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アート・リンゼイの今年の来日はどこが違う?コメントを交え解説

アート・リンゼイの今年の来日はどこが違う?コメントを交え解説

『ARTO LINDSAY Japan Tour 2017』
インタビュー・テキスト
金子厚武
編集:山元翔一
2017/06/16
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折に触れ、来日公演を行ってきたアート・リンゼイ。今回のポイントはどこに?

年明けに発表された13年ぶりのオリジナルアルバム『Cuidado Madame』が絶賛を持って迎えられたアート・リンゼイが、6月23日の渋谷WWW X公演を皮切りに、来日ツアーを実施する。

近年は頻繁に来日し、昨年は青葉市子、山木秀夫、Buffalo Daughter、ジム・オルークと、代官山・晴れたら空に豆まいてを舞台に5日間連続でライブを行い、日本との親交の深さを改めて印象付けたが、今回のツアーはアルバムのレコーディングに参加したメンバーを軸としたバンドセット。近年の来日とは全く違った、アートの最新モードを堪能できる貴重な機会となるだろう。

アート・リンゼイ
アート・リンゼイ

『Cuidado Madame』の最大の特徴は、ニューヨークの新世代ジャズミュージシャンの起用にあった。デヴィッド・ボウイの『★(Blackstar)』(2016年)が象徴していたように、近年はジャンルを横断してヒップホップと交配し、クラブミュージック的なアプローチを見せる若手ジャズミュージシャンがピックアップされる傾向にあり、アートもそんな時代の潮流を敏感に感じ取っていたと言える。クレジットを見ると、多くの曲が参加メンバーとの共作になっていて、今回の来日は実質的に「アートの新バンド」での来日と言ってもいいはずだ。来日ツアー直前の5月、CINRA.NETでメールインタビューを行った際にアートは以下のように答えてくれた。

アート:私には真実とリズムが必要だから、ヒップホップが大好きなんだ。プロダクションが好きであり、言葉が好きだ。新しいジャズにも常に興味を持っているよ。音楽そのものよりも、ミュージシャンたちに興味を持つことが多いけどね。

また、アートがアルバムの出発点として掲げていたテーマは、「ブラジルの民間信仰カンドンブレと、アメリカのゴスペルの融合」であり、それぞれの音楽の特徴であるパーカッションとオルガンの融合が、作品全体の空気を決定付けていた。

アート・リンゼイ『Cuidado Madame』収録曲

特に、カンドンブレには欠かせない打楽器・アタバキによって叩き出されるパーカッシブなリズムが楽曲に瑞々しい躍動感を与え、そのリズムに背中を押されるように、アートのフリーキーなノイズギターも多くの曲でフィーチャーされていて、非常にエネルギッシュな作風が生まれていた。

アート:(カンドンブレとゴスペルの融合によって)ダイナミクスとブレイクの共通点を探そうと思った。全く異なるふたつの複雑化されたリズムが、何か面白い火花を発するかもしれないと思ったんだ。

こういったリズムパターンとシフトは、なぜ人間の神経系と筋肉組織に似ているのか? 音楽的な引き金とは何だろう? 頂点から始まる弧とは? 下降のどこが気持ちいい?……そういったことを考えていたよ。

ノンチューニングのギターによるノイジーなインプロビゼーションと、ジャズやブラジル音楽を参照点とする肉体的なリズムアプローチ。これはDNAからThe Lounge Lizards、Ambitious Loversへと至る、バンドミュージックにおけるアート文法の総決算と言っても決して過言ではないだろう。そんな時期のライブを体験できるというのは、やはり非常に貴重な機会であることは間違いない。

長年の盟友から、NYの新鋭まで。新バンド編成でのライブの音楽的見所はここ

では、実際に今回の来日メンバーを紹介していこう。まずベーシストはAmbitious Lovers時代からの盟友で、アートのソロ作にも多数参加しているメルヴィン・ギブス。ジャズやファンクに精通しつつ、オルタナティブな感性も持った彼の存在が、バンドの屋台骨であることは間違いない。

