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チャイナドレスのコトリンゴと巡る『描かれたチャイナドレス』展

チャイナドレスのコトリンゴと巡る『描かれたチャイナドレス』展

内田伸一
撮影:菱沼勇夫

明治の「文明開化」以降、激変していった日本人の暮らし。西洋文化が流入する一方で、隣国・中国とのつながりも常にありました。たとえばチャイナドレス。この言葉自体がいわゆる和製英語ですが、昭和初期の銀座には、中国風の衣装を楽しむ日本人女性たちの姿も見られたそうです。絵画界でも1910年代~40年代にかけて、日本の名画家たちがチャイナドレス姿の多様な女性を描いています。この動向に改めて注目したユニークな展覧会が、ブリヂストン美術館の『描かれたチャイナドレス─藤島武二から梅原龍三郎まで』です。今回のゲストは、シンガーソングライターとして活躍し、昨年夏のKIRINJIへの加入でも注目されるコトリンゴさん。彼女と一緒に展覧会を巡り、この時代の画家たちがチャイナドレスに見た美とはなんだったのか? に迫ります。

日本の洋画家たちが、こぞってチャイナドレスを描いた時代があった?

深いブルー地に、美しい龍の刺繍も映えるチャイナドレスの美女——。と言ってもまだ絵画の話ではありません。今回のゲスト、コトリンゴさんの、この日の出で立ち。じつはこの一着、美術館スタッフの私物からコトリンゴさんにぴったりなものを、特別にお借りしたものです。

コトリンゴ
コトリンゴ

コトリンゴ:チャイナドレスは高校生のとき、シンガポール旅行で手に入れてピアノの発表会で着たとき以来かな。スリットが大胆に入っていて、ステージで脚が見えすぎないかと母が心配したのを思い出します(笑)。ふだん着る機会はあまりないですが、今回はドレス実物の展示もあるそうで、私も展覧会の世界へ入っていく感覚で鑑賞できたらと思います。

展示は、1910年代~40年代に日本人画家が描いた中国服の女性像・約30点と同時代のチャイナドレス6点を、2室にわたって体験する構成。最初の部屋ではまず、油彩画で初めて中国服の女性像を描いたとされる、藤島武二の作品『匂い』が出迎えてくれます。

藤島武二『匂い』1915年 東京国立近代美術館蔵
藤島武二『匂い』1915年 東京国立近代美術館蔵

コトリンゴ:『匂い』というタイトルは、意外にも脇役的にテーブルに置かれた小瓶の嗅ぎタバコから来ているんですね。観る側の五感が意識されるようで、このカラフルな色使いの世界観が一緒になっているのも面白いです。藤島さんは実際に中国を訪ねて描いていたのですか?

藤島の場合は自身の拠点・東京で日本人モデルを使い、知人を通して入手した中国服をまとわせて描いていたとか。衣装は50~60着も収集したそうで、熱の入れようが窺えます。ただそれは、単に美しいから、ではなさそう? そのヒントをくれるのが、彼のもう1つの作品『女の横顔』です。

藤島武二『女の横顔』1926-27年 ポーラ美術館蔵
藤島武二『女の横顔』1926-27年 ポーラ美術館蔵

コトリンゴ:あ、これは事前に見た資料の中でも、特にいいなと思った1枚です。柔らかな横顔の佇まいは、なんとなく古いヨーロッパの肖像画のような雰囲気も感じます。他にも『東洋振り』『鉸剪眉』など、藤島さんは中国服の女性の横顔をいくつも描いているんですね。

パリ、ローマに留学した藤島は、ルネサンス期に多く描かれた横顔の女性像に「東洋的精神」に通じるものを感じ、強く惹かれたそうです。一方で、「東洋とか西洋とかいう観念を撤回する」思いで油絵を描いていた彼が、女性の横顔像を自分流に発展させる際に中国服の女性を選んだのはなぜ? 古代ギリシャ・ローマ文化の復権から新たな流れを生んだルネサンス美術に呼応するのは、やはり東洋随一の悠久なる歴史を持つ中国文化、という直感があったのかもしれません。

