コラム

『CROSSING CARNIVAL'20』中止判断とオンライン開催の想い

『CROSSING CARNIVAL'20』中止判断とオンライン開催の想い

テキスト
CINRA.NET編集部

「変化」がテーマだったイベントで、さらに大きな変化を考える(CINRA.NET編集長 柏井万作)

いよいよ今週土曜日(5月16日)に、『CROSSING CARNIVAL'20 -online edition-』を開催します。新型コロナウイルスの影響で一度は中止を発表したイベントを、「online edition」として復活することができたのは、出演者や関係者の多大なるご協力があってのことでした。そして、このイベントを楽しみにしてくださっていた方々のツイートにも多くの励ましをいただきました。この場を借りて御礼申し上げます。

もともと今年の『CROSSING CARNIVAL'20』は、「変化」をテーマにしていました。数年にわたり音楽業界がビジネスモデルの変化を迫られ、混迷を極める中、既成の方法論とは違うやり方で、自分らしくあろうとする表現者たちの存在感が、年を追うごとに大きくなってきていると感じています。何かが大きく変わろうと蠢いているーーその予感はこの1年、再開発と再構築を繰り返し激変していったイベント開催地・渋谷の風景を見るにつけ、確信として輪郭を帯びていきました。

『CROSSING CARNIVAL'20』メインビジュアル
『CROSSING CARNIVAL'20』メインビジュアル

そうした新しい時代の空気と、これまでの約15年でCINRA.NETが綴ってきたオルタナティブな音楽文化を、『CROSSING CARNIVAL'20』の中に同居させながら1つの文脈として編んでみたいというのが、カルチャーメディアとしてのチャレンジでした。

結果的にこの試みを形にできなくなったのは、まさに痛恨の極みでしたが、自由に、インディペンデントに生きるアーティストたちのエネルギーをダイレクトに感じ、刺激され、触発されるような場を作ることの大切さも、人の命や、社会的なリスクをみんなで回避するための行動には代えられません。ただ、中止発表時のコメントの通り、音楽や芸術文化、エンターテイメント業界に、少しでも恩返しができるようなアクションを起こしたいという想いは強く、この『CROSSING CARNIVAL'20 -online edition-』や、「#カルチャーはとまらないとめられない」に繋がっています。

ハッシュタグ「#カルチャーはとまらないとめられない」に寄せて
ハッシュタグ「#カルチャーはとまらないとめられない」に寄せて(記事を読む

「online edition」として変化した『CROSSING CARNIVAL'20』で形にしたいのは、コロナウイルスの影響でパフォーマンスの場が激減してしまった「音楽ライブ」の喜びや感動をオンライン上で作ること、そして今、厳しい状況に追い込まれてしまったライブエンターテイメント――「ライブハウス」など音楽の現場について考え、次に繋がるきっかけを作ることだと考えています。

これからの時代に向けたポジティブな発信にしたいと思っていますが、トークプログラムの中では、シリアスな話も出てくるかと思います。それもやはり、カルチャーメディアが伝えるべき、今、2020年5月16日の紛れもない現実なのだと思いますが、そうしたリアリティーも含めて、出演者の音楽や言葉、パッションが視聴者の皆さんにより強く響く部分もあるのではないかと考えていますので、トークとライブ、合わせてお楽しみいただけたら幸いです。

『CROSSING CARNIVAL'20』オンライン化のリアルはどこにあるのか?(CINRA.NET編集部 山元翔一)

「変わっていく風景 変わっていく人々 時代に寄り添うか、我が道をゆくか」。このコピーは、イベントの開催地・渋谷の激変を見つめ、たった一つの正解は存在しない世界でそれぞれの価値観を胸に生きる道を模索する人たちに思いを馳せて、「どんなイベントを作っていくべきか?」と自分たちに突きつけるようにして掲げたものでした。

