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つくることで初めて見えるアートの世界

つくることで初めて見えるアートの世界

坂口千秋
撮影:越間有紀子(1日目)、西田香織(2日目)
2012/03/09

ゴミがアートに生まれ変わる? 2月の終わり、現代アートのさまざまなプラットフォームを展開するNPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ(以下AIT)主催のワークショップ「FOUND AND MADE」が代官山で行われた。スコットランドのグラスゴーから3人のアーティストを招き、身の回りにある素材で彫刻作品と展覧会をつくろうという今回の企画。子どもから大人までが身体や頭をフル回転させて、アーティストやキュレーターに初挑戦した2日間で、どんなことが起こったのか? 全ての参加者と関係者に、思いもよらぬ貴重な経験をもたらした、エネルギッシュで刺激的なワークショップの様子をレポートする。
NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ

1日目 DIY精神あふれるグラスゴーの3人組

ワークショップの初日。雨にもかかわらず、代官山の会場の一室には、合計21名の参加者が集まった。AITが開講する現代アートの学校「MAD」の受講生もいるが、多くは一般参加者。年齢層も未就学児から60代女性までと幅広く、主婦、デザイナー、OLなどバックグラウンドも様々で、これまでアート作品をつくったことなど、もちろんない。メアリー・レッドモンド、ケイティー・ウェスト、ニック・エヴァンス、アーティスト3人の自己紹介と併せて、グラスゴーという街の紹介からワークショップがスタートした。

ケイティー・ウェスト
ケイティー・ウェスト

ニックとメアリー、ケイティが住むグラスゴーは、インディーズ音楽やサッカーなどスポーツが盛んな、若者が多く集まる都市。路上にはライブやサッカー観戦で熱狂した人々が落としたカップやビニール袋、さらには家具までが捨てられていて、アーティストがそうしたゴミを使って作品をつくることも日常的な街だ。そんなDIY精神あふれるグラスゴーの制作環境の中で、街を歩いて何かを発見する楽しさや、異なる視点でものを見ることの大切さについて、豊富な事例を交えて話がおこなわれた。

割り箸を折るブレイクスルー

壁に貼られた大きな紙

とはいえ、まだ何をどうやってつくったらいいのか、みんなぎこちなく不安げだ。そこで続いて制作のレクチャー。壁に貼られた大きな紙には、切る、貼る、結ぶ、吊る、積む、たらす、など、誰もがわかるシンプルな言葉が書かれている。こうやって改めて人の動作を書き出すことで、ものと空間に対する彫刻のアクションの基礎をわかりやすく説明していく。そして知識だけでなく体験として、参加者の固定概念の殻を壊すために行われたのが、割り箸を使ったウォームアップだ。


制作の様子

制作の様子

まず、みんなで割り箸をポキンと折って、シンプルなアクションを体験する。次に折った割り箸をみんなで床に並べて共同作業を行い、彫刻作品を組み立てる。「割り箸という身近なものを使い、ほんのささいな行為で、そのかたちと意味を全く変えてしまう体験でした。このウォームアップのおかげで、参加者は凝り固まった価値観を自ら壊し、ものをつくるための思考の準備が整ったのかもしれません」と、今回のワークショップを担当したAITの堀内さんは振り返る。


そして、いよいよ実制作へ。当初のアイデアは、「街へ出かけてゴミを拾って作品にしよう」でも、グラスゴーと違い代官山にはゴミが落ちていない。おまけに雨。そこで「ゴミ」を「日用品」に変えて、ダンボールや土のう袋、紐、いらないチラシ、ビニールシートなど、日常的な素材をいろいろ用意し、参加者それぞれが使いたい素材を選んで制作を開始した。

ワークショップ「FOUND AND MADE」風景

ウォームアップの勢いをそのまま持ち込んだような参加者の自由溢れる制作意欲に圧倒されていると、気がつけば、吊り下げるオブジェ、土のう袋の洋服、空間を満たすもの、帽子、今日初めて会った人との共作など、それぞれのアイデアが湧き出てどんどん形になっていく。みんなペースがもの凄く早い。初日にしてすでに完成形が見えるところまでたどりついた人も多かった。

ワークショップ「FOUND AND MADE」風景

あっという間に終わりの時間が来てしまったので、いったん制作をストップ。最後にアーティストの提案で、参加者同士がお互いの作品について感想や意見を率直に出し合った。それまで制作に没頭していた参加者にとって、はじめて聞く他人の意見は、全く思いもよらぬ反応だったり、とても興味深い経験だったようだ。この批評会のおかげで、それぞれが自分自身の作品を客観的に見直すきっかけとなって、改めて課題やアイデアを再発見し、家に持ち帰ったようだった。

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イベント情報

ラウンジ・イベント「ミングリアス」
AIT大解剖学!塩見有子とロジャー・マクドナルドによるアート談義 ―フレキシブル? オルタナティヴ? 教育? 日本のアート界にいま必要なものを考える―

2012年3月10日(土)
会場:東京都 代官山 AITルーム
時間:19:00〜22:00(20:00よりトーク)
料金:入場無料
AIT | Future / Archives | 春を呼ぶラウンジ・イベント「ミングリアス」

AIT ARTIST TALK #59
クセニア・ガレイヴァによるトークとワークショップ「写真=フラット・スカルプチャー? ー平面から立体を、立体から平面をつくる写真術ー」

2012年3月12日(月)
会場:東京都 代官山 AITルーム
時間:19:00-21:00(定員12名、要予約、詳細はWebサイトを参照)
料金:一般1,500円(税込)、学生・ベースメンバー1,200円(税込)、ハウスメンバー/サポートメンバー無料(1ドリンク付き)

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『ひかりの歌』特報

「光」をテーマにした短歌コンテストで1200首のなかから選出された4首を原作とする映画『ひかりの歌』。プラネタリウムの流れ星や、濡れた道を照らす自販機に、人はどんな瞬きを感じとるのだろう。特報の息遣いが胸に貼りついて離れず、映画館の暗闇で同作に出会える春が待ち遠しい。(井戸沼)

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