コトリンゴ:なるほど……。最初、チャイナドレスといっても詰襟だけでなく、形や色柄が本当に多彩でファッション誌を見ているような楽しさも感じました。でも、描いた人の背景も知ると、もっと興味深く観ることができそうです。『女の横顔』のモデルは美人画で有名な竹久夢二の恋人でもあった「お葉」さんで、横顔の美にこだわる画家のお眼鏡にもかなった、という話も印象的ですね。

ヘミングウェイら欧米文芸界の巨匠と交流し、渦巻派(ヴォーティシズム)の影響を受けた奇才・久米民十郎

この部屋には藤島作品の他にも、独自の視点で中国服の女性をとらえた絵画が見られます。「麗子像」で知られる岸田劉生が、愛娘・麗子とも仲が良かった自分の妹を中国美人風に描いた『照子像』など。コトリンゴさんが立ち止まってじっと観ていたのは、中でも異彩を放つ幻想的な1枚。久米民十郎の『支那の踊り』です。

久米民十郎『支那の踊り』1920年 個人蔵
久米民十郎『支那の踊り』1920年 個人蔵

コトリンゴ:わりと写実的な絵が多い中で、これはすごく異色ですね。全身があり得ない弧を描いて動いているようで……同じ中国服の女性でも、明らかに他の絵とは違う。解説にはイギリスの渦巻派(ヴォーティシズム)の影響も受けているとあって、「渦巻派」っていう語感にすごく納得がいきます(笑)。

久米は関東大震災で夭逝した画家で、巫女が描いた絵をもとに自作を生み出したと公言するなど、ミステリアスな部分も多い奇才。一方で、ヘミングウェイやエズラ・パウンドら欧米文芸界の巨匠と交流し、彼らに能楽などの日本文化を紹介したことでも知られます。そんな彼もまた、この時代に中国服の女性を描いていたのは興味深い事実です。

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イベント情報

『描かれたチャイナドレス─藤島武二から梅原龍三郎まで』

2014年4月26日(土)~7月21日(月・祝) 会場:東京都 京橋 ブリヂストン美術館 時間:10:00~18:00(金曜は20:00まで) 休館日:月曜(7月7日、7月14日、祝日は開館) 料金:一般800円 65歳以上600円 大・高校生500円 ※チャイナドレスや中国服を着用した来館者は団体料金で入場可 ※中学生以下無料 ※障害者手帳をお持ちの方と同伴者2名まで半額

土曜講座 『異国趣味とオリエンタリズム』

『「支那服の女」の誘惑―画家、そして知識人男性は《金蓉》に何を見たのか 』
2014年6月14日(土)14:00~16:00
会場:東京都 京橋 ブリヂストン美術館ホール
出演:池田忍(千葉大学教授)
定員:130名(先着順)
料金:400円

『「日本人」はアジアに何を見たのか?』
2014年6月21日(土)14:00~16:00
会場:東京都 京橋 ブリヂストン美術館ホール
出演:天野一夫(豊田市美術館チーフキュレイター)
定員:130名(先着順)
料金:400円

『藤島武二が描いた中国服の女性像』
2014年6月28日(土)14:00~16:00
会場:東京都 京橋 ブリヂストン美術館ホール
出演:児島薫(実践女子大学教授)
定員:130名(先着順)
料金:400円

『アジアを描いた日本の絵画―日本的なオリエンタリズムとは何か?』
2014年7月5日(土)14:00~16:00
会場:東京都 京橋 ブリヂストン美術館ホール
出演:西原大輔(広島大学教授)
定員:130名(先着順)
料金:400円

『「植民地絵画」の完成:偽「満州国」オリエンタリズム考』
2014年7月12日(土)14:00~16:00
会場:東京都 京橋 ブリヂストン美術館ホール
出演:稲賀繁美(国際日本文化研究センター教授)
定員:130名(先着順)
料金:400円

ティールーム「ジョルジェット」とのコラボメニューが登場

『描かれたチャイナドレス』展とのコラボメニューとして、本展覧会開催中にシノワズリティーが登場します。ジャスミンティーとベルガモットオレンジティーをブレンドしたジョルジェットのオリジナルティーです。また、ご注文の際に『描かれたチャイナドレス』展のチケット半券をご呈示いただきますと、フォーチュンクッキーをプレゼントします。

