デジタルコミュニケーションが社会を変える

デジタルコミュニケーションが世界を変える Vol.2 中村勇吾×杉山知之(デジタルハリウッド学長)対談

vol.2:中村勇吾×杉山知之(デジタルハリウッド学長)対談 ネット世界はもうひとつの「自然」である

デジタルメディア、ソーシャルメディアが日常生活に当たり前のように浸透し、日々進化を続けるいま。この連載では、デジタルハリウッドの新設コース「デジタルコミュニケーションアーティスト専攻」(DCA専攻)の挑戦を縦軸に、そして最前線で創造を続けるプロフェッショナルたちの動向を横軸に、この世界の可能性を探ります。

第2回目は、クリエイティブ業界では知らぬ者のいない人気クリエイター・中村勇吾さんが登場! ユニクロの実験的なウェブサイト展開から、岡村靖幸の復活を印象づけた異色のウェブ映像まで、数々の先鋭的作品で知られるインタラクティブデザイナーです。今回は、この連載での指南役でもある杉山知之・デジタルハリウッド学長との対談が実現しました。立場は違えど最前線で活動するお二人の「デジタルコミュニケーション」にまつわる意見交換。ウェブコンテンツへの眼差しから、この世界におけるアーティスト性、デザイナー性、さらに中村さんの手がける最新プロジェクト『FRAMED*』まで、幅広くかつ濃厚な内容になりました。

中村勇吾

1970年奈良県生まれ。ウェブデザイナー/インターフェースデザイナー/映像ディレクター。東京大学大学院工学部卒業。多摩美術大学客員教授。1998年よりインタラクティブデザインの分野に携わる。2004年にデザインスタジオ「tha ltd.」を設立。以後、数多くのウェブサイトや映像のアートディレクション・デザイン・プログラミングの分野で横断/縦断的に活動を続けている。主な受賞に、カンヌ国際広告賞グランプリ、東京インタラクティブアワードグランプリ、TDC賞グランプリ、毎日デザイン賞など。

http://tha.jp/

中村勇吾

杉山知之

1954年東京都生まれ。1979年、日本大学大学院理工学研究科修了後、日本大学理工学部助手。87年より、MITメディア・ラボ客員研究員として3年間活動。90年、国際メディア研究財団・主任研究員、93年、日本大学短期大学部専任講師を経て、94年10月、デジタルハリウッド設立。以来、クリエイターの育成、インターネットビジネスの発展に力を注いでいる。デジタルハリウッド創立10周年となる2004年、開校当初からの念願であった、デジタルコンテンツ専門の「デジタルハリウッド大学院大学」を開学。同年11月、IT×英語&留学×クリエイティブを学ぶ「デジタルハリウッド大学」が文部科学省認可。学長に就任。05年4月開学。08年10月、「コンテンツ学会」副会長に就任。

杉山知之
中村勇吾的「デジタルコミュニケーション」とは?

―前回は杉山学長に、デジタルコミュニケーションの大いなる可能性について教えていただきました。従来の「通信」という捉えられ方を越えて、多種多様な関わり合いを生み出す環境になる、と。中村さんの手がけるウェブサイトも、インタラクティブで有機的な動きを生み出すものが多いですね。

中村:僕がもともと「コンピューター的なもの」を本格的に好きになったのは、20歳くらいなんですね。日本でもMacが普及してきたころで、最初に好きになったのは「アフターダーク」というスクリーンセーバーだったんです。その中でも僕は、自然の海岸線のように複雑なフラクタル画像が無限に生成していく「satori」が特に好きで、これにはすごくショックを受けました。

杉山:いいですよね、あれ。懐かしいなぁ(笑)。

中村:大学の研究室で、1日中ずーっと眺めていたこともあります(笑)。「satori」では幾何学模様や色が生き物のように複雑にからみ合い、つながり合って、結果的に大きな美しい絵になる。それがパソコンの中ですべてに矛盾がなく、完璧に動いているのがすごく快感で、今でも僕は、自分のデザインにそういったコンピューテーションの快感的な要素を入れるようにしています。プログラミングって有機的なものなんだということに気付いたのもこのお陰でした。

左:中村勇吾 右:杉山知之

杉山:ネットはまだいまみたいに整備されてないころですよね?

中村:そうですね。その後ウェブが広がって、PCや人間同士がどんどん有機的につながったわけですが、その環境はもうひとつの「自然」とも言えるんじゃないかと思うんです。

杉山:遠目からみれば「ネット」や「ウェブ」という言葉で済んでしまうけど、近づいてみればひとつひとつの小さな点が複雑に動いているわけですからね。確かにそうしたデジタルコミュニケーションというのは一種の「自然」と言えると思います。

中村:全てが有機的に結合し、なんの矛盾もなく繋がりあっている、そういう快感というのは「satori」の頃から変わってないし、僕はその、どんどん強度を増している「関わり合いの世界」として、「デジタルコミュニケーション」には共感する部分があります。

杉山:自然と言えば、中村さんの初期の代表作のひとつに『ecotonoha』がありますね。

『ecotonoha』

NECによる環境貢献サイトで、中村勇吾がアートディレクション/デザインを担当した。ユーザーの投稿メッセージがひとつひとつの葉となって、1本の樹木に成長していく作品で、投稿分だけ、実際にオーストラリアのカンガルー島に木が植えられていくという企画。2003年よりスタートし、 最終的に7423本を植林した。

ecotonoha

中村:例えば自然界の話で言うと、蜂はあんなに速く飛んでいるのに、お互いにぶつからないようちゃんとある一定上の距離を取ろうとするらしいんです。でも、あまり離れると、今度は寂しくて近づこうとする。そういう単純なロジックの連なり合いで、あの蜂の群れというのは絶えず動いているわけです。

そういう風に、単純なルールが連なりあい、複雑化し、それがどんどん高次化して、最終的にはこの地球を形作っている。『ecotonoha』もそうですが、そうした視点は、僕の表現に影響しているかもしれません。例えばTwitterのタイムラインを見ていても、個々のつぶやきというより、ナイル川みたいな、そういう大きな「流れ」みたいなものを感じます。

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