるが、一方で、様々なフックや突っ込みどころを意図的に装填しているのも確か。ここでは、あえて2人の術中にはまってみることにしよう。


表題曲“アイドルばかり聴かないで”は、フランス・ギャルの“N'ecoute Pas Les Idoles”(1964年)の邦題から取ったもの。曲調は紛れもない小西節で、成就するはずのないアイドルへの擬似恋愛を辛辣に皮肉った歌詞は、ピチカート・ファイヴの“大人になりましょう”と二重写しになっているとも取れる。<そんなにアイドルが好きなら じゃあ、Negiccoにしてね>と自身の名前を歌うメタソング的な一節や、最後に観客の声援が挿まれるところは、過去に小西が林未紀に提供した“アイドルになりたい。”と共通するところだ。


一方、connieのプロデュースによる“新しい恋のうた”は、ピチカート以上にピチカート的と言える1曲。ピチカート・ファイヴの“新しい歌”をもじったようなタイトルから、「A NEW STEREOPHONIC SOUND SPECTACULAR」というピチカートの曲でよく聴こえてくるサウンドロゴ、“Happy Sad”を意識したコーラス、“CDJ”でも使用された子供の合唱まで、ピチカート・ファイヴへのあからさまなオマージュに満ち溢れている。これを聴くと、過去にconnieが、Negicco“ガッター!ガッター!ガッター!”で、ピチカートの“東京は夜の七時”を本歌取りしていたのも、今回の“新しい恋のうた”への伏線に思えてくる。

Negicco『アイドルばかり聴かないで』
Negicco『アイドルばかり聴かないで』

ちなみに、小西は“アイばか”について、「『私の中の筒美京平』が暴発したような作品です」と語っている。そこで連想されるのが、筒美京平が作曲したピチカート・ファイヴ“恋のルール・新しいルール”。カップリングは先述の“新しい歌”である。connieの視点から見れば、尊敬する大先輩による表題曲と、その先輩へのオマージュを込めたカップリングという意味で、本作と“恋のルール・新しいルール”は相似形を成す。前作『愛のタワー・オブ・ラヴ』もconnieによる“パーティーについて。”が秀逸だったが、敬愛する作家に負けまいと奮起した結果、彼の曲は表題曲と張り合う音楽的筆圧を獲得している。7月17日リリースのアルバム『Melody Palette』にはサイプレス上野とロベルト吉野、RAM RIDER、tofubeatsらによる新録曲が収録されるNegiccoだが、当然、ここでもconnieによる曲との拮抗が様々な面でプラスに作用するに違いない。

リリース情報
Negicco
『アイドルばかり聴かないで』通常盤(CD)

2013年5月29日発売
価格:1,000円(税込)
TPRC-0044

1. アイドルばかり聴かないで
2. 新しい恋のうた
3. アイドルばかり聴かないで-ネギ抜き-(inst)
4. 新しい恋のうた-ネギ抜き-(inst)

プロフィール
Negicco

J-POPアイドル・ユニット。フジテレビ『めちゃ×2イケてるッ!』エンディング曲にNegiccoオリジナル曲“圧倒的なスタイル”が1年間オンエア。2012年開催ワンマン・ライブは代官山UNITをはじめ東京、大阪、新潟で全てソールド・アウト。さらに、Zepp東京、Zeppダイバーシティ、横浜アリーナの大ステージに出演。2013年2月から代官山LOOPで定期ライブ『Negi-ROAD』開催中。Negiccoは2013年7月で結成10周年、オリジナルメンバーで10年続くことは稀であると高い評価を受けている。2013年3月新潟県知事より「にいがた観光特使」に任命される。10周年記念CD第1弾、西寺郷太氏(NONA REEVES)プロデュース『愛のタワー・オブ・ラヴ』に続き第2弾、小西康陽氏プロデュース『アイドルばかり聴かないで』を5/29にリリース。



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