デジタルコミュニケーションが社会を変える

デジタルコミュニケーションが世界を変える Vol.1 ソーシャルメディアが席巻する時代に生まれた新しい「アーティスト」

デジタルコミュニケーションが世界を変える Vol.1 ソーシャルメディアが席巻する時代に生まれた新しい「アーティスト」

ソーシャルメディアが変えたもの:

日常生活からクリエイティブ業界まで

いまさら言うのもためらわれるほど、Twitter、Facebook、さらにSumallyなど個性派SNSも含めたソーシャルメディアの出現は、私たちの生活スタイルに大きな変化をもたらしています。それは「他愛もないつぶやき」「来週のパーティには誰が来るの?」といったパーソナルな楽しみを、かつてないライブ感でシェアするツールになりました(しかも、これまでCDや映画、雑誌の中でしか会えなかった人々のそれも含めて!)。

いっぽうでSNSを駆使したジャーナリストや、実験的音楽PV・商品プロモーションが出現。さらにメディアアーティストが舞台美術を手がけるライブやイベントも珍しくなくなりました。クリエイティブ界でも、デジタルコミュニケーションの潮流は無視できない動きになってきています。

こうして改めて考えてみると、たったこの数年で、「コミュニケーション」の手法には革命的な変化が生まれています。日常的過ぎて見過ごしてしまいそうですが、「人類の歴史」ぐらい大きな視点で考えても場違いにならないほどの大きな「変化」が起きています。そういうわけで、この時代において最も熱い分野である「デジタルコミュニケーション」を改めて考えてみる、というのが本連載のテーマ。ひとつのクリエイティブカルチャーとして、そこではいま何が起きていて、どんな才能が時代を動かしているのか、紹介をしていきたいと思います。

連載の1回目となる今回は、いち早く「デジタルコミュニケーション」を専門に学ぶ専攻をスタートさせ、この分野について幅広い知識と実績を持つ専門スクール、デジタルハリウッドの杉山知之学長にお話を伺いました。これまでにない新しい表現分野のお話はもちろん、様々な分野が国際化していく中で「日本」はどうあるべきかなど、ためになるお話が満載でした。

不況だと言われる現代において、 右肩上がりに進化する。 10の何乗という変化が日常的に語られる 「デジタル技術」の世界。

杉山知之

1954年東京都生まれ。1979年、日本大学大学院理工学研究科修了後、日本大学理工学部助手。87年より、MITメディア・ラボ客員研究員として3年間活動。90年、国際メディア研究財団・主任研究員、93年、日本大学短期大学部専任講師を経て、94年10月、デジタルハリウッド設立。以来、クリエイターの育成、インターネットビジネスの発展に力を注いでいる。デジハリ創立10周年となる2004年、開校当初からの念願であった、デジタルコンテンツ専門の「デジタルハリウッド大学院」を開学。同年11月、IT×英語&留学×クリエイティブを学ぶ「デジタルハリウッド大学」が文部科学省認可。学長に就任。05年4月開学。08年10月、「コンテンツ学会」副会長に就任。

杉山知之

―「デジタルコミュニケーション」という言葉は、杉山学長が90年代に使い始めたとも伺っています。その真意はどういうところにあったのでしょう?

杉山:それまでテクノロジー業界においてCommunicationという言葉は「通信」と訳されてきました。でも僕は、デジタル技術を使うことによって、基本的に地球上のあらゆるものとコミュニケーションできる可能性を語りたくて、こういう言い方をしてみたんですね。そこでは人間同士は当たり前で、動物と、モノと、環境とだってコミュニケーションできる。もっと言えば、人間主体でなくてもいいんです。

杉山知之

―それから20年近くたって、実際にデジタル技術はコミュニケーション手段の主役になりましたね。

杉山:これからもっと面白くなっていくでしょうね。不況だ何だと言われる現代において、この世界の進化だけは右肩上がりですし、ふと目を離すと性能や容量が100万倍とかになっている。10の何乗という変化が日常的に語られる世界です。それにはお金がかかるでしょうという反論も出そうですが、それは近視眼的なビジネスの話です。スマートフォンがそうでしょう? 以前はああいう機械を個人が持てるとは思えなかった。最新の夢の技術も、今は10年位たてばみんな使えるようになるし、今後はもっと早いかもしれません。

―そうした流れの中で、デジタルの恩恵をどう使いこなすべきでしょう?

杉山:使いこなすというより、そこに人類が乗っかっていく、入っていく感覚が僕にはあります。そこまでくるとテクノロジーは「環境」であり「生活空間」ですよね。それは価値観の変化どころじゃなくて、脳に来る。もしかしたらDNAの変化とか、ガンダムで言うところの「ニュータイプ」の登場ということにもつながるかもしれません。そんなことを考えていたのが90年代でしたが、それに近い流れが、すごく大きな動きになってきたと実感しています。とはいえ、やっと第一歩の段階でしょうね。

SNS

―SNSなどのソーシャルメディアの登場によって、ライフスタイルにも大きな変化が生まれてきていますね。

杉山:人との付き合い方が変わってきましたよね。たとえば「一期一会」がほぼなくなった。日本人はこの言葉が好きですが、あれは物理的・地理的制約や、従来の記録物の流れの中にあった感覚ですよね。でも、生まれたときからFacebookがあった子どもたちにとっては、きっと80歳からでも小学校の友だちを探せる世界が普通に訪れるでしょう。逆に、それを引きずりすぎると大変そうですけどね(笑)。さらに、知り合いを何人か経由すればどんな人ともつながれる、というのが幻想ではなくなる。「一期一会」ならぬ「一期"万"会」みたいな世界観も充分あり得るわけで、そうした中で人間同士の付き合い方もより大きく変わってくるはずです。

―そうしたコミュニケーションの進化にはどんな可能性を感じますか?

杉山:人間は宿命的にコミュニケーションをとりたがる動物だ、と指摘する学者は多くて、人が2人で同じ空間に居れば、どうしたってやり取りは起きる。そういう本質を持っているとしたら、それを促す良質なサービスが提供され、進化していくのも必然でしょう。僕も10年ほどブログを続けていましたが、いまFacebookに移行しています。ブログでもトラックバックやコメントで緩やかなコミュニケーションができていたけれど、Facebookはだいたい本人が特定できて、かつどこかで実際に関わっているので、より濃いレベルのコミュニケーションが起きているのでしょうね。こうした変化は今後もさまざまな形で続いていくと思います。

杉山知之

―杉山学長のようなエヴァンジェリスト(伝道師。IT界では、特定の技術に深い知識を持ち、それを組織内外へわかりやすく広める役割を指す)も、その恩恵にあずかっていると?

杉山:ほとんどの情報がネットにあると言われる時代ですが、量が膨大なので、欲しい情報がどこにあるか、1人で追い続けるのは難しいんです。その点、FacebookやTwitterで、同じ関心を共有している人たちから気軽に情報を集められるのは便利ですよね。それに、彼らが知りたいことは自分も興味がある確率が非常に高い。そこを起点にすれば、100から300人でもかなり濃いコミュニケーションができます。

―その有用性というのは、すでに数が証明していますね。

杉山:そうですね。今、Facebookは年間2億人の加入者増という、ちょっとあり得ない勢いで広がっています。地球上の人類がいま約70億人だから、人類すべてがつながる世界が夢物語ではなくなるわけです。

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