ギャップ萌えは世界共通だった?BAND-MAIDが海外でウケたワケ

メイド姿で本気のハードロック。海外ロックファンのハートに火をつけた5人組ガールズバンド

近年、日本人アーティストの海外進出が活発化している。特にロックシーンにおいてはBABYMETALやONE OK ROCKといったバンドの活躍が著しいが、特に最近は「第二のBABYMETALか?」と評判のガールズバンドの出現が海外のロックファンの間で話題となっている。5月18日にミニアルバム『Brand New MAID』でメジャーデビューを果たす女性5人組ロックバンドBAND-MAIDである。メイド服姿が目を引く彼女たち、日本での知名度はまだ低いものの、約1年半前にYouTubeで公開されたミュージックビデオ“Thrill(スリル)”が、既に230万回を超える再生回数を記録している。

BAND-MAID(撮影:Tamai Shingo)
BAND-MAID(撮影:Tamai Shingo)

再生回数が急激に伸び始めた当時のことをバンドの首謀者・小鳩ミクはこう振り返る。

小鳩(Gt,Vo):ビデオを公開して半年ぐらい経った頃に、Twitterのフォロワーさんの数が急に増え出したんですよ。しかもみんな海外の方だったから「あ! アカウント乗っ取られた……!』と思って。だけど、他のメンバーも全員同じことが起こってるから、「これはなんだ……?」って(笑)。

左から:MISA、廣瀬茜、小鳩ミク
左から:MISA、廣瀬茜、小鳩ミク

海外メディアで紹介され、100万人以上の音楽ファンの耳へ。五人のメイドは、本当に世界を舞台に戦っている

後にメンバーが知ったところによると、『Jrock Radio』というジャパニーズロック専門のウェブラジオ局が、120万人以上のファンを抱える自身のFacebookページで“Thrill(スリル)”を紹介。そのことがきっかけとなり、注目度が一気に高まったのだという。その影響で多くの海外ロック / メタル系サイトがこぞってBAND-MAIDを取り上げ、海外人気の高まりにつながっていったのだ。そして今年、五人はアメリカ・シアトルで開催された日本カルチャーの祭典『Sakura-Con』に招かれ、3千人の観客の前で海外初ライブ(ちなみに、BAND-MAID用語ではライブを「お給仕」と呼ぶ)を行い、今月末にはイギリス最大級のモダンポップカルチャーイベント『MCM COMIC CON』への出演も決定。さらに、今秋にはメキシコでの単独公演も決定。徐々に海外進出への足場を固め始めている。BABYMETALの海外人気が高まり始めたときにもよく言われていたことだが、彼女たちの場合もどうやら「海外で人気あるある詐欺」ではないようだ。

BAND-MAID(撮影:tktk photography)
(撮影:tktk photography)

BAND-MAID(撮影:ポチりさ)
(撮影:ポチりさ)

海外ロックファンに響いた究極の「ギャップ萌え」

BAND-MAIDが海外のロックファンの心を震わせているのは、ヒップホップやEDMといった音楽がチャートを席巻している欧米ならではの現象なのかもしれない。Facebook、YouTubeなどのコメント欄を覗いてみても、五人のビジュアルよりも音楽や演奏へ言及したコメントが圧倒的に多い。

とある海外の辛口なメタルサイトでは、「なぜメンバーがメイド姿をしているのか意味がわからない。そういう格好が好きな男性に向けているのだろう」という記事が上がっていたが、コメント欄ではこの記事の担当記者に対して「ググればすぐにわかる。キュートな見た目とハードなサウンドやボーカルとの対比を狙ってるんだ」「他のバンドとビジュアルの差別化を図るバンドなんて、今までにもKISSやSLIPKNOTがいるじゃないか」といった反論がいくつも上がっている。YouTubeでは「彼女たちの音楽に比べて、アメリカの音楽はよお……」と自国アメリカの音楽シーンの現状を嘆くコメントなど、まだまだロックに対する人気が高い日本から見ると違和感のあるものも多く並んでいる。

BAND-MAID
BAND-MAID

これは単なる想像に過ぎないが、BAND-MAIDは欧米のハードロック / メタルファンにとっての「希望の星」なのかもしれない。だとするなら、前述のシアトルで行われた初ライブに「METALLICAとかのTシャツを着てるロック好きのおじさんが多かった」とメンバーが語るのも頷ける。

