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大根仁監督と観る『浮世絵 Floating World』展

大根仁監督と観る『浮世絵 Floating World』展

内田伸一
撮影:菱沼勇夫

女性の魅力を引き出す、喜多川歌麿と篠山紀信の共通点

本展の展示作は、「川崎・砂子の里資料館」の膨大な所蔵品からの選りすぐり。同館館長の斎藤文夫さんが、東海道の宿場として栄えた地元・川崎の様子を描いた浮世絵から集め始め、今では浮世絵の発生期から幕末〜明治以降にいたるまでをカバーした幅広いコレクションです。今回は会期を3つに分け、約600点を紹介する贅沢な展覧会となりました。大根さんは第1期の展示作品中では、喜多川歌麿が描く美女たちに強い印象を受けたといいます。

喜多川歌麿『当時全盛美人揃』玉屋内 小紫(第1期展示作品)
喜多川歌麿『当時全盛美人揃』玉屋内 小紫(第1期展示作品)

大根:歌麿は絵師としてもスター性があるし、表現自体も革命的だったんだろうなと思います。女性のとらえ方・描き方がそれまでの人と格段に違いますもんね。表情、ポーズ、アングルいずれも、歌麿の絵で急に色気がでてきた感じがする。後続世代への影響力も相当ありそうで、今で言えば篠山紀信みたいな存在?

野口:(笑)。たしかに歌麿は対象の魅力を引き出すのが上手いですね。江戸の遊び場を中心に活動し、彼女たちと間近で接しながら、その表情や仕草をとらえたようです。他にも、古典的な物語を当世風の男女に「やつして」描く作品で知られた鈴木春信のような人もいます。

鈴木春信『風流やつし七小町 草紙あらひ』(第1期展示作品)
鈴木春信『風流やつし七小町 草紙あらひ』
(第1期展示作品)

大根:浮世絵って、字が読めない人たちも楽しめる娯楽、という面はあったんですか?

野口:それが、江戸時代の識字率はとても高かったんです。だからむしろ、その時々の世間の好奇心や欲望を敏感にとらえ、企画として素早く世に送り出す、今でいう商業出版のような存在でもありました。その形態も、床の間に飾れるようなサイズから、狭い長屋の柱に飾れるよう細長い紙に摺ったものがあったり、多種多様ですね。


鳥居清長『江之嶋の渡し』(第1期展示作品)
鳥居清長『江之嶋の渡し』
(第1期展示作品)

大根:現代における、雑誌のグラビア写真やテレビのような存在であり、情報源でもあった。お店の看板娘を描いたりするのはCM効果も持っている。まさに庶民の主要メディアですね。自分の仕事に引き寄せて視覚表現という点で言えば、僕は浮世絵の緻密さと大胆さの共存みたいなところにも凄く惹かれます。

野口:そうですね。制作技術や表現力も年々著しく向上していき、たとえば版木の1mmの幅に髪の毛を何本彫れるか、という超絶技巧のような世界にもなっていきます。やがてヨーロッパでも評価され、19世紀の画家たちに大きな影響を与えたことも有名ですね。今回はそれらの資料も紹介し、さらにこの美術館が所蔵する西洋の美術作品から、ロートレックなど浮世絵の影響を受けた名品も会場各所にちりばめています。


アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック『ムーラン・ルージュのイギリス人』 三菱一号館美術館蔵
アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック
『ムーラン・ルージュのイギリス人』
三菱一号館美術館蔵

大根:こういう場所で、そういう異種格闘技戦みたいな試みもいいですね。

野口:見比べることで、また発見があると思いますよ。当の浮世絵表現は、美術として高く評価される一方、やはり庶民向けならではの「あけすけ」な感じもある。その両面が魅力ですね。

喜多川歌麿『青楼十二時 続 辰ノ刻』(第1期展示作品)
喜多川歌麿『青楼十二時 続 辰ノ刻』
(第1期展示作品)

大根:たしかに、ふだん見ることのない遊女の24時間を実録式に描いた連作とか、銭湯の様子をおおらかに描いているのとかもありますし(笑)。

浮世絵は「江戸のグラビア」という役割を越え、大根さんの言う通り庶民の主要メディアに――。その新展開は、第2期展示以降に見ることができます。


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イベント情報

『浮世絵 Floating World―珠玉の斎藤コレクション』

2013年6月22日(土)〜9月8日(日)

第1期「浮世絵の黄金期―江戸のグラビア」
2013年6月22日(土)〜7月15日(月・祝)

第2期「北斎・広重の登場―ツーリズムの発展」
2013年7月17日(水)〜8月11日(日)

第3期「うつりゆく江戸から東京―ジャーナリスティック、ノスタルジックな視点」
2013年8月13日(火)〜9月8日(日)

会場:東京都 丸の内 三菱一号館美術館
時間:木、金、土曜10:00〜20:00、火、水、日曜、祝日10:00〜18:00(入館は閉館の30分前まで)
休館日:月曜(ただし祝日の場合は翌火曜休館、9月2日は18:00まで開館)

作品情報

『恋の渦』

2013年8月31日(土)からオーディトリウム渋谷ほか全国順次ロードショー
監督:大根仁
原作・脚本:三浦大輔
出演:
新倉健太
若井尚子
柴田千紘
後藤ユウミ
松澤匠
上田祐揮
澤村大輔
圓谷健太
國武綾
松下貞治
配給:シネマ☆インパクト

プロフィール

大根仁(おおね ひとし)

演出家・映像ディレクターとして、数々のドラマやPVを演出。中でも『モテキ』『週刊真木よう子』『湯けむりスナイパー』『まほろ駅前番外地』など深夜ドラマでその才能を発揮。初映画監督作品『モテキ』が2011年に公開し大ヒット、『第35回 日本アカデミー賞話題賞・優秀作品部門』を受賞した。映像演出を手掛ける傍ら、上演台本・演出を手掛けたロックミュージカル『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』などの舞台やラジオ、コラム執筆、イベント等でも幅広く活動。『恋の渦』は『モテキ』以来2作目の長編映画として注目を集めている。

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