我々はどこから来て、どこに向かうのか?ーー我々がイベントを作るにあたってはそれを考え抜くことが何より大事で、O-nestという渋谷のライブハウスで10年以上も入場無料イベント『exPoP!!!!!』を作ってきたCINRA.NETのアイデンティティーに向き合い、2020年代を生き抜くための足場を確かなものにするために『CROSSING CARNIVAL'20』は準備してきました。メディアとして、イベントとして、一緒にこの10年の音楽文化を作っていきたいと思ったアーティストのみなさんに出ていただくつもりでした。O-nestという場所と『exPoP!!!!!』というイベントが育んできた文化を未来に繋ぐために、かつてからの連帯を温めなおすようなブッキングを形にするつもりでした。でも、それは叶わなかった。

『CROSSING CARNIVAL'20』をオンライン版に移行するにあたって考えたのは、いかにこのイベントを「リアル」なものにするかということでした。インターネットを介して実施する以上、生身の体感という意味でのリアルはありません。配信である以上、どこまでやってもライブハウスでの体験の代替品にはなりえない。でもリアルじゃないものは不要じゃないですか。「では、どうすればいいだろうか?」ということをずっと考えながら今日まで準備してきました。そして、今この文章を書いていてわかったことがあります。

『CROSSING CARNIVAL'20 -online edition-』では、アーティストのご自宅から生配信を実施したり、Zoomを使ってインタビューを生配信したり、事前に撮影いただいた映像やまだ世に出ていないライブ映像、未発表の映像コンテンツなどを放映します。こうやってなんとか形にすることができそうなのは、アーティストや関係者の方々の尽力があったからです。このコロナ禍での状況で、「それでも音楽を鳴らせないだろうか」「なんとか声を届けたい」という、通常の何倍も手間のかかるうえに、乗り越えなければならない困難がいくつもある我々からの無理なお願いに応えるために、アイデアを絞り、実現のために奔走してくれた方々がいたから実現にまでこぎつけられたのです。

こういうことはわざわざ書く必要はないと思いながらも、新型コロナウイルスという突然現れた前例のない全人類共通の脅威を前に、アーティストは音楽を紡ぎ、言葉を発し、マネジメントやレーベルの方々はそのために心を尽くし、以前の世界ではありふれていた「音楽イベント」というものを形にするために各々がそれぞれの立場でできるだけのことをやった。そうやってあなたのスマートフォンやPCの前に届けられた、音は、声は、映像は、そしてなにより配信イベントを見ようと思ってチケットを買ってくれたあなたの行動そのものは、新型コロナウイルスによって本性が暴かれたクソッタレな世界で、それなりの強度のリアルを持っていると僕は信じたい。

これから先のことは誰にもわからないと思います。だから配信を見てくださっている方にも、考えてほしいと思っています。僕は、もうライブハウスでライブを観ることはできないかもしれないと思う一方で、それと同じくらいの重さで、またあの空間に集まれる日がいつか来るという希望を抱いています。あなたはどうでしょうか? いろんな考え方があっていいと思います。アーティストのみなさんはどう考えているのか直接話を聞くプログラムも設けていますので、その言葉を受け取って自分なりの考えを巡らせてもらえると嬉しいです。

最後に、タイムテーブルを見ていただけたらわかると思いますが、13:00から21:00まで休みなく、ほぼノンストップで進行します。「油断していると大切な瞬間を見逃すかもしれない」というそのライブ感や緊張感が画面越しに少しでも伝えられたらと思います。とはいえ、アーカイブは72時間残るので、みなさんの判断で自由に休憩したり、食事をとったりしてください。2020年5月16日が、あなたにとっていい1日になりますように。それでは。

『CROSSING CARNIVAL'20 -online edition-』を特集したプレイリストを聴く(Spotifyを開く

『CROSSING CARNIVAL'20 -online edition-』タイムテーブル
『CROSSING CARNIVAL'20 -online edition-』タイムテーブル(チケットを購入する

▼投げ銭につきまして

今回の配信では、視聴者の皆さまから投げ銭を受け付けております。いただいたご支援は、『CROSSING CARNIVAL'20』の中止に関わる経費や、今後のイベント開催に向けた資金にあてさせていただきたいと考えております。ご支援のほど、何卒よろしくお願い致します。
また、チケット購入時に投げ銭をいただいた皆さま、誠にありがとうございました。用途のご案内が遅くなりましたこと、お詫びいたします。

