コラム

PUNPEEが2つの配信ライブで提示したもの、メール取材も実施

PUNPEEが2つの配信ライブで提示したもの、メール取材も実施

テキスト
高木"JET"晋一郎
撮影:Masanori Naruse リードテキスト・編集:山元翔一(CINRA.NET編集部)

<素敵に元気に延期なPUNPEEです>(“The Sofakingdom VR”)と自虐気味なラップが届けられたのは、2020年7月1日のことだった。5月に行われるはずだった自身のZeppツアー及び、所属レーベル「SUMMIT」主催の全国5箇所をめぐるライブイベント『AVALANCHE 10'』が新型コロナウイルスの影響で延期……“The Sofakingdom VR”はそんな最中でリリースされたEP『The Sofakingdom』の幕開けを飾る楽曲である。この曲にある<余裕ある時しか自分の音楽はFeelできないのかな><じいちゃん鬱だった 俺は大丈夫…いやそんなことないかな>といったリリックを見るに、PUNPEEにとってコロナ禍での生活は日々思い詰めてしまうような時間だったのかもしれない。

それにも関わらず、9月13日に実施し、多くの視聴者を驚かせたリアルタイムAR演出を取り入れた生配信ライブ『The Sofakingdomcome』から3か月余り、11月23日にPUNPEEは新たなライブ映像作品『Tongpoo videos vol.2 PUNPEE Presents.“Seasons Greetings'20”』を放送した。

この2つの配信ライブを、私たちはPUNPEEのキャリアのなかでどのように捉えるべきかーー今回、PUNPEEのこれまでに目を向けつつ、『Tongpoo videos vol.2』にフォーカスをあてたテキストを高木"JET"晋一郎に執筆いただいた。加えて編集部からの質問をぶつけ、2つの好対照な配信ライブを形作ったPUNPEEのクリエイティビティに迫るよう試みた。先行きの見えない時代に彼は、自らの足元を見つめながらも未だ見ぬヒップホップを通じた表現の可能性に手をかけようとしていたのではないか。そんなふうに思うからこそ、こんな記事を作ってみた。「しかしまあ、大事なのは今後である」と彼は言うかもしれないが。

PUNPEE(ぱんぴー)<br>2006年、Libra主催『UMB』東京代表。トラックメイカーとしても宇多田ヒカル、ライムスター、加山雄三、「水曜日のダウンタウン」などに楽曲、Remixを提供。2009年、Akai主催によるサンプラーバトル『MPC Gold Fingaz Kitchen』優勝など、いい言い方だと幅広く活躍中、悪い言い方だと何だかよくわからなく活動中。2020年7月にはEP『The Sofakingdom』を、11月には今まで限定的に発表してきた楽曲をコンパイルした作品集『Small Token pt.1』を発表した。
PUNPEE(ぱんぴー)
2006年、Libra主催『UMB』東京代表。トラックメイカーとしても宇多田ヒカル、ライムスター、加山雄三、「水曜日のダウンタウン」などに楽曲、Remixを提供。2009年、Akai主催によるサンプラーバトル『MPC Gold Fingaz Kitchen』優勝など、いい言い方だと幅広く活躍中、悪い言い方だと何だかよくわからなく活動中。2020年7月にはEP『The Sofakingdom』を、11月には今まで限定的に発表してきた楽曲をコンパイルした作品集『Small Token pt.1』を発表した。
『Tongpoo videos vol.2 PUNPEE Presents.“Seasons Greetings'20”』の詳細を見る(サイトで見る

「配信ライブ」というフォーマットが多様化し、成熟していくなか、驚きをもって視聴者をその世界に引き込み、アーティストとしての原点も提示したPUNPEE『Sofa Kingdomcome』

コロナ禍下において、多くの制約や制限が求められるようになり、アーティストも様々な試行錯誤を求められた。そのなかでエンターテイメント産業においてリスナーやオーディエンスが最も発達を感じることができたのは(それは自律的な発達というよりも、必要に迫られてという部分もあるが)、「配信ライブ」という形態だろう。もちろん、これまでにもライブの配信やオンデマンドはあったが、それはシンプルにライブの中継やネット配信という形態がほとんどだった。

その延長線上にあったライブといえば、6月25日に行われたサザンオールスターズの『Keep Smilin' ~皆さん、ありがとうございます!!~』だろう。横浜アリーナを使った「普段どおりのサザンのライブ」は「いつもと変わらない喜び」を感じさせるものだった。同じようにシンプルな形でライブ配信を行ったのは、ヒップホップサイドに目を移せば、初の赤坂BLITZ単独公演を配信したBIMや、武道館公演を配信したCreepy Nutsが挙げられる。その意味でも、これらのライブは、失われた日常にあったはずの喜びや情景を想起させる、「日常につながる祝祭としての、オーディナリーなライブ」としてリスナーに届けられた。

