
オンライン飲みや『あつ森』ブーム、VRイベント……バーチャル空間に集う人々
新型コロナウイルスの感染拡大によって自主隔離が増えるなか、人々の社交場はバーチャルに移っている。今や、会議や飲み会など、人々が語り集う場所はすっかりZoomなどのオンラインミーティングとなった。
友人とつながりながら牧歌生活を送れる人気ゲーム『あつまれ どうぶつの森』のなかでは卒業式やデモ活動も行われるようになっている。この『あつ森』ムーブメントを受けて、ファッションブランドのヴァレンティノとマーク ジェイコブスが新作を衣装アイテムとして配布、米国のメトロポリタン美術館もゴッホや北斎などのコレクションをゲーム内に移行できるサービスを開始した。オシャレや美術館巡りすら仮想空間に移ったのだ。また、50万人以上の来場者を記録したVRイベント『バーチャルマーケット4』では、アウディ ジャパンが試乗イベントを実施。アバターとなったユーザーは、東京タワーや六本木ヒルズが存在するバーチャル都市「パラリアルトーキョー」で高級自動車を運転する体験を楽しんだ。
ニューヨーク・メトロポリタン美術館はコレクションから40600のイメージを『あつまれ どうぶつの森』で使用できるように配布しているアウディ ジャパンは『バーチャルマーケット4』で日本に未上陸の電気自動車の試乗イベントを行なった
多くの娯楽イベントが中止されるなか、レディー・ガガを筆頭とした人気アーティストが自宅からパフォーマンスを行う『One World: Together At Home』などのコンサートイベントも増えている。しかしながら、アットホームで親密な配信コンサートが増える一方、コロナ禍で激減する「豪華で未知」なエンターテインメントを実現した場所は、スターの豪邸ではなくゲームの中だった。
トラヴィス・スコット×『フォートナイト』はバーチャルコンサートの「歴史的転換点」。1230万以上のユーザーが集う
2020年4月、現在では3億5千万以上もの登録ユーザー数を誇るマルチプレイゲーム『フォートナイト』にて行われた人気ラッパー、トラヴィス・スコットのバーチャルコンサート『Astronomical』は、10分に満たないながら「歴史的転換点」として喝采を浴びた。その内容は、まず、ゲーム内に用意されていたコンサートステージが、空からあらわれた巨大トラヴィスによって踏み潰される。その後は予定調和を破壊せんとばかりに、楽曲ごとにフィールドが変化していき、アバターとして参加したユーザーは火の雨に巻き込まれ、水中世界にもぐり、最後は宇宙空間を飛んだ。このビッグイベントがリモートワークによって作られたというのだからアメージングだ。
4月24日~26日にトラヴィス・スコットが『フォートナイト』で行ったバーチャルライブ『Astronomical』の様子
オンラインゲームにおけるバーチャルコンサート自体はなにも新しいものではない。2000年代の段階で3DCGで作られた仮想空間『Second Life』がロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団を招致してユーザー参加型の公演を実現させている。しかしながら、今回のトラヴィス公演は規格外の規模だった。当時の『Second Life』ユーザーが110万人程度だったことを考えれば、先日登録プレイヤー数が3億5千万を超えたと発表された『フォートナイト』は桁が違う。
また、『フォートナイト』にしても、昨年マシュメロによるコンサートを開催していたが、そちらは(ちょうど巨大トラヴィスが踏み潰したような)現実のコンサートを踏襲するステージ設計にとどまっていた。観客が宇宙にまで飛ばされたトラヴィス公演は「バーチャル空間ならではのコンサート」を実現する技術と環境が揃ったターニングポイントとして歴史的なのだ。今回打ち立てられた同時接続数1230万という記録は、現実のコンサートイベントの史上最高レコードを軽々破るどころか、ニューヨーク市の推定人口よりも多い。
2019年にマシュメロが『フォートナイト』で開催したバーチャルコンサートの様子