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バズ狙いとは違う。LILI LIMITのミュージックビデオへの美意識

バズ狙いとは違う。LILI LIMITのミュージックビデオへの美意識

LILI LIMIT『LAST SUPPER EP』
テキスト
天野史彬
編集:矢島由佳子

『SSFF & ASIA 2017』に選出された、LILI LIMITの映像に対するこだわり

新しい音楽に出会うのも、好きなアーティストの新曲に出会うのも、まずはYouTubeから……そんな時代になって久しい。「映像」とどのようにして付き合っていくのか? ということは、今を生きるミュージシャンたちにとって、大きな命題のひとつである。LILI LIMITは、そんな時代の流れを味方につけながら、貪欲に、自分たちの世界観を音源やライブだけでなく、「映像作品」としても表現してきたバンドだ。

LILI LIMIT
LILI LIMIT

1stフルアルバム『a.k.a』(2016年10月発売)のリードトラックとして公開された“A Short Film”のミュージックビデオ(以下、MV)は、アジア最大級の国際短編映画祭『ショートショート フィルムフェスティバル&アジア2017』のミュージックビデオ部門において、国内外からノミネートされる16作品のひとつに選出された。

本作の監督を務めたのは、フリッパーズ・ギターやゆらゆら帝国などのMV制作を務めてきた山口保幸。映像作品に音を加えるフォーリーアーティストをモチーフに、「人生の主人公と、それを支える人々の存在」をミニマル、かつ不可思議に描写した本作は、LILI LIMITの、理性的だが感情的、ときに無機質だが、ときにあたたかい、そんな世界観を見事に反映した映像作品だ。

CINRA.NETでは、『a.k.a』リリース時にLILI LIMITのフロントマン・牧野純平と山口との対談取材を行ったが、この対談のなかで牧野は、当時の自身のMVに対する考え方をこのように語っている。

牧野:(“A Short Film”MV中に、バンドの演奏シーンを入れなかったことに関して)「バンドだからそこにいくのが正解」みたいになるのが嫌で。演奏してしまうと「意味」ができあがってしまうじゃないですか。そこに納得できない部分が結構あったんですよ。僕は、「映像作品」を作りたいと思っているので。

もちろん、MVだから映像のなかでバンドが演奏するのが一番伝えやすいことだとは思うんですけど……今回は、なるべくそれは避けたいという思いがありました。バンドが演奏しているだけだと、想像できることが限られてくるんですよね。でも、僕は想像ができる作品を作りたい。

左から:牧野純平、山口保幸
左から:牧野純平、山口保幸(インタビュー:LILI LIMIT×山口保幸 音楽業界のルールが変わるとMVも変わる / 撮影:森山将人)

この牧野の発言は、LILI LIMITの特質を端的に表していると言っていいだろう。明確な答えやメッセージではなく、作品のなかに「謎」を込め、聴き手の想像力を喚起すること。そして、それを人の「日常」という普遍的なテーマとリンクさせることで、聴き手の日常のなかに宿る不可思議さや奇跡のような瞬間への気づきを促すこと。これが、LILI LIMITの理性であり美意識だ。

レシピ動画のなかに、突然「ダンス」が登場。海外の先端作品との親和性

山口が初めてLILI LIMITの作品の監督を務めたのは、2016年7月のメジャーデビュータイミングに発表された“Living Room”だった。

そして“A Short Film”に続いて発表されたのが、“Kitchen”(『a.k.a』収録)のMVである。“A Short Film”同様、日常的な風景描写に映像表現ならではの視点を組み込んだ作品だが、この“A Short Film”~“Kitchen”の流れにおいて筆者が興味深く感じたのは、そのミニマルな日常の描写から急転してやってくるダンスシーン。淡々と続く日常に対して、実は激しく揺れ動いている登場人物の内面的な心理を象徴するかのように急激に訪れるこれらの「ダンス」は、映像を見ているこちら側の心にも一気に揺さぶりをかけてくるものだ。

今、こうした「外」と「内」の対比構造を描くようにダンスという身体表現を用いるMVを作っているのは、LILI LIMITだけではない。たとえば、Chance The Rapperやフランク・オーシャンの作品への参加でも知られるアメリカ人アーティスト、Francis and the Lightsが去年から今年にかけて公開した“Friends”“See Her Out”“May I Have This Dance”といったMV群。これらも、ミニマルな空間、ミニマルな運動のなかから唐突に始まる「ダンス」が、作品に強烈な色彩を与えている。

世界と個人、日々と今、身体と心――そうした「外」と「内」の関係性を描くことは、今、時代の先端を見据えるアーティストたちの共通項なのかもしれない。

最新映像は、話題の二人による、『最後の晩餐』をモチーフにしたもの

前述した山口との対談のなかで、牧野は「部屋」に対するフェティッシュな考えを示しているのだが、そこからより細密化した「食」というテーマを描いているのが、新作『LAST SUPPER EP』だ。