▼新型コロナウイルス感染拡大防止対策につきまして

『CROSSING CARNIVAL'20 -online edition-』は、出演者のご自宅などプライベートスペース、配信スタジオ、CINRAオフィスから配信を行います(一部収録動画を除く)。全ての場所において、常時換気や消毒を行い、無観客で配信いたします。プライベートスペースにつきましては、固定カメラを利用し、出演者以外は無人で配信を行います。配信スタジオやCINRAオフィスにつきましては、ソーシャルディスタンスを確保し、必要最低限のスタッフのみ、マスク着用で参加いたします。また、出演者同士が接触することの無いよう、出演時間の間隔をあけて実施いたします。

Page 1

イベント情報

『CROSSING CARNIVAL'20 -online edition-』
『CROSSING CARNIVAL'20 -online edition-』

2020年5月16日(土)13:00から配信

出演者:
岩瀬貴己(森、道、市場)※インタビュー出演
王舟
Campanella
君島大空
小林祐介(THE NOVEMBERS)※インタビュー出演
五味岳久(LOSTAGE)※インタビュー出演
崎山蒼志
塩塚モエカ (羊文学)
柴田聡子
SuiseiNoboAz
STUTS
仙人掌
曽我部恵一
Daichi Yamamoto
downy
TAMTAM
TENDOUJI(モリタナオヒコ&アサノケンジ)
TOSHI-LOW(BRAHMAN、OAU)※インタビュー出演
Dos Monos
Homecomings
マヒトゥ・ザ・ピーポー(GEZAN)※インタビュー出演
Mom
三船雅也(ROTH BART BARON)
ヤナセジロウ(betcover!!)

料金:1,000円

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

BIM“Wink”

BIMの新作『NOT BUSY』より“Wink”の映像が公開。ゆるめに結んだネクタイは軽妙洒脱でも、背伸びはしない。どこか冴えない繰り返しのなかで<だって俺らの本番はきっとこれから>と、吹っ切れなさもそのままラップして次へ。BIMの現在進行形のかっこよさと人懐っこさがトレースされたようなGIFアニメが最高にチャーミング。(山元)

  1. 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 時代を先取りした画期的作品 1

    『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 時代を先取りした画期的作品

  2. 坂口恭平の権力への抵抗。音楽は記憶を思い出させ人を治療する 2

    坂口恭平の権力への抵抗。音楽は記憶を思い出させ人を治療する

  3. 能町みね子が『ヨコトリ』で考えた、わからない物事との対峙 3

    能町みね子が『ヨコトリ』で考えた、わからない物事との対峙

  4. 『鬼滅の刃』劇場版公開記念集英社連合企画、20誌それぞれにオリジナル付録 4

    『鬼滅の刃』劇場版公開記念集英社連合企画、20誌それぞれにオリジナル付録

  5. ラブリーサマーちゃん、真摯さを胸に語る ノイジーな世界に調和を 5

    ラブリーサマーちゃん、真摯さを胸に語る ノイジーな世界に調和を

  6. King Gnuが日本初の「レッドブル・アーティスト」に 「Go Louder」始動 6

    King Gnuが日本初の「レッドブル・アーティスト」に 「Go Louder」始動

  7. 柳楽優弥、三浦春馬、有村架純が戦時下の若者役 映画『太陽の子』来年公開 7

    柳楽優弥、三浦春馬、有村架純が戦時下の若者役 映画『太陽の子』来年公開

  8. 勝井祐二と山本精一が語る 踊るという文化とROVOが瀕する転換点 8

    勝井祐二と山本精一が語る 踊るという文化とROVOが瀕する転換点

  9. 暮らしと仕事と遊びとアート。すべてを越えて繋がる東東京の生活 9

    暮らしと仕事と遊びとアート。すべてを越えて繋がる東東京の生活

  10. 小栗旬×星野源、野木亜紀子脚本の映画『罪の声』場面写真一挙公開 10

    小栗旬×星野源、野木亜紀子脚本の映画『罪の声』場面写真一挙公開