イベント情報

『コトリの巣めぐりツアー2014』

2014年7月5日(土)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:富山県 HOTORI
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年7月6日(日)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:石川 金沢 もっきりや
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年7月8日(火)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:岡山県 城下公会堂
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年7月9日(水)OPEN 18:30 / START 19:30
会場:兵庫県 神戸 café FISH
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年7月11日(金)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:兵庫県 加古川 チャッツワース
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年7月12日(土)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:大阪府 心斎橋 digmeout ART & DINER
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年7月13日(日)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:奈良県 LUSHLIFE
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年7月16日(水)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:愛媛県 松山 木村邸
料金:前売3,000円 当日3,500円

2014年7月17日(木)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:広島県 広島 LOG
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年7月19日(土)OPEN 19:00 / START 21:00
会場:山口県 FRANK
出演:
DJ.kengou
Momo
and more
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年7月20日(日)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:佐賀県 CIEMA
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年7月21日(月・祝)OPEN 20:00 / START 20:30
会場:福岡県 門司 BRICK HALL
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)
※午前11時よりマーケット出店、ワークショップ、展示会、DJあり

2014年7月26日(土)OPEN 18:00 / START 19:00
会場:島根県 松江 清光院下のギャラリー
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年7月27日(日)START 15:00
会場:鳥取県 わらべ館いべんとほーる
料金:料金:大人500円(入館料)
※高校生以下無料

2014年8月2日(土)OPEN 9:00 / START 19:30
会場:香川県 小豆島 ベイリゾートホテル小豆島
料金:前売2,000円 当日2,500円 宿泊客 1,000円

2014年8月3日(日)OPEN 19:00 / START 20:00
会場:香川県 高松 umie
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年8月4日(月)OPEN 18:30 / START 19:30
会場:愛媛 新居浜・アンデルセンホール
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年8月6日(水)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:愛知県 名古屋 K.D Japon
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年8月23日(土)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:宮城県 仙台 SENDAI KOFFEE CO.
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

2014年8月24日(日)OPEN 16:30 / START 17:00
会場:福島県 いわき burrows
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

コトリの巣めぐりツアー2014 Band set ver.
2014年8月31日(日)OPEN 17:30 / START 18:30
会場:東京都 青山 CAY
出演:コトリンゴ with 村田シゲ・神谷洵平
ゲスト:良原リエ(トイ楽器)
料金:前売4,000円 当日4,500円(ド共にリンク別)

リリース情報

コトリンゴ<br>
『birdcore!』(CD+DVD)
コトリンゴ
『birdcore!』(CD+DVD)

2014年4月30日(水)発売
価格:3,672円(税込)
RZCM-59575/B

[CD]
1. 種まき
2. terrarium
3. ツバメ号
4. 誰か私を
5. 白い鳥
6. 読み合うふたり
7. 絵描きと雲雀
8. ballooning
9. o by the by
10. あたま、こころ
11. moon's a balloon
[DVD]
・“誰か私を”PV

コトリンゴ<br>
『birdcore!』(CD)
コトリンゴ
『birdcore!』(CD)

2014年4月30日(水)発売
価格:3,240円(税込)
RZCM-59576

1. 種まき
2. terrarium
3. ツバメ号
4. 誰か私を
5. 白い鳥
6. 読み合うふたり
7. 絵描きと雲雀
8. ballooning
9. o by the by
10. あたま、こころ
11. moon's a balloon

プロフィール

コトリンゴ

1978年生まれ。5歳よりピアノを始め、7歳で初めての作曲をする。1999年、神戸の甲陽音楽院を卒業後、ボストンのバークリー音楽院に留学。ジャズ作・編曲 / ピアノパフォーマンス科専攻。在学中には教会でのクワイヤのレギュラーピアニストや、バークリーのボイス科のピアノ伴奏の仕事も務めながら、数々の賞を受賞。学位を取得後NYへ移り、様々なギグに参加。 2005年秋より自宅での曲作り / デモテープ作りを始める。2006年『こんにちは またあした』でデビュー。卓越したピアノ演奏と柔らかな歌声で浮遊感に満ちたポップ・ワールドを描きだす女性シンガー・ソングライターとして各方面から注目を浴びている。

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