「メイド×ロックバンド」というありそうでなかった発想の原点

では、ここでBAND-MAIDの成り立ちについて触れたい。バンドの発起人となった小鳩ミクが、地元・熊本で初めて体験したアルバイトがメイドカフェだった。

小鳩:せっかくだから面白いバイトがやりたいなと思っていたら、親が見つけてきてくれて。それがきっかけでメイドにハマっちゃったんです。その後、音楽をやりたくて東京に出てきてからも、「本場の秋葉原でメイドさんがしたい」と思ってメイドさんのバイトとボイトレを並行して続けていたんですけど、そのときにふと「両方合わせたら楽しそうだな……」って思って。

小鳩ミク

メイドとロックをかけ合わせるという、「カワイイ」と「カッコイイ」のギャップが面白そうだと考えた彼女は、このアイデアを現実のものとするために動き出す。そこで見つけたのが、ネットに「弾いてみた動画」を上げていたギタリストの遠乃歌波。「メイド服のコンセプトにも特に抵抗はなかった」と語る彼女のつながりでドラムの廣瀬茜と出会い、廣瀬の紹介でベースのMISAが加入した。

小鳩:それで4人組としてスタートしたんですけど、カッコイイ楽曲をやるには私の声が明るすぎたので、もっと重い要素を足すために同じ事務所でソロ活動をしていた、さいちゃん(彩姫)に声をかけました。ただ、かなみんちょ(遠乃)以外の二人はメイド服に抵抗があったみたいで、返事をもらうまで時間がかかったんですよ。だから、さいちゃんには衣装のことはナイショにして、「ちょっとかわいい服を着て、カッコイイ曲をやるんだ!」って誘いました(笑)。

彩姫(Vo):そして、まんまと騙されて3年が経ちました(笑)。今となってはこれが戦闘服だし、これがないとダメだと思ってます。悔しいですけど……(笑)。

左から:小鳩ミク、彩姫
右:彩姫

こうして結成されたBAND-MAIDが紆余曲折の末にたどり着いたのは、正統派のハードロックサウンド。世界的にロック人気に陰りが見えている昨今だが、彼女たちにはこの音が「しっくりきた」という。

廣瀬(Dr):個々の楽器の魅力を出せるし、二人の声質にも合ってたし、何より自分たちが楽しいと思えたので「これだ!」って。

ただのハードロックではない? BAND-MAIDのサウンドの秘密

しかし、驚くことに5人のうち、1人としてハードロックを通っていないという彼女たち。歌を好きになったきっかけは「おばあちゃんが通ってた演歌教室」だという小鳩以外のメンバーの音楽遍歴も実に興味深い。クラシックピアノを幼少期から現在に至るまで20年以上習い続けていて、「(カルロス・)サンタナというおじさんやラリー・カールトンというおじさん」が好きだと言う遠乃、幼稚園の頃からピアノを習っていて、吹奏楽部ではトロンボーンを担当し、マキシマム ザ ホルモンに出会ったことでパンクに目覚めた自称「メロコアキッズ」の廣瀬は、豪快なプレイスタイルがマキシマム ザ ホルモンのナヲを思わせる。

廣瀬茜(撮影:Tamai Shingo)
(撮影:Tamai Shingo)

MISAは幼少期から母親の影響で洋楽にハマり、ピアノ、トロンボーン、ギターを経て、高校生の頃に出会ったTHE SMASHING PUMPKINSをきっかけにベースを手にすることに。そして、ボーカルの彩姫は、ボーカルスタイルやステージ上での立ちふるまい、ちょっとした仕草に至るまで安室奈美恵の影響下にあるという。

ハードロックを通ってないからこその面白みが彼女たちの音楽にはある。現に既存のバンドで似ていると思えるものがないのだ。「ギターソロにペンタトニックスケールやメロディアスなものが多いのは、サンタナから影響を受けてる」という遠乃のように、メンバーそれぞれ独自のフィルターを通したうえで自分たちなりのハードロックを、非常に高度な演奏力で鳴らしているのだ。

最初の一音を鳴らした瞬間に認めさせる「お給仕」で、世界征服を目論む

BAND-MAIDの当面の目標のひとつは海外ツアー。現段階でも「お給仕」と呼ばれるライブ活動にはかなり力を入れ、日本国内大小を問わず、あらゆるイベントに乗り込んでいる。

