コラム

中国版プデュ『青春有你2』が問う、「ガールズグループ」の枠組み

中国版プデュ『青春有你2』が問う、「ガールズグループ」の枠組み

テキスト
松本友也
編集:後藤美波(CINRA.NET編集部)

「X」というコンセプトが問いかける、「なぜガールズグループなのか」

ところで『青春有你2』は「X」、つまり「無限の可能性」というコンセプトを掲げている。既存のガールズグループの想定を超えた多様性を示すというニュアンスも含まれている。

そしてこのコンセプトは、それぞれ歌手やラッパー、ダンサーとして個人でも活躍できる実力とスタイルがあるにも関わらず、彼女たちがなぜ「ガールズグループ」に入ろうとするのかという問いと切り離せない。メンターからも何度も投げかけられる問いだ。

もちろん、動機のレベルではすでに述べたように、彼女たちがステージに上がる機会を熱望していたということが回答になるだろう。事実、彼女たちのなかには、「ガールズグループ」のオーディションだけでなく、ラップやダンス、ボーカルそれぞれのサバイバルオーディションを受けてきた過去をもつ人もいる。

『青春有你2』ファイナルに残った20名のフォトシュート

したがって、この問いはむしろ『青春有你2』の制作側が応えるべきものだと言える。彼女たちをあえて「ガールズグループ」として世に送り出すことの意味、その選択肢の魅力、必然性はどこにあるのか。番組の謳う「多様性」が、表面的な差別化要素やマーケティング的な新規性のためのものにとどまらない本質を含んだものであることを説得的に示せなければ、それは欺瞞とは言わないまでも虚しいものになるだろう。

『青春有你2』が「ガールズグループ」をどのようなものとして提示したのかは製作側が訓練生たちに課したミッション、その様子を演出・編集して放送された結果としての番組から判断するほかない。そしてそれは一方では、ある種の行き詰まりを正直に示してしまってもいた。レベル分けテストであれだけの個性を発揮した訓練生たちは、いずれも「ガールズグループ」のフォーマット──歌やダンス、表情管理からなる総合的なパフォーマンスや、苦手なスタイルも含むさまざまな楽曲への挑戦──に適合するプロセスで、持ち味がうまく発揮できず、自信喪失に陥っていたように思える。

レベル分けテスト以降のミッションは、明らかにこうした自信喪失と再構築のプロセスとしてストーリーが組み立てられていた。最初のレベル分けテストのときに持っていた自信と個性を、どのようにして取り戻せるかという物語。しかしそれは、番組側が自ら仕掛けた問いを、自ら解くような袋小路ではないのだろうか。あるいは、せっかく集めた「個性的な」メンバーを、結局はガールズグループの若干のスパイスとしてしか活かせなかったということになるのではないだろうか──。

「ガールズグループ」の「必要条件」をひとつずつ反証する

もちろん、このような疑念は一面的なものである。『青春有你2』を多少とも見進めた人であれば、この番組で訓練生たちが歩んだ過程が、単なる自信喪失とその回復の単純な道のりにすぎないものではないことは感覚的に理解しているはずだ。

なぜなら、「ガールズグループ」の枠組みに訓練生が適合しようと奮闘するそのプロセスは、同時に彼女たちがもつ「ガールズグループらしくない」個性も含めた魅力に、視聴者が魅了されていくプロセスでもあったのだから。

実際のところ、ビヨンセばりの圧ある歌唱にスワッグなラップスタイル、幼い子供のような歌声など、訓練生たちの持ち寄ったパフォーマンスの個性は、グループや楽曲の雰囲気に合わせて多少チューニングしたところで隠しきれるものではなかったように思う。彼女たちが、必ずしも自分の得意分野ではないジャンルに挑戦することで生まれる良い意味で異物感のあるステージは、少なくともK-POPや日本のアイドルを中心に見ているファンにとって、まず見たことがないような新鮮なものに映るのではないか。

ボーイッシュな訓練生とガーリッシュな訓練生の混在するチームで、中性的なスタイルによって両者を架橋した“The Eve”(ボーイズグループ・EXOの楽曲)のダンスカバーにおける许佳琪(シュー・ジャーチィ)。ディーバ的な力強いパフォーマンス能力と、マニッシュな風貌を持ちながら、中毒性のある電波ソング“How can I look so good”を、スタイリッシュかつチャーミングに仕上げてみせた上官喜爱(シャングァン・シーアイ)。もはや「ボーイッシュ」という言葉でもくくれないほどにソリッドで力強いステージングを見せつけた“Lion”での刘雨昕(リュー・ユーシン)。

これらはあくまでも一例にすぎない。それ自体がひとつの実験や発明であるようなステージが、『青春有你2』にはたくさんある。

ラッパーのNINEONE、マニッシュな上官喜爱らが、キュートな楽曲“How can I look so good”に挑戦

刘雨昕らが参加したオリジナル曲“Lion”のステージ

見たことがないようなステージに驚きながらも、同時に「自分はもっと色んなものが見たかったんだ」と気付かされる──それが『青春有你2』の一番の魅力と可能性だった。そして、そのことは結果的に、ガールズグループの必須条件やマナーだと思われていたようなものについて、それを破っても成り立つのだとひとつずつ実証していくことでもあったのではないか。視聴者投票での順位は、十分にその傍証となっている。

109通りに揺さぶられた「ガールズグループ」の枠組み

去る5月30日に行われた『青春有你2』のファイナルで、新グループ「THE9」のメンバー9人が発表された。最終投票で第1位を獲得し、センターでのデビューを勝ち取った先述の刘雨昕は、テーマ曲“Yes! OK!”のセンターも務めた人望の厚い人格者でもあり、本格的なポッピンダンスを踊りこなす実力者でもあり、数少ないパンツスタイルの制服を選んだ訓練生でもある。彼女が『青春有你2』を代表する存在であることは誰も疑わない。

とはいえ、彼女や他の最終デビューのメンバーが、『青春有你2』の回答のすべてというわけでもない。このプログラムの全行程において、「ガールズグループ」の枠組みが109通りに揺さぶられてきたことを確かめずに済ますのは、あまりにも惜しいと言えるだろう。

『青春有你2』から「THE9」としてデビューする9名

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