コラム

『こんな夜更けにバナナかよ』で大泉洋が見せる天性の「人たらし」感

『こんな夜更けにバナナかよ』で大泉洋が見せる天性の「人たらし」感

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橋本達典
編集:矢澤拓(CINRA.NET編集部)

『水曜どうでしょう』で知名度を増した大泉洋。全国放送に突如現れたときから放つ安定感

大泉の名を世間に知らしめた『水曜どうでしょう』(HTB)を見たことのある人は思い出してほしい。ミスター(鈴井貴之)が、藤やん(藤村忠寿)が、うれしー(嬉野雅道)が「もうしょーがねえなあ」と苦笑いする姿を。筆者も、かつて雑誌の企画でだまされて「誌上サイコロの旅」に出たことがあるが、最初は「マジか~!?」と怒りつつも、カメラが回っていないのにテレビ並みのリアクションで手を叩き、ワキャキャキャと無邪気に笑う彼を見て「しょーがねえなあ」と腹を括った思い出がある(おなじみの深夜バスにも乗りました)。

2018年8月1日当時の鈴井貴之と大泉洋 ©HTB
2018年8月1日当時の鈴井貴之と大泉洋 ©HTB

「人たらし」と聞くとよくないイメージを持つ人もいると思うが、裏を返せば「愛され力」とも言えるだろう。さらには大泉ならではの、いい意味での鈍感力……。これも言い換えれば何事にも動じない安心感、安定感も魅力だ。大泉を最初に全国ネットで観たのは、2000年に放送された『パパパパパフィー』(テレビ朝日)だったが、PUFFYから「誰?」「キモい!」などと散々イジられながらも動じずにイジり返すやりとりが実に楽しかった。2000年といえば、大泉は当時まだ20代の半ば。しかも、地方からいきなり上京してのあの落ち着き。「コイツただ者じゃない」と思った人も多いはずだ。2004年に歌手として出演した『うたばん』(TBS)で「北海道から出てくるなよ~」と、とんねるず・石橋貴明にイジられるも、めげずに切り返していた若き大泉も今思うとすごい。2006年に『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』(フジテレビ)でダウンタウンと初共演した際には、すでに堂々たる振る舞いだった。

『水曜どうでしょう』2013年放送「初めてのアフリカ」より ©HTB
『水曜どうでしょう』2013年放送「初めてのアフリカ」より ©HTB

繊細な題材を扱う作品、プレッシャーの大きい作品、すべてを演じることができる大泉洋への信頼。エンタメ界への希望として楽しみにしたい

「ボヤく」などと言われることも多い大泉だが、それでいて決して人を傷つけたりはしない。何を言っても笑いになってしまう、にじみ出る人柄のよさ。2017年放送の『夜の巷を徘徊する』(テレビ朝日)でマツコ・デラックスは「結局誰も傷つけない」と、大泉のトーク力とサービス精神を総評。最後に「あなた天才! 『パパパパパフィー』のころからずっと」と絶賛したのもうなずける。もちろん、そこには『こんな夜更けにバナナかよ』での役づくりしかり。繊細で緻密な計算もあるのだろう(表には見せないが)。だからこそ、障がいを持つ、実在の人物である鹿野さんという難役を「=大泉洋」として嫌味なく演じられたのだろう。

愛され力、安心感、人柄のよさと持ち前のサービス精神——(と、その裏に隠された繊細さ)。『今日から俺は!!』(日本テレビ)の大ヒットを受けた直後の福田組での主演、プレッシャーのかかる紅白司会やビートたけし原作小説の映像化、アカデミー賞監督・吉田大八作品、ヒットして当たり前と思われている大河、三谷作品など、並の俳優・タレントであれば思わず尻込みしてしまいそうな作品(番組)へのオファーが殺到するのも、大泉洋への絶大なる信頼があってこそ。

彼の魅力やエピソードを語ればキリがないが、ともあれ。12月4日放送の『こんな夜更けにバナナかよ』より始まる「大泉洋祭り」を楽しみに。来る2021年は、コロナ禍で元気がなくなったエンタメ界を盛り上げてほしい。

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番組情報

金曜ロードSHOW!『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』

2020年12月4日(金)21:00~日本テレビ系で放送(放送開始時刻は変更の可能性あり)

監督:前田哲
脚本:橋本裕志
原作:渡辺一史『こんな夜更けにバナナかよ 筋ジス・鹿野靖明とボランティアたち』(文春文庫)
音楽:富貴晴美
出演:
大泉洋
高畑充希
三浦春馬
萩原聖人
渡辺真起子
宇野祥平
韓英恵
竜雷太
綾戸智恵
佐藤浩市
原田美枝子

『水曜どうでしょう』

2020年10月28日(水)HTBで放送

出演:
鈴井貴之
大泉洋

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