小鳩:お給仕ありきのバンドなので大事にしていきたいです。「格好だけしかメイドじゃないんだろう」とか、「音も作り物だろう」とかよく言われるんですけど、お給仕に来てちゃんと観て楽しんでもらいたいです。

彩姫:毎回、「お給仕始めます」と言ってから1曲目を始めるんですけど、最初の一音を鳴らした瞬間にメンバー全員が超ドヤ顔をするっていう(笑)。「舐めてただろ?」って。そういう気持ちはみんなあると思います。

5月18日リリースのメジャーデビュー作について、廣瀬は「この3年間の集大成と言ってもいいぐらいの濃さになっていると思う」と語る。リードトラック“alone”は初めてメンバーだけで作詞作曲を手掛けた曲で、今後は全て自作曲で勝負できるようにしたいと意気込む。

バンド結成時から海外進出を意識していたBAND-MAID。予期せぬ出来事をきっかけにその予定は早まったが、海外での評価に追いついていかねばとメンバーの意識レベルはぐんと上がった。彼女たちの「世界征服」への道は既に開かれている。

リリース情報
BAND-MAID
『Brand New MAID』Type-A(CD+DVD)

2016年5月18日(水)発売
価格:2,500円(税込)
CRCP-40460

[CD]
1. the non-fiction days
2. LOOK AT ME
3. ORDER
4. Brand-New Road
5. YURAGU
6. FREEDOM
7. Before Yesterday
8. alone
[DVD]
・the non-fiction days(Music Video)
・ORDER(Music Video)
・alone(Music Video)

BAND-MAID
『Brand New MAID』Type-B(CD)

2016年5月18日(水)発売
価格:2,000円(税込)
CRCP-40461

1. the non-fiction days
2. LOOK AT ME
3. ORDER
4. Brand-New Road
5. YURAGU
6. FREEDOM
7. Before Yesterday
8. alone
9. REAL EXISTENCE(Live Ver.)(ボーナストラック)

イベント情報
BAND-MAID
『Brand New MAID』Release Tour

2016年6月24日(金)
会場:東京都 新宿Zirco Tokyo

2016年7月12日(火)
会場:茨城県 水戸LIGHT HOUSE

2016年7月13日 (水)
会場:宮城県 仙台MACANA

2016年7月18日(月・祝)
会場:京都府 MOJO

2016年7月22日(金)
会場:神奈川県 club Lizard YOKOHAMA

2016年7月31日(日)
会場:埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心VJ-3

2016年8月4日(木)
会場:兵庫県 神戸 太陽と虎

2016年8月6日(土)
会場:山口県 LIVE rise SHUNAN

2016年8月12日(金)
会場:熊本県 DRUM B.9

2016年8月13日(土)
会場:福岡県 小倉Live Spot WOW!

2016年8月14日(日)
会場:福岡県 Queblick

2016年8月28日(日)
会場:滋賀県 守山Blue

2016年9月2日(金)
会場:新潟県 RIVERST

2016年9月3日(土)
会場:山梨県 甲府CONVICTION

2016年9月8日(木)
会場:北海道 札幌Crazy Monkey

2016年9月9日(金)
会場:北海道 札幌Crazy Monkey

BAND-MAID『Brand New MAID』Release Tour Final Series

2016年9月19日(月・祝)
会場:大阪府 アメリカ村DROP

2016年9月25日(日)
会場:愛知県 豊橋club.KNOT

2016年10月1日(土)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-WEST

プロフィール
BAND-MAID
BAND-MAID (ばんどめいど)

2013年7月結成、同年8月に現在のラインナップとなる。メイドの姿をした5人組ガールズ・ロック・バンド。衣装はメイド服で、ライブを「お給仕」、ファンを「ご主人様」「お嬢様」と呼ぶ一方、ビジュアルとは相反するハードなロック・サウンドを武器に、ツイン・ボーカルにギター、ベース、ドラムの確かな実力を持ち合わせている。そのルックスとは正反対の音楽性で観る人を魅了し、日本のみならず、海外のご主人様、お嬢様にも受け入れられている。2016年3月には初の海外お給仕をアメリカ・シアトル『Sakura-Con』にて行い、3000人近くを動員。同年5月にはイギリス、10月にはメキシコでのお給仕も決定している。



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