「最後の晩餐」をモチーフにした表題曲“LAST SUPPER”、一転、「朝食」という始まりの食事が描かれる“LIKE A HEPBURN”、「盲目のライオン」をテーマに「弱肉強食」という自然(社会)の摂理を連想させる“ERAION”、そして、<僕たちは食べる事を避けられず>と歌いながら、「ガム」という「食べ物」と言うには微妙なワードを出すことで、連綿と続いていく人の生活の穏やかさと、一抹のやるせなさを絶妙に描いた“STREET VIEW”。このEPでLILI LIMITは、これまで彼らが描き続けた「日常」というモチーフに、これまで以上に優しく、スケールの大きな眼差しを注いでいる。本作のリリースに先駆けて公開された“LAST SUPPER”のMVにもそれは表れている。

監督を務めたのは、CM等も手掛ける映像監督の西堀哲郎と、演出家の菅原伸太郎。この二人は、ドレスコーズ“エゴサーチ・アンド・デストロイ”のMVを手掛けたタッグで、LILI LIMITの公式ブログによれば、このMVやドレスコーズの存在そのものが牧野に与えた刺激が大きく、今回、“LAST SUPPER”での西堀と菅原の起用に繋がったようだ。

レオナルド・ダ・ヴィンチ『最後の晩餐』のように、食卓に横並びで座るLILI LIMITの五人。その背後では、年齢も性別も様々な人々の「別れ」と「始まり」の光景が描かれていく。“A Short Film”“Kitchen”とは違い、登場人物が多いこと、そして何より、バンドの演奏シーンがフィーチャーされていること。これらの変化は、本作がLILI LIMITにとって新たなフェーズに入ったことの証だろう。

先に引用した対談の発言内で、牧野は「意味」に対する距離感から演奏シーンを取り入れなかった旨を語っているが、“LAST SUPPER”でLILI LIMITは、自ら率先して「意味」を背負っている。その「意味」とはつまり、人々の「別れ」と「始まり」。その繰り返しを重ねていく、人という生き物の営みへの肯定。MV後半から映し出される人々の笑顔、そして、メンバー五人が食事を始める瞬間――その姿を見るにつけて思うのは、これまでのLILI LIMITが、「過去から今」への流れを描くことに長けてきたのだとしたら、今作で彼らは、「今から未来」への視点を手に入れたのではないだろうか、ということ。今、LILI LIMITの表現に、新たなうねりが生まれているのはたしかだ。

LILI LIMIT『LAST SUPPER EP』
LILI LIMIT『LAST SUPPER EP』(Amazonで見る

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リリース情報

LILI LIMIT『LAST SUPPER EP』初回生産限定盤
LILI LIMIT
『LAST SUPPER EP』初回生産限定盤(CD+DVD)

2017年6月28日(水)発売
価格:2,000円(税込)
KSCL-2927/8

[CD]
1. LAST SUPPER
2. LIKE A HEPBURN
3. ERAION
4. STREET VIEW
[DVD]
「LILI LIMIT ONE MAN TOUR Good Bye Velvet DAIKANYAMA UNIT 2016.12.09」
1. A Short Film
2. Wink, Blink
3. Kitchen
4. Observe
5. Girls like Chagall

LILI LIMIT『LAST SUPPER EP』通常盤
LILI LIMIT
『LAST SUPPER EP』通常盤(CD)

2017年6月28日(水)発売
価格:1,300円(税込)
KSCL-2929

1. LAST SUPPER
2. LIKE A HEPBURN
3. ERAION
4. STREET VIEW

イベント情報

『LILI LIMIT presents Archive』

2017年9月2日(土)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd

2017年9月8日(金)
会場:愛知県 名古屋 ell.FITS ALL

2017年9月10日(日)
会場:福岡県 DRUM SON

2017年9月16日(土)
会場:東京都 渋谷 WWW X

2017年9月18日(月・祝)
会場:大阪府 心斎橋 JANUS

料金:各公演3,200円

プロフィール

LILI LIMIT
LILI LIMIT(りり りみっと)

2012年、ボーカル牧野を中心に山口県宇部にて結成。その後福岡へ拠点を移動し現在のメンバーになる。2014年より東京にて活動を開始。2016年1月、自身2枚目となる全国流通盤ミニアルバム『#apieceofcake』をリリース。同年7月『LIVING ROOM EP』でメジャーデビュー。10月にはファーストフルアルバム『a.k.a』をリリース。これまでに、『SUMMER SONIC』への出演や、海外バンドMEWやPOP ETCとの共演も果たす。360°のリアルな日常を洋楽的サウンドでドラマチックに表現する5人組バンド、LILI LIMIT。

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