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ネット空間と現実を繋ぐアート フラッシュモブの恐るべき可能性

ネット空間と現実を繋ぐアート フラッシュモブの恐るべき可能性

萩原雄太
撮影:佐々木鋼平
2012/11/01
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2ちゃんねるのようなインターネットコミュニケーションと原発デモ、そしてダンスや演劇、パフォーマンスといった舞台芸術。そんなバラバラな3つのキーワードを繋いだところに「フラッシュモブ」という新しい現象が生まれている。まだ生まれたばかりで、その可能性は未知数だが、現実の世界や人を大きく揺るがす可能性を持った表現、そしてメディアとしての可能性も注目されるフラッシュモブ。この秋開催される舞台芸術の祭典『F/T(フェスティバル/トーキョー)』が、そんな新しい表現を大きくフィーチャーしたプログラム『F/Tモブ』を立ち上げた。いったいフラッシュモブとはどういうものなのか? そして『F/T』がフラッシュモブを取り入れた理由とは? その魅力、正体について各方面から取材を試みた。

突如、日常空間へインストールされるダンス「フラッシュモブ」

日本最大の舞台芸術フェスティバルであるだけでなく、一貫して何らかに対しての問題提起を行うような、強いエッジのある作品を集め、一堂に上演することで知られる『F/T(フェスティバル/トーキョー)』。そんな今年秋の『F/T12』の多彩な演目の中でも注目を集めているのが、ジェローム・ベル、井手茂太、KENTARO!!、白神ももこ、小野寺修二、という5名のダンサー・振付家によるプログラム『F/Tモブ』だ。これは池袋西口公園一帯という公共の場所に対して、5名のアーティストがそれぞれゲリラ的なパフォーマンスであるフラッシュモブに取り組むというもの。すでにこのゲリラ的パフォーマンスは、先日より開催されており、ジェローム・ベルがその口火を切って、週末の沢山の人々が行き交う池袋西口公園を突如祝祭の場に変えている。この『F/Tモブ』は、今後1か月間、毎週末にアーティストが入れ替わりながら、池袋西口公園一帯にて行われる予定だ。

10月27日(土)、10月28日(日)に行われた第1弾の『F/Tモブ』(振付:ジェローム・ベル)の様子

そもそもフラッシュモブとは、インターネット上のコミュニケーションが活発化した、2000年代以降に、世界中で同時多発的に発生したハプニング的なパフォーマンスの一種で、メールやSNSなどを通じて示し合わせた不特定多数の人が、広場や駅、空港などの公共空間で突如踊り出すなどのパフォーマンスを行った後、何事もなかったかように日常に散会していくという、わずか数分間のパフォーマンスのことをいう。まだ誕生して10年ほどのカルチャーのため、資料としてまとめられたものはほとんどないが、伊藤昌亮著『フラッシュモブズ』には、その発生から現代までの歴史がとても詳しくまとめられている。

KENTARO!! ©服部未来
KENTARO!! ©服部未来

たとえば2008年、ニューヨークのパフォーマンスアートグループ「インプロヴ・エヴリホェア」によって、グランドセントラル駅で行われたフラッシュモブ『フローズン・グランド・セントラル』。ラッシュアワーのグランドセントラル駅で、200人以上の老若男女が入り交じった通行人がそれぞれ、突如時間が止まったように、硬直(フリーズ)する。そしてそのまま5分間フリーズした後に、何事もなかったかのように一斉に再び動きだし、それぞれの行き先へと歩き去っていく。広大な駅構内という日常空間で、200人もの人々が5分間も一斉にフリーズするという模様は、一度見たら簡単に忘れることの出来ないインパクトがある。

ちなみにこの『フローズン・グランド・セントラル』は、その模様がYouTubeにアップされたことで、その後あっという間に世界中の都市へと影響力が拡散していくことになり、なんとその後たった4か月あまりの間に、多くの類似パフォーマンスが世界中で120回以上も行われたとされている。この圧倒的にスピ―ド感のある爆発的な広がり方は、まさにインターネット時代のカルチャーの大きな特徴である。