一方で、ライブ「配信」という放送形態に対して、視聴者の要求が多様化し、アーティスト側もその放送形態だからこそできる試みを模索するようになった。それは通常のライブでは、観客の位置からでは視認できないようなフォーメーションや動きを多数のカメラで追い、更にプロジェクションマッピングと同期させた欅坂46の『THE LAST LIVE』や、またヒップホップサイドに目を移せば、CGとのコラボレーションでライヴを構築したHilcrhyme、名古屋城をバックにド派手な舞台演出と映像エフェクトを合体させたAK-69のライブなどが挙げられる。

そのどちらも舞台やステージといった「ライブスペース」を前提として配信を展開したが、そもそもその「ライブスペース」という前提を解体した形で配信の冒頭が始まったのがPUNPEEの『Sofa Kingdomcome』だった。

筆者の不勉強にも依る部分が大きいかと思うが、ライブ配信が渋谷の街からの中継で始まるという映像を観たときに、「確かに無観客配信という形ならば、そのライブスペースはどこでもいいわけだ」と、コロンブスのたまごのような、シンプルでありながら新奇的なその試みには驚かされた。そしてそれを形にしたのが、飄々と映るが、その作家性や作品構造においては、非常に尖った作品をリリースしてきたPUNPEEらしいとも感じさせられた。

この配信はEP『The Sofakingdom』と連動して配信となった。EPには「ビートも作ってラップもするっていう、自分世代は避けて通れない、みんな喰らってた世代なんで」(「PUNPEE - 夢追人 feat. KREVA (Behind)」より)とPUNPEE自身が話すKREVAとともに制作した“夢追人 feat. KREVA”や、自身を「板橋区のダメ兄貴」と呼ぶ対比で称揚する実弟である5lackとの“Wonder Wall feat. 5lack”が収録された。

同曲の制作背景について二人が語っている模様をYouTubeで見ることができる(映像を見る

その意味では『The Sofakingdom』は自身の礎のような部分を表現する部分の強い作品だったが、『Sofa Kingdomcome』にもそういった側面が見て取れた。PUNPEEがラップしながら通り過ぎる渋谷シスコ坂にはMETEOR、ダースレイダー、インダラ(大和民族)、丸省の4人がサイファーし、フリースタイルブームが起こるよりもはるか以前に行われていた「Da.Me.Records」が中心となって行われていた「渋谷サイファー」の情景が現れる。

またそのメンツからは昨年クローズした、ISSUGIなどもレギュラーイベントを打っていたクラブ「池袋BED」の姿も想起させられ、筆者がPUNPEEを初めて認識したのが、METEORなども出場していたBEDでのMCバトル『3on3」だったからかもしれないが、彼の原点が投影されるようだった。

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イベント情報

『PUNPEE Presents“Seasons Greetings'20”|Tongpoo videos vol.2』
『PUNPEE Presents“Seasons Greetings'20”|Tongpoo videos vol.2』

2020年11月23日(月・祝)
料金:3,000円

リリース情報

PUNPEE『Small Token pt.1』
PUNPEE
『Small Token pt.1』

2020年11月20日(金)配信
SMMT-157

1. Curry Song(2020 Remastered) / カレー屋まーくんブルースエクスプロージョン feat. PUNPEE
2. Iden & Tity feat. B.I.G. JOE & 仙人掌(2020 Remastered)
3. ひやり小雨が彩るモノクロの車窓(2020 Remastered)
4. 夏休み(2020 Remastered) / Sugbabe feat. PUNPEE

PUNPEE『The Sofakingdom』
PUNPEE
『The Sofakingdom』

2020年7月1日(水)配信
SMMT-140

1. The Sofakingdom VR
2. GIZMO(Future Foundation)
3. 夢追人 feat. KREVA
4. Operation : Doomsday Love
5. Wonder Wall feat. 5lack

プロフィール

PUNPEE
PUNPEE(ぱんぴー)

2006年、Libra主催『UMB』東京代表。トラックメイカーとしても宇多田ヒカル、ライムスター、加山雄三、「水曜日のダウンタウン」などに楽曲、Remixを提供。2009年、Akai主催によるサンプラーバトル『MPC Gold Fingaz Kitchen』優勝など、いい言い方だと幅広く活躍中、悪い言い方だと何だかよくわからなく活動中。2017年10月、初のソロアルバム『MODERN TIMES』を発表し、今年7月には1stアルバム以来となる新作『The Sofakingdom』を発表。今年開催予定だったZEPPツアーも延期になるなか、今年9月、野外ロケやAR技術などを取り入れた配信コンテンツ『The Sofakingdomcome』をLIVEWIREにて放送し、大きな反響を得た。そして今年11月23日(月・祝)、新木場STUDIO COASTとTongpooによるプロジェクト『Tongpoo videos Vol.2 PUNPEE Presents. "Seasons Greetings’20"』にて新たなLIVE映像作品を放送した。

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