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韓国映画『毒戦 BELIEVER』、香港版との違いは?二人の男描くノワール作

韓国映画『毒戦 BELIEVER』、香港版との違いは?二人の男描くノワール作

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西森路代
編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)
(メイン画像:左から『ドラッグ・ウォー 毒戦』 ©2012 Beijing Hairun Pictures Co., Ltd. All Rights Reserved.、『毒戦 BELIEVER』 ©2018 CINEGURU KIDARIENT & YONG FILM. All Rights Reserved.)

狂気宿る、ジョニー・トー監督のオリジナル版『ドラッグ・ウォー 毒戦』

10月4日から韓国映画『毒戦 BELIEVER』が公開となる。本作は、ジョニー・トー監督の香港映画『ドラッグ・ウォー 毒戦』(2012年)のリメイク作品である。

香港版の『ドラッグ・ウォー』では冒頭、ルイス・クー演じる主人公である香港出身のテンミンが嘔吐しながら車を運転し、そのまま道路の傍にある中華料理店に突っ込むというインパクトのあるシーンから始まる。テンミンはコカイン工場の爆発から逃れていた途中で、中国公安警察の麻薬捜査官ジャン警部(スン・ホンレイ)と出会い、減刑を条件に捜査への協力を要請される。

手を組んで捜査をすることになるジャン警部(スン・ホンレイ)とテンミン(ルイス・クー) 『ドラッグ・ウォー 毒戦』 ©2012 Beijing Hairun Pictures Co., Ltd. All Rights Reserved.
手を組んで捜査をすることになるジャン警部(スン・ホンレイ)とテンミン(ルイス・クー) 『ドラッグ・ウォー 毒戦』 ©2012 Beijing Hairun Pictures Co., Ltd. All Rights Reserved.

この作品の中では、テンミンの罪は死刑にあたり、そこから逃れるためになりふり構わない姿は印象的だ。テンミンは、自分が死刑にならないためには仲間を売ることもいとわないし、ジャン警部からゆさぶりをかけられると、あからさまに情報をちらつかせ、なんとしてでも生きようとする。その執念が際立っていた。

ジャン警部とて、執念を持って麻薬を扱う犯人を捕まえようとしているという意味ではテンミンと同じだ。その執念と執念がぶつかり、最後の路上での銃撃戦に至るのだが、見返して改めて狂気の宿る作品であるとの感想を持った。

ジョニー・トー監督作『ドラッグ・ウォー 毒戦』予告編

中国公安の厳しい審査を経て完成させた野心的作品。乾いた銃声が響く「ジョニー・トーの銃撃戦」

公開当時のジョニー・トーのインタビューや、日本に来日したときのコメントを読むと、ジョニー・トーは本作で初めて中国大陸で全編を撮影したほか、中国でもそれまで公安を描いた作品がほとんどなく、厳しい審査を経て映画を完成させたのだという。ジョニー・トーは、銃撃戦もあまり撃つなと言われ、かなりカットしたとも語っているのだが、本編を見る限りほかの監督作と変わりなく、銃撃戦がとても重要だし、その分量が少ないようには見えなかった。これでカットしたというのなら、当初はどれだけ銃撃戦が多かったのかとつっこまずにはいられない(笑)。

ジョニー・トーの銃撃戦には独特の魅力がある。特に、私が「ジョニー・トーの銃撃戦」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは、銃弾の残響である。外での撃ち合いは、銃の音がこんなに乾いていて、そして後に残るものなのかと思わされる。本作も、そんなジョニー・トーらしいアクションが満載の映画であった。

『ドラッグ・ウォー 毒戦』 ©2012 Beijing Hairun Pictures Co., Ltd. All Rights Reserved.
『ドラッグ・ウォー 毒戦』 ©2012 Beijing Hairun Pictures Co., Ltd. All Rights Reserved.
『ドラッグ・ウォー 毒戦』 ©2012 Beijing Hairun Pictures Co., Ltd. All Rights Reserved.
『ドラッグ・ウォー 毒戦』 ©2012 Beijing Hairun Pictures Co., Ltd. All Rights Reserved.

香港人であるテンミンの生への執着、男同士の「情」を省いた物語に見る、香港と中国の関係性

今までジョニー・トーの映画に政治性と結びつけて見ることはあまりなかったが、ドキュメンタリー『あくなき挑戦 ジョニー・トーが見た映画の世界』(2013年)の中で彼は、犯罪組織の会長選挙を巡る抗争を描いた映画『エレクション』(2005年)を撮ったのは、「黒社会にすら直接選挙制があるのに、香港にはそれすらないからだ」ということを言っていてハッとした。

香港の映画人であれば、一国二制度のことは常に頭にある。そこから考えると、初めて中国で全編を撮影し、公安を描いた作品の中で、香港人であるテンミンが中国においてしぶとく生への執着を見せることは、何かの象徴であるような気がしてくる。また、普段は男同士の「情」を描くジョニー・トーが、テンミンと公安のジャン警部とが協力して捜査をするにも関わらず一切の「情」を描かなかったことにも意味があるのではないかとも思った。テンミンの執念は、香港(自分)は中国(ジャン警部)にのみこまれてはいけないという気持ちとつながっていて、それでも飲み込まれてしまうしかないほどに恐ろしいからこそ食い下がってはいけないということなのかなと、2019年の今だからこそ思えたのだ。

『ドラッグ・ウォー 毒戦』 ©2012 Beijing Hairun Pictures Co., Ltd. All Rights Reserved.
『ドラッグ・ウォー 毒戦』 ©2012 Beijing Hairun Pictures Co., Ltd. All Rights Reserved.
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作品情報

『毒戦 BELIEVER』

2019年10月4日(金)からシネマート新宿ほか全国順次公開
監督:イ・ヘヨン
脚本:イ・ヘヨン、チョン・ソギョン
出演:
チョ・ジヌン
リュ・ジュンヨル
キム・ジュヒョク
チャ・スンウォン
パク・ヘジュン
上映時間:124分
配給:ギャガ・プラス

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