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『この人に、この人生あり!』 第3回:時代を共有/超越するデザイン groovisions(グラフィックデザインチーム)

コンピュータ制作がもたらした「ジャンル越境」の原点

キーパーソンとの出会いに加え、groovisions誕生の背景にある重要なファクター、それは高性能なパーソナルコンピュータの出現でした。

groovisions 伊藤弘

伊藤:僕自身は大学でビデオアートの制作をしていて、VJ・DJの活動もそこから自然につながっていきました。その中で、当時の高性能機であるAppleのMacintosh IIfxなどで、ようやくグラフィックや映像が作れるようになったんです。ただ当初は、作った映像をリアルタイムで動かすことはまだできなくて、コマ撮りしたりVHSに吐き出して使っていたんです。ともあれ、90年代初頭にパソコンでのグラフィックや映像制作が可能になっていった流れは、僕らの表現のルーツといってもいい。

現在ではグラフィックやムービー制作を中心に、音楽、出版、プロダクト、インテリア、ファッション、ウェブなど多様な領域で活動するgroovisions。原点はこの時期の体験にあるのかも、と伊藤さんは語ります。

伊藤:それまでパソコンでのグラフィックや映像制作は、まだちょっと先の未来の話みたいだった。でも実際にやり始めると「いちどコンピューターの中で設計しておけば、アウトプットはいろいろなメディアをえらぶことができる」と実感したんです。だから、自分たちでジャンルを限定しないで、何でもやれるならそれがいい、 という気持ちは当初からありましたね。

groovisions オフィス

いっぽう、京都時代はピチカート・ファイブとの協働をきっかけに仕事の幅も広がっていきましたが、仕事相手のほとんどが東京拠点だったため、やりとりには苦労したそうです。

伊藤:今ほどネットで何でもやりとりできる環境ではなかったし、色校(印刷物の刷り具合の最終確認)はやっぱり目で確認する必要があるので、当時は「新幹線便」をよく使いました。書類などを新幹線で運んでくれるんです。でも京都駅には止まらないので、新大阪まで受け取りに行って、その場でチェックしてまた新幹線で戻すっていう(笑)。とはいっても、京都時代の最後の時期は、週3くらいで京都と東京を往復するのが日常でした。拠点を東京に移したのはそういう経緯からです。

垣根なき表現を支えるのは、意外にも「ルール」づくり

音楽界では、旧知のピチカートやFPMをはじめ、様々なミュージシャンのCDパッケージやPVのアートディレクションを担当。Corneliusによる『Wataridori』のPVなども、グルビの手によるものです。RIP SLYMEのメジャーデビュー時に手がけたアートディレクションは、メンバーが『天才バカボン』のキャラクターと化したような「そうきたか!」というアイデアが注目されました。故・赤塚不二夫先生にお墨付きを得ての作品です。

さらに、インテリアデザイナー・片山正通さん(Wonderwall)とは、彼が空間デザインを手がける数々の企業や店舗の、ロゴやサインをグルビが手がける形でビジュアルコラボレーションを展開。かと思えば美術家・村上隆さんによる『スーパーフラット』展に参加し、村上さんとビートたけしさんの共著『ツーアート』では2人が並んだ強烈な装丁フォトも担当。近年は銀座のメゾンエルメスでウィンドウディスプレイや、フリーマガジン『Metro Min.』のアートディレクションも担当し、またシンガポールや香港での個展など、活動の舞台はボーダーレスに広がっていきます。

groovisions

しかし、自由奔放に見えるデザインワークの中で、彼らが大切しているのは意外にも作品ごとの「ルール」づくりだとか。

伊藤:なるべく普遍的、機能的、合理的なもの、そしてみんなが共有できるものをつくろう。これが常に思っていることなんです。そのためにも、また「こういうルールだったら面白いものができるんじゃないか」という意味でも、自分たちで制約をつくることが重要な部分です。それが作品のアイデンティティにもなるし、僕らが目指す「動くグラフィックデザイン」的なものにもつながっています。

そう言われてみれば、HALFBYの名を広く知らしめることになったPV群(奇妙な歩き方のオジサンが音楽にのってひたすら街を進んでいくもの)も、ある決まり事のなかでいかに遊び倒すか、という試みが人々を惹き付けたのかもしれません。ファンが自らこの歩きを再現するオフ会が各地で実行されるなど、思いがけない広がりも。これもグルビ作品の「皆が共有できる表現」という魅力を物語るエピソードのひとつでしょう。

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『この人に、この人生あり!』

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