インプロヴ・エヴリホェア『フローズン・グランド・セントラル』

その他にも、マイケル・ジャクソンの曲に合わせて、通行人が次々とマイケルのダンスを踊り始め、最後には数百人のダンスがパレードのように路上を埋め尽くすモブや、ショッピングセンターに大勢でなだれ込み、店員にいたずらを仕掛けるようなモブ。大勢の男女が下着姿で地下鉄に乗り込むものや、数百人が一斉にゾンビになるもの(!)まである。これらをまとめて同じフラッシュモブパフォーマンスとしてしまうのか、それとも単なる大規模ないたずら遊びなのか、フラッシュモブという表現を定義することは未だに難しい。

実は日本が発祥の地とされているフラッシュモブ

このように2000年代以降、世界中で急速に注目を集め、拡散し続けているフラッシュモブだが、その発祥は実は日本であったとされるのが定説となりつつあるようだ。2001年12月24日の夜、都内の牛丼チェーン店「吉野家」に大挙して参加者が押し寄せ、同じ注文を一気に行うことで、クリスマスイブの店内がパニックに陥った『吉野家オフ』というイベントがそれだ。

匿名のインターネット掲示板、2ちゃんねるでの書き込みに端を発した『吉野家オフ』は、いわゆるオフ会(ネット上で出会った人たちが現実の世界で出会うイベント)の一種であったが、すぐにネット上で評判となり、後発イベントが多数勃発。『バレンタイン吉野家オフ』『無料引換券だけで食べるオフ』などのバリエーションが展開され、参加者も次第に増加。ついには参加者が数百人を超え、集まりすぎたために警察沙汰にまで発展することとなる。


写真左から:井手茂太 ©Mina OGATA、ジェローム・ベル ©FeranMcRope
写真左:井手茂太 ©Mina OGATA
写真右:ジェローム・ベル ©FeranMcRope

また日本の代表例のもうひとつ『マトリックスオフ』は、2003年の『マトリックス・リローデッド』映画公開に合わせて行われた2ちゃんねるのオフ会。映画の重要な登場人物であるエージェント・スミスに扮した200名あまりの参加者が、渋谷のスクランブル交差点に突如集結し、主人公・ネオ役の参加者と死闘を繰り広げるというものだ。これには世界中からの注目が集まり、同作に主演したキアヌ・リーブスですら賛辞を惜しまなかったと言われている。

海外では、ただのパフォーマンスや遊び的なものだけではなく、政治的なメッセージを発信するフラッシュモブも多く実施されている。「3.11」に直面した日本を勇気づけるために、アメリカやカナダなどでフラッシュモブが行われたほか、インド・ムンバイでは2008年に発生したイスラム過激派による同時多発テロ現場でもフラッシュモブが行われた。前述した『フローズン・グランド・セントラル』も、当初は政治的な意図は薄かったものの、世界各地に飛散していくにつれて「立ち止まる」という行為が、急速に広がる資本主義やグローバリゼーションに対しての対抗という意味を帯びるようになっていった。

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イベント情報

『F/Tモブ』

2012年10月27日(土)10月28日(日)(終了)
出演:ジェローム・ベル

2012年11月3日(土)、11月4日(日)
出演:井手茂太

2012年11月10日(土)、11月11日(日)
出演:KENTARO!!

2012年11月17日(土)、11月18日(日)
出演:白神ももこ

2012年11月24日(土)、11月25日(日)
出演:小野寺修二

会場:東京都 池袋 池袋西口公園ほか
料金:無料(予約不要)

『フェスティバル/トーキョー12(F/T12)』

2012年10月27日(土)〜11月25日(日)
会場:
東京都 池袋 東京芸術劇場
東京都 東池袋 あうるすぽっと
東京都 東池袋 シアターグリーン
東京都 西巣鴨 にしすがも創造舎
東京都 池袋 池袋西口公園
東京都 目黒 The 8th Gallery(CLASKA 8F)
※実施プログラムはオフィシャルサイト参照

プロフィール

『F/T(フェスティバル/トーキョー)』

東京芸術劇場など池袋界隈の文化拠点を中心に開催する、日本最大の舞台芸術のフェスティバル。2009年2月に誕生し、過去4度にわたって開催され、75作品、609公演、のべ2,555名の出演者・スタッフ、そして22万人を超す観客・参加者を集めている。国内外から集結した先鋭的なラインナップとフェスティバルならではの参加型プログラムで大きな話題を集め、東京、日本、そしてアジアを代表する国際芸術祭として毎年開催されている。

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