そして、ジャズ界隈の若手としては、ドラマーのカッサ・オーバーオールと、キーボードのポール・ウィルソンが参加。ローリン・ヒルやSZAに関わり、Cibo Mattoのハトリミホと共にNew Optimismとしても活動するポールは、2014年の来日公演にもメルヴィンとともに参加しており、そこから『Cuidado Madame』につながったのかもしれない。

もう一人、パーカッションを担当しているのが、マリヴァウド・パイム。彼も2014年の来日公演に参加し、さらには2015年にも「Arto Lindsay's Restless Sambas」の一員として来日していて、バンドにブラジル色を持ち込む重要な存在だ。

Arto Lindsay's Restless Sambasによるライブの様子

アート:メルヴィンは親友であり、一番長くコラボしてきた人物であり、私の先生であり、ステージの上のライバルでもある。カッサは素晴らしいドラマー兼ラッパーで、独自の視点を持っている。彼の音楽を聴くと、本人と知り合ってみたくなる。そういうタイプのミュージシャン / アーティストだ。

ポールは私の知る限りもっとも才能ある若手プレイヤー / 作曲者 / プロデューサーの一人だね。新しい情報への反応がよくて、それが彼と一緒に仕事をするのをとりわけ素晴らしいものにしてくれるんだ。マリヴァウドはもう一人の私の古い音楽パートナー。カーニバルのパレードからデュオやトリオまで、あらゆる場面で一緒に仕事をしてきた。彼のグルーヴは比類ないよ。

YouTubeには今年の4月にブルックリンで行われたライブ映像がアップされていて、これがかなりかっこいい。アルバムを象徴する1曲である“ILHA DOS PRAZERES”では、アタバキとドラムによる扇動的なリズムに乗って、アートがノイズギターをかき鳴らし、“VAO QUEIMAR OU BOTANDO PRA DANCAR”ではヒップホップ的なアプローチを見せ、“UNPAIR”でのフリーキーなセッションも興奮する。

アルバムではプログラミングも多用されていたが、ライブではサンプラーを用いて、プログラミングは最小限に抑えられているようで、やはり生バンドのダイナミックなグルーヴが堪能できるはずだ。

さらに、東京・京都・大阪を巡るバンドツアーの後は、代官山・晴れたら空に豆まいてを舞台に、昨年に引き続いてのジム・オルークとの共演も決定。二人のラジカルなギター奏者によるスリリングな共演が楽しめるだろう。

アート:ジムと共演するのは大好きだよ。私の曲の聴き方が美しいんだ。まるで曲の歴史を辿りながら聴いているみたいでね。人にはそれぞれ異なるアメリカ南部があるんだ。

それにもちろん、私たちはお互いに曲という枠組みから離れて、ただ音を探り合うことができる。互いに曲からノイズへの移行の仕方が違うから、すごく集中するんだ!

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イベント情報

『ARTO LINDSAY Japan Tour 2017』

2017年6月23日(金)
会場:東京都 渋谷 WWW X

2017年6月24日(土)
会場:京都府 METRO

2017年6月26日(月)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La

料金:各公演8,000円(ドリンク別)

『アート・リンゼイ×ジム・オルーク』

2017年7月2日(日)全2公演
会場:東京都 代官山 晴れたら空に豆まいて
出演:
アート・リンゼイ
ジム・オルーク
料金:
前売 1公演6,400円 お土産付き1公演6,900円(共にドリンク別)
当日 1公演6,900円(ドリンク別)
通し券13,000円(ドリンク別)
※通し券は優先入場、お土産付き

プロフィール

アート・リンゼイ

アメリカ生まれの音楽家。3歳から17歳までブラジルで過ごす。1977年、ニューヨークにてバンド「DNA」を結成。ノーウェーブと呼ばれるムーブメントを代表するバンドとなるが、1982年に解散。その後は、The Lounge Lizards、Ambitious Loversなどで活動する一方、ソロミュージシャンとして数多くのアーティストの作